2023.04.17

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第3回ノーバリアゲームズ開催! 国枝慎吾、西島秀俊らが「心をひとつに」チームメイトとともに奮戦!

第3回ノーバリアゲームズ開催! 国枝慎吾、西島秀俊らが「心をひとつに」チームメイトとともに奮戦!

WOWOWとIPC(国際パラリンピック委員会)との共同プロジェクトとして2016年にスタートしたドキュメンタリー「WHO I AM」シリーズ。同シリーズから誕生した、性別・年齢・国籍・障害の有無を問わず誰もが楽しめるユニバーサルスポーツイベント「ノーバリアゲームズ」が3月11日(土)、二子玉川ライズ 中央広場、スタジオ&ホールにて開催された。

2019年、2021年に続き、今回の開催では約80名が参加した。

パラリンピックで計4枚の金メダルを獲得し、パラアスリートとして初の国民栄誉賞を授与された国枝慎吾(元プロ車いすテニスプレーヤー)をはじめ、髙阪剛(総合格闘家)、北澤豪(元サッカー日本代表/日本障がい者サッカー連盟会長)、東尾理子(プロゴルファー)、小林幸一郎(パラクライミング世界王者)、亀海喜寛(ボクシング元OPBF東洋太平洋ウェルター級王者)、立石諒(元競泳日本代表/ロンドン五輪銅メダリスト)、豊島英(元車いすバスケットボール日本代表/パラリンピック銀メダリスト)らアスリートに加え、アイドルグループ「仮面女子」のメンバーとして活動を続けている猪狩ともか、フリーキャスターの平井理央など、各界から著名人も参戦! さらに「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM パラリンピック」のナビゲーター&ナレーターを務める西島秀俊もSPゲストとして参加し、会場は熱気に包まれた。

第3回ノーバリアゲームズ 集合写真

あいさつに立ったWOWOWの代表取締役 社長執行役員 田中 晃は、コロナ禍、そして東京2020オリンピック・パラリンピックの開催を経て、この第3回ノーバリアゲームズが開催されることの意義を強調。
「年齢、ジェンダー、国籍、障害の有無にかかわらず、誰もがいきいきと輝ける社会を目指して、このノーバリアゲームズをやりたいと思います。特に若い方たちや子どもたちに、未来の社会作りの先頭に立っていただきたいと願っています。皆さん、どうかノーバリアでインクルーシブ(包括的)な世界を作って、周りに見せつけてください!」と訴えた。

そして、第1回、2回に続き、司会を務めるのは、もちろんこの人、松岡修造! 登場するや、松岡さんは「みんなちがってみんないい! 心を一つに、ノーバリアゲームズ!」とスローガンを絶叫。「心のバリアが外れるとどうなるか? WHO I AM──自分自身が誰なのかというのを感じることができる! だからこそ、今日も本気でノーバリアゲームズ!」と熱い想いを口にし、参加者たちを鼓舞する。

参加ゲストたちもそれぞれに意気込みを語る。国民栄誉賞授与に対する、温かい祝福の拍手で迎えられた国枝さんは「引退して思うのは、人生、楽しんだ者が勝者です。なので今日は僕がいちばん楽しみます!」と笑顔で宣言した。

国枝慎吾さん挨拶

西島さんは、ほかの参加者たちと同じように、自身の呼び名を手書きしたネームプレートを着けて登場し「今日は"ヒデ"と呼んでください」とニッコリ。ノーバリアゲームズについて「ずっと参加したかったのでとてもうれしいです。アスリートじゃないので足を引っ張ることがないように......(笑)、全力で頑張ります。いちばん楽しんだ人が優勝なので、とにかく楽しみましょう!」と呼びかけた。

西島秀俊さん挨拶

そして、競技開始を前に「開会宣言」が行なわれたが、司会の松岡さんに促され、西島さんが務めることに。松岡さんに「普通は1回、練習するけど(今回は)練習しません。よろしくお願いします」とあおられ、西島さんは「行くぞー! みんなちがってみんないい! ノーバリアゲームズ!」と開会を宣言し会場を沸かせた。

競技1:みんなで完成させよう!巨大パズル

「みんなで完成させよう!巨大パズル」の様子

いよいよピンク、ブルー、イエロー、グリーンの4チーム対抗の競技がスタート! 最初に行なわれたのは、参加者がそれぞれ「ノーバリア宣言」を書いたボードがピースとなっている巨大パズルを完成させる競技。

2人1組の1ペアずつがスタートし、コース上に散らばったピースをひとり1枚(1ペアで2枚)を拾い、その先の盤面に貼り付け、再びスタート地点に戻り、次のペアにバトンタッチしていくというリレー形式で、全20ピースのパズルを早く完成させたチームが勝利となる。

「みんなで完成させよう!巨大パズル」の様子

ただし、ピースの中には、正しいピース以外の "おじゃまピース"も交ざっており、いかにおじゃまピースを取り除きながら、パズルを完成させるかが重要になる。

なお、各チームは競技前にサイコロを振り、出た目によっておじゃまピースの枚数が決まるなど、さまざまな条件が付与されることに......。

「みんなで完成させよう!巨大パズル」の様子

合図とともに各チームの第1走者のペアが一斉にスタートし、応援の掛け声が飛び交う。最初からじっくりとパズルの絵柄を整えていくチーム、スピード重視で壁にどんどんピースを貼り付けていくチームなど、それぞれ戦略が異なり、チームごとの個性が見られる。

「みんなで完成させよう!巨大パズル」の様子

だが、松岡さんが「これは相当、難しい!」とうなったように、おじゃまピースが交じった状態で正しいピースを選び、さらにパズルとして完成させていくという作業はかなりの難易度。ただし、状況に合わせて、途中で新たなルールやヒントを加えて、より楽しめるようにと工夫していくのも、このノーバリアゲームズの特徴である。
この巨大パズルでは、途中で各チームに完成版の全体図の紙が配られたことで、競技スピードが一気にアップ! 全チームが当初、設定されていた15分以内にパズルをみごとに完成させた。

「みんなで完成させよう!巨大パズル」の様子

競技2:みんなで協力しよう!ふくわらい

「みんなで協力しよう!ふくわらい」の様子

続いての競技は、「ふくわらい」。
こちらも2人1組のペアで、全10ピース(目、鼻、口、眉毛、耳、ハチマキ、吹き出しのコメント)の松岡さんの顔を完成させるというもの。ふくわらいということで、ペアのどちらかは目隠しをするというルール。スピードを競うが、さらに松岡さんの独断と偏見による「芸術点」も加えられることになる。

「みんなで協力しよう!ふくわらい」の様子

競技が始まると「もっと上! 上!」「早く!」など声援が送られる。
くじ引きでピンクチームに加わった西島さんは、女の子とペアを組んで奮戦! パラリンピック金メダリスト、生涯グランドスラムなど数々の快挙を達成した国枝さんが、アイマスクをしてふくわらいに挑むという、めったに見られない光景も見られた。
しかし、完成しかけたピースをすべて落としてしまうというまさかのハプニングも......。
それぞれのチームの個性と工夫が光る松岡さんの顔が完成した。

「みんなで協力しよう!ふくわらい」の様子

仕事の合間を縫って参加していた西島さんとは、この第2競技をもってお別れとなったが「本当に楽しかったです。また参加したいと思います」と語った。
松岡さんにあおられ、最後も「行くぞー! みんなちがってみんないい! ノーバリアゲームズ!」と宣言し、温かい拍手に見送られて会場を後にした。

西島秀俊さん挨拶

競技3:みんなで競争!バランス玉入れ

「みんなで競争!バランス玉入れ」の様子

続いて行なわれたのは玉入れだが、単なる玉入れではなく、お皿や帽子、ミニテニスラケットの上にボールを乗せて運んだり、げたのような"ぱかぽこぽっくり"を履いてボールを運んだり、制限時間内にできるだけ多くのボールをカゴに入れるという「バランス玉入れ」。

「みんなで競争!バランス玉入れ」の様子

もし、運ぶ途中でボールを落としてしまった場合、カゴに一度タッチしてから、スタート地点に戻らないといけないという過酷なルールだった。スピードを重視するか、落とさずに丁寧にボールを運ぶか? 各チームの戦略が問われることになる。

「みんなで競争!バランス玉入れ」の様子

ちなみに、この日の会場は二子玉川のショッピングモールの広場ということで、多くの道行く人々が興味深そうにゲームを観戦していたが、この玉入れは一般の人々の飛び入りの参加もOK! 新たに計15人が各チームに加わった。

「みんなで競争!バランス玉入れ」の様子

参加者たちは、巧みにバランスを取りながら、ボールをカゴへと運んでいく。「ふくわらい」でピースを落とすという失態を犯してしまった国枝さんは、名誉挽回とばかり華麗なチェアワークを披露してボールをカゴへ。「なかなか難しかったですけど、最強のチェアワークがあるので(笑)」と笑顔を見せていた。

「みんなで競争!バランス玉入れ」の様子

競技4:みんなで投げよう!陣取り合戦

「みんなで投げよう!陣取り合戦」の様子

四つ目の競技は「陣取り合戦」。チームごとに陣地に分かれて、自分の陣地内にある大小さまざまな形の計100個のボールをほかの3チームの陣地内に放り込み、最終的に自分の陣地の中のボールの数が少ないチームが勝ちとなる。

スタートの合図とともに拾ってはボールを相手陣地に放り込むということを繰り返すが、大人も子どもも入り乱れてカオス状態! この競技から参戦した元サッカー日本代表の北澤さんは得意のキックで次々とボールを相手陣地内に蹴り出していくが、あまりの激しさにゲームを終えると「これはフィジカルトレーニングですね......」とぐったり。

「みんなで投げよう!陣取り合戦」の様子

「仮面女子」の猪狩さんも車いすを操りながらボールを拾っては投げていたが「こんなにハシャいだのはいつ以来か......。子どもたちも白熱していました!」と汗びっしょりになりながらも満面の笑みを浮かべていた。

「みんなで投げよう!陣取り合戦」の様子

競技5:みんなで走ろう!大玉障害物リレー

「みんなで走ろう!大玉障害物リレー」の様子

そして、ゲームはいよいよ佳境! 最後の競技である「大玉障害物リレー」を迎えた。2人1組で大玉を転がすというものだが、途中で"じゃんけんマン"とじゃんけんして勝たなくてはならなかったり、シーソーのような"ぎったんばっこん"を通ったりと、いくつもの難関が参加者の前に立ちはだかる。

「みんなで走ろう!大玉障害物リレー」の様子

ちなみに、この競技の前にも各チームがサイコロを振り、出た目によってさまざまな条件が付与されたが、なんと3チームに「ゴリラのマネをしながら競技に参加しないといけない」という奇妙な条件が......! スタート直後から白熱したレースが繰り広げられたが、実況アナウンサーからは時折「皆さん、ちゃんとゴリラを思い出してください(笑)!」と警告も。

「みんなで走ろう!大玉障害物リレー」の様子

途中、エキサイトした松岡さんが、"じゃんけんマン"になって参加者たちの前に立ちはだかる一幕も。4チームが僅差でゴールする大混戦となったが、北澤さんからは思わず「VARお願いします!」というアピールも飛び出した。

結果発表

結果発表の様子

全競技を終えて、参加者たちは、充実した表情。結果発表を前に、参加ゲストがそれぞれ選んだ"個人賞"が発表された。そしていよいよ結果発表。優勝はグリーンチーム、準優勝はブルー、3位にイエロー、そしてピンクと続いた。

結果発表の様子

2019年の第1回大会から参加するも、これまで一度も優勝経験がなかった髙阪さんは、涙を流しながらガッツポーズ!
「勝った負けたはもちろんありますが、人と人とが気持ちを通わせる──それは足し算じゃなく掛け算なんだと心が熱くなりました」と語り、同じくグリーンチームの小林さんは「楽しい時間にはバリアがないというのを実感できた一日でした」とうれしそうな表情を見せた。

結果発表の様子

東尾さんは「充実感と疲労感はいちばんです」とニッコリ。
北澤さんも「競い合いながら、互いをリスペクトできるというのが大事なマインドだと思います。子どもたちからそれを感じています」とうなずいた。
初参加となった猪狩さんは「みんなちがってみんないいということで、身体の状態であったり、それぞれ違う部分のあるみんなが集いましたが、協力し合い、できないところをサポートし合いながら、競う時間が楽しかったです。次も参加したいし、その時は、別のチームの皆さんともたくさんお話しできたらうれしいです」と語った。

結果発表の様子

結果発表の様子

国枝さんは「僕も試合で負けたことはたくさんありますが、勝っても負けても、全力を尽くせば、それはすばらしいこと。今日はみんな、全力を尽くしたので、負けても気持ち良いです」と健闘をたたえ合う。
そして「僕自身も楽しめました。健常者もみんなそれぞれ違うし、それが社会であり世界。そういうことを、みんなが一体となって一つのことをやることで、ゲームを通して体験できて、今日一日、本当にうれしかったです」と語り、会場は温かい拍手に包まれ、第3回ノーバリアゲームズは幕を閉じた。


「WHO I AMはまさにノーバリア」

最後に、参加ゲストとMCの松岡さんにイベントの感想を聞いた。

西島秀俊さん:最高の天気で、最高の気分です。初参加でしたが、「みんなちがってみんないい」ということが当たり前になってきているなと感じました。みんな当たり前のように一緒にゲームをしていましたし、「みんなちがってみんないい」ということをわざわざ言わず、でも、普通に進んでいくことがいちばんいい。自然な形なのかなとすごく感じました。

立石諒さん:めちゃくちゃいいイベントだったと思います。みんな、とても一生懸命に頑張っていましたし、健常者とか障がい者とか関係なく、接することができました。こういう機会はなかなかないので、今回のイベントはうれしいですね。もっと各地でイベントが広がっていったら面白いのではないかなと思います。

北澤豪さん:以前もノーバリアゲームズには参加させてもらっています。心のどこかでバリアフリーではないのかなという想いがある中で、そのバリアをどう取り除いていけるのかを考える機会は、自分でも必要としていました。そういう場をいただいて良かったです。

東尾理子さん:今回がもしかしたらいちばんの充実感。体の充実感があるかもしれないです(笑)。車いすを押させていただいた時に「どれぐらいスピードを出していいのかな」、「これは曲がっていいのかな」という想いがありましたが、皆さんと普通に接しさせていただくことで「普通に行くよ」って、できるようになりました。本当にノーバリアゲームズのおかげです。自分の中でも成長していますし、どんどんバリアが外れてきています。ありがとうございます。

髙阪剛さん:毎回、参加をさせていただいていますが、回を重ねるごとにすごく充実している感覚が自分の中にあります。みんなで力を合わせる部分や、チームは分かれているけど、一つの輪になっている。自分では不思議な、初めての感覚です。格闘技という、相手のことを思いやることや尊重する気持ちがないと成立しない中で生きてきましたが、さらに新しい感覚が生まれている感じがあります。本当にすばらしい仲間たちだという気持ちがそれぞれの中に生まれるからだと思いますし、今後もできるだけ参加したいですね。

亀海喜寛さん:本当に夢中になって楽しめたイベントでした。シンプルにフラットな状況で、いろんな人たちが集まってやることはなかなかありません。自分の経験になりますし、一生懸命、物事をみんなで力を合わせてやると夢中になって楽しめるということも再確認しました。これからもそういう気持ちを持って、真っすぐ進んでいきたいと思います。

猪狩ともかさん:めちゃくちゃ楽しかったです。いろいろな人たちがいて、苦手なことをみんなが補い合って協力していくのは尊くて、いい時間だなと思いました。障害があるからといってまったく違う人種じゃないんだよということを感じてもらえたらいいですよね。みんな同じ人間。ただちょっと身体や心の特徴が違うということで「それは一つの特徴なんだよ」ということを感じて、身近な存在に思ってもらえたらなと思います。

平井理央さん:こんなに楽しいと思わなかったです。最初から子どもたちが元気に話しかけてくれて、自分のバリアが壊れる感じと言うのかな。純粋にゲームに熱くなって、悔しがり、喜び、夢中で遊んでいました。パラアスリートにも取材をしてきましたが、もっと、いろいろなバリアを取って、さまざまな方にインタビューをしていけたらいいなと思います。

小林幸一郎さん:最初に参加したのは、第1回でした。その後、コロナ禍を乗り越えて、(今日は)オープンで自由な感じでしたね。本当にバリアのない感じが実感できる空気が戻ってきた感じがして、とてもいい一日でした。「みんなちがってみんないい」という言葉にあるように、来ている人たち、見ている人たち、参加している人たち。みんなが多様であることに力があると思うので、直接、見てもらうこと。たくさんの人が集うところにも力があって、ネットなどを通じて多くの方に伝えられることもいいと思います。

国枝慎吾さん:コンセプトが、この場所にすべて詰まっているなと思います。僕自身、みんなそれぞれ違うんだから、ひとくくりに「健常者も障がい者も」と思うのではなく、全員が違う個。その中の社会であると、ずっと思っています。このイベントはそれを最も実現して、体現できる場所なんじゃないかなと思いました。共生社会という言葉は、インタビューでもよく聞かれるんですね。でも、僕自身もなんと答えたらいいのか、迷う場面でもあるんです。今日のこの場所に来て、そういった言葉すら要らないんじゃないかなと思いましたし、それが理想だと感じました。

豊島英さん:優勝できてうれしいです。笑顔が多いのはもちろんのこと、感動して泣いていた子もいましたし、怒っていた子もいました。そういった感情をこの場で出してくれたこと。それが素敵だなと思いましたし、そういう状況を作れたことが良かったなと思います。

松岡修造さん:ノーバリアゲームズは、少しでもバリアを外すこと。僕もそうですが、バリアを作るのは自分自身。それをどうしたら外せるかは、本気になったり、笑顔でいたりすることが大事。そうすると自分らしくなっていけます。「WHO I AM」は、まさにノーバリア。いつも自然と笑顔になれる方向性につながってほしいなと思います。