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自分の思いを仕事にきちんと乗せる──JAL×WOWOW、それぞれの

自分の思いを仕事にきちんと乗せる──JAL×WOWOW、それぞれの"思い"を乗せて『スニーカータイムズ』は空を飛ぶ

(株)JALブランドコミュニケーション 齊木繁×WOWOWスポーツ部 早川敬プロデューサー、高橋岳プロデューサー

芸能界きっての“スニーカーヘッズ”であるレイザーラモンRGがMCをつとめ、スニーカー好きのゲストとともにスニーカー愛を炸裂させる『スニーカータイムズ』。2019年4月から放送され、ヘッズたちの間でも話題となった番組が、JAL機内エンターテインメント(国内線)として12月末まで上映中だ。
「自分の好きなものを番組として具現化したい」企画担当の高橋プロデューサーと「カッコ悪いものにはしたくない」制作担当の早川プロデューサー。それぞれの“思い”が詰まった『スニーカータイムズ』は、JALブランドコミュニケーション齊木さんの目に留まる。
JALならではの特色を出すため、国内線のチャンネル数を70へと拡大したJAL。コンテンツの調達と編成を担当していた齊木さんは、「お客さまに喜んでいただくためにも、自分が感じたことを大切にしたい」と語る。JALとWOWOW、それぞれの“思い”を乗せた『スニーカータイムズ』は、今日も空を飛ぶ。

「カッコ悪いものにはしたくない」共通のイメージを持って臨んだ番組作り

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──『スニーカータイムズ』の企画に至った経緯を教えてください。

早川 僕と高橋がもともと担当していたNBAの番組で、ゲストとしてレイザーラモンRGさんに出演いただいたときに「スニーカーの番組が作れたらいいね」なんて話をしていたのが最初ですね。

高橋 それから時間が経ってしまいましたが、スニーカー界隈が盛り上がっていることはずっと肌で感じていたんです。それで「ちょっと企画を書いてみよう」と思い紙にまとめたものを早川に見せたんです。

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WOWOWで放送はできなくても、WOWOWメンバーズオンデマンド(加入者限定番組配信サービス)やParaviで配信できれば、という温度感でした。たまたまオリジナル番組の企画を募集するWOWOWの社内公募の時期と重なって応募したのが経緯です。それが去年の11月だったと思います。

早川 その公募に通ったことで制作が決まったのですが、当時高橋は日本テレビに出向していたので、僕が社内プロデューサーとして立ちました。

──企画についての周囲の反応は?

早川 社内外から「面白いことをやるね」と言われましたし、「自分も(番組に)出してほしい」と言われることもありました(笑)。もちろん、マニアックな内容でもあるので、社内で「WOWOWの色に合っているのか」とか言われたりもしましたが......それでもトントン拍子で決まっていったので、高橋は良いところに目を付けたなと思いましたね。

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高橋 あまりに、トントン拍子で放送日が決まったので、準備期間がなさすぎて(笑)。最初の収録が2月くらいでしたもんね?

早川 12月に制作が決まって、1月に稟議を上げて準備に入って。並行してRGさんに説明しに行って......すごく喜んでいただきましたね。「こういう番組を考えているんです」って会いに行って、その2週間後に「制作が決まりました」とお伝えしたら「早っ!」と驚いていらっしゃいました(笑)。

──MCにRGさんを起用し、ご意見番としてatmosの方たち、ゲストにはお笑い芸人さんをはじめ、各業界のスニーカーヘッズが登場しますが、キャスティングはどのように決定したのでしょうか?

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早川 まずMCにRGさんがいて、"知識の裏打ちができるポジション"としてatmosディレクターの小島奉文さんがいて。さらに、RGさんの芸人仲間のうちでも特に知識が豊富なグッドウォーキン上田さん。この3名のほかに、各回のコンセプトに合うような方々をキャスティングしています。

──番組のセットでたくさんのスニーカーが展示されていましたが、ゲストの方たちがご自宅から持ってこられたそうで。

早川 セットにかける予算がなかったので、WOWOW本社の片隅をセット代わりに使っていたんです(笑)。スニーカーを展示していたセットも自分たちで作って......100均で買ってきたものを針金でとめて、そこに靴を置くという(笑)。スニーカーを買ったりレンタルするお金も当然ないので、みなさんに「好きなスニーカーを持ってきてください」とお願いして、私物を置かせていただきました(笑)。

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高橋 セットに飾りきれないくらい、みなさんたくさん持ってきてくださいましたね(笑)。

早川 やっぱりみなさんご自身のコレクションを「見てもらいたい」というのがあるんでしょうね。なかでも、声優の諏訪部順一さんと、スニーカーコレクターのKING-MASAさんは本当にたくさん持ってきてくださいました。

──先ほど「WOWOWの色に合っているのか」というお話も出てきましたが、『スニーカータイムズ』を作るうえで意識したことは?

早川 僕と高橋の間で共通していたのは、「カッコ悪いものにはしない」という思いでした。忖度が見え隠れするようなものだったり、変にカッコつけたりするのはやめようと。"ちょっと抜けた感じのオシャレ感"といいますか......昔、男性向けのファッション誌で『Boon』というのがありましたが、ああいったイメージですよね。

僕やRGさんがまさに『Boon』ドンピシャの世代なんですが、「『Boon』いいよね」という話になって。「WOWOWの色」を出していくというよりも、そういった"共通して持つことのできるイメージ"を大事にしていった感じです。

高橋 番組を作るうえで、みんなのイメージを合わせるのってなかなか難しかったりしますから。今回は少人数で作ったというのもあるとは思いますが、ビジュアルも含めて、イメージを共有できたのは大きかったです。

国内線のチャンネル数が70に拡大。「よりターゲットに合った番組選びを」

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──齊木さんは(株)JALブランドコミュニケーション 機内エンターテインメント部 映像グループに所属されていた際に『スニーカータイムズ』と出会ったとのことですが、具体的にはどのようなお仕事をされていたのでしょうか?

齊木 機内で流す映画やテレビ番組の調達と編成を行なう部署でしたが、特に私は国内線の編成全体を見ていました。ですので、常に「何か面白い映像作品はないか?」と探しているような状況でした。

──そもそも「国内線でビデオを見る」というイメージがあまりないのですが......。

齊木 そうですね。JALも国内線のチャンネル数は少なかったのですが、昨年の夏から70チャンネルに増えたことで、国内線ならではの特色を出したいと動き始めたところでした。

──番組はどのように選ぶのでしょうか?

齊木 それぞれ担当が番組を探してきて、編成会議の場に持ち寄って、時期や視聴傾向をふまえて選んでいます。私が特に意識していたのは、ビジネスマン層に向けた番組です。家族旅行ではなく、出張などのビジネス目的でご搭乗されるお客さまがどんなものを見るだろう? という視点です。

──WOWOWの番組については、どのような印象を抱いていましたか?

齊木 私自身、10年来のWOWOW会員なんです。スポーツを見たくて加入しましたが、金融を扱うドラマがあったりと、機内でビジネスマンが見ても面白いのではないかと思うような作品も多いですよね。ほかの局とはちょっと違った視点から作られている番組が多い印象でした。

『スニーカータイムズ』は特に独自の路線を行っているように思えましたし、ほかにも......女子キャンプの番組(『アウトドアシップ ~ソト・タビ・アレコレ~』)や銘酒を巡る番組(『銘酒誕生物語』)、リリー・フランキーさんがウイスキーを巡る旅をする番組(『聖地巡礼 リリー・フランキーの洋酒紀行』)など、地上波にはないジャンルを扱っているなと感じていました。

──『スニーカータイムズ』も、いち視聴者としてご覧になっていた?

斎木 そうですね。3年ほど前に、ロサンゼルスの靴屋が集まっている地区に行ったことがあって。まさに私も『Boon』世代なんですが(笑)、あの当時には買えなかったようなスニーカーが普通に売っていて......久しぶりに見たら「やっぱりいいなあ」と思って、スニーカーに興味を持った時期があったんです。

そんな中、『スニーカータイムズ』という名前のまさにドンピシャな番組があると知って(笑)。最初は選定するつもりで見てはいなかったんですが......ひとつの企画に特化したミニ番組系ではなく、最後まできちんと見られるフォーマットになっているのが面白かったんです。雑誌的にも見られるし、情報もきちんと入っている番組だと思っていたので、いま「『Boon』をイメージしていた」と聞いて「なるほどな」と思いました。

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──それで、選定を視野に入れたということでしょうか?

齊木 そうですね。国際線と違って、国内線はお客さまが機内に滞在される時間が短いですし......いまの国内線って、スマホなどのご自身のデバイスでビデオをご覧になっていただくシステムなんです。ですから、SNSやメールを見る時間と、コンテンツを見ていただく時間のせめぎ合いといいますか......搭乗されているすべての時間を、コンテンツを見る時間に充てられるわけではないんですね。

そういった状況の中でも70チャンネルに増やして、特色を出していくためにも、ターゲット毎のお客様に合った内容の番組をもっと入れていきたいと思っていたんです。それで「30代、40代の男性に合った番組ってなんだろう?」と考えたときに「あのスニーカーの番組が合ってるかもしれない」と。そこから導入を検討し始めました。

──編成会議での周りの反応はいかがでしたか?

齊木 男性陣の反応がすごく良くて、女性陣は「スニーカーの番組って何?」と......反応は異なりましたね(笑)。でもその"反応の違い"というのがまさしく狙っていたところではあったので、男性のお客さまに楽しんでいただくという意味では正解だったのかなと思います。

──JALとしての選定基準やレギュレーションなどはあるのでしょうか?

齊木 もちろん「JALとして相応しい内容かどうか」というのは念頭にあります。例えば、いくら面白い内容であっても、JALにはそぐわない場合は選定していません。ただ、それはあくまで「これを放送したい」と選定した番組が、JALとしてふさわしいかを確認しているのであって、選定そのものに関しては選定基準を固めすぎないようにはしています。

──番組で取り扱う題材について、ガッチリとレギュレーションがあるのかと思いました。

齊木 きちんと固めれば、放送する番組を決めやすくはなると思いますが、同じようなものが並んでしまいますよね。それって結果的には、「お客さまにとって"良いもの"を提供していると言えるのだろうか?」と......私個人がスニーカー好きで、『スニーカータイムズ』を見ていたというところも大切にしないといけないと思うんです。他の担当たちが選んでくるものについても、そういった主観を大事にしていましたね。

最後は自分自身が「面白い」と思ったものを選びたい

──JAL国内線の機内映像として『スニーカータイムズ』を採用したいと聞いたときには、どのように感じましたか?

早川 「本当ですか?」とすごくビックリしましたが、外部へ売っていくことを前提に作っていたので、ある意味、思惑通りではありました。

高橋 「売りたい」という思いはありましたからね。

早川 ただ、一番最初がJALさんっていうのがビックリしました(笑)。配信系やローカルテレビだったら有り得ると思っていましたが、まさかのJALさんだったので。でも、いま齊木さんのお話を伺っていて、いち視聴者として見ていただいて、引っかかったというのはすごく嬉しく思います。

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高橋 選んでいただくうえでの「30代、40代のビジネスマン層向け」というターゲットについても、僕らが最初に思い描いた『Boon』世代に近かったので本当に嬉しいです。

──齊木さんが今後のWOWOWに期待していることは何でしょうか?

齊木 国内線の機内で短い時間でも楽しんでいただけるものを探しているなかで......例えば「品川で焼き肉が食べられるランチ何選」みたいな、ニッチな情報を掲載しているネット記事なんかはありますが、テレビ番組ではそういったものって意外にないんですよね。見ている人の幅が広いから、どうしても広げざるを得ないというか。

ですから『スニーカータイムズ』のような何かひとつのテーマに特化した情報を得られる番組を多く作っていただけると、放送させていただくJALも特色を出せますし、お客さまにも楽しんで見ていただけるのではないかと思っています。『スニーカータイムズ』第2弾や、ジーンズの番組などをぜひ作っていただきたいですね(笑)。

高橋 ジーンズはまた、30代、40代のビジネスマン層に刺さりそうですね(笑)。

齊木 そういった"刺さるもの"を作っていただけたらなと思っています。一視聴者としても楽しみに待っています。

高橋 ありがたいです。

──高橋さんのお仕事に対する「偏愛」やこだわりについてお聞かせいただけますか?

高橋 好きなものに対するこだわりですね。『スニーカータイムズ』を作っているときには、常に「自分が好きなものを世に送り出したい」と思っていましたから。その思いが仕事に対しての大きなパワーにもなると思いますし......もちろん、これまで携わってきた仕事も楽しいものばかりでしたが、『スニーカータイムズ』のように自分の好きなものを番組として具現化できると、より楽しく仕事ができるんだと実感しました。

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──今後、取り組んでみたい企画などはありますか?

高橋 筋トレが好きなので、筋トレの企画を出しましたが......あえなく撃沈しました(笑)。2回出しましたが、ダメでしたね。でも、今後もめげずに色々な企画を出していきたいと思っています。

──齊木さんにも同じ質問をさせていただきたいのですが、お仕事に対する「偏愛」やこだわり、大切にされていることについて教えてください。

齊木 「思いをきちんと出せるように」と思っています。先ほどのレギュレーションの話ではありませんが、機械的にやろうとすると仕事って意外と簡単に進んでしまうんですね。でも、あえて「自分はこうしたい」とか「JALとしては、こうしたほうがいいんじゃないか」と、きちんと考えて仕事をしたいと思っているんです。

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当然のことですが、私は「お客さまに喜んでいただきたい」と真剣に思っていて、そのためには「良いものをお届けしたい」と思っていますので......その際、自分の思いが入っていないと突破できないと思うんです。先ほどお二人がおっしゃっていた「番組のセットを自作した」というのもそうですが、強い思いがあるからこそ突破できることがあると思うんです。

ですから、まずは"自分の思い"をきちんと乗せるようにというのは、常に心がけていますね。例えば、WOWOWさんの『社長室の冬』というドラマを国内線に入れているのですが......やっぱり面白い作品なんです。WOWOWさんからいただいている番組リストから「金融がウケるから、これにしようか」という視点で選ぶこともできますが、実際に見ると「三上博史さん、久しぶりに見たけどやっぱりいい役者だなあ」と思うんですよね(笑)。もちろん先ほど申し上げたようなマーケティング的な視点から候補を選びますが、最終的には自分自身が心から「面白い」と思ったものを選びたいと思うんです。

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取材・文/とみたまい 撮影/祭貴義道  制作/iD inc.

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