「第2回ノーバリアゲームズ」開催! 熱戦、接戦に松岡修造が熱いエール!車いすバスケ男子銀メダリストをはじめ、アスリートたちも集結!
WOWOWが2016年から国際パラリンピック委員会(IPC)との共同プロジェクトとして放送・配信してきた「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」。同番組をきっかけに生まれた、性別や年齢、国籍、障害の有無などにかかわらず、誰もが一緒に参加できる新しいカタチのユニバーサルスポーツイベント「第2回 ノーバリアゲームズ ~#みんなちがってみんないい~」が11月21日(日)に東京・豊洲エリアにあるTOKYO SPORT PLAYGROUNDにて開催された。
2019年に開催された第1回に続き、MCを務めた松岡修造をはじめ、ゲストとして多くのアスリートたちが参戦! 髙阪剛(総合格闘家)、東尾理子(プロゴルファー)、安永聡太郎(日本人初のサッカースペインリーグ出場選手)、大西将太郎(ラグビー元日本代表)、亀海喜寛(元OPBF東洋太平洋ウェルター級チャンピオン)、一ノ瀬メイ(パラリンピアン(水泳))、木村潤平(パラトライアスロン日本代表)、瀬立モニカ(パラカヌー日本代表)、豊島英(車いすバスケットボール元日本代表)、鳥海連志(車いすバスケットボール日本代表)がチームに分かれて、一般の参加者たちと共に汗を流し、奮闘した。
メダリスト、元プロアスリート、障がい者、健常者が同一チームで協力し合って奮闘!
同イベントは、「WHO I AM」シーズン2にも出演したイタリアの車いすフェンシング選手で、東京パラリンピックにおいて、リオデジャネイロに続き2大会連続金メダルを獲得したベアトリーチェ・ヴィオ選手と彼女の両親がイタリアで開催しているイベントに着想を得て企画されたもの。参加者は、上述のアスリートたちに加えて、子どもから大人まで障がいのある人や健常者などさまざま。彼らがピンク、グリーン、ブルー、イエローの4チームに分かれて、ユニークな6つの競技に挑み、得点を競った。
参加者たちは、それぞれのチームカラーのパーカーを身にまとっており、開会式が始まる前から、チームごとに集まり、自己紹介や作戦会議を行なうなどして士気を高めていた。
開会式で挨拶に立ったWOWOWの田中晃社長は、コロナ禍もあって、第1回大会の開催から2年以上が空いたことを念頭に、「おまたせしました! 東京パラリンピックから2カ月半。次は私たちの番です! 『WHO I AM』プロジェクトは、いままで以上に行動しようと思っています。仲間たちと一緒にいろんな活動を行ない、一歩を踏み出し、車輪を回して、少しでも社会を前に進められたらと思っています。『みんなちがってみんないい』――素晴らしい世界を見せてやろうじゃありませんか。第2回ノーバリアゲームズ、開幕です!」と語り、あらためて東京パラリンピックが終わっても、「WHO I AM」プロジェクトを継続していく意思を表明した。
続いて、MCの松岡さんが登場すると、会場のボルテージが一気に上がる。松岡さんは開口一番「まずはみんなの"本気"を知りたい」と語り、「ノーバリア......?」と呼びかけると、参加者たちは「ゲームズ!」と応じ、さらに「みんなちがって......?」の声に「みんないい!」と熱いコール&レスポンスを繰り広げる。さらに松岡さんは、この大会のために、長野県からひとりで電車に乗ってここまで来たという参加者の少年を紹介し、会場は温かい拍手に包まれる。
ゲストアスリート陣も、やる気満々! 東京パラリンピックのパラカヌーで7位入賞を果たした瀬立選手は、地元(江東区)の出身ということもあって「2カ月ぶりに闘争心が燃えたぎっています! パラリンピックと同じく地元開催ですので、優勝目指して頑張ります」と語り、髙阪さんも「僕は格闘家。勝ったか負けたかしかないので勝ちに行きましょう!」と気合十分。車いすバスケットボールで銀メダルを獲得し、日本中を沸かせた豊島さん、鳥海選手もそれぞれ「全力で頑張ります。笑顔を忘れずに頑張りましょう!」(豊島さん)、「みんなで楽しみましょう!」(鳥海選手)と笑顔で意気込みを語っていた。
松岡さんによる「心をひとつに! ノーバリアゲームズ!」という開会宣言に続いて、いよいよ競技がスタートする。
風船運びやジェスチャーに悪戦苦闘? 臨機応変にチームで協力しながら奔走!
まず最初に行なわれたのは「みんなで作ろう!~風船ツリー~」。3人一組で広げたバスタオルの上に載せた風船を運び、オブジェに風船を飾りつけ、完成までのスピードを競うというゲーム。しかも、風船を運ぶ前に、オリンピック、パラリンピックに関連した"ジェスチャーゲーム"に正解しないといけないという難関も待ち構える。2分の作戦タイムののち、競技が開始された。
いざ始まってみると、風船はフワフワと漂うため、バスタオルの上に載せて運ぶというのはかなり難しい様子。さらにその前のジェスチャーゲームでも難問が続出! なぜか「松岡修造」をジェスチャーで表現せよという超難問も......! ラグビー元日本代表の大西さんからは「(ジェスチャーで)"国立代々木競技場"とか、分かるわけないでしょ(笑)!」とツッコミも飛ぶ。ゲーム中、松岡さんは、子どもたちひとりひとりを下の名前で呼びながら、熱いエールを送り続け、ゲストアスリート陣も子どもたちや車いすの参加者たちと一緒になって、風船運びやジェスチャーに悪戦苦闘していた。
鳥海選手に負けじ! 車いすをみんなで持ち上げてシュート「みんなちがってみんないい」
続いて行なわれたのは「みんなで競おう!~バスケットボールタイムバトル~」。各チーム、2人一組でひもで輪を五つ作り、輪と輪の間にひとりずつ計5人を配し、バスケットボールを輪の間に通しながらパスをつないでいくという競技。さらに体内時計で"1分"だと思うタイミングで、バスケットゴールにシュートを放ち、シュートが決まった時のタイムが1分に最も近いチームが勝利となる。
こちらもかなり難しいゲームで、バスケットボールを輪に通してパスをつないでいくのも簡単ではなく、さらにプレーしながら自分たちで1分数えなければならない。しかも、参加しないチームが横でマラカスを鳴らすことで体内時計を狂わされ、難易度はさらにアップ。また「いまが1分!」と思っても、そのタイミングでシュートがすぐに決まるとは限らない。
グリーンチームは最後のシュートを打つポジションに"本職"である鳥海選手を配置し万全を期す。一方、ブルーチームはあえてシューターに小さな少女を起用し、大人が少女を抱き上げてゴールに近づけることでシュート成功率を上げようと画策! それぞれのチームがメンバーの個性に合わせてユニークな作戦を繰り出していく。
どこまで1分に近づけるのか......? 実際に各チーム3ラウンドずつプレーしてみると、最下位のグリーンチームでも最高記録が「1分3秒」とわずか3秒の誤差! 1位のイエローに至っては「1分1秒」を2度も記録するなど、予想を裏切る大接戦、好勝負が繰り広げられた。
またせっかくバスケットボールをベースにした競技ということで、豊島さん、鳥海選手の2人が参加者たちの前でデモンストレーションとしてプレーを披露! 銀メダリスト2人の競演に会場は大きな盛り上がりを見せた。
さらに競技の終了後には「大逆転チャンスのフリースローチャレンジ」と銘打って、ボーナスステージとも言えるフリースローのチャンスが各チームに与えられ、各チームから3名ずつ参加。障害のために腹筋を使うことができない車いすの少年が果敢にシュートに挑み、失敗に終わるもそのチャレンジに会場は温かい拍手に包まれる。また、ここでも車いすの女の子を男性陣がガッチリと担いで持ち上げ、ゴールに近づけてシュートを成功させるなど、各チームの工夫が光る。
ある女の子は、何度か失敗を繰り返しながらも最後に見事にシュートを成功させ、思わず涙! これには松岡さんも「最高だよ! あきらめずによかったじゃん。おめでとう!」と熱い祝福の言葉を贈っていた。
3つ目の競技は「みんなでつなごう!~障害物大玉リレー~」。全長280メートルのトラックを利用した大玉転がしで各チームのタイムを競うというものだが、当然、トラックの随所に障害物やトラップが......。ジグザグの道にシーソーの一本橋、さらには他チームからの妨害も! またゴール前では大玉を担架に載せて、複数の担架をつなぎながらゴールまで運ばなければならず、息の合ったチームワークも要求される。ここでも各チームはメンバーに合わせて作戦を講じる。
大西さんはラグビーさながらの突進を見せ、会場を沸かせる。また大玉を転がしながら疾走する安永さんの横を車いすの少年が伴走し、敵チームからの妨害から安永さんをしっかりとガードする姿や、車いすを巧みに操り担架を運ぶさまも見られた。
続いての競技は「みんなで入れよう!~かごが動く玉入れ~」。この競技は、各チーム代表の3名がかごを背負ってエリア内を動き回り、相手チームが制限時間内にそのかごを狙ってボールや風船を投げ入れていくゲーム。逃げ回る3名はゲームエリア内のあちこちに置かれたコーンを、ボールなどを入れられないように回収しなければならない。さらに、MCの松岡さんの笛が鳴ったら、プレイヤーはかごを持ったままその場にストップしないといけないルールもあり、そのタイミングで敵チームはここぞとばかりボールを投げ込んでくる。ここでも車いすのプレイヤー、健常者、ゲストアスリートたちが入り乱れて熱戦を繰り広げた。
続いて行なわれた「みんなでつなごう!~ボディパーカッションリレー~」はリズム感と記憶力を駆使して行なうダンスゲーム。「WHO I AM」シリーズのオリジナル音楽制作を務めた梁邦彦さんがこの日のために手掛けた楽曲に合わせて、5人一組でチームのメンバーが即興でダンス、振り付けを付けていき、前のメンバーの付けた動きを繰り返し、さらに自分の番になったら新たな振り付けを加えてつないでいくというもの。いかに動きと順序が覚えやすい振り付けを付けていくか? 各チームともプレーしながら工夫を重ねていく姿が見られた。
小雨がちらつく中でも全員完走! 子どもたちの笑顔がくれたもの
そして、この「ノーバリアゲームズ」の大トリを飾る最後の競技は「みんなで走ろう!~280mリレー~」。ほうきをバトン代わりにして1周280メートルのトラックを4周して競う。車いすのプレイヤーもプロアスリートも全員が全力疾走でバトンをつなぎ、最後のチームがゴールすると大きな拍手が湧き起こり「お疲れさん!」「頑張った!」と互いの健闘をたたえ、声を掛け合う姿が見られた。
この日は開会式の前からどんよりとした雲に覆われており、競技中には小雨が降り始めたが、それでも中断することなく最後まで無事に全競技が行なわれた。いずれの競技も誰もプレーしたことのないゲームということで、実際にやってみないとどうなるのかわからない部分も多かったが、各チームも運営側も柔軟に対応。特に目立ったのは、各チームともルールやメンバーの障害を逆手に取って活かそうとする姿。リレーにおいて、トラックの下り坂のコースにあえてスピードの出やすい車いすのメンバーを配するなど、工夫を凝らして障害を"個性"としてチームの力を最大限にするために活用するさまが見られ、パラリンピアンも元アスリートも子どもたちも一緒に汗だくになって疾走、悪戦苦闘する姿が印象的だった。
月に1回開催を熱望? 参加者たちが体現・証明した"ノーバリア"
全競技終了後に行なわれた閉会式ではゲストアスリートたちが独自に選んだ「個人賞」を発表。髙阪さんは晴れ晴れした表情で「1+1が2じゃなくて掛け算になっていく、人と人の輪が積み重なって大木となり、大きな力が生まれるんじゃないかと感じました」と語る。
木村選手は「オンラインもいいツールですが、リアルで楽しめるって素敵だなとあらためて感じました」と実際に仲間と共に身体を動かして楽しむことの素晴らしさを強調。瀬立選手も「すごい熱気で、寒さも吹き飛ばしてしまうくらい、熱くなれたレース、イベントでした」と笑顔を見せる。
安永さんは「それぞれが、ぞれぞれの立ち位置で自分が何ができるのか?と考え、チームとして出来上がっていく姿が美しいなと思いました」とさまざまなメンバーが一緒にプレーするこのノーバリアゲームズならではの魅力に言及。亀海さんは「マスク越しですけど、ずっとニコニコしていて、ほっぺたが痛いくらいです」と心の底から楽しんだ様子だった。
豊島さんは「みなさんの笑顔が僕の力になりました」と語り、鳥海選手も「WOWOWチームとして盛り上げてこいと言われて来たけど、逆に僕らが子どもたちにパワーをもらいました。楽しかったです」と参加者から大いに刺激を受けたよう。
大西さんが「みんなでひとつの空間でこういうことができる瞬間を待ってました! またここからみんなで進んでいきましょう!」と呼びかければ、東尾さんも「『お疲れさま』って言える待ちに待った2年越しのイベントで、こんなに気持ちよく体を動かして、一緒に何かをし、心も体も温まって何とも言えない良い疲労感を感じました」と充実した表情で語る。そして、一ノ瀬さんが「年に1回と言わず、月に1回やってほしいです!」と言うと、会場は期待を込めた温かい拍手に包まれた。
ちなみに競技結果は4位がブルーチーム、3位がピンクチーム、グリーンチームとイエローチームが同点で並んだが、代表者によるじゃんけんでイエローチームが見事、優勝となり、メンバーにメダルが授与された。
松岡さんは、会場に置かれたボードに参加者たちが貼り付けたメッセージについて言及し「一番多く書いてあった言葉は『楽しむ』でした。みんなが楽しんでいた時、バリアはなかったです。楽しんでいる時は、最も"WHO I AM"――自分らしくいられるということを学びました」と語り、最後にもう一度、全員で「みんなちがってみんないい!」とコールし「第2回ノーバリアゲームズ」は幕を閉じた。
閉会式後には松岡さん、木村選手、一ノ瀬さん、豊島さん、鳥海選手が報道陣の取材に応じた。
松岡さんはイベントを終えて、まずはコロナ禍もあって昨年は開催できなかったことに触れ、「ずっとやりたかったイベントでした。昨年はオンラインで、今回もできるかどうか不安でしたが、最後はWOWOWさんを含め、チームの『やろう』という想いでできた感じです。参加した人たちもノーバリアへの想いが強くなっているし、つなげていこうと思えた。そこが一番よかったと思います」と語った。
木村選手は「とにかくみんな楽しんでくれて、参加者はもちろん、携わってくれた学生さんたちも僕らゲストも一緒に楽しくハシャげて、いい思い出になったと思います。こういうイベントがもっと増えていけばと思います」と感想を口にした。
一ノ瀬さんは「とにかく楽しかった! まだオリンピックとパラリンピックで試合が別だったりするけど、こうやって一緒にやっちゃえばできるやん! って今日のイベントが証明してくれたと思う」とノーバリアゲームズが新たな可能性を示したと語る。
鳥海選手も「今日で、いろんなバリアが解けたと思います。『車いす? だからなんだ? みんなで持ち上げれば届くじゃん』という成功体験は、子どもたちの成長につながると思うし、僕らも子どもたちからエネルギーをもらい、楽しむことを学ばせてもらいました。いろんな意味でのノーバリアをみんなの力で証明できたと思います」と語り、豊島さんは「種目は結構難しかったけど、工夫しながらできること、支えてもらったらできることなどを考えるきっかけになり、子どもたちにも生活する上で大事なことを学んでもらえたんじゃないかと思います」と笑顔で振り返った。
松岡さんは各ゲームについて「相当難しかったけど、それが良かった。説明されてもわかんないから、やっていく中で理解してつながっていく――それがノーバリアゲームズらしい」と語り、木村選手も「みんなが工夫して、臨機応変にルールをうまく噛みくだいて、変えていき、楽しめるようにするって、社会でも必要なこと。それが体現されたイベントで勉強になりました」と語る。
鳥海選手は「リレーで下り坂を全力で下って『俺、速かったよね?』という子どもの声を聞いて『すげぇな』と思いました。僕は私生活であまり車いすに乗らないので、(下り坂は)怖いんですね。でも子どもたちは恐怖を感じず、ただ競技に全力でまぶしかったです」と子どもたちの姿に圧倒された様子。
そして松岡さんはあらためて「こういう機会を継続していくことを大事にしたい」と継続の重要性を強調し、木村選手、一ノ瀬さん、豊島さん、鳥海選手もそれぞれ深くうなずいていた。
取材・文/黒豆直樹
「第2回 ノーバリアゲームズ ~#みんなちがってみんないい~」ハイライト動画
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