デジタルマーケティング×お客さまの生の声! WOWOWコミュニケーションズがもたらす新たな可能性
WOWOWコミュニケーションズ 杉本章 横関彩
WOWOWコミュニケーションズ(通称:WOWCOM)って何をしている会社かご存知ですか? コールセンターでのお客さま対応? WOWOWの“縁の下の力持ち”? それだけにはとどまらない、WOWOWの根幹を変えうる大きな可能性と魅力を備えた業務を展開中です。
今回、WOWOWコミュニケーションズマーケティング課でデジタルマーケティングに従事している杉本章と横関彩が多岐にわたるWOWOWコミュニケーションズの業務からデジタルマーケティングのもたらす変革、そしてWOWOWの未来についてまで、たっぷりと解説してくれます!
ただのコールセンターじゃない...? 未知の魅力、多様な人材がある!
――まずはお2人がWOWOWコミュニケーションズに入社されたきっかけについて教えてください。
杉本 2006年に新卒で入っているのですが、僕の入社がWOWOWコミュニケーションズとしては新卒採用の第1期だったんです。面接の空気がアットホームで面白そうだなと感じたのと、当時は「コールセンターの会社」という認識ではあったのですが、いろんなことができそうだなという雰囲気がありました。未知の魅力と言いますか...(笑)。それに誘引されるように入社を決めた気がします。
横関 私は学生時代にアルバイトでここ(=横浜本社)のコールセンターでコミュニケーターをやっていまして、実際にお客さまからの電話に出ていたんです。当時、ちょうど杉本さんが新卒で入社した時期で(笑)。
杉本 営業に配属になって...。
横関 当時、新人の杉本さんが、私たちアルバイトがいる部屋の先輩社員のところに駆け込んでくる姿をよく見てました(笑)。
WOWCOMの社風に関連してくると思うんですけど、人材の多様性がすごいんですよね。コミュニケーターって本当にいろんな人がいて、私が学生時代にバイトをしていた部署は女性ばかりだったんですけど、女子校みたいなものとは違って、私のような学生から60代の方まで年齢層もバラバラで、これがまあ本当に面白くてですね(笑)。面白い会社だなと思っていたら、ちょうど新卒募集をしていたので、そのまま入社しました。
――入社後のお仕事についてもお聞かせください。杉本さんは営業部に配属されたとのことですが。
杉本 そうです。営業といっても、当時はコールセンターしかやっていない会社だったので、「コールセンターはいかがですか?」という具合に他社にコールセンターを売るという仕事をしていました。
WOWOWコミュニケーションズの場合、売り上げの半分はWOWOW関連以外の業務なんです。WOWOWとの関係で言うと、WOWOWからコールセンター業務を受託しているという形になりますが、それと同様に「御社のコールセンターをウチで受託します」と営業します。その後、ホテルのコールセンターを運営する"スーパーバイザー"という役職で札幌に行きました。当時はWOWOWの業務とは全く関係ない仕事に従事していました。
その後、横浜に戻って、WOWOWカスタマーセンターに配属されたのですが、WOWOWカスタマーセンターにデジタル機能を導入するということが決まって、その立ち上げに参加しました。
――具体的にはどんなお仕事を?
杉本 最初はWOWOWのSNSアカウントを運用しての情報発信などをしていました。いわゆる"WOWOWの人"としてツイートをしたり、Facebookの更新をしたり。これもWOWCOMがWOWOWから請け負って、運用するという形でした。そこから派生してメンバーズアプリと呼ばれるアプリを作ったり、今となっては誰も知らないでしょうけど(苦笑)、"妖精おじさん"というキャラクターを作ったり...。
横関 杉本さんが作ったアプリで、ただWOWOWカスタマーセンターに電話がつながるだけというアプリもありましたよね(笑)。
杉本 ボタンを押すとWOWOWカスタマーセンターに電話がつながるというだけの、シュールすぎるアプリで、220くらいダウンロードされたのかな(笑)? 背景を自分の好きな写真に変えられるという当時画期的な機能がついていました。
わりと泥臭いデジタルマーケティングと言いますか、いまでは普通ですが、フェスなどで現地に赴いてツイートするなんてことをやり始めたのもその頃でした。いろんなシステムの立ち上げをその2~3年でやりましたね。
WOWOWで得たマーケティングのノウハウを外部で活用せよ!
――その後、WOWOWでマーケティングに従事されたと伺いました。
杉本 そうです。出向はしていないのですが、WOWOWに当時、統合企画部というマーケティングのための部署ができて、そこに合流し、3年ほどWOWOW本体のマーケティングに関わっていました。現在はWOWCOMに戻って、マーケティング課に在籍しているんですが、WOWOWでの経験とそこで得たノウハウを使って、横関と一緒に他社さんのマーケティングの手伝いを行なっています。
そもそも、WOWCOMという会社ができたのは、WOWOWカスタマーセンターを分社化して、そのノウハウを活かしてグループの中で放送外収入を確立するためでした。先ほども言いましたが現在もWOWCOMの収益の約半分はWOWOW以外のところからですので、当初の思惑は達成されつつあるのですが、さらにその部分を伸ばしていくには本質的な部分での変革が必要です。コールセンターの運営だけでは限界があるので、他社のマーケティングや分析をやらせていただき、その延長でコールセンターを受託したり、デジタルマーケティングの手伝いをしているという感じですね。
DMP(データ・マネジメント・プラットフォーム)に関しても、WOWOWにいた頃に立ち上げまして、WOWOWで活用されているんですが、それと同じようなことをやりたいという会社さんが沢山いらっしゃるので、WOWCOMがそれを請け負っているという形です。
――続いて、横関さんにも入社後から現在のマーケティング課に配属となるまでの、これまでのお仕事についてお聞きしたいと思います。
横関 入社して1年半ほど、WOWOWカスタマーセンターで、入電の量の予測や業務のコーディネートといったことを担当していました。その後、WOWOWに出向になり、プラットフォーム営業部という部署に籍を置いて、ケーブルテレビやCSなどのプラットフォームからWOWOWに加入するルートの営業を担当しました。
その後、WOWCOMに戻りまして、徐々にマーケティング関連の業務に携わるようになりました。当時「ビッグデータ」という言葉が叫ばれていまして、WOWOWの持つデータもまさにビッグデータなので、これをどう活用していくか、まずは分析してみようと、顧客データの分析やWEBアクセスの解析などをやっていました。
その後、再びWOWOWに行くことになり、宣伝部でデジタル広告や雑誌、屋外広告などに関わりました。当時、WOWOWにおけるデジタル広告やパブリシティの業務をWOWCOMで受託しようという動きがあり、その実現が可能か検討もしていました。
ちょうどその間に妊娠しまして、1年8か月の産休と育休を取得し、復帰後はWOWOWから業務を委託される形でWOWOWのDMPの業務に当たりつつ、WOWCOMで杉本さんと一緒に、先ほども話に出た、デジタルマーケティングの外販を行なっています。
What's デジタルマーケティング?
――そもそも「デジタルマーケティング」とはどういうものなのか? ということを説明いただけますか?
杉本 WOWOWで言うとホームページを運営し、そのページに人々を連れてくるためのデジタル広告を配信します。それによってWOWOWに加入していただける方もいれば、加入されない方もいるわけですが、その結果を分析し、また違う施策を考えていきます。
大きく分けて、人々を「連れてくる」部隊と、連れてくる先の「場所(サイト)」を作る部隊、そのあいだで「分析」をする部隊があります。分析をするのが僕らの課ですし、WOWCOMには連れてくるためのデジタル広告のチーム、ホームページを作るチームもあり、そうしたサイクルを指して「デジタルマーケティング」と言います。
デジタルだけじゃない、WOWOWのマーケティングの強み!
――現在、お2人で担当されている、デジタルマーケティングの外販業務ですが、顧客となる業界はメディアからサービス業まで多岐にわたるそうですね。WOWOWのノウハウを活かしてのデジタルマーケティングの強みはどういった部分にあるのでしょうか?
杉本 WOWOWの一番の強みは実は「デジタルだけじゃない」という部分です。世にいうデジタルマーケティングの会社というのはたいてい、当たり前ですが、デジタルマーケティング専業です。WOWOWの強い部分として、DMPやデジタルマーケティングとは完全に相反するものですが、アンケートを取ってお客さまのコメントをひたすら見るという"WOWOWファンボイス"というものがあります。
横関 「なぜWOWOWのことが好きなのか?」ということをひたすら尋ねるんです。
杉本 とにかくフリーコメントを入れてもらい、届いた数千の声を全て読みます。実は本質はそこにあるんじゃないか? と思っています。デジタルマーケティングをやってもなかなかうまくいかなくなっている状況で、その企業のファンボイス――生の声を抽出し、分析するということをさせていただいています。
横関 そうした生の声を抽出し、分析し、マーケティングに活かしていくための仕組み作りに関わらせてもらっています。
杉本 数字的な部分はもちろん重要ですし、それに基づいて行うのがいわゆるデジタルマーケティングではありますが、WOWOW流というのは、数字だけにとらわれない、お客さまの声を分析し、柔軟性をもって施策を変えていくところにあるのかなと思います。
――横関さんは、AI技術を活用した分析を行なっているそうですが、具体的にどのようなことをされているのでしょうか?
横関 WOWOWにおけるAIに関連した取り組みが2つありまして、ひとつはWOWOWの顧客データの分析。もうひとつがWOWOWカスタマーセンターの中で、コミュニケーターの業務をアシストするためにAIを活用するというものです。
どちらにも共通する目的は「エンターテイメント企業としてAIという最新技術とどのように向き合っていくか?」という部分の研究に近いものがあります。
顧客データの分析に関しては、最近では"データ・サイエンティスト"と呼ばれる専門家にかなりの需要があり、そうした人たちを企業で囲うというのが難しい状況です。その部分についてAIを導入することで解決できないか? 施策に関してもAIが分析することでスピーディーに回るようにならないか?その検証のための研究開発を行なっている状況です。
具体的に、WOWOWの約280万人の会員の中から110万人ほどに絞って「解約しやすい人はどういう人か?」ということを予測するということを行ないました。1か月先にどれくらいの確率で解約するか?ということを分析しました。その数字(=解約の予兆の高さ)によって、優先的に解約を防ぐための施策を投入します。
もうひとつの取り組みとしては、コミュニケーターの人数の確保が難しくなっていく状況、さらにサービスの多様化でオペレーションが複雑になりマニュアルを全て覚えるのが難しいという状況に対して、AIを駆使してお客様応対をアシストするということを行なっています。
具体的に、お客さまとのやりとりがリアルタイムでテキスト化され、画面にバーッと表示されるんですが、その中で例えば「WOWOWが映らない」という言葉が出てきた時、「映らない」という言葉をクリックすると、AIが「その場合は、こういう応対をするといいですよ」というアシストを表示してくれます。
コンタクトセンターの中にマーケティング部署がある理由 あらゆるお客さまの接点に!
――杉本さんは、WOWCOMの"コンタクトセンター"戦略の今後のビジョンについて、どのようにお考えでしょうか?
杉本 僕らはコールセンターの会社としては本当に小さな会社なんです。世間にはコールセンター専業の大規模な会社さんがいくつもありますが、そういうところと競合する気はなくて、かといって広告代理店やデジタルマーケティング専業の会社とも違うと思っています。
じゃあ、何がしたいのか? やはりコールセンターから生まれた会社ですから、先ほども言いましたお客さまの"生"の声というものを、いろんなことに活用できる"コンタクトセンター"になれたらいいなと思っています。
当初は電話しかなかったコールセンターの中に、あえてデジタルマーケティングの部門を立ち上げて、その中にメール配信をするチームを作り、クリエイティブを生み出す部隊を作ってきました。通常の会社であれば、コールセンターと切り離して立ち上げるものだと思いますが、僕らはあくまでもコールセンターの中からスタートさせている。そこが大きな違いがあり、意味があることだと思っています。
お客さまの声に耳を傾けることによって、デジタルマーケティングも進化すると思っていますし、数字だけではない熱量を、電話応対のコミュニケーターからマーケティング担当の者に「いま、こんな状況ですよ」と定性的にフィードバックすることで完成するのではないかと思っています。
最終的に、いわゆる電話のコールセンターだけにとどまらず、あらゆるお客様との接点を網羅していくのが、我々の"コンタクトセンター"の位置づけなのではないかと思っています。
弊社では、コールセンターの責任者をやっていた人間が、デジタル広告配信を担当したり、メールマーケティングの責任者をやっていたりします。これは実は、コールセンター業界ではほとんどない人の流れなんですね。そこが一番の違いなのではないかなと思います。「お客さまに不快な思いをさせてはいけない」というコールセンターの魂みたいな部分を持っている人間がデジタルマーケティングに従事しているというのは、今の時代、デジタルマーケティングを進めていく上で、再評価されてもいいんじゃないかなと思っています。
1年後に自分が何をしているかわからない会社
――改めて、WOWOWコミュニケーションズはどういう会社ですか?
杉本 いい意味でテキトーで(笑)、制約がなく、自由ですよね。僕らは自分の仕事の「業種」を書く時に困るんですよ。数年前まで「デジタルマーケティング」としていましたが、いまはまた困る時期に入ってきているな...と(苦笑)。それくらい、入社してからどんどん色が変わってきているなというのを感じています。
横関 1年後に自分が何をやってるか予測がつかないですね。まさかいま、こんなことをやってるなんて...(笑)。逆に言うと、自分でムーブメントを作ることもできるし、まさに今やっているような、WOWOWで得た知見を外部で活用するという流れは少しずつ大きくなっていますけど、そういう部分はメチャクチャ面白いですね。
――いま、仕事をしていて、やりがいや手応えを感じる瞬間について教えてください。
杉本 今、横関も言いましたけど、WOWOWで学んだことを外部で施策として行なった時に、かなり効果があるということに驚きましたし、ものすごく大きな手応えを感じましたね。
ただ、そこで得たものをさらにWOWOWに戻すというサイクルはまだできていないんですよね。WOWOWで得たものを外で活かしつつ、そこで「これはWOWOWでも活かせるはず」と感じるカケラやヒントはたくさんあります。それを持って帰ることができれば、いろんなことが変わっていくんじゃないかと思っていますし、その役割を果たせるのはWOWOWコミュニケーションズだけだと思いますので。
横関 他企業からすると、最新の事例をWOWOWのデータを使いながら学べるというのもすごく大きいんですよね。そういうところで得た知見を外部に活かせるというのはすごく面白いです。
逆に、一歩外に出てみると、WOWOWのやり方が全てではなく、同じツールを使って全く違うやり方をしている人たちもたくさんいるんです。それを見ながら「WOWOWももっとこうできる」というのが見えてくるんですよね。それを具体的に返していくということができるようになれば、もっと面白くなるなと感じています。
「反対される提案」こそやる価値がある!
――最後にお仕事をする上での「偏愛」や大切にしている哲学を教えてください。
横関 偏愛とは少し違うかもしれませんが、「置かれた場所で一生懸命やる」ということですね。自分のキャリアを考えてみると、今までいた部署に自分から希望して在籍したことってなくて、それこそ入社2~3年目の頃は「なんで私が営業をやっているんだろう?」って全然わからなかったんです(笑)。でも、置かれた状況でやれることを懸命にやってみようとは常に思っていました。そうしていると、いつのまにか意図しない、いろんな道が拓けてくるものなんですよね。
杉本 「迷ったら難しい方を選ぶ」ということですかね? 基本的に、イヤなことはやりたくない人間なんですけど(笑)、それでサボっているとうまくいかないということは、これまでの人生でハッキリしてるんですね。
逆に「やりたくないな」と思うことをちゃんとやっておくと、自分の成長にもつながるんですよね。「やりたくないな」と思うことって、周囲に反対されることが多いんですよ。でも、周りに反対されるってことは、今の常識や枠に収まらないことだということなので、「いい線いってるんだろうな」と思うようにしています(笑)。
むしろ反対されなかったり、受け入れられるということは、新しいことを生み出すという意味では常識の範囲内に収まるということなので、やめておいた方がいいのかな? と。そうやって周りの反応を見つつ、自分の心とも対話しながら仕事をするようにしています。
取材/黒豆直樹 撮影/祭貴義道 制作/iD inc.