2020.04.13

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普段通りにスポーツが観られる世界になってほしい──『キャプテン翼』作者・高橋陽一が"ゆるキャラ"に込めた思い

漫画家・高橋陽一

普段通りにスポーツが観られる世界になってほしい──『キャプテン翼』作者・高橋陽一が

2020年6月12日に開幕を予定していた「UEFA EURO 2020™ サッカー欧州選手権」だが、新型コロナウイルスの感染拡大防止にともない、1年間の延期が決定。欧州サッカー最大の祭典を心待ちにしていたサッカーファンも多いだろう。
『キャプテン翼』の作家・高橋陽一もそのひとり──。
そんな中、自身初となる"ゆるキャラ"「カラマール」が誕生した。WOWOWサッカーのオリジナルキャラクターとして「カラマール」はいかに生まれたのか、またそれにかける思いを高橋陽一先生に語ってもらった。
さらに、「普段通りにスポーツが観られる世界になってほしい」と願う彼に、改めてUEFA EURO™の魅力についても聞いた。高橋が思うベストマッチとは? 思い入れのある選手やチームは?

高橋陽一先生が初の"ゆるキャラ"開発に臨む!

200413takahashiyouichi_calamar.pngカラマール (C)WOWOW/Designed by 高橋陽一

──WOWOWサッカーの"オリジナルキャラクター"を作ろうということで、高橋先生に開発していただいた「カラマール」ですが、どういった経緯で生まれたのでしょうか?

「動物をキャラクター化しようかな?」と思っていろいろと案を考えていたなかで、
"イカす+ストライカー"で「イカストライカー」がいいなと思いました。まあ、シャレなんですけど(笑)。

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それで、イカのストライカーのキャラクターを作ろうと思って、カラマールくんが生まれました。※カラマール:スペイン語で『イカ』の意味

200413takahashiyoichi_irasutokumi2.jpg高橋陽一先生のスケッチ(C)WOWOW/Designed by 高橋陽一

──カラマールの憧れの選手は、ネイマール、アイマール、ニウマールとのことですが、彼らの足元が柔らかい感じもコンセプトにつながったのでしょうか?

そうですね。柔らかさと、イカの泳ぐときの瞬発力みたいなものも、ストライカーに適しているんじゃないかと思いました。
墨を吐いて逃げるシャドウ的な動きも、キャラクターのなかで表現できたら面白いかなと......(笑)。

200413calamar_genga_kumi .png高橋陽一先生のスケッチ(C)WOWOW/Designed by 高橋陽一

──いろんなストライカーのスタイルがあると思いますが、海外の選手で注目されているのは?

やっぱりネイマールでしょうか。柔らかさと強さの両方を持っている選手だと思います。あのようなストライカーが日本にも生まれたらいいなと思いますね。

200413takahashiyouichi_neymar.jpgネイマール Getty Images

──ちなみに、先生が描いてきたキャラクターでネイマールのイメージに合っているのは?

どうなんですかねえ?(笑)

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ネイマール的な選手はたぶんいないですね。僕が描くキャラクターは、『速い』か『強い』のどちらかになるので......いまのところ、出てきていないかもしれないですね。
ライバルでいうと、シュナイダー(カール・ハインツ・シュナイダー)とかサンターナ(カルロス・サンターナ)が近いのかな?

──本企画は、ご自身初となる"ゆるキャラ"開発だったとのことですが?

(ゆるキャラの描き下ろしは)やったことがなかったです。
僕が描いてきた漫画のイメージとは離れたキャラクターなので、僕が描いたと言っても信用してもらえないかもしれないんですけど......
正真正銘、僕が描きました(笑)。

──フォワードにフォーカスしたのはなぜでしょう?

常に「得点力不足」と言われている日本サッカーのなかで、ミッドフィルダーとしては良い選手が出てきていますが、ストライカーで世界に認められる選手というのはまだ少ないと思うので、ぜひともそういう選手に出てきてほしいなというのは長年の夢でもあります。

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そのためにも、子どもの頃からストライカーを目指すことが大事なのかなと思ったので、子どもたちに「俺がカラマールみたいになる!」といったイメージを持ってもらえたら嬉しいなと思いました。

──カラマールに声がつくとしたら、どんな感じになりそうですか?

難しいなあ~。イカなんですよねえ......(笑)。だから、なんとなく寡黙なイメージになっちゃうかなあ?
でも、海のなかを自由に動き回るイメージがあるので、自由奔放な選手でもあるかなと思います。実は陽気だったりするかもしれないですね(笑)。

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──チームメイトも増えそうですね。

大人数でやるのがサッカーなので、カラマールのほかにもいろんな動物のキャラクターが出てきて、動物園みたいな感じになったらすごく楽しそうですよね。カラマールを考えるときにも、ほかのキャラクターもなんとなく考えたりはしていて......カラマールだけだとちょっと寂しいので(笑)、ほかのキャラクターも出てきてくれたら嬉しいですね。

カラマールがみなさんに愛されるキャラクターになって、小さいお子さんや、サッカーを知らない子どもたちがサッカーに興味を持ってくれるきっかけになればいいなと願っています。

──新型コロナウイルスの影響で各種スポーツが中止や延期になっている状況ですが、高橋先生から日本のスポーツファンにメッセージをいただけますか?

サッカーのようなチームスポーツと同じように、みなさんと力を合わせて、チーム一丸となって、この危機的な状況をなんとか乗り切りたいなと思います。

──カラマールからはどんなメッセージが聞けそうでしょうか?

いつかまた、普段通りにサッカーが、スポーツが観られる世界になってほしいなあと彼も願っているんじゃないかと思います。

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※高橋陽一先生描き下ろしの『カラマール』は"WOWOWサッカー オリジナルキャラクター"として、4月13日(月)夜8時から放送された『リーガダイジェスト!』で初お披露目され、ラ・リーガの各節ハイライトや、選手の独占インタビューをはじめ、スーパープレーや特集企画などWOWOWオリジナル動画を配信する『WOWOW SOCCER FACTRY』などに登場する予定だ。

スペイン黄金期の幕開けとなった、ユーロ2008決勝戦を振り返る

──これまで数多くの名勝負を生み出してきた、欧州サッカー最大の祭典"サッカー欧州選手権(UEFA EURO™)"ですが、その魅力はどこにあると感じていますか?

ワールドカップよりもコンパクトな大会ですが、そのぶん、すごい試合がたくさん観られる印象です。
ワールドカップと比べユーロは強豪国ばかりですから、レベルの高い試合がギュッと詰まっているようなイメージですね。

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──ずばり、高橋先生のなかでのユーロのベストマッチは?

2008年の決勝戦ですかね。スペインが初優勝しましたが、大会全体としても印象に残っています。

──どんな大会だと感じましたか?

スペインが次のワールドカップ(2010年・南アフリカ大会)でも優勝しますが、そこに向けての勢いや自信が、このユーロでついたんじゃないかと思います。特に決勝は、何度も優勝しているドイツとの対戦でしたから。そういったチームと戦って、結果を残したというのはすごく大きかったのではないかと思います。

──現地にも行かれたということで、スペインが勝ち上がっていくなかで、期待も大きくなっていったと思いますが。

そうですね。ワールドカップでもそうでしたが、スペインは優勝候補に挙げられつつも、なかなか優勝できなくて......。でも、当時の代表メンバーは"スペイン黄金期"ともいえる選手が揃っていたので、「ここで優勝できないと(次のワールドカップも)厳しいな」と思っていましたし、リーガ好きとしても「優勝できるんじゃないかな? 優勝してほしいな」という期待がありました。

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──当時のスペイン代表で、高橋先生が特にお気に入りだった選手は?

当時からバルサ(FCバルセロナ)が好きだったので、シャビとか(カルレス・)プジョルですかね。

──スペイン対ドイツの決勝カードが確定した際、どのように思いましたか?

正直なところ、「どちらが優勝するのかわからないなあ」と思いました。スペインは勢いがありましたが、ドイツは経験があるし、固い試合は落とさないイメージがあったので「どっちに転ぶかな?」と思っていました。

──おっしゃる通り、"決勝戦の相手"としてのドイツは、ある意味イヤな相手ですからね。

そうですね(笑)。試合の前は「ここでドイツにがっちり止められちゃうのかな?」というイメージがやっぱりありました。1-0という結果を見ても......ドイツが相当警戒しながら固いサッカーでスペインを潰しにいっていて、「どちらかというとドイツペースなのかな?」と思ったなかで、(フェルナンド・)トーレスが得点を決めて結果を出したという。そんなサッカーだった印象です。

──優勝を決定するトーレスの1点はシャビからのスルーパスでしたが、ゴールシーンは覚えていますか?

......ディフェンスの裏を抜けた感じでしたよね?

200413takahashiyouichi_EURO_2008GermanySpain_GettyImages-81761647.jpgGetty Images

──ええ。シャビが出したスルーパスを受けたトーレスが、フィリップ・ラームを振りきってシュートしたゴールです。当時の、スピードも力強さも全盛だったトーレスらしい得点シーンですよね。

ここぞというところで得点を決めてくれました。当時のスペイン代表はレアル(レアル・マドリード)とバルサの選手が中心になって構成されていましたが......普段はライバル同士の選手たちが、スペイン代表として一致団結している姿を観て「美しいな」と思いましたね。トーレスはレアルではないですが、いずれにせよ、普段はライバルとして戦っている選手たちが連携して得点を狙う姿を観られたのは楽しかったです。

──ダビド・ビジャは怪我で決勝には出場できませんでしたが、トーレスもいてビジャもいるスペイン代表。その二人を操っていたのが大会MVPにもなったシャビでした。

トーレスとビジャ、タイプが違う二枚が並んでいて"バルササッカーの申し子"ともいえるシャビがいる。ポゼッションやパスのセンスといった"ボールをとられない技術"という部分では、シャビは絶妙だったと思います。

──さらに、アンドレス・イニエスタもいますから。

シャビとイニエスタがいる時点で「バルサのサッカーになるのかな?」というイメージはありました。

200413takahashiyouichi_iniesta_GettyImages.jpgGetty Images

200413takahashiyouichi_iniesta_tores_GettyImages.jpgGetty Images

──そういう意味でもパスサッカーの印象が強いスペイン代表でしたが、バルサやスペインのサッカーに高橋先生が魅了されたのは、やはりそういった部分だったのでしょうか?

そうですね。技のチームがパワーのチームに勝つっていうのは......僕も含めてですが、なんとなく"日本人好み"のような感じがしますよね。それがサッカーで表現されているのがバルサやスペイン代表でした。

──そんなバルサだからこそ、翼くんは入団したのですね。

はい(笑)。
体格的にもフィジカル的にも優れていないチームが強豪に勝っていくところにスリルがありますし、「日本のサッカーが強くなるためには、こういったサッカーがマッチしているのかな?」と思っていましたね。

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──ユーロ2008で優勝したスペインは2年後のワールドカップも優勝し、ユーロ2012も連覇するという、まさにスペインの黄金時代が始まりました。当時、どんな心境でスペインサッカーをご覧になっていましたか?

バルサのサッカーやスペインのサッカーが世界を制したので、「今はこういったサッカーがトレンドなんだな」と思っていましたし、「それを超える新しいサッカーが、たぶんまた出てくるだろう」と期待もしていました。
実際にドイツがその後、高さを武器にしたり、"ボールをとられない"スペインのポゼッションサッカーを攻略するための戦術を編み出してきたので......そうやってどんどん次が出てくる感じが面白いなあと思っていましたね。

次回のユーロも新しいサッカーが観られたら楽しかったんですけど。

──残念ながら、1年延期になってしまいました。ただ、先生がおっしゃられたようにどんどん新しいサッカーが出てきているので、来年の開催を楽しみにしたいですね。

そうですね。2008年大会でもキレキレだったオランダの(アリエン・)ロッベンが観れたり、ロシアやトルコといったダークホースのチームが突然出てきたりするので、やはりユーロは面白いですよね。
強豪国はサッカーの色がある程度決まっていますが、「ダークホースがどんなサッカーをしてくるのかな?」と楽しみではあります。

takahasiyoichi_4mai_kumi.jpgインタビューは高橋陽一氏事務所で行われた。著名な選手のサイン入りユニフォームやトロフィー、「キャプテン翼」グッズ、ポスターなど、サッカーファン垂涎のグッズが所狭しと並んでいた。

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撮影/平岩享

【WOWOW番組情報】

『漫画家 高橋陽一が選ぶ!UEFA EURO™ ベストマッチセレクション 2008年大会 決勝 ドイツvsスペイン』
【放送日】2020年4月15日(水)午後5:00~[WOWOWライブ]
これまで数多くの名勝負を生み出してきた、欧州サッカー最大の祭典"サッカー欧州選手権"。サッカー好きの著名人がそれぞれで選んだベストマッチを毎月放送!

200413takahashiyouichi_EURO_2008GermanySpain_GettyImages-81761647.jpgGetty Images

★『リーガダイジェスト!』 毎週月曜夜8:00 放送 [WOWOWライブ]、ほか

★『今夜発表!視聴者が選ぶ ~ラ・リーガ"21世紀"ベストプレーヤー決定総選挙~』
【放送日】2020年5月2日(土)夜8:00~[WOWOWプライム]※無料放送
ラ・リーガのベストプレーヤーを視聴者投票で決定するスペシャル番組!2001年~2020年の約20シーズンにおいて活躍した選手から選出しランキング形式で発表。
No.1の座に輝くのは、あのレジェンド選手か?はたまた現役選手なのか?

★『バルセロナ創立100周年記念試合 バルセロナvsブラジル代表』
【放送日】2020年5月5日(火・祝)夜6:00~[WOWOWライブ]
バルセロナが創立100周年を記念して1999年に開催したスペシャルマッチ。対戦相手はブラジル代表。ロマーリオと怪物ロナウドの2トップをはじめ、リヴァウドやロベルト・カルロスなどの豪華な顔ぶれが揃った。バルセロナはバリバリのエースだったルイス・フィーゴや、後にバルセロナで名将となるグアルディオラやルイス・エンリケがプレー。今では考えられない超豪華競演が実現した、まさに奇跡の一戦。

■その他の番組情報は、WOWOW番組オフィシャルサイト(wowow.co.jp/liga)へ!