2019.11.21

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秋の京都で『W座からの招待状』の公開収録が実現! 名作あり! 笑いあり! 心づくしの料理あり! 小山薫堂&信濃八太郎も"リアルW座"に大満足

秋の京都で『W座からの招待状』の公開収録が実現! 名作あり! 笑いあり! 心づくしの料理あり! 小山薫堂&信濃八太郎も

WOWOWがいま見てほしい名作・佳作を紹介する「W座からの招待状」。2011年の開始以来、放送回数は400回以上を数え、あと1年で節目となる10周年を迎える。これを記念して番組ホストを務める小山薫堂さんとイラストレーターの信濃八太郎さんが京都に足を運び「秋の京都のW座」と銘打って公開収録を開催。抽選で選ばれた30名以上の視聴者を招待し、京都市内のミニシアター「出町座」にて映画の上映とトーク収録が行われ、さらに収録後には小山さんが主人を務める「下鴨茶寮」にて食事をしながらの懇親会も行われた。こちらのイベントの模様をレポート!

「W座のイメージそのもの!」 京都「出町座」でのイベント実現に喜び

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公開収録が行われたのは、上京区の出町柳商店街内にあり、クラウドファンディングを利用して開館した映画館で、書店とカフェが併設されている「出町座」。
以前から小山さんは、温かい雰囲気に包まれ、街の人々に愛されるこの出町座を「W座のイメージを具現化したような映画館」と評しており、ここでのイベントの開催を熱望していた。

kyoto_w-za_demachiza_irasuto.jpg信濃八太郎さんが描いた「出町座」

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当日は朝からあいにくの天気となったが、全国から同番組のファンが詰めかけ、客席は満席!
映画上映前のトークに登壇した小山さんは「(席が)埋まるのか不安でしたけど、こんな地味な番組の公開収録に...(笑)」と嬉しそうに語り、信濃さんも「普段、どんな方たちがWOWOWをご覧になってるのか、なかなかわからないんですが、『あぁ、こういう方たちがこの番組を見てくださっているんだな』としみじみと感じています」と番組ファンの顔を直接見られることへの喜びを口にする。

是枝裕和監督総合監修『十年』が描く「腹の底から響く重さ、矛盾」

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この日、上映されたのは是枝裕和監督が総合監修を務め、5人の若手監督がオムニバスでそれぞれ10年後の日本の社会を描く『十年 Ten Years Japan』。
上映後のエピローグトークにて信濃さんは今回、同作を上映作品に選んだ理由について「2011年にこの番組が始まって、この11月から9年目に突入し、いよいよ"10年"が見えてきた」と説明する。

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信濃さんは5編の中でも、75歳以上の高齢者に安楽死を推奨する国の制度について描いた、早川千絵監督の「PLAN75」を「ゾクっと来ました」と最も高く評価しており、小山さんも「僕もあの作品が一番好き」と同意する。
現実の社会では2042年に65歳の人口がピークを迎えるとされているが、信濃さん自身、この頃にまさに60代を迎えているとのことで、映画で描かれる問題を我がことのように捉えたよう。
5編がいずれも決して明るいとは言えない未来を描いている点にも触れ「明るい未来は待ってないんだな...と思いました」としみじみ。

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小山さんは、本作が仮定の未来を描きつつ「SF臭さがないところがすごい。リアルに静かに腹の底から響いてくる恐ろしさや矛盾があり、未来への不安が芽生えたなと感じました」と感嘆する。

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恒例の「招待状」に関して、小山さんは「自分にとっての10年って?」というテーマで書いたと明かし「自分にとって、10年はものすごく長いし、10年後って未来絵図のような気もするけど、歴史という視点から見ると"点"なんだなと」と語る。

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小山薫堂による「招待状」

一方、信濃さんは今回のイラストについて「若い人たちが撮った映画だからなのか『これから面白いものを作ってくれるんじゃないか?』という青い青春の感じがして、気づいたら(イラスト全体が)青っぽくなっていた」と明かした。

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信濃八太郎によるイラストレーション

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検索万能の時代に「自分好みではない」映画を見ることの意義と深さ

エピローグトークの最後に信濃さんは、改めてこの番組の魅力について「映画って、好みで選んでしまうものですが、こうやって番組の枠で選ぶと、自分では見向きもしなかった映画にもいろんな発見があるんですね」と語る。

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小山さんも信濃さんの意見に深くうなずき「最近の世の中は好きなものを検索できるので、自分の中に蓄えるというより、自分で興味のある情報だけを取りにいくことができるんですよね。そうやって、どんどん視野が狭くなってしまう中で、たまに苦いものや嫌いなものも食べることで、それが栄養になっていくんです。『W座』はまさにその文化版。僕自身、ホラー映画が大嫌いで、昔は音を消して見てたこともありましたけど(苦笑)、いまはちゃんと見るようになりました。人生を豊かにする装置としてこの『W座からの招待状』を活用していただけたら」と呼びかけ、会場は温かい拍手に包まれた。

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映画と勝手にコラボした(?)ラーメンも! 小山薫堂が考え抜いたコース料理を堪能

この後、場所を「下鴨茶寮」に移しての懇親会は、信濃さんによる「乾杯」の音頭でスタート。

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一同、小山さんが事前に料理長と話し合った上で決めた、旬の野菜や魚を存分に使用したメニューを堪能した。この日、上映された『十年 Ten Years Japan』の中の1編で、杉咲花さんがおいしそうにラーメンを食べるシーンがあることから、小山さんがこの日、急遽「ラーメンを出してほしい」と料理長にリクエストし、締めの一品として特製のラーメンを出すという心遣いも!

ここでのトークでは、事前に観客から寄せられた質問に小山さんと信濃さんが答える形で進行。来場客の席には、名札代わりにそれぞれが好きな映画のタイトルが書かれた札が置かれるという、映画好きの集まりならではの趣向が施されていたが、小山さんは最も好きな映画は? という質問に1994年のウォーレン・ビーティ版の『めぐり逢い』を挙げ「女々しいんですが(笑)。ちょうどニューヨークからの帰りの飛行機で見て、たまたまニューヨークで主人公と同じホテルに泊まってて、しかも飛行機の席も映画で主人公が座っていたのと同じで、完全にそのムードに同化して、ビーティのつもりで見てました」と明かす。

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一方、信濃さんは「一番を挙げるのは難しいけど、繰り返し見ている映画」として、ポール・オースターの小説をウェイン・ワン監督が映画化した『スモーク』を選択。「17か18歳頃の多感な時期に見て、いまでもあの頃の感覚を取り戻したいときに見ます」と語った。

また「お気に入りの時間の過ごし方は?」との質問に、信濃さんが「やっぱり絵を描いてる時間が一番楽しい」と答えたのに対し、小山さんは「お風呂に入っているとき。毎日1時間くらい入ります。お風呂で仕事もするし、『W座』の原稿もお風呂で考えることが一番多いです」と語った。

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懇親会が行われた「下鴨茶寮」

信濃八太郎が明かす、大先輩・和田誠さんとの意外な思い出

また、信濃さんは先日、亡くなったイラストレーターにして、映画監督、文筆家としても活躍した和田誠さんとの思い出も披露。「小学生のころから大ファン」だったそうだが、自身が勤めるギャラリーへ向かう道で、仕事場に向かう和田さんと毎日のようにすれ違っていたそうで、何度も挨拶をし、顔と名前を覚えてもらったというエピソードを明かす。そして「(和田さんとの交流の中で)一番、勉強になったことは『こんなに仕事をしていて、絵に悩んだことはないんですか?』と聞いたら『悩むくらいならやめちまってるよ』とおっしゃっていたこと。それから、和田さんは赤ワインにビールを入れて飲むのがお好きで『なんて飲み方をしてるんだ?』と驚きました。(料理研究家の)平野レミさんが奥さまなのに...(笑)」と意外なエピソードを連発し、会場は笑いと驚きに包まれていた。

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締めの挨拶で、小山さんは「こうやってみんなで映画を見て、ごはんを食べて映画の話とかを語り合えるって、いい企画だなと思います。こういうイベントをもっとやりましょうとお願いしたいと思います」と満足そうに笑顔を浮かべていた。

10周年に向けて新企画「信濃八太郎が行く」も始動! 夢は「W座」を舞台にした映画制作?

劇場でのトークでの信濃さんの言葉にもあったように、この11月で番組は9年目に突入し、あと1年で節目と言える10周年を迎える。既に様々な新たな試みが始動しており、今回のように地方のミニシアターでのトークショーや公開収録なども予定されている。

また、信濃さんが魅力的な映画館のある街を訪ね歩く「W座を訪ねて~信濃八太郎が行く~」も11月より月に1回のペースで放送されることも決定している。1回目の放送に向けて、まさにこの日、初めてのロケが行われたが、信濃さんは「ロケでサバ寿司をいただいたんですが、寿司の持ち方で怒られまして、1回で『これは無理だ』と萎えました(苦笑)。拙い喋りですが、全国を回って地方の映画館を応援できればと思います。面白いなと思うのは、単館系の映画館とWOWOWのような衛星放送局は競合するものなのかと思いきや『映画が好き』ということで協力してこういうことができるんですね。みんなで映画を盛り上げるためにひとつの流れを作って、うまく形にしていけたらと思います」と意気込みを語る。

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この番組が「まさかこんなに長く続くとは思ってもいなかった」という小山さんは、10年目に向けての目標として「リアルW座を作ること」を掲げ「できるならば、その映画館で掛ける作品を作ってみたいですね。それこそ『ニュー・シネマ・パラダイス』みたいに、その劇場を舞台にして作ったらいいかも」と作品づくりも含めた"野望"を告白。信濃さんも「ぜひそこの映画館の看板を描きたいです!」とうなずいていた。

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W座からの招待状 毎週日曜よる9:00 放送
「十年 Ten Years Japan」11月24日(日)よる9:00 放送

取材・文:黒豆直樹 制作/iD inc.