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WOWOW×パラリンアート コラボレーションの舞台裏! 単なる支援を超えて障がい者のアートをビジネスにすることの重要性

WOWOW×パラリンアート コラボレーションの舞台裏! 単なる支援を超えて障がい者のアートをビジネスにすることの重要性

一般社団法人障がい者自立推進機構 パラリンアート運営事務局 矢島真理子さん/人事総務局広報部 渡邉数馬

「パラリンアート」を知っていますか? “パラ”と“アート”という言葉の組み合わせから、障がい者のアートに関する活動だと想像しつつも、詳しくは知らないという人がほとんどではないでしょうか。パラリンアートとは、障がい者によるアートを単なる障がい者支援の枠組みを超えて、ビジネスとして成立させ、彼らの経済的な自立を目指す活動です。

WOWOWでは「一般社団法人障がい者自立推進機構」が運営するパラリンアートとの協業により、社内の自動販売機、観葉植物のプラントのデザインにパラリンアートを導入したほか、今年の社外向けグリーティングカードのデザインにもパラリンアートを採用しました。今回、パラリンアート運営事務局の矢島真理子さんとWOWOW広報部の渡邊数馬ユニットリーダーとの対談インタビューを実施! このコラボレーションの狙いや意義、2020年、そして“その後”に向けた展望について話を聞きました。

障がい者ではなくひとりのアーティスト! パラリンアートと『WHO I AM』が共有するフィロソフィ 

――最初にパラリンアート運営事務局のお仕事について教えてください。

矢島 私たちは、障がい者のアーティストさんと企業様がひとつのチームとなって活動をしていくためのお手伝いをする団体です。具体的には、障がい者手帳をお持ちのアーティストさんに自分の作品を事務局に登録していただき、私たちはその版権や報酬の管理をしています。

またアーティストさんに代わって、企業様に「この絵はいかがですか?」など、絵画やデザインの使用をご提案させていただくこともしており、実際に企業様からいただいた対価から、原価などを引いた利益の50%をアーティストさんにお支払いしています。

――登録されているアーティストさんは、知的障がい者、精神障がい者の方が多いのでしょうか?

矢島 登録いただいているアーティストさんのほとんどは知的障がい者、精神障がい者の方ですが、基本的に障害の種別や重度、また絵画の出来栄えなどに関係なく、医師の診断書または障がい者手帳をお持ちの方であれば、どなたでも作品をご登録いただけます。絵画の写真データまたはスキャンデータを私たちのホームページにアップしていただく形になります。

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――登録いただいた方たちに対し、"障がい者"ではなく、あくまでも"アーティスト"として接し、この事業をビジネスとして成立させることを目的とされていると伺いました。

矢島 そうです。障がい者支援ではなく、あくまでも絵画デザインを扱ったビジネスとして進めていこうとしています。実際の企業様との取り組みとしましては、損害保険ジャパン日本興和様との取り組みとして「SOMPO パラリンアートカップ」の開催などがあります。スポーツをテーマにした絵画を応募するコンテストなんですが、今年で3回目を迎えました。

――各界の錚々たる面々がスペシャルサポーターを務めていらっしゃるんですね。

矢島 サッカーの香川真司選手をはじめ、いろんな方々にご協力をいただいています。

――2020年に東京でオリンピック、パラリンピックが開催されるということも、この事業に大きな影響を与えているのでしょうか?

矢島 やはり大きいですね。オリンピック、パラリンピックの開催を控えて「パラリンアートの事業に参加したい」とおっしゃる企業様も多いです。いま、障がい者雇用が国全体で大きなテーマになっていて、社員45.5名以上の企業には障がい者の雇用が義務付けられていますが、そこまでの規模に達していなくとも「うちでもなにか社会貢献はできないか?」と模索されている企業様も多いです。

――WOWOWさんは今回、どのような経緯でパラリンアートとのコラボレーションをすることになったのでしょうか?

渡邉 弊社のコーポレートサイトには、様々な企業や団体から1日に数件は「こんなことをしています」「こんなことしてみませんか?」といった問い合わせが届くんです。その中でパラリンアートの事務局さんからも「こんな事業をしています」というご連絡をいただいたんです。ちょうどWOWOWとして2020年に向けて『WHO I AM』という世界最高峰のパラアスリートたちのドキュメンタリー番組を2016年から展開していたこともあり事務局のサイトを詳しく拝見したら、本当にいろんなことをされていたんですよね。

whos3.jpg2016年から2020年まで5年にわたり世界最高峰のパラアスリートを紹介する「WHO I AM」

その日のうちに、事務局に連絡をいたしまして、後日、弊社までお越しいただいていろんな話や活動のご説明をしてもらいまして「ぜひ何かやりましょう!」と。

先ほどの矢島さんの言葉にもありましたが、単純な「支援」ではなく、彼らの作品をアートとして活用し、ビジネスとして成立させようと取り組まれているのが素晴らしいなと思いました。『WHO I AM』では、パラリンピアンたちを障がい者としてではなく、1人のトップアスリートとして捉えており、彼らを自立しリスペクトを受ける"輝く個性"として描くことを番組のフィロソフィー(哲学)として取り組んでいますが、そうした姿勢につながるものがあるんじゃないかと思いました。

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――まさにアートの世界における『WHO I AM』とも言える活動ですね。

渡邉 作品を制作し、その価値が認められることで利益が生まれる。それは素晴らしいんですが、その仕組みを確立させるまでが、ものすごく大変なことだと思います。そういう大掛かりなシステム自体から作ろうとしているのが素晴らしいですよね。そこでぜひ我が社としても「何かしたい!」と感じまして、まずは広報部としてどんなことができるかを考えました。

そこで思いついたのが年に数回、海外も含めた社外の取引先にお送りするグリーティングカードでした。これまでは、デザイン会社に発注していたんですが、そこでアートを活用できるんじゃないかと。ただ、その時はグリーティングカードの制作と時期が合わなかったんです。でも、それ以外にも社内のものにアートを取り入れるというのはいいアイディアなんじゃないかと思って、総務部とも話し合って、自動販売機やプランターにパラリンアートを取り入れることを決めたんです。そしてこの冬、満を持してグリーティングカードのほうも完成いたしました。

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自動販売機のパラリンアート

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プランターのカバーにもパラリンアートが

――今回のグリーティングカードのデザインの採用決定に際してはどのような話し合いを?

渡邉 最初にいくつか事務局からおすすめの作品を送っていただいたんです。WEB上でも作品を検索できるので、そこでクリスマスシーズンに合うものを選んだんですが、非常にクオリティの高い作品が多くて...。


※実際の業務にあたった広報担当の松場さんによると「2千点以上に半日かけて目を通して、いくつかの候補をピックアップしました(笑)」とのこと。

小学生から70代まで! 誰もが自由に登録できるのがパラリンアートの魅力

――パラリンアートに登録されているアーティストさんは何名くらいいらっしゃるんですか?

矢島 約750名です。おひとりにつき20点まで登録できるようになっています。年齢層も小学生から60代、70代の方まで幅広くいらっしゃいます。

渡邉 実際、今回のデザインに採用させていただいたアーティストさんは60代の方ですし、その前に候補に挙がったデザインは、原画が残っておらず、実現しなかったんですが、その絵は小学生のアーティストによるものでした。(年齢で選んだのではなく)偶然なんですが。

矢島 必ずしもアーティストさんが年齢を登録されているわけではないので。

――企業が絵画を使用する際、既に登録されているものから選ぶだけでなく、新作をお願いすることも可能なんですか?

矢島 新作の描き下ろしができるアーティストもいます。公募のような形で依頼をいただくことも可能です。実際、東急プラザ銀座の「HINKA RINKA」さんとの共同プロジェクトで、複数のアーティストが売り場の壁画のデザインをするという取り組みも行なっています。

渡邉 企業側にとってありがたいのは、グリーティングカードや年賀状の制作、社内の植木のレンタルといったことは、普段から行なっている業務だということ。たとえパラリンアートと関係なかったとしても、広報部や総務部の仕事として予算を投じて取り組む業務なんですよね。そこでパラリンアートさんと組むことによって、絵画を多くの人の目に触れさせることができるし、ビジネスとしても成り立たせることができる。企業の通常業務に組み込む形で、障がい者の方に"報酬"という形で還元できるシステムというのが本当に素晴らしいと思います。

完成したグリーティングカードに「社会貢献活動と関係なくカッコいい!」の声

――実際に今回、お仕事をご一緒されてみていかがでしたか? また完成したグリーティングカードの感想や社内での反響などについても教えてください。

広報担当・松場:広報として、CSRの観点からもカードの完成後「こういう目的でこういうものを作りました」というのを社内報のような形で報告したんですが「いいね!」という反応やコメントがすごく多く寄せられました。

「純粋にデザインがいいね」「社会貢献活動とは関係なくカッコいい!」という声も多かったですし「こういう活動をもっと進めてほしい」といった声も寄せられて、非常に前向きに受け止められているなという印象を受けました。

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渡邉 先ほども申し上げた『WHO I AM』のフィロソフィと全く同じで、純粋に「カッコいい」と言ってもらえるのがすごく嬉しいですね。まず何より、アートとして作品が素晴らしかったですし。

こういう活動への意識は、少しずつ変わっていくものだと常々思っています。やはり『WHO I AM』のような作品を社として作っていても、実際に携わっているチーム以外の意識をすぐに変えるというのはなかなか難しいものです。そうしたなかで言葉や文章だけでなく、こうやって実際のプロダクトを制作し社内の人間に触れてもらい、かつグリーティングカードとして活用してもらうことで、その先にいらっしゃる多くのコンテンツに携わる人々にも触れて頂けるということの意味は決して小さくないと思います。

――WOWOWさんは、グリーティングカードは以前から出されていたんですか?

渡邉 それこそ90年代からずっとですね。世界中のトップエンターテインメントをお届けしている放送局として、海外や外資系のエンターテインメント企業とのお付き合いが多いんです。

B to Bのやり取りで、海外や外資系の企業方々にこうやって視覚に訴えるものを届けることで「ウチもやってみようか」という広がりが出てくるかもしれない。そうなったら、嬉しいですね。今後、社内でも「うちの部署でも」という声が上がってきてくれればとも思います。

矢島 クリスマスっぽい作品をということでご提案させていただいたんですが、最初に完成したカードを見たときはびっくりしましたね。事務局でもすごく評判がいいです。

実はこれまで、こういう海外向けのグリーティングカードというのは作った経験がなかったんです。年賀状はあったんですが、年賀状だとどうしても「亥」とか具体的なデザインを求められがちなんですよね。今回のものは抽象的なデザインでタイトルも「自由」ですので、受け取った人が思い思いにいろんなことを感じていただけるんじゃないかと思います。

松場 過去にWOWOWで作ってきたカードも、暖炉のデザインだったり、雪の結晶のホログラムとか、わりと具体的な絵が多かったんですよね。実は抽象画を用いたものってあまりなくて、私たちにとっても今回の出会いで新たなチャレンジができたと思います。

BtoBからBtoCに  2020年のさらにその先へ!

――来年2019年、そして2020年以降に向けた新たな取り組みや目標などについてもお聞かせいただけますか?

矢島 いままで企業様向けの発信はずっとやってきて、実際に現在ではかなり多くの企業様に応援もしていただいているんですが、一方で個人の方のパラリンアートに関する認知はまだまだだという現状を実感しています。

私自身、前職は現在の仕事とは全く関係のない、物を売る仕事をしており、そこで同僚だった女性から誘われて、いまの仕事に移ってきたんですが、当時は恥ずかしながらパラリンアートについて何も知りませんでした。来年以降、BtoBだけでなくBtoCに向けた発信をしていけたらと思います。

ホームページで作品をご覧になった個人の方から「何かしたい」というご連絡をいただくことは増えていて、絵画の自宅へのレンタルなどをご提案させていただいてるんですが、サイズや値段が合わなかったりすることも多々ありまして。たとえばグッズやポストカード、トートバッグの販売など、物販を強化していき、そこでも「これカワイイね」「え? パラリンアートだったんだ? 知らない間に障害者の方の支援ができてたんだ!」という流れを作っていくことができたらと思います。

渡邉 WOWOWとしましても、今後を見据えてさらに何かご一緒にやれたらと思っています。『WHO I AM』は2020年の東京オリンピック、パラリンピックまで継続的に進んでいくプロジェクトですが、さらに「その後」をどうすべきか? という議論は既にあります。

入口は『WHO I AM』を通じてパラスポーツという形でしたが、アート分野に関しても、異なるアプローチでの社会貢献、『WHO I AM』のフィロソフィを受け継いだ活動を続けていけたらとプロジェクトチームでは議論を始めています。

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――WOWOWでは、2025年に向けたM-25の哲学として、仕事をする上での"偏愛"を掲げています。おふたりが、仕事をする上で大切にされていること、"偏愛"していることはどんなことでしょうか?

渡邉 仕事をする上で「できない」と「(やる)意味がない」とは言わないようにしていますね。効率的かどうかはともかく、「10」のうちのたった「1」でも意味があれば、やればいいんじゃないかって思うんです。今回の取り組みも、本当に小さな礫(つぶて)だと思いますが、その「1」を積み重ねていくことでいつか「10」や「100」になればいいなと思っています。

矢島 パラリンアートの事務局にはアーティストの担当(マネジメント)と営業担当(企業向け)があり、私は営業なんですけど、そっちだけでなくアーティストさんとの接点を大事にしたいというのはすごく思っています。

なかなかアーティストさんと直接、お会いする機会はないですし、まず企業様にお会いして話をしてという機会が大事ではあるんですが、欲張りつつもどちらもできるようになりたいなと(笑)。

――日本ではいまなお「芸術」と「ビジネス」は相容れないものという考えも根深いですし、その両者をつなぐ重要な立場にいらっしゃると思います。

矢島 すごく難しいところでもあるんですが、アーティストの新作を最初に見ることができる立場でもあるので、すごく楽しみにしています。企業様に採用いただくと、アーティストから事務局を通じて企業様にお礼の手紙を出すのですが、その際に事務局宛ての手紙を忍ばせてくださるアーティストさんもいるんです。そこで「初めて自分の絵を採用してもらえました」「おかげで画材を買えるようになりました」といった声をいただくこともあり、そういうときにこの仕事のやりがいを感じています!

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