2018.12.26

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チーズと、ワインと、WOWOWと──『チーズ!チーズ!チーズ!』に出会い、魅せられたプロデューサーの"偏愛"

制作局映画部プロデューサー 大朏ちなつ/WOWOWコミュニケーションズ 営業部 直井正芳

チーズと、ワインと、WOWOWと──『チーズ!チーズ!チーズ!』に出会い、魅せられたプロデューサーの

チーズの専門家であるウィル・スタッドが、世界中の一級品や希少な手作りチーズを探して歩く、オーストラリアの番組『チーズ!チーズ!チーズ!』。大朏ちなつプロデューサーがフランスのコンテンツ見本市で出会い、一目惚れしたところから始まった“偏愛”物語。「担当者自身が、その作品にどれだけ愛着があるかが大きい」と語る彼女のアツい思いは、番組に連動したチーズ販売にも込められていた。

フランスのコンテンツ見本市で「こんな番組があるんだ!」と一目惚れ

──まずはじめに、大朏さんのWOWOWでのお仕事について教えてください。

大朏 ハリウッド映画や邦画の買い付けが一番主な仕事です。また『クリミナル・マインド FBI行動分析課』シリーズなどの海外ドラマの日本語版制作も担当していましたが、途中からWOWOWプレミア(ミニシリーズドラマ)の買い付けや、『チーズ!チーズ!チーズ!』のようなライフスタイルにまつわる番組を扱ったりするようにもなりました。

──2011年10月から放送が始まった『チーズ!チーズ!チーズ!』ですが、第8弾となる『極上のチーズ!チーズ!チーズ!』まで、7年も続く人気シリーズとなりました。

大朏 実は、WOWOWで最初に放送した『チーズ!チーズ!チーズ!』って、オリジナル版ではシーズン4にあたります。。なぜシーズン4から放送したかというと、シーズン1からシーズン3まではハイビジョン素材がなく、標準画質しかなかったんですね。そうすると、2011年10月からハイビジョン・3チャンネル化となったWOWOWには標準画質はフィットしないということで、まずはシーズン4からシーズン8までを放送して...。

181226_cheese cheese_key.png『極上のチーズ!チーズ!チーズ!』

──「WOWOWメンバーズオンデマンド」で、シーズン1からシーズン3までを放送したということですね。

大朏 そうですね。昨年、WOWOWメンバーズオンデマンド用にシーズン1からシーズン3までを購入・放送して、シリーズをコンプリートした形になりました。

──そもそも、オーストラリアの番組『チーズ!チーズ!チーズ!』に出会ったきっかけは何だったのでしょうか?

大朏 MIPCOM(フランスのカンヌ市で、カンヌ国際映画祭等を開催する施設やインフラを利用して10月に開催される世界最大級の国際映像コンテンツ見本市)でコンテンツを物色しているなかで、「こんな番組あるんだ!」と一目惚れして...。

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──その理由は?

大朏 当時、WOWOWでも『ジェイミー・オリヴァーの給食革命!』や『朝からウマい! ビルの幸せブレックファスト』といったライフスタイル番組を放送していました。ただチーズに特化したものはなくて、切り口がとても面白いと思ったんですね。世界中の一級品や、その土地にしかない農家製の手作りチーズを、チーズの専門家であるウィル・スタッドが探して歩くというのがユニークで、旅の要素も加わっていて、ライフスタイル番組としてのバランスがとてもいいなあと思ったのが、惚れ込んだきっかけですね。

加えて、チーズがすごく美味しそうに見えるのもポイントでした。チーズって、形も色もそれぞれ違うし、作っている工程も面白いので、映像にすると凄く映えたんです。そういった面でも「この番組を是非放送したい」と思いました。

──とはいえ、それまでWOWOWにはなかった初めてのジャンルということで、社内で企画を通す際、苦労されたのでは?

大朏 そうですね。最初は「え? 本当にやるの?」と結構言われました(笑)。でも、チーズ自体をが好きな人も多くて......字幕にするか、吹き替えにするかが会議で議題になった際は、「チーズを作ってる映像に字幕が乗ったら、せっかくの美味しそうな番組が台無しになるんじゃない?」とアドバイスをくれた人もいて、最終的には吹き替えになりました。やっぱりみなさん、根底の部分で食に関しては興味がある方が多く、面白がって頂けたのかもしれません。。そして私、企画が通るまでしつこく言い続けたので(笑)、最後は「やってみたらいいんじゃない?」という感じでした。

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──『チーズ!チーズ!チーズ!』シリーズが7年も続いている理由はどこにあると思いますか?

大朏 食と旅という、テレビの映像が映える番組で、安定的にに観てくださるお客様がいらっしゃって、なかには熱狂的なファンの方もいらっしゃいます。「全シーズンを、何回も何回も観ています!」といったメッセージをイベントの際にいただくこともあり、チーズ好きだけでなく、番組の雰囲気が好きという方にも刺さったんじゃないかと思います。

番組ホストでチーズ専門家のウィル・スタッドさんもWOWOWで『チーズ!チーズ!チーズ!』シリーズを放送していることをすごく喜んでいらっしゃって、普通だったら通りそうもないプロモーションや、チーズ販売についても常に快くご協力いただけているのがありがたいです。

──番組を訴求するうえで工夫した点などはありますか?

大朏 やはりチーズ販売ですね。ヨーロッパから輸入した、番組に連動したチーズがWEBショップで買えるようになっているので、番組の付加価値を高めることができたのではないでしょうか。

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ECサイト「wowshop」にて、チーズとオーガニックワインのマリアージュを提案

──おっしゃる通り、2016年秋よりECサイト「wowshop」にてチーズの販売がスタートしました。

大朏 番組がスタートしたときから、社内でも「チーズを売ったらいいのでは?」という声がありまして。やり方を模索していったところ、実際にチーズを販売している店舗さんとパートナーシップを組むことができれば、実現の可能性があるとわかったんですね。それで、フェルミエさんとのコラボレーションが実現しました。

──フェルミエさんをパートナーとした理由は?

大朏 日本で初めてのナチュラルチーズ専門店ということ。それに、番組でウィルが日本を訪問したときに、フェルミエさんが登場したんです。当時の社長だった本間るみ子さんとウィルがお友達なので、そういった意味でもコラボレーションをするならば、老舗のフェルミエさんがベストだと思いました。

──現在は「定期便コース(気になる月だけの購入や、途中解約も可能)」と「おまとめ払いコース(6ヶ月まとめて予約)」の2種類のコースが提供されていますが、最初は違ったのでしょうか?

直井 違いましたね。特別にWOWOWがセレクトしたオリジナルセットということで、番組に登場したチーズを中心に、いろんなチーズを組み合わせたセットを単品で販売していました。

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──定期便になった理由は?

直井 それまでwowshopでは定期購入を扱ったことがなかったのですが、リピートで買ってくださるお客様が増えてきたということで挑戦することになりました。

大朏 それに、単品だと数が読みづらかったんです。生ものですから、災害や気候などで注文数を確保できなかったりする可能性もあります。

直井 そうですね。事前にある程度の数が決まっていたほうが、お客様にご迷惑をおかけすることもないだろうと。

──セットに入れるチーズのセレクトは、どのように行ったのでしょうか?

大朏 最初はフェルミエさんにお願いしていましたが、途中から私のほうでもセレクトするようになりました。番組に出てくるチーズのリストを作って、フェルミエさんの仕入れリストと照らし合わせて、マッチングするものを選んでいます。もちろん、番組のなかで紹介したチーズがない場合もあるので、そういうときは似たようなものや、ちょっと珍しくて美味しそうなものを入れるようにしています。

──番組を仕入れて、日本語版を作って、チーズのセレクトまでするとは想像されていなかったと思いますが(笑)。

大朏 そうですね(笑)。でも、すごく楽しかったです。プライベートでチーズの勉強をして、番組を一時停止しながら「これ何のチーズだろう?」って調べたりする作業も楽しかったですね(笑)。

──2017年8月から"国別セット"を始められたとのことですが、反響はいかがでしたか?

大朏 やっぱり番組ときちんと連動するようになったので、反響は大きかったですね。番組の最後に「wowshopでチーズを買えますよ」と告知を入れたら、最初のイギリスセットは早々に売り切れて。その後もコンスタントに売れていますが、特に人気が高かったのはスペインセットでしたね。

──今年の9月からは、その月のチーズにぴったりなオーガニックワインの販売も始まりました。

大朏 チーズを売っていたときに、「ワインも一緒に売ってください」という声が多かったので、「やってみようか」と。

直井 そうですね。「ナチュラルチーズに合うワインってなんだろう?」と大朏さんと話し合って、辿り着いたのがオーガニックワインでした。

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──こちらはマヴィさんとのコラボレーションということで。なぜマヴィさんだったのでしょう?

大朏 マヴィさんもフェルミエさんと同じく、作り手のことをすごく大事にしていらっしゃるというのが一番大きかったです。それに、どちらも通常のスーパーとかでは手に入りづらい商品を扱っていらっしゃるので、通販の意味が大きくなるんじゃないかと思いました。

直井 お店の雰囲気も大事なので、大朏さんとマヴィさんにお邪魔して、ワイン講座にも参加させていただきました。「オーガニックワインとは」とかから始まりましたが、すごく面白かったですね。

大朏 それに、すごく美味しかったですよね!(笑)

──ちなみにおふたりとも、チーズとワインがお好きだったのでしょうか?

大朏 チーズは大好きですが、ワインは...、私はそもそもお酒が弱いんです。赤ワインも1杯で酔ってしまっていたので、あんまり得意ではなかったんですが、オーガニックワインだったら飲めることが今回わかりました。

直井 僕もチーズは苦手じゃなかったし、こんなに種類があると知って、色々食べるようになりましたが、ワインはどちらかというと苦手だったんですね。でも、大朏さんが言うようにオーガニックワインって酔わないので、最近は買うことが多くなってきましたね。

大朏 やっぱり自信を持ってお届けできるものを選ぶためにも、自分たちでしっかり味を確かめたいですから、オーガニックワインが飲めるようになったのは嬉しいですね。

──今後のECの展開として考えていることはありますか?

直井 チーズを買ってくださった方が、ワインも買ってくださる。そうやって輪が連なっていくようなものを今後もどんどん広げていきたいと思っています。例えば、チーズに合うワインをご紹介しているので、今度はオーガニックワインに合うなにかをご紹介していきたいといったイメージですね。

大朏 私が担当している作品ではありませんが、1月から『The Wine Show -極上のワインに魅せられて-』という番組がWOWOWで放送されますので、また新たなワインの魅力を楽しんでいただけると思います。

181226_wine_02.png『The Wine Show -極上のワインに魅せられて-』

直井 『The Wine Show -極上のワインに魅せられて-』でも、番組に出てくる世界のいろんなワインをwowshopで定期便としてご用意する予定です。『チーズ!チーズ!チーズ!』で培ったノウハウを活かして、最初から定期便でお届けしようと思っているのでご期待ください。

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『チーズ!チーズ!チーズ!』は完全に私の"偏愛"です(笑)

──『チーズ!チーズ!チーズ!』だけでなく、海外ドラマなど、作品の買い付けを多く手がける大朏さん。海外の作品を日本へ持ってくる際の「こだわり」はどこにありますか?

大朏 「日本でなかなか観られないもの、あまり似たような作品がないもの」ということを大事にして、文化の架け橋になりそうなものを見つけるようにしています。それから、「WOWOWのお客様に好んでいただけそうかな?」というのも考えます。視聴データからお客様の好みを分析するのももちろんありますが、それだけではない何か......「多様性があったり、これまでとはちょっと視点が違うけれど、WOWOWのお客様に楽しんでいただけるんじゃないかな? どうかな? いけそうかな?」って(笑)、考える時間は好きですね。

──WOWOWのM-25旗印では「偏愛」をキーワードとしていますが、大朏さんがお仕事をするうえで「これだけは外せない」と思うことは何でしょう?

大朏 最終的には「自分がどれだけその作品に愛情があるか」だと思います。『チーズ!チーズ!チーズ!』も『クリミナル・マインド FBI行動分析課』も、私すごく好きなんですね。「担当者自身が、その作品を心から好きかどうか、どれだけ愛着があるか」って、仕事に反映されるのかと思います。思い入れがないと、手間がかかるようなことは恐らくやらないでしょうし。

そういう意味でも『チーズ!チーズ!チーズ!』は完全に私の"偏愛"です(笑)。周りからも若干引かれるくらい力を入れていました(笑)。社内報にも自主的に記事を書いたりしていました。

──今後、挑戦してみたいことは?

大朏 現在の私の仕事は洋画・邦画の買い付けがほぼ9割で、次に海外ドラマの買い付けですが..."偏愛"の観点から言うと(笑)、ライフスタイルのジャンルの開拓に興味があります。。NHKさんで放送している『レイチェルのキッチンノート』も大好きで、ああいった、いままでの料理番組とはちょっと違う切り口のものとか、これまでにないようなものに注目しています。もう何年も行けていませんが、MIPCOMに行って、何があるかわからない作品群のなかから選んでくるような仕事は本当にワクワクしました。

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マヴィさんからのメッセージ
"土地の土壌や、その年の気候が味わいに強く反映される"というのがオーガニックワインの特徴なので、まずはチーズの生産地に近いところで作られたものをピックアップして、それからチーズとの味わいの組み合わせを考えながらワインを選んでいます。

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フェルミエさんからのメッセージ
番組のなかで色々なチーズをご紹介されていますが、フェルミエで扱っていないチーズもありますので、なるべく近い味わいの、テーマに合ったチーズを選んでいます。定期便につけるチーズの説明書を毎月楽しみにされているお客様もいらっしゃるようです。

取材・文/とみたまい 撮影/祭貴義道  制作/iD inc.