2018.03.23

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NEXT FRONTIER~キーパーソンに聞いてみた!【セカイ系バラエティ 僕声】

ネット事業推進部 大原康明

NEXT FRONTIER~キーパーソンに聞いてみた!【セカイ系バラエティ 僕声】

現在進行形で進んでいるWOWOWグループの新たなサービス・ビジネス・企画を紹介する不定期連載「NEXTFRONTIER~その先の未来へ!」。現在進行形の外部連動型プロジェクト「セカイ系バラエティ 僕声」(以下「僕声」)について、その全貌を「キーパーソンに聞いてみた!!」(初回掲載日2018年3月23日)

このバラエティ番組で世界を救えるのか。

人気声優陣がドラマや、コント、歌など
さまざまな映像表現と笑いに挑む異色のバラエティ番組。
声優たちの最大の武器である「声」によって
「世界を救う」というSF的テーマのもと、
ドラマやコント、歌をはじめとする、
さまざまな映像表現で笑いを巻き起こす――。

セカイ系バラエティ 僕声

僕声プロジェクトとは?

今回は「声優」というコアファンのいるジャンルで、外部連携、WEB展開、イベント、物販展開など放送のみならず多角的な展開でWEB会員の獲得はもちろん、新たなマネタイズにも挑む「僕声プロジェクト」について、キーパーソンのネット事業推進部大原さんにお話しを聞きました。

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──2月25日のイベント、盛り上がったようですね?

大原 キャストの方々の熱演、『僕声』を観て、会場に来てくださったファンの方々の熱量、住田監督をはじめスタッフ陣の想いが重なり、昼夜の2公演ともに、記憶に残るイベントになりました。私も何度か山野ホールで行われたイベントにお邪魔しているのですが、これほどたくさんの笑い声に包まれるのは初めての経験でした。

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──中味はどんな感じだったんですか?

大原 リアルな舞台で番組を具現化するというのが今回のイベントのコンセプトでした。歌や朗読劇やトークやコントなど盛りだくさんでやらしてもらいました。この企画に取り組むにあたり3年くらいかけて様々な声優さんやアニメのイベントに足を運び、勉強させてもらいましたが、朗読劇や声優さん同士のゲームやフリートークが中心のものが多いと感じました。「僕声」らしさってなんだろう、というものを監督やスタッフ陣と一緒に追求し、セットの作り込みや細かなVTR出し、リアルなお芝居や歌などを盛り込むことで、今までにないような"お祭り感"や"カオス感"のあるイベントをお届けすることができたのではないか、と感じています 。当然、色々と実現させようとすると、声優の皆さんへの負荷や、セットの費用など様々な課題も出てきますが、番組があったおかげで、世界観の共有や番組セットの再活用など、工夫することで乗り越えることができました。

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企画誕生の経緯について

──イベントなど2次展開については後程また聞きたいと思います。時間をさかのぼって、そもそもの企画の経緯を教えて下さい。

大原 2016年の夏にネット事業推進部(現・デジタルマーケティング部)という部署が立ち上がり、それまで制作部でプロデューサーを務めていましたが、異動となりました。
ネット事業推進部の仕事を簡単に説明すると、登録無料の「WOWOW WEB会員」を獲得すべく、その為に各種のコミュニティを形成し、新規顧客との接点及び既加入者との放送以外の接点の拡大を目指す感じです。コンテンツ軸、サービス軸の様々なレイヤー毎に仕掛けを行い、そのうえで成長したコミュニティに対し、新たなサービスや新規事業などビジネス展開を図り、テレビ会員を支える潜在顧客層を生み出していくことが最終目標となります 。

──なんでもありだし、0から立ち上げるのにはエネルギーがかかりますね

大原 ネット事業推進部の現状の取り組みは、当時大きく2つに分けることができました。1つ目は、既存のコンテンツ・放送と紐づいたコミュニティ化で、現状でいうとテニスデイリーや海外ドラマナビなどWOWOWのメインジャンルのポータルサイトでの展開がメインの取り組みとなっています。放送接点では50-60代中心のテニスですが、テニスデイリーでは20-30代がメイン利用層なので、新規接点という意味ではうまく機能しているのかなと思います。

2つ目が、若年層ユーザーのコミュニティ化です。「MAN WITH A MISSION」とコラボ展開を行ったミレニアルズプロジェクトを思い出して頂けるとわかりやすいかと思います。今回の「僕声」の取り組みはこちらになるかと思います。

──初めからアニメに興味があったんですか?

大原 アニメには、興味がありましたし、その過程で漠然と声優さんを意識するようになっていきました。我々の世代は、特にアニメや実写といったジャンルの垣根にこだわっていませんし、いわゆる"サブカル"という意識もあまりないのではないでしょうか。
やがて、WOWOWに入社し、様々な人と交流するなかで、声優を取り巻く世界に、自分が思っていた以上に「熱量」があることを知り、可能性があるのではないかと思っていたところ、制作部で「脇役目線~主客逆転!教訓体感アニメ~」という番組に取り組むことになりました。
いわゆる「昔話」を脇役という視点から再構築するという点が切り口のアニメバラエティですが、そのアニメに登場する名脇役たちの声を浪川大輔さん、梶裕貴さんといった業界を牽引する人気声優の方に演じていただくことができました。その後、交流なども含め声優の方々が持つ力の素晴らしさ実感していたところもあり、約3年かけて企画を練り込み、今回の「僕声」が成立を見ました 。

180323_bokukoe_04.jpg 「大人番組リーグ 脇役目線」

GYAO!との協業について

──原点は「脇役目線」だったんですね!とはいえサブカルチャー的な文脈に位置するジャンルかなと思います。そのあたり苦労は?

大原 もちろん、苦労もありました。これまでWOWOWは声優さんにアフレコや吹替えでお世話になることはありましたが、ひとつのジャンルとして向き合うことがありませんでした。我々の世代と、当然、上の世代では、「アニメ」「ゲーム」「声優」というワードに対する感じ方も考え方も異なります。そのマインドセットを改めるために、まずは、とにかくデータ探しに奔走しました。市場調査資料を漁り、声優を巡る大きな潮流や可能性を感覚ではなく実数として伝えられるような企画書を作り込みました。
また企画の前提として、WOWOW単独での展開は考えておらず、より大きく広げるために企画の根本から乗ってくれ、かつ媒体力のあるパートナー探しにも注力しました。母体である「Yahoo!」の媒体力があり、月額課金制の「Hulu」や「Netflix」などと異なり、無料配信型で若年層も気軽に楽しむことができる「GYAO!」さんがパートナー候補としてうってつけだという結論に達し、こちらからアプローチをいたしました。

「GYAO!」さんサイドとしても、もともとアニメやオリジナルコンテンツの強化を図っていたタイミングでしたので、WOWOWの制作力とコンテンツの目利き力と組むことで、一線を画したクオリティのオリジナル作品を作りたいという想いもあり、トントン拍子に共同制作が決まりました。
出資比率も同率(45%ずつ)の2社ですが、WOWOWは作りのクオリティの担保を、「GYAO!」さんは、やはり「Yahoo!」をはじめとするWEBメディアを活用したWEBプロモーションを大きくグリップすることでシナジーを出す形となりました。

──かたや放送、かたや配信ということでウィンドウをどう展開していったんですか?

大原 「僕声」自体は全5話で展開する形ですが、宣伝リーチを考え、まずは「GYAO!」での配信を優先的に行いました。WOWOWという名前が入っていると若い方からは「有料なんじゃないか?」と思われてしまう可能性があったので、まず無料で観ることができる「GYAO!」から開始することで接点の拡大を図りました。

5話シリーズの前編にあたる1~3話を「GYAO!」で先行配信し、リーチを広げたうえで、後編の2話を登録無料のWOWOWのWEB会員向けに先出し配信する形で、WOWOWへの誘導も狙いました。ちなみに「GYAO!」における先行配信期間中はメイキング動画をWEB会員登録が必要な形でWOWOWの番組特設サイトにて独占配信し、WOWOWのWEB会員登録を促進しました。

──WOWOWでの放送はどんな展開でしたか?

大原 今回は配信がメインの展開ですが、WOWOWでの放送も大きなファクターの一つです。
やはり放送がある前提だとプロモーション、キャスティング、世界観の広がり...と展開の厚みが違ってきます。WOWOWでの放送はWEBでの公開が一巡した後、2月6日に全5話一挙放送という形をとりました。こうした配信・放送の展開はもちろん軸となるのですが、プロジェクトとしては配信・放送をスタートに、コミュニティを形成し、そのコミュニティに対し、イベントやグッズ販売等まで、世界を広げて行こう!と立ち上げ段階から先々まで見据えて全体設計を行いました。

──GYAO!側の反応はどうでした。

大原 まずは新しさのあるオリジナルコンテンツを配信できたことを喜んでくれました。「GYAO!」さんはYahoo!からの流入が多いということもあり、日本の人口動態と同様のユーザー構成比率と伺っていましたが、今回の取り組みで今までにない若い層の新規ユーザーを誘導できたことに手ごたえを感じていただけたとのことでした

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「僕声」番組制作の裏側

──視聴者の構成は?

大原 95%が女性で、18-30歳前半がメインのお客様となります。イベントに至ってはもう少し女性のお客様が多かったように記憶しています。

──同様の番組・イベントは結構ありますが差別化への取り組みは?

大原 長い時間をかけて声優の皆様とコミュニケーションさせていただく機会を通じ、声優さん自身もいろんな想いを抱えていらっしゃることに気付いたんです。声優さんとしてのお仕事に真摯に向き合う一方で、歌や舞台、映像のお芝居など、新たな活躍の場を探したいという、想いです。WOWOWはアニメやゲームなど、普段声優の皆さんが慣れ親しんでいるフィールドに何か新たな場をご提供することはすぐにはできないかも知れませんが、オリジナル作品制作で培ったネットワークや経験を活用することで、"普段のお仕事とは全く異なるジャンルのクリエイターとの出会い"をご提供できるのではないか、と思いました。そして、ジャンルの違い、クリエイターの違いが、既存の取り組みとは全く異なるエッセンスになる、という確信がありました。

そこで、今回「僕声」をスタートさせるにあたって、まずはトップクリエイターの方々に打診することに最優先で取り掛かりました。
監督をオファーしたのは「戦国鍋TV」や「架空OL日記」など独特の世界観やシチュエーションコメディにその才をみせる住田崇監督です。そして作家には「ゴッドタン」のオークラさんや「ウレロ」シリーズの土屋亮一さんなど、屈指の作家陣に加わっていただくことができました。 このメンバーならジャンルの垣根を飛び越えたを全く新しいものを作れるのではとオファーしましたが、結果としては大成功でした。
声優さんや所属事務所には、企画内容だけにとどまらず、クリエイター陣のお名前も含めて、オファーをさせていただきました。その結果、たくさんの方々から前向きなお返事をいただくことができました。余談ですが、「脇役目線」は「戦国鍋TV」にもインスピレーションを受けながら制作した一面もありましたので、巡り巡って不思議なご縁を感じています。

──キャスティングの狙いは?

大原 人気、というのももちろん無視してはならない要素ではありますが、番組としては、声優としての実力、素晴らしさをきっちり発揮していただきたいという思いが強くありました。そこで、声優カルチャーに詳しい制作部の飯干プロデューサーにも協力を得て、人気、実力とも申し分なく、そして何より、今回のコンセプトに共感していただけるであろう方々に声をかけました。

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──番組を作るにあたって心掛けた点は

大原 そもそもコメディというジャンルはWOWOWのオリジナルでは希少なものなので、かなり試行錯誤しながらでした。そんな中でも声優さんを全面に出すコンテンツなのでやはり「なぜ声優さんが取り組んでいるのだろう」という部分にこだわりを持ち続けて取り組みました。
たとえばドラマシーンについては声優さんの技量を活かすことができるモノローグを多用するとか、コントシーンでは手紙の朗読をはじめ、1人で何役も演じ分けていただくことで、"声の出し分け"の凄さを感じてもらうなどです。「声のチカラ」をどうみせるかと同時に、今回は声優さんを、タレント、アーティストとしてリスペクトしてその力を十分に発揮できる環境を整えることにも注力しました。ファンの皆様の気持ちをきちんと受け止めることは勿論ですが、出し手が出したいとと思うものをニーズがあるところにキチンと届ける。粒は小さくなりますが、このやり方だと、きちんと熱量と想いが伝わる、と思っていました。

──番組の評判は?

大原 特性上もあってか事前展開では特にデジタル面で反応が良かったです。増田俊樹さんに、東京国際映画祭のレッドカーペットを歩いていただいたり、事前の生配信番組を行ったりと、世界観が世の中に伝わっていく過程で、「面白い!」「狂ってる(いい意味で)」などお褒めの言葉をいただくことができました。とくに「こんなのなかった」という声は、新たなエンターテインメントを開拓したい、という想いと通じるところがありますので、本当に嬉しかったですね。ターゲットとは真逆(笑)のはずの山崎専務取締役が見てくださって「面白かったよ、クオリティすごいね」と声をかけてくれたのも嬉しかったですね。越えることが難しいと思っていた"世代の壁"をエンターテインメントが飛び越えてくれた瞬間でした。

多彩な展開を見せる「僕声」

──番組以外にもいろいろ仕掛けていますね

大原 まずは歌です。今回声優さんが「鼻の穴はなぜ二つあるのだろう?」「斎藤のサイという漢字には、簡単なものと、難しいものがあるのはなぜなのだろう?」などと、様々なふざけたオリジナル楽曲を歌うのが一つの目玉となっています。

こちらは、製作委員会のメンバーであるポニーキャニオンさんにお力添えいただき、iTunesをはじめとする配信やサウンドトラックの発売、カラオケでのご本人映像付き歌唱など、様々な広がりを見せてくれました。映像だとやはり"観ている瞬間"しかお客様との接点を設けることができませんが、音楽だと、日常に溶け込んでいくため、僕声の世界観の醸成にとても大きな役割を果たしてくれたと思っています。楽曲を作ってくださったチームにとても感謝しています。音楽だけにとどまらず、放送や配信など、僕声ワールドがますます広がっていくように新たな種を撒いていけると嬉しいです。

僕声プロジェクトのこれから

──今後の展開について

大原 是非、「僕声」第2シーズンを実現したいと思っています!キャストやスタッフの皆さんも「やりたいよね」と言ってくださっていますので、色々と課題や克服すべきものはありますが、何とか実現できると嬉しいです。そのためには労を惜しみませんよ。DVDの特典として、9月22日に行われるDVD購入者限定イベントへの申し込み券を封入していることもあり、理想は、9月22日の発売記念イベントで何か嬉しい発表ができることですね。

そして、個人的には、「僕声」もそうですが、それに続く複数ラインにもチャレンジしたいとの想いも強いです。今回の番組ではご一緒することができなかった声優の方々やクリエイターの方々、パートナー企業がたくさんいらっしゃいますし、新たな組み合わせにもどんどんチャレンジしてみたいと思います。今回のプロジェクトを通じ、クリエイターの力を改めて物凄く感じたので、どんどん次世代を担うような新しいクリエイターと仕事したいという思いがあります。
もちろん、今回のプロジェクトで様々な課題や反省点も浮き彫りになりました。もっと先を見通した計画性や、取り組んでみて、初めてわかった声優さんを取り巻く環境、そして、生き物のように動いていくイベントやお客様と真摯に向き合うことの大切さ。WOWOWに足りないノウハウ。そういったものも全て糧にして今後に活かしていきたいです。2018年度はいよいよ"お勉強フェイズ"から実際に形にして、成果をもっと追っていく必要があると強く思っていますので...。

──声優業界に骨をうずめる覚悟ですね(笑)

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──最後に一言

大原 始める前は、ノウハウや実力など様々なハードルがあるかと思っていました。しかし、いざ始めてみると最も大切なのは、プロデューサーとしての"想い"で、その想いがきちんと伝わり、人々の気持ちに少しでも何かを与えることができれば、いろいろな扉が開いていくんだな、とあらためて感じました。単に「声優」というジャンルだからできたことではなくて、きっと違うジャンルでも同様だと思うので、自分もそうですが、今後もどんどん実践的なチャレンジが行われ、全社的に外部と連携した新しいビジネスを行う気運が盛り上がってくれるといいなと思っています。

「僕声」については、これが大きく育ってくれた結果、出演した声優たちがドラマWにでたり、新たなWOWOWオリジナル番組が生まれたり、さらには、音楽、ミュージカル、イベントなど、様々な形で、WOWOWグループに恩返しができたらなと夢想しています。大切なのはクリエイターと出演者、ファンの方々をつないで、どのようなコミュニティを形成していくかということで、今回のノウハウはきっと"ミライのWOWOW"につながると信じています。


「セカイ系バラエティ 僕声」とは?

このバラエティ番組で世界を救えるのか。
人気声優陣がドラマや、コント、歌など、さまざまな映像表現と笑いに挑む異色のバラエティ番組。
2017~2018年にかけてWOWOWや「GYAO!」で放送・配信されると、豪華な出演陣に加え、演出に気鋭のクリエイターである住田崇、脚本にオークラなど第一線で活躍する作家陣が集結し、話題を呼んだ。

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【キャスト】

<出演>
上村祐翔、勝杏里、岸尾だいすけ、櫻井孝宏、沢城千春、白石稔、鈴木達央、鈴村健一、武内駿輔、津田健次郎、中島ヨシキ、西山宏太朗、畠中祐、増田俊樹

<声の出演>
子安武人、杉田智和、関智一、中田譲治、浪川大輔、花江夏樹、古川慎、緑川光、森久保祥太郎、代永翼

【スタッフ】

脚本:オークラ (「ゴッドタン」、「ウレロ☆未体験少女」) 他
演出:住田崇(「住住」、「架空OL日記」、「戦国鍋TV」シリーズ)
制作:SWEAT 製作:「僕声」プロジェクトパートナーズ

(c) 2017 「僕声」プロジェクトパートナーズ(WOWOW/GYAO)