2018.10.24

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<″車いすバスケの神様"金メダリスト来日! 第4回「WHO I AM」フォーラム>レポート

<″車いすバスケの神様

“車いすバスケットボールの神様”パトリック・アンダーソン来日&熱唱! 「WHO I AM」フォーラムで国枝慎吾、豊島英らとのトークセッションが実現

WOWOWと国際パラリンピック員会(IPC)の共同プロジェクトによるパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ「WHO I AM-これが自分だ!という輝き」。10月25日よりシーズン3の放送が開始されるのを前に10月16日(火)、<車いすバスケ金メダリスト来日! 第4回「WHO I AM」フォーラム>が開催された。

「WHO I AM」シーズン3に登場するカナダの車いすバスケットボール選手で、"車いすバスケの神様"と呼ばれるパトリック・アンダーソンが来日!
10月25日にWOWOWにて初回放送となる「WHO I AM」シーズン3「車いすバスケの神様 パトリック・アンダーソン」の先行上映が行われた。

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上映に先立ち、主催者代表としてWOWOW代表取締役社長田中晃が挨拶。「WHO I AM」に込めた想いやシーズン3を迎え着実な成果を見せつつあるパラリンピックムーブメントへの貢献に向けた様々なコラボレーション、そして番組が内外で受賞を果たし高い評価を受けていることを紹介。_N1_9936.JPG

続いて主賓挨拶として、国際オリンピック委員会、国際パラリンピック委員会の教育委員メンバーであり、長野パラリンピックでアイススレッジスピードレースにて3つの金メダル、1つの銀メダルを獲得したマセソン美季氏が登壇。パトリック・アンダーソンとの出会いや、2年後に向けたパラリンピックムーブメントの盛り上がり、自身が委員も務めている教育に向けた「WHO I AM」との連携への取り組みなどを紹介。_N1_0024.JPG

2人の挨拶の後、早速、「WHO I AM」シーズン3「車イスバスケの神様 パトリック・アンダーソン」が先行上映された。

パトリックへのフィーチャーは国枝選手からの推薦

上映後は 日本が誇る車いすテニスのトッププレイヤーの国枝慎吾、車いすバスケットボール日本代表キャプテンの豊島英、そして番組のナビゲーター&ナレーションを務める西島秀俊、シリーズの音楽を担当する梁邦彦によるトークセッションが実現した。さらにプロのミュージシャンとしても活躍するパトリックと梁邦彦によるミニライブも行なわれ、会場は熱狂に包まれた。

パトリックは17歳でカナダ代表に加わり、4度のパラリンピックに出場し、金メダル3個、銀メダル1個を獲得。これまで2度にわたり、第一線から退いたが、その間に音楽活動を開始した。その後、リオパラリンピックでの母国の惨敗を受けて代表にカムバック。番組では、彼のこれまでの軌跡と共に、2020東京に向けて若手中心のカナダチームを導いていく姿が描き出される。

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割れんばかりの拍手に迎えられたパトリックは、黒いシャツに「人生で初めて」という蝶ネクタイを着用しての登場!「これまで何度も日本には来ているので、そろそろアパートを探そうかと思ってるよ。本当は妻と一緒に来たかったけど、2人目の子が生まれたばかりで無理だったので、妻が選んでくれた蝶ネクタイで来ました」と笑顔を見せた。

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そもそも、シーズン3でパトリックがフィーチャーされることになった経緯には、国枝選手も深く関わっているそうで、以前のシーズンに出演している国枝選手が番組スタッフから「誰かいい選手はいないか?」と尋ねられ「僕が唯一、(同番組で)見たい選手がいる」とパトリックの名を挙げたという。

国枝選手は「パラリンピックの選手村にTVが置いてあって、全ての競技が見られるんですけど、バスケットを見ていると、彼のプレイだけを追っちゃう。それくらい大好きです」と"ファン"の顔で語り「これだけ車いすと仲良くなってる選手はいない。全ての競技を通じて一番の「車いす能力」を持っている。空を飛んでいるように見えます」と惜しみない称賛を送る。_N1_0453.JPG

「また金を目指そう」と思ったのは、妻の言葉があったから

この日は、元プロテニス選手の松岡修造氏が司会を務めたが、松岡さんはパトリックのプレイについて「まるでタコのよう! ボールが手に引っ付くし、腕が何本あるの? という感じ」と驚きを口にする。豊島選手は、パトリックがインスタグラム上で、超絶テクニックを公開していることに触れ「あそこでやっていることは、実際に試合で使うことを想定してやっているんでしょうね。だから『できない』と思わず、成功するまでトレーニング、チャレンジし、それが結果として現れているんだと思う」と自ら"上限"を作ることなく技術を探求する姿勢への尊敬を口にする。

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パトリックは、豊島選手の言葉に嬉しそうにうなずき「数年前にスマートフォンを手にしたんですが、インスタグラムを開設してよかったなと思います。まさに若い世代に『あのプレイは可能なんだ』『じゃあ、自分はパトリックがやれないことをやってやる!』と思ってもらえることを期待しているし、インスピレーションを与えられることを楽しみにしています」と語った。_N1_0731.JPG

松岡さんはさらに、パトリックが過去に第一線を退き、そこから復帰を果たした点に言及し、競技を続けていく上でのモチベーションについて質問。パトリックは「モチベーションのコントロールは、僕のキャリアにおいても難しいもので、時に失ったこともあるし、驚きと共にわき上がってきたこともあります。2012年のロンドンの際は、舞台が整いつつあるのを感じて、また世界を驚かせたい、楽しませたいという思いがわいてきました。そのとき、妻の母に『行ってくるよ』と伝えたんですが、妻の母に『勝ってきなさい』と言われたんです。自分は『楽しませよう』と思ってたけど、そこで改めて『これは競争でもあるんだ』とそこでまた金を目指そうと思いました」と振り返った。_N1_0550.JPG

国枝選手もパトリック同様に、長きにわたって世界のトッププレイヤーとして君臨してきたが、そのモチベーションについて「一番は負けたくないから。若い選手がたくさん出てきて『まだまだお前らに負けない!』というのを見せつけたい。それから、34歳になっても、まだ自分には伸びしろがあると思っていて、見えない世界が年々見えてくるし、うまくなっているという思いが毎年更新されてるんです。いまの方が5年前よりも、2年前より強いし、昨日よりも強いかもしれない。1日1日、より良い選手になっていくのを実感しているから、まだやめられないなって思います」と熱く語った。1022whoiamkunieda.png

さらに、松岡さんは番組にも登場する、パトリックの妻の存在についても質問。妻であると同時に、音楽活動においてはパートナーでもある彼女の存在についてパトリックは「まず、地に足をつけさせてくれる存在です。音楽を一緒にやっていると、切り替えが難しいこともあって、音楽活動でパートナーとしてコラボした後で、妻と夫になる難しさもあるんですけど、妻は、私が何たるかを示してくれる、まさに彼女が私を『WHO I AM』にしてくれていると思います」と語った。_N1_0197.JPG

そしていよいよ、開催まで2年を切った2020東京に向けて、日本代表をキャプテンとして率いる豊島選手は「車いすバスケットボールは、花形競技と言われていて、関心が強いなと選手として感じています。そこで金メダルを獲ることが、選手として目標だし、そうして日本にもっと車いすバスケットボールが浸透していってほしいと強く思っています。まだ結果が付いてきてないですが、必ず結果をとりたいと思います」と強い決意を口にする。_N1_0510.JPG

パトリックは「自分は2年後、41歳になっているけど、金を獲る意気込みで戻ってくるつもりです」と宣言。豊島選手の腕をとり「日本vsカナダの決勝戦をぜひ見に来てください」と語り、会場は温かい拍手に包まれた。1022whoiampat2.png

梁邦彦×パトリックによる生ライブ! 2曲のオリジナル楽曲を披露

そして、スペシャルゲストとしてナビゲーターを務める西島秀俊さん、平昌オリンピックの開会式・閉会式の音楽監督をつとめるなど世界的に活躍するかたわら「WHO I AM」シリーズの音楽を担当する梁邦彦さんも登場。西島さんは「僕自身、部屋に『WHO I AM』を置いていて、くじけそうになると見て『まだ全然いける!』と勇気をもらっています」と明かす。1016nishi.png

パトリックと西島さんは、ともに2児のパパ。パトリックは「僕らはともに"パパクラブ"のメンバーであり(笑)、何かに情熱を注ぎ続けるチャレンジングな年代であると同時に、いろんな責任が発生する世代でもあります、でも、家族がいるからこそパッションが続くのも事実です。まさに、パッションをたぎらせつつ、まだまだ前に進んでいきたいと感じている全ての方に、この作品をお届けできればと思います」と笑顔で語った。

一方、梁さんはアスリートとミュージシャンという二足のわらじで活躍するパトリックについて「反則技だと思います(笑)」と冗談めかして言いつつ「想像をはるかに超えるパッション、才能を見せつけてくれました」と称賛を送る。そして「音楽を作る作業って、実はすごく孤独なものですが、番組が出来上がってパトリックの背中や前向きな姿を見て、刺激を受け、背筋が伸びました」と感謝の思いを口にした。_N1_0649.JPG

イベントの最後には、その梁さんとパトリックによるスペシャルコラボが実現!まずは梁さんのソロピアノで壮大な「WHO I AM」のテーマ曲が演奏されます。_N1_0833.JPG

そして梁さんの呼びかけでギターを抱えたパトリックが登場!梁さんのピアノに合わせて、パトリックは自身のオリジナル楽曲2曲に加え『Take Me Home Country Roads」を熱唱し、会場はその歌声に酔いしれた。_N1_0890.JPG

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歌唱後、去り際にパトリックは、最前列で鑑賞していた、車いすバスケットボールの選手でもあるという車いすの少年の元に近づき、自身のCDなどをプレゼント。会場は最後まで温かい感動の拍手に包まれていた。

今回上映された「WHO I AM」「車いすバスケの神様 パトリック・アンダーソン」は10月25日(木)夜10時よりWOWOWプライムにて初回無料放送されます。また、次週の「FEATURES!」では今回のイベントで素晴らしい演奏を披露してくれた梁邦彦さんと太田番組チーフプデューサーの対談をお届け。番組テーマソング誕生のきっかけに迫ります。ご期待下さい!

取材・文/黒豆直樹  制作/iD inc.