ユニバーサルスポーツを考案せよ!WHO I AM PROJECTが筑波大学附属坂戸高等学校とコラボレーション
2023年1月にリニューアルして再始動したWOWOW オリジナル 「WHO I AM」シリーズ。
WHO I AM PROJECTでは、2016年のスタート以来、ドキュメンタリーの放送・配信だけでなく、「放送はゴールではなくスタート」を合言葉に、プロデューサーによる講義、映像の教材化、書籍化・コミック化、ユニバーサルスポーツイベントの立ち上げ、企業とのコラボレーション、WHO I AM HOUSEの一般オープンなど、映像を基軸としたさまざまな展開を実施してきた。そして、TOKYO 2020が終わり、WHO I AM PROJECT活動も次なるフェーズに入り、新たな取り組みをスタートした。
これまでは、番組プロデューサーが講義のために大学や高校などの教育現場へ出向くことがあったが、より持続性のあるメニューを開発すべく、2022年7〜11月の4カ月にわたり、WHO I AM PROJECTと筑波大学附属坂戸高等学校がコラボレーション。高校生たちが「ユニバーサルスポーツを生み出す」過程で一緒に活動することとなった。
埼玉県坂戸市にある筑波大学附属坂戸高等学校では、保健体育科「スポーツを科学する」と、福祉科「援助コミュニケーション技術」の合同授業の一環として、ユニバーサルスポーツ(アダプテッドスポーツ)を考案し、特別支援学校の生徒と一緒に実践するスポーツ交流授業を毎年行なっている。生徒たちは10月の筑波大学附属大塚特別支援学校、11月の筑波大学附属桐が丘特別支援学校とのスポーツ交流授業に向けて、4カ月かけてオリジナル競技を開発していく。
一方のWHO I AM PROJECTでも、年齢・性別・国籍・障害の有無を問わず、誰もが参加できる新しいカタチのユニバーサルスポーツイベント「ノーバリアゲームズ ~#みんなちがってみんないい~」を2019年に立ち上げ、これまで2回実施してきた。この知見を活用いただくべく、WHO I AM PROJECTメンバーが授業に参加するSPコラボレーションが実現した。
まずは第1回。7月上旬に番組プロデューサーの太田と畑が坂戸高等学校へ出向き、「WHO I AM」シリーズについて、そして「ノーバリアゲームズ」立ち上げの経緯や想い、ユニバーサルスポーツを考案する際のアドバイスや役に立つポイントなどを映像とともにレクチャー。「ノーバリアゲームズの次回開催が決まったら絶対行きたい!」と、短い時間ながらノーバリアゲームズの大ファンになった生徒もいた。
この授業の後、生徒たちは夏休みの課題として、グループに分かれてユニバーサルスポーツの考案に取り組んだ。
続く第2回は、夏休みが終わった9月上旬。太田に加え、WHO I AM PROJECTメンバーであり、元車いすバスケットボール日本代表キャプテンである豊島英が、坂戸高等学校を訪問した。生徒たちは夏休み期間中に考案したオリジナル競技をグループごとに体育館でプレゼンし、その後みんなで意見交換を行なった。
太田は「ノーバリアゲームズ」の企画運営側の視点から、豊島は前回のノーバリアゲームズ参加者、そして車いすユーザーの視点からアドバイス。東京パラリンピックで、チームを銀メダル獲得に導いた豊島のリアルな言葉を、生徒たちは真剣に聞いていた。しかし、まだイメージが湧いていないのか、心のスイッチが入っておらず「スポーツを楽しむ」意識は100%に至っていなかった。
そして第3回目は、10月中旬。太田と畑が放課後に訪問した。この頃には、生徒たちが議論を重ねてオリジナル競技を固め、手作りの道具や備品なども用意し、具体的な競技の説明ができるようになっていた。"学生らしく、色鮮やかで楽しそうなオリジナル競技!!"しかし、オリジナル競技だけに、ゼロから人に何かを伝える難しさに直面する様子も見受けられた。"誰もが楽しむことのできるルールを"と考えるうちに、どんどん複雑になってしまっていたのかもしれない。すかさず、太田が「坂戸生のみんなが楽しめないと、交流授業に参加してくれる生徒が楽しめるはずがないよ!」とアドバイスすると、生徒たちの目に力がみなぎったのを感じた。
今回完成させたのは、「ターゲットポイント」というスポーツ。大きな円状のフィールドの中に、さまざまな点数のターゲットを置き、外側からボールを投げて、倒した合計得点を競う。ボウリングとボッチャをミックスさせたような競技である。ターゲットの倒れやすさや、ボールの形状や重さにバリエーションを持たせ、ボールを転がすスロープ(ランプ)も用意することで、どんな人でも楽しめるスポーツとなるように工夫が凝らされている。倒すのがとても難しい高得点のターゲットもあり、さまざまなターゲットの中から自分で狙いを決められるところが面白いスポーツだ。
いよいよ10月29日、1度目の本番の日となった。筑波大学附属大塚特別支援学校にて、知的障害のある生徒たちとのスポーツ交流授業。大塚の生徒たちは、坂戸の生徒たちの緊張を打ち消すような明るさとフレンドリーさで迎えてくれた。開会式では、各校生徒のあいさつと、ゲーム説明を行なった。坂戸と大塚の生徒で六つの混合チームを作り、各チームでチーム名を考え「おにく」や「修学旅行に行きたい」など、個性豊かなチーム名が並んだ。
早速、二つのフィールドに3チームずつで分かれ、「ターゲットポイント」の試合がスタート。チーム内でルールを確認し合ったり、作戦会議をしたり、メンバー同士で密なコミュニケーションを取りながら順番にボールを投げていった。倒したターゲットは、次のターンで好きなところに置き直すことができるので、すべて集めてタワーのような巨大ターゲットを作り倒しやすくするなど、戦略的なチームもあった。チームの絆がどんどん深まり、両校の生徒たちが一緒になって楽しんでいた。優勝は「カラフルミックス」「ライオン」の黄色チーム!大盛り上がりの中、最後はターゲットを手にみんなで集合写真を撮り、名残惜しそうに解散となった。
そして11月15日、2度目は筑波大学附属桐が丘特別支援学校の肢体に障害のある生徒たちとのスポーツ交流授業。桐が丘の参加者数が坂戸の半分ほどだったこともあり、前回よりも緊張感の残ったスタートだったが、WHO I AM PROJECTメンバーからの「本番ではルールよりも場の雰囲気作りが大切!」というアドバイスや、大塚特別支援学校での経験が役立ち、坂戸の生徒たちはエネルギッシュな司会や掛け声で場を盛り上げていた。また前回からの改善点として、スポーツを始める前に、アイスブレイクの時間が設けられた。輪になってあだ名を覚える記憶力ゲームを行ない、チーム外の生徒たちともより広く交流し、打ち解けることができた。
ボールを投げることが苦手な生徒も、スロープ(ランプ)を使ってうまくターゲットを倒し、高得点を出していた。そして、ゲームがどんどん白熱してくると、それまで車いすでゲームに参加していた生徒たちが立ち上がり、「本気で倒す!」という気迫でボールを投げていた。ここまでに熱の入ったゲームとなったのは、ユニバーサルスポーツとしてのルール作りはもちろん、やはり良い場作りができた結果だ。優勝は「映画2近日公開」のピンクチーム!最後は、ターゲットのコップをかぶったり、全員で仲良く集合写真を撮って解散した。
それぞれのスポーツ交流授業で優勝したのは、特に盛り上がっていたチーム。みんなが一つになって全力で楽しむことの大切さは、生徒たちに深く響いたようだ。スポーツ交流授業後、筑波大学附属坂戸高等学校の皆さんには、ダイバーシティー&インクルージョンな社会を牽引する存在になっていくだろうという輝きが見えた。 WHO I AM PROJECTとしても、生徒の皆さんが生み出したユニバーサルスポーツを、今後のノーバリアゲームズへ取り入れられないかなど、さらなる交流へとつなげていけたらと考えている。
ノーバリアゲームズとは
「WHO I AM」シリーズ発の新しいカタチのユニバーサルスポーツイベント。「#みんなちがってみんないい」をテーマに、年齢も性別も国籍も障害の有無も問わず、誰もがスポーツの楽しさを感じながら、みんなで体を動かすことのできるイベント。
関連情報
<WHO I AMシリーズ全作品 WOWOWオンデマンドで配信中>
「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM パラリンピック」(全3作品)
エレナ・クラフゾウ(ドイツ/水泳)
サルーム・アゲザ・カシャファリ(ノルウェー/陸上)
鳥海連志(日本/車いすバスケットボール)
「ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM LIFE」(全3作品)
ヴィクトリア・モデスタ(バイオニック・ポップ・アーティスト)
チェラ・マン(アーティスト)
マイケル・ハウウェル(作曲家)
「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」(全40作品)
2016年から2021年に初回放送した全40作品
<WOWOW WHO I AM PROJECT最新情報>
公式サイト
公式Twitter
公式Instagram