2018.09.14

  • クリップボードにコピーしました

求められていることに対して我々は何を提供できるのか。「2.5次元」「声優」企画への挑戦

マーケティング局企画部 大原康明/制作局制作部プロデューサー 飯干紗妃

求められていることに対して我々は何を提供できるのか。「2.5次元」「声優」企画への挑戦

2017年からWOWOWは「2.5次元」や「声優」といったカルチャーを舞台に、オリジナル番組の制作・提供を行なっている──『2.5次元男子推しTV』、『セカイ系バラエティ 僕声』、『スーパーチューナー/異能機関』、どれもが「最近人気のジャンルだから作ってみた」というレベルではない、強いこだわりがみてとれる内容だ。その裏には、アツい思いと“ジャンル愛”で番組制作に臨む二人のプロデューサーの姿があった。

"クリエイター×声優"という、まったく新しい価値を生み出したい

──まずは9月14日配信開始の声優による実写ドラマ『スーパーチューナー/異能機関』をプロデュースされている大原さんにお話を伺っていきます。ドラマ、コント、歌などさまざまな表現で構成されていた声優バラエティ番組『セカイ系バラエティ 僕声(以下、僕声)』に続く今作ですが、そもそも「WOWOWが作る声優番組」とは、どんなところに特徴があるのでしょうか?

大原 旅する番組や何かにチャレンジする番組など、声優さんの番組がたくさんあるなかで、WOWOWがこれまで培ってきたドラマやミュージカル、ドキュメンタリーといった分野で繋がるクリエイターの方々に参加していただいて、"クリエイターと声優との異業種コラボレーション"という、まったく新しい価値のあるものを生み出していこうというコンセプトが根本にはあります。

──『僕声』では脚本を『ゴッドタン』、『ウレロ☆未体験少女』などを手がけるオークラさん、演出を『住住』、『架空OL日記』、『戦国鍋TV』シリーズなどを手がける住田崇さんが担当されていますね。

大原 まさに"クリエイターと声優との異業種コラボレーション"という部分が強く出た企画ですよね。コントのような表現を得意とされる住田さんとオークラさんの力が一番発揮できて、なおかつ声優さんの新たな魅力を引き出すことができるのはドラマやコントや歌だろうということで作っていきました。

──『スーパーチューナー/異能機関』は『タイムスクープハンター』シリーズや『卒業バカメンタリー』などを手がける中尾浩之さんが監督・脚本を担当されています。

大原 中尾さんは一風変わった面白い映像表現......フェイクドキュメンタリー的な映像表現で旋風を巻き起こしてきた方なので、声優さんとコラボレーションする際に、『僕声』とはまた違ったアプローチができると思いました。「じゃあ実際に何を作っていこうか」ってなったときに、男性声優によるエンターテインメントレーベル"Kiramune"の新ユニットSparQlew(スパークル)さんのキャラクターがドラマに非常にマッチするんじゃないかと感じたので、今回は中尾監督と一緒にドラマに挑戦しようということになりました。

180912_st_key.png

──SparQlewは男性声優エンターテインメントレーベル『Kiramune(キラミューン)』の若手声優5名による新ユニットですが、彼らを起用した理由は?

大原 Kiramuneさんとはずっと「新しい取り組みをしましょう」とお話ししていたんです。何度もライブにお邪魔させてもらったり、スタッフの方とお話しするなかで、熱量がすごく伝わってきたんですね。「声優さんの活躍の場をさらに広げていきたい。その経験が声優のお仕事をさらに豊かなものにしていく」といった思いですよね。「なるほど、作品を一緒に作っていくことで得たいろんなものが、将来的に彼らの本業である声優のお仕事に還元できればいいよね」と我々も賛同して、Kiramuneさんとならば今までにないものができるんじゃないかと思いました。

そんななかでも、10代後半から20代前半の声優さんたちから成るSparQlewには若いエネルギーをすごく感じたので、中尾監督にもフィットするんじゃないか、ものすごいエネルギッシュな作品になるんじゃないかって思ったんですね。それに、『僕声』で上村祐翔さんと保住有哉さんがコントに挑戦されたこともあって、お二人のお芝居や実写での振る舞いみたいなものがわかっていたので、安心感を持ってお声がけさせていただくことができました。

瞬発力や修正能力など、声優たちの高いポテンシャルに驚かされる

──ドラマ制作が始まって、中尾監督とSparQlewのコラボレーションをどのように感じましたか?

大原 中尾監督はこれまでこういった形で声優さんとお仕事したことはなかったのですが、CGを活用する映像表現にも造詣が深い方なので、アニメーションやゲームの世界で活躍されている声優さんとの親和性は非常に良いように感じました。

作品自体がフェイクドキュメンタリーのテイストなので、ゴリゴリにお芝居を作ってきてもらうというよりは、自然体に近いお芝居を監督は求めていらっしゃいました。そこを紐解くためにも、SparQlewメンバーのラジオ収録を監督が見学したり、食事会を開催して、彼らの魅力を監督のなかでも噛み砕いて、ドラマ作りに反映してくださったなあと思います。

180912_sq_key.png

──初めて声優さんとお仕事したなかで、監督は彼らをどのように感じたのでしょうか?

大原 声優さんたちの修正能力の高さに驚かれていました。アフレコ現場でディレクターのイメージにあわせてすぐにお芝居を変えないといけないなんてことも頻繁にありますから、瞬発力やお芝居を調整する能力が非常に高かったというのはおっしゃっていましたね。「いや~、声優さんってすごいね!」って(笑)、監督もすごく新鮮だったみたいです。

──『スーパーチューナー/異能機関』はWOWOW特設サイトで無料配信ということですが、ファンの方にどのように広めていこうと考えていますか?

大原 まず、ファンのみなさんが見たいものをきちんとSNS上で提供することが第一です。声優さんが普段とは異なる出で立ちで、実写でお芝居している現場というのはすごく新鮮だと思うので、ファンのみなさんもきっと見てみたいと思うでしょうから......そうやってこちらから提供するものを楽しんでいただいて、番組に少しでも興味を持っていただくことは引き続き取り組んでいきたいです。

あと、今回はアニメーションやゲームの世界とはまた少し違う、ファッションやアートといった分野を得意としているデザイナーチームやスタイリストチームがついているので、今までにないSparQlewメンバーのビジュアルが打ち出していけるんじゃないかと思います。ほかにも試写会やニコ生配信がありますし、撮影現場にメイキング用のカメラも入っていますので、SparQlewメンバーがお芝居と葛藤する様子や、緊張から解き放たれている様子なども事前に公開していくことで「なんか面白そう」と伝わっていけばいいなと思っています。

──プロデューサーの立場として、『スーパーチューナー/異能機関』の見所はどこにあると思いますか?

大原 今回はフェイクドキュメンタリーということで、すごく面白い作り方をしているんです。SparQlewメンバーが演じているというのを頭では理解しているけれど、「本当にこういう人たちがいるんじゃないか」と思ってしまうような......作中の人物として本当に生きているかのような表現は非常に見ごたえがありますね。爆破シーンやアクションシーンも盛りだくさんで、今までのWOWOWにはなかった新しい価値観をお届けできるだろうと個人的にも楽しみにしています。

180912_feat_02.png

それから、普段は実写でのお芝居をされていないSparQlewメンバーですが、今回実はNGがほぼないんです。ものすごい集中力と、並々ならぬ意志で現場に挑んでくださったので、その頑張りや熱量、ひたむきな思いがモニター越しに伝わるといいなと思います。

新規ビジネスとして多角的な二次展開も視野に入れた『2.5次元男子推しTV』

──次に、『2.5次元男子推しTV』をプロデュースされている飯干さんにお話を伺っていきたいと思います。2017年3月から放送されている『2.5次元男子推しTV』ですが、そもそもどのようなコンセプトで作られたのでしょうか?

飯干 2.5次元ミュージカルなどで活躍されている俳優さんの"素"をお伝えするというコンセプトです。舞台上だと作品のキャラクターとして存在する彼らですが、ファンになっていく過程のなかで、「キャラクターじゃないときやお仕事じゃないときは、どんな感じの人なんだろう?」って興味が湧くのは自然なことだと思うので......もちろんインタビュー記事やイベントなどで垣間見える部分はありますが、もっと"素"の部分を番組としてお見せできるといいなと思って作りました。

──鈴木拡樹さんをMCに起用したのはなぜでしょう?

飯干 ジャンルを牽引されていて、人気や実力が備わっていらっしゃるということもありましたし、すごく穏やかなお人柄で、いろんなものを受け止めるタイプというのも大きかったですね。MCとして毎月ゲストを一人ずつ紹介するスタイルを企画していたので、年齢や共演の有無などに関わらず、どんなゲストが来られても話をしっかり聞いて、それを伝えられる方だろうと思い、オファーしました。

──10月26日より『2.5次元男子推しTV』シーズン3が放送されるということで、まさに人気の番組なのだと思いますが、シーズン1、シーズン2を振り返って、どのような成果があったと思いますか?

飯干 今までWOWOWを観たことがなかった方から、「初めてWOWOWに触れた」というお声をいただいたのは嬉しかったですね。それから、"新規ビジネス"というカテゴリで社内には企画を提案したので、アニメイトカフェさんとのコラボやグッズ企画など、放送以外の二次展開にも力を入れました。違う部署の人からも「本が出たんだって?」と声をかけてもらったりしたのは、そういった成果の現れかなと思います。

180911_2.5_key.png

──企画当初、2.5次元の俳優さんの番組を作ることに関して、社内はどういった反応を示していましたか?

飯干 詳しくない人がほとんどなので、「思うようにやってみたらいいんじゃない?」と任せてもらえたのはありがたかったですね。企画を通すという意味での数字的な説得材料は、日本2.5次元ミュージカル協会が公表している市場規模や動員数をもとに、「右肩上がりですよ」と理解してもらいつつ、それでもやってみないとわからない部分が大きかったので、挑戦させてもらった感じですね。

──シーズン1、シーズン2を通して、苦労した点などはありますか?

飯干 みなさん立て続けに舞台出演があるので、スケジュール調整は大変ですね。

──忙しい方たちだからこそ、ロケでいろんなところへ行くことでリフレッシュされているのかなと、番組を観ていて感じました。

飯干 そうですね。毎回事前にご本人とお会いして、「もし1日お休みがあったら何がしたいですか?」と、ざっくばらんにお伺いしているんです。壮大なものから、すごく小さいものまで(笑)色々とご意見をいただいたなかで選んでいるので、本当にご本人が興味のあることや、やりたいことを企画に反映しています。すごく楽しんでいただいたり、「仕事じゃないみたい」と言っていただいたりするので、そういった雰囲気が画面にも出ていたらいいなと思います。

──シーズン3で強化した点はどこでしょうか?

飯干 シーズン1、シーズン2で、鈴木さんとゲストがトークする部分はやはり反響が大きかったんです。お芝居や役について彼らが話しているのを映像で観る機会はなかなかないので、ファンのみなさんにも喜んでいただけたようで。ですから、シーズン3ではそこを強化したいと思っています。今回から毎回ゲストを2名お呼びする体制にしたので、鈴木さんを含めた3人の関係性や盛り上がりなど、ご期待頂けると嬉しいです。

それから、毎回鈴木さんのコーナーがあって、色々とチャレンジしていただいていますが、今回は「舞台の裏側」というテーマも入れていこうと思っています。人気の劇作家・脚本家の方にお越しいただいて、鈴木さんと対談していただいたりもするので、舞台ファンの方が観ても楽しい内容になるように作っています。

常に"ファンの目線"を意識した番組づくりを心がける

──ここからはお二人にお話を伺っていきたいと思います。お二人とも元々、声優や2.5次元などのジャンルに明るかったのでしょうか?

飯干 私はそうですね。会社ではあまりオープンにしたくないですが(笑)、二十数年ずっと、所謂オタクです。小学生くらいのときから漫画やアニメ、ゲームが大好きでしたし、自分で色々作ったりイベントに行ったりもしてきたので、元々詳しかったというのがあります。それに、WOWOWの前に働いていた会社が2社ありますが、どちらもアニメ業界の会社だったので、仕事の観点からも詳しくなっていきました。

180911_iihoshi_01.png

大原 僕もアニメや漫画といったカルチャーは好きでしたが、"声優さん"という観点で作品を意識したことはなかったんですね。WOWOWで番組制作に携わっていくなかで、ナレーションやアフレコを声優さんにお願いする機会があって、そうやってお仕事をご一緒してみると、「もっと活躍の場を増やしていきたい、もっと新しいことに挑戦したい」という思いを持っていらっしゃる方が多いんだなというのを知ったんです。

であれば、そういった方々と何か一緒に取り組むことで、新しい挑戦ができるんじゃないかなと......もちろん、声のお仕事のみを職人のように矜持を持って極めていく方もいらっしゃいますが、一方で、役者としての表現方法のひとつが声であって、ほかにもいろんな表現に取り組みたいという方もいらっしゃるので、その応援ができるといいなと思っていました。

──ジャンルに明るい飯干さんに相談することもありますか?

大原 ありますね。やっぱり飯干は詳しいので、困ったら尋ねます(笑)。モノを作っていくなかで一番大事な"お客様の目線"って、作品づくりに没頭しているとつい見落としてしまうこともあるのですが、そういうときに「本当にこれって、楽しみにしてくれている人たちの期待を裏切らないものになっているのかな?」と、飯干に相談することは結構あります。

──飯干さんは、ファン目線とプロデューサー目線の両方を意識して番組づくりをしているのでしょうか?

飯干 そうですね。テレビ番組を作った経験がそれほどないので、技術的に詳しいわけではなく、プロデューサーとしてはまだまだ初心者です。ですから、企画を考えたり内容をチェックする際には、視聴者の目線で判断するようにしています。ファンの方たちの間で何が流行っているのか、どんなことが受け入れられなかったのかといったことが自分のなかに肌感覚としてあって......それってすごく不透明なもので、目に見える根拠があるわけでなく自分しか信じられないものではありますが、そこが自分の強みでもあると思うので大事にしています。

プロデューサー目線としては、コンテンツビジネスに関わってきた経験もあるので、番組単体ではなく俯瞰的な展開を常に考えています。例えば、「もしかするとグッズ展開をするかもしれないから、収録にスチールを入れておこう」といったようなことを、早めに考えるようにしています。

──先ほど「声優さんの瞬発力が高い」というお話もありましたが、番組を作っていくなかで感じた、声優や2.5次元の俳優の魅力はどこにあるでしょう?

大原 瞬発力や高い集中力、その場での修正力といったものは本当にすごいですし、やっぱり彼らの本職である"声のお芝居"に改めて驚かされましたね。『僕声』でも『スーパーチューナー』でも、お芝居のなかで"声優さんらしさ" みたいなものは必ず出したいと思って意識していたんです。

特に『スーパーチューナー』はドキュメンタリー的な撮り方なので、画が乱れたりするんですが、彼らは滑舌がものすごく良いので、起こっている内容に対応した声がしっかり耳に伝わってくる。それって本当にプロフェッショナルな声優さんならではだなと感じましたし、実はそういった"声を使う"というのは、身体表現のすべてに繋がっているということに気づかされました。

そこにはいろんな可能性があって、思いつきさえすれば、声優さんの声を活用して、アニメだけではなくあらゆる映像表現が可能になるんじゃないかと今回感じましたね。

飯干 『2.5次元男子推しTV』では俳優さんにお芝居していただいているわけではないので、トークのなかで感じたことをお話させていただきますが、やっぱりみなさん、原作やキャラクターを本当に大切にされているんだなあと感じます。

3次元の自分にキャラクターを当てはめるのではなく、自分のお芝居を2次元のキャラクターに寄せていくことができる。その作品やそのキャラクターが好きな人たちがいること、そして、その人たちの思いをしっかりわかったうえで役作りをされている姿勢がトーク中にも垣間見られるので、「こういうところが原作ファンの方々にも支持される理由なんだな」とすごく感じました。

それに、何でも楽しんで挑戦してくださるんですよね。「こういうのはどうですか?」と提案すると、すごいノッてくださって、前のめりでアイデアを出してくださる。「できません」とか「嫌です」といった言葉は全然ないんです。そういったエネルギーも素敵だなと思います。

180912_feat_01.png

──WOWOWのM-25旗印では「偏愛」をキーワードとしていますが、ご自身にとって番組を作るうえでの「偏愛」や「こだわり」の部分・哲学があれば教えてください。

大原 「WOWOWだからこれだ」みたいなものを、実はあんまり考えたことがなくて、結局自分が面白いと思ったものをやりたいっていう思いがすごい強いんですね。「なにそれ? よくわかんないよ」って言われても、自分で足を運んでいろんなものを見て感じ取ってきたからこそ、「これは間違いなく世の中に受け入れてもらえるだろう」という、ブレることのない絶対的な自信を持つことがまずひとつですよね。

もうひとつは「お客様が面白いと思ってくれるか・くれないか」。結局のところ、それ以外に何もないと思うんです。一番求められていることに対して、我々は何を与えることができるか。そこに自分の「成し遂げたい・作りたい」という思いをきちんと乗っけて、世に出すことができるか。それが偏愛やこだわりといったものだと思います。

それがしっかりと伝われば、ファンの方々には届くと思うし、初めてSparQlewのメンバーを知る方にも、初めて声優さんの番組に触れる方にも、あるいは中尾監督の作品のファンで、初めて声優さんを知る方にも届いていくと思っています。

飯干 私も同じですね。"WOWOWらしさ"みたいなことは一度も考えたことがなくて(笑)。私自身、求めているものをきちんと提供してくれる、自分の好きなものを大切に扱ってくれる、そういったものに対して、感謝や「今後も続けていってほしい」という思いを込めてお金を払うタイプなんです。なので、自分が作り手にまわったときにも、「求められていることに、何を提供したらみなさんに喜んでいただけるだろう」、「このジャンルを大切にしていくにはどういったことができるだろう」ということはすごく考えます。先ほどの話と被りますが、そういったユーザー心理を大切にしたいと思っています。

そのためにも、自分の肌感覚を見失わないようにする。これから年齢を重ねていくなかで、きっとジャンルのコアなファン層からズレていくことはあると思いますが、極力そこはズレないようにしたいと思っていて。元々好きで、近しいジャンルなので大丈夫かなとは思いつつ、積極的にイベントに行ったり、WEBや雑誌、SNS上の情報を拾うようにしています。

いろんなコンテンツを持っていることを活かして"プラスアルファ"を提供する

──声優や2.5次元といったジャンルはWOWOWのなかでもマイナー路線だったと思いますが、社内で企画を通す際に工夫した点などはありますか?

大原 WOWOWのお客様ってエンターテインメントやスポーツが大好きで、リーガ・エスパニョーラもリアルタイムで観ちゃうような方がたくさんいるわけです(笑)。そういった熱量がWOWOWを支えてくださっていると思っていて、声優ファンの方たちにも通じるなあと感じたんです。イベントでの声援からは「声優さんたちを支えていこう」という強い思いが伝わってきますから。なので、「どれくらい人気なの?」と聞いてくる会社の上の人たちを、「実際に観てください!」って連れて行っちゃう(笑)。

これだけ活躍していて、これだけの思いを持って色んなことにチャレンジしていて、お客さんがこれだけの熱量を持って応援しているんだっていうのを、実際にイベントに連れて行って見せてしまう......上の人たちもサイリウムを振ってくれました(笑)。

そして、一番大事なのは作り手の熱量だと思うんです。何か言われたら「じゃあ、やっぱりやめよう」じゃなくて、「こんなに可能性があって、WOWOW、お客様、声優業界、みんなにとってプラスになるんだ」ということを熱量を持って語って語って語りまくる(笑)。「なんとなくこのジャンルって人気ありそうだから」とか「わかんないけど人気あるんでしょ?」っていうのだと、まったく話になりませんから。「何が求められていて、そこに対して我々は何ができるんだろう?」ということを徹底的に考え抜くことができたのが、企画を通すうえで一番大きかったことだと思います。

──現在、社内にこれらのジャンルが浸透してきている感触はありますか?

大原 そうですね。今までになかったジャンルなので、面白がってくれている人はたくさんいます。イベントを観に来てくれる人もたくさんいますし、「実は私、声優好きなんです」っていう声も増えてきて(笑)。

WOWOWって、実は声優さんとのお付き合いがすごく長いんです。海外ドラマの吹き替えやナレーションのお仕事をお願いすることが多いので。なので、もしかすると今回の番組をきっかけに「吹き替えで出演された方々に、こっちの映像のほうにも出ていただけないだろうか」とか「映像のほうで活躍した方々に、吹き替えもお願いしてみようか」みたいな番組間の交流が生まれるかもしれませんよね。番宣を声優さんが読んでくださったりもしているので、いろんな活躍の場がWOWOWのなかで循環し始めているというのはすごく感じます。

飯干 『2.5次元男子推しTV』シーズン1のコーナーのなかで、WOWOWの海外ドラマの吹き替えを鈴木さんに挑戦していただいたりもしました。ほかの部署の人たちと、色々相談する機会も増えましたね。

──いろんなコンテンツを持っているWOWOWならではですね。

飯干 「こういうコンテンツもあるから、プラスして楽しめるね」みたいな感じですよね。鈴木さんが海外ドラマのアフレコに参加したり、元タカラジェンヌの方と対談したりしているんですが、そうすることで、鈴木さんに興味を持ってWOWOWを見始めたファンの方が、そこから派生して「この海外ドラマも観てみようかな」とか「宝塚の番組も観てみようかな」といったように、プラスアルファで楽しめる要素が提供できるのかなと思います。

──大原さんは"WOWOWならでは"と感じる部分はありますか?

大原 クリエイターとの繋がりが強いと思います。『僕声』も『スーパーチューナー』もクリエイターの方と作っていますし、連続ドラマWでも映画監督さんや脚本家さんなど、そうそうたる方たちを起用しています。そういった「トップクリエイターの方たちとお仕事をしよう」という価値観が社内できちんと通じるのが、WOWOWならではのカルチャーかなと感じていますね。

──このジャンルで今後やってみたいことはありますか?

飯干 オリジナルコンテンツを作りたいと思って現在動いています。大きなプロジェクトとしてひとつタイトルを作って......まだお伝えはできないのですが、色々と展開できるようなものを目指しています。楽しみにして頂けたら嬉しいです。

大原 僕は声優コンテンツをWOWOWの1ジャンルとして根付かせたいという思いがあります。舞台、ミュージカル、音楽といったジャンルに並んで"声優"とあっても、なんらおかしくないと思うので。それが今は一番目指しているところです。ほかにはやっぱり、クリエイターと繋がりのない人たちを繋ぐというところに今回ひとつの可能性を感じたので、「次はなにがあるだろう?」と日々考えています。

──2.5次元の俳優さんと声優さんの番組コラボなど、お二人のコラボレーションにも期待します。

大原 そうですね、声優さんと2.5次元の俳優さんの垣根がだんだんなくなってきている感じがしますから、『アベンジャーズ』みたいなことをやりたいですね(笑)。

飯干 2.5次元の舞台に声優さんが出演されたり、アニメのキャラクターを2.5次元の俳優さんが演じられることもありますからね。

大原 だからもしかすると、「2.5次元×声優×ミュージカル」みたいなものができるかもしれないですよね。

飯干 そうですね。そういったジャンルのものがWOWOWにも増えてきているので、なにかカタチにできるといいですね。

180911_feat_last.png

「スーパーチューナー/異能機関」
2018年9月14日無料配信スタート!毎週金曜日(全10話)
特設サイト:https://www.wowow.co.jp/super-tuner/
※視聴にはWOWOW WEB会員登録(無料)が必要です。
公式Twitter:@super_tuner_PR 特報映像:https://youtu.be/OB_AfrfjTtM

「2.5次元男子推しTV シーズン3」
10月26日(金)夜11:30スタート(全6回/月1回放送)[WOWOWライブ]
番組情報はこちら:https://www.wowow.co.jp/detail/113371
公式Twitter:@25danshioshiTV



撮影/川野結李歌 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.