今年、最も輝いていた演劇作品や演劇人は? 「勝手に演劇大賞2019」第10回記念スペシャルトークイベント開催!
「WOWOW presents 勝手に演劇大賞2019」の第10回開催を記念したWOWOW加入者招待のスペシャルトークイベントが12月8日(日)、東京・赤坂のWOWOW本社で行われ、フリーアナウンサーの中井美穂さん、演劇ジャーナリストの徳永京子さんが出席。さらに劇団☆新感線の主宰・演出家で、昨年の「勝手に演劇大賞」で演出家賞に輝いた、いのうえひでのりさん、元宝塚歌劇団・雪組トップスターの早霧せいなさんがスペシャルゲストとして駆けつけた。なお、投票期間は12月31日(火)まで。まだまだ間に合います!
演劇ツウは、年間にどれくらい観劇している?
抽選で選ばれたラッキーなWOWOW加入者25組50名が駆けつけたトークイベント。
「きっと演劇がお好きな皆さんに集まっていただいたと思います。楽しく演劇のお話ができたら」と徳永さんの挨拶で"幕があがる"と、話題は早速「2019年に見た演劇の本数」に。果たして、名だたる演劇ツウの4名は、年間にどれくらい観劇しているのか? 「今年は60~80本くらいは観劇できた」と明かすのは、いのうえさんだ。
「よくツイッターで『劇場でいのうえを見かけた』って書かれています(笑)」と照れ笑いを浮かべ、「まず演出家。信頼している演出家さんだと、安心して見られるから。周りで演劇をよく観ている連中から薦められると、それを観に行ったり」と劇場に足を運ぶ"基準"を語った。
「いのうえさんのお隣で観劇したこともありますよ!」と声を弾ませる早霧さんは、「以前はミュージカルが多かったですが、最近はストレートプレイを観る機会が増えましたね。今年は10本くらいじゃないでしょうか」。
中井さんは「今年は世界陸上がありまして(笑)、ドーハに2週間。前後に勉強会と反省会があったので、あまり観ていない」と前置きしたうえで、「200本くらいですね」。これには客席から「えー」と驚きの声が。さらに徳永さんから「11月末の時点で、300本観ています」と、さすがの回答が飛び出すと、客席はもちろん、ゲストの皆さんも尊敬のまなざしを注いでいた。
いのうえひでのりさん、早霧せいなさんが2019年のイチオシ演劇を語る
そんな演劇ツウの4人が2019年、特に印象的だったタイトルとは? いのうえさんが挙げたのは、高田聖子さんが主宰するユニット・月影番外地「あれよとサニーは死んだのさ」だ。「介護の話だけど、まっすぐには描いていなくて。どこに終着点があるのか、スリリングな感じ。収め方も含めて面白かった」と振り返り、「久しぶりに演劇らしい演劇を観たという感じ」と熱っぽく語った。「ノゾエ(征爾)君が本を書いたのも大きいのかな。それに俳優がみんな上手い。池谷のぶえさんと、いりぽん(入江雅人)、それに、ほりぶんの川上友里さんが......」(いのうえさん)
早霧さんは"ほりぶん"にすかさず反応し「ほりぶん観ました! めちゃくちゃ素敵ですよね。川上さん、大好きになりました」と思わず笑顔。その早霧さんは、ミュージカル「キンキーブーツ」と、こまつ座「イーハトーボの劇列車」の2作品をチョイス。「初演を観られなかった後悔も含めて。三浦春馬さん、すごいですね。舞台上での"化け方"と言うか......。『キンキーブーツ』は舞台と客席の温度感がすごくて。『イーハトーボの劇列車』の松田龍平さんは、ひょうひょうとした謎の部分が良さになり、その意外性にやられた。ファンになりました」(早霧さん)
中井美穂さん「ピピン」は「本当に良かった!」
中井さんも「キンキーブーツ」、さらにミュージカル「ピピン」を「本当に良かった!」と絶賛。また、3部作10時間の長編戯曲「グリークス」、下北沢に出現した劇団唐組の紅テントといった多様な舞台にも足を運び、「観客の連帯感を久しぶりに味わった。これぞ演劇の醍醐味!」と語った。
年間300本観劇を誇る徳永さんは「3本に絞りました」と前置きし、M&Oplaysプロデュース「二度目の夏」、シス・カンパニー「死と乙女」、そして橋爪功主演「Le Père 父」を厳選。「死と乙女」については、主演の宮沢りえさんを「これまででトップの仕事をした」と賛辞を贈った。
2020年、演劇界の未来はどこに向かう?
2019年を振り返った4人。そして、会場に駆け付けた演劇ファンが次に気になるのは、やはり2020年の演劇界の動向だ。「今年はジャニー喜多川さん、昨年は浅利慶太さんと時代のベースを作ってくださった方々が亡くなりました。一方で、宝塚や2.5次元、それにミュージカルの市場が広がっていて、力を入れる事務所さんも増えている。世の中の変化を敏感に映すジャンルなので、ベースをつなぎながら、演劇はこれからも変わっていく」(徳永さん)
トークイベントの後半では、来場したお客様から質問を受けつけるコーナーも。「おすすめの劇団は?」の問いに、中井さんは大阪を拠点に活動する、劇作家・横山拓也による演劇ユニットiakuをチョイス。また徳永さんはゆうめい、コトリ会議、関田育子と3つの劇団を挙げ、「WOWOWも観つつ、ぜひ劇場にも足を運んでください」とアピールしていた。
いのうえさんは劇団の主宰・演出家の立場から「まずは自分たちなりにアンテナを張って、まずは自分が面白いと思えるもの。そしてお客さんにも楽しんでもらえるものとの釣り合いをとる感覚を保っていきたい」と抱負。「よく『儲かってるでしょ?』と言われますが(笑)、例えば『髑髏城の七人』はシーズンごとにセットを変えているため古いセットの処分だけで、数百万円もかかるので、意外ときついですよ」と裏話も飛び出した。
早霧さんは「17年間どっぷりミュージカルでしたから、今は吸収どきで、数多くの舞台を観たい。スキルを温存させるのは、もったいないので(女優としての)第2章に活かしていければ」と抱負。
大いに盛り上がったトークイベントは気が付けば、早くも終了時間を迎えて、中井さんは「えっ? もう時間ですか? 2時間でも3時間でも話していられるのに」と名残惜しそうな表情だった。
最後は来場したお客様とのじゃんけん大会も行われ、勝者1名に観劇がさらに楽しめるカブキグラスがプレゼントされた。
勝手に演劇大賞 公式ページ https://www.wowow.co.jp/stage/engeki/
投票は12月31日まで。 みなさまの熱い1票をお願いします。受賞結果は2020年2月下旬発表予定です。
取材・文/内田涼 撮影/祭貴義道 制作/iD inc.