チャンピオンズリーグの決勝を映画館のスクリーンと大迫力の音響で!スポーツのライブビューイング
スポーツ事業部 プロデューサー 岡田広海

放送・配信に続く、スポーツ中継の新たな試みとして注目を浴びる映画館でのライブビューイング。WOWOWはサッカーをより多くの人に楽しんでもらう多層的取り組みにチャレンジする中、昨年のUEFAチャンピオンズリーグ決勝で、イオンシネマを運営するイオンエンターテイメントとのタッグで、初めてライブビューイングを実施し好評を得た。今季も準々決勝、準決勝で実施し、この後6月1日に迎える決勝でもライブビューイングを行なう。フェスや応援上映が盛り上がりを見せ、“体験”の需要が高まる中でスポーツのライブビューイングが持つ可能性とは? WOWOWのライブビューイングの仕掛け人であるスポーツ事業部の岡田広海に話を聞いた。
声出し&グッズ持参大歓迎! 仲間と一緒に大声で楽しめる
――入社してからここまでのキャリアについて教えてください。
2012年に入社して、最初は映画部に配属され、その後、総務部を経て、2018年にスポーツ部(現・スポーツ事業部)に異動となりました。2019年から1年間は、日本テレビさんに出向してスポーツ中継に携わりました。WOWOWでは、ゴルフとバスケットボール、テニス、それからスケートボードやBMX、ダンスなどのアーバンスポーツの番組や中継に関わり、2年ほど前からサッカーの担当をしています。
――現在はどのような業務を担当されているのでしょうか?
サッカー中継で現在WOWOWで放送・配信しているのは、UEFAチャンピオンズリーグ、UEFAヨーロッパリーグ、UEFAカンファレンスリーグですが、その中継制作業務を担当しています。映像がきちんと日本で見られるように手配し、制作スタッフ、技術スタッフとの調整、そして、日本語の実況・解説をつけてくださる出演者さんとのコミュニケーションなどといった業務に携わっています。昨年からはさらにイベント事業としてサッカー中継のライブビューイングの仕事にも関わっています。
WOWOWがイオンエンターテイメントさんとともに初めてライブビューイングを実施したのが去年の6月のチャンピオンズリーグの決勝でした。その直後の7月のUEFA EURO 2024™ サッカー欧州選手権、8月のUEFAスーパーカップ2024、そして今シーズンのチャンピオンズリーグでも実施しています。
昨季チャンピオンズリーグ決勝でのライブビューイングは全国で 1 万人を超える観客を動員した
――なぜWOWOWでライブビューイングを行なうことになったのでしょうか?
まずWOWOWは、放送・配信以外にも多層展開や収益拡大にチャレンジしています。その中で、スポーツ事業部ではサッカーコンテンツを基軸に、WOWOWが持つ権利を最大限活用し、多層的な体験につながる企画を考えていました。
WOWOWが持っているチャンピオンズリーグの放送権にライブビューイングという試合を上映する権利が含まれてはいたんですが、これまではどちらかというと放送・配信や番組をメインに考えていたことなどもあり、その権利を有効に使えていませんでした。
より多くの人にチャンピオンズリーグを見てもらいたい、さまざまなサッカー観戦体験を提供したい、そして普段WOWOWに加入していない方でも映画館で見ていただける機会をつくれたら、と企画を出しました。
――企画から実現に至るまでのプロセスについて伺います。やはり、これまでの番組制作の仕事とは異なる部分が多かったでしょうか?
普段は"番組を作る"際「より良いものを作るためにはどうすればいいか?」を第一に考えるのですけど、ライブビューイングに関しては、イベント事業としてやっていく上で、収益性やコストパフォーマンスが、良いものを作ることと同じぐらい大事になってきます。そこはやはり、これまでの仕事へのアプローチの仕方とは違っていましたし、非常に勉強になりました。初めてのことだったので、とにかくやってみないと分からないことが多かったですね。
――ライブビューイングを行なう場合、WOWOWで放送・配信している実況・解説付きの映像をそのまま映画館で上映するのですか?
そういう場合もありますし、現状では一部の会場のみになりますが、映画館でライブビューイング用にアナウンサーと解説の方をお呼びして、その場で実況・解説をしてもらう「生解説・生実況」ということもやっています。
5月7日(水) イオンシネマ板橋での生コメンタリー:<解説>林陵平(左)、<実況>横内洋樹(右)
――劇場での観戦のルールなどは決まっているのでしょうか?
基本的に細かい制限はなく、声を出してもOKですし、リアクションしたりするのも大丈夫です。もちろん、好きなチームのユニフォーム着てくださってもいいですし、マフラーなどのグッズを持ってきていただくのも大歓迎です。
一つのスクリーンに1チームのファンだけが入る場合もありますし、それぞれのチームのファンが混ざっているパターンもあります。後者の場合は、自分と違うチームを応援される方の迷惑になったり、不快にさせないように、互いにリスペクトを持って観戦することはお願いしていますが、基本的には自由に楽しんでいただくようにしています。
夜中に映画館を営業......イオンシネマにとっても新たなチャレンジとなったライブビューイング
――実施されてみて、会場の盛り上がりやお客さんの反響はいかがでしたか?
そもそも、実施するまでどれぐらいの人が来てくれるのか分からない部分がありました。昨年の決勝は日曜日の開催でしたが、深夜早朝の時間帯にもかかわらず、全国でおよそ1万人の方が来てくださったので、それは素直にすごいなと、サッカーファンの熱量を肌で感じました。僕は当日、イオンシネマ板橋の会場にいたのですが、会場にお越しの皆さんの試合に懸ける想いやワクワク感が伝わってきました。
今年は4月17日(木)の準々決勝 2nd leg、5月7日(水)、5月8日(木)の準決勝 2nd legの2試合でも実施しましたが、平日にもかかわらず集まっていただいたお客様が、大スクリーンに映し出された真剣勝負に一喜一憂する臨場感を改めて感じました。
5月7日(水)の準決勝 2nd leg「インテル vs バルセロナ」イオンシネマ板橋での様子
昨季決勝の際に、来場いただいた皆様にアンケートも実施したのですが、大スクリーンと大音響で見ることができるのを喜んでくださっている声が多かったですね。どうしても深夜早朝に自宅で見るとなると、周りに気を使って大きな声を出せないけれど、映画館だとストレスなく見られてすごく良かった、という感想を多くいただきました。
またアンケートの回答からは、学生さんなど若い年代の方に多くお越しいただけたことが分かりました。
6月1日(日)に行なわれる今シーズンの決勝も、ぜひ多くの方にお越しいただき、盛り上がっていただければと思います!
――深夜早朝にサッカーのために映画館を営業することは、劇場にとってもチャレンジングな試みだったと思いますが、イオンシネマで実施することになった経緯についても教えてください。
イオンエンターテイメントさんとつながりのある他部署の人間に紹介してもらったのですが、こちらとしては、イオンエンターテイメントさんは全国各地に広く劇場をお持ちだということがありましたし、イオンエンターテイメントさん側からしても、夜中は映画館として営業ができていないので、その時間帯を活用できることを魅力に感じてくださった部分があったかと思います。こちらの提案に対して「一緒にやってみましょう」と好意的に受け止めてくださって感謝しています。車で来ていただける利点もありました。終電で来られる方もいるんですけど、深夜早朝に車でアクセスしやすいというのは大きかったですね。ちなみに、電車で来られたとしても、夜中の12時から劇場は開いておりまして、スクリーン内でキックオフまで待っていただけるようになっています。
大音響での入場のアンセムに感激! 映画館で見るからこその楽しさ
――実施に至るまでに苦労されたことはありましたか?
どうやって劇場まで映像を届けるか? という映像伝送の手配、会場で実況・解説をどう行なうか?は手探りで進めていくところが多々ありました。イオンシネマさんは、これまでも映画の舞台あいさつを実施されてきたこともあり、そうした事例も参考にさせていただきました。
――6月1日(日)の早朝(午前4:00)にUEFAチャンピオンズリーグ 2024-25シーズン 決勝のライブビューイングが実施される予定ですが、ライブビューイングならではの楽しみ方、魅力を教えてください。
やはり、映画館の音響は本当にすばらしくて僕自身、昨季の決勝で試合前の入場のアンセムが流れた時点で「おぉっ!」となりました。シンプルにすばらしい環境で試合を観戦できる場所だと思います。ゴールが決まった瞬間の盛り上がりも、現地のスタジアムほどではないかもしれませんが、それに近いすばらしさがあるので、友人や家族と一緒に盛り上がりたい方、同じチームを応援する仲間と一緒に大声で観戦したい方はぜひ足を運んでいただければと思います。
【チャンピオンズリーグ決勝 パリ・サンジェルマン vs インテル】
Getty Images
■2025年6月1日(日)午前4:00キックオフ
※午前0:00以降順次入場開始
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取材・文/黒豆直樹 撮影/祭貴義道