2023.05.18

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「夢は夢で終わらせない」伊達公子が熱意を持って取り組む<強い日本人女子選手>の育成

「夢は夢で終わらせない」伊達公子が熱意を持って取り組む<強い日本人女子選手>の育成

WOWOWテニスアンバサダーの伊達公子による女子テニスのジュニア育成プロジェクト「リポビタン Presents KIMIKO DATE×YONEX PROJECT 〜Go for the GRAND SLAM〜」。WOWOWもその志に賛同し、2022年、視聴者がグッズなどを購入して女子ジュニアへ資金応援できる仕組み「女子テニス 未来応援プロジェクト」を実施した。ジュニア育成プロジェクトの2期生が駆け抜けたこの2年間を伊達の言葉とともに振り返る。

「リポビタン Presents KIMIKO DATE×YONEX PROJECT ~Go for the GRAND SLAM~」とは


「私たちを本当に超えていってほしいと思っています」

伊達公子はジュニアの前で、こう語った。

「リポビタン Presents KIMIKO DATE×YONEX PROJECT ~Go for the GRAND SLAM~」は、現役を引退した伊達が、日本ジュニアの育成のために、生涯契約を締結したヨネックスとともに2019 年からスタートさせたプロジェクトだ。

2年を1期とし、オーディションで選抜されたジュニアが8回のキャンプで、プロの選手として必要なこと、これからやっていくべきことをインプットしていくもので、冒頭の言葉は、4月12日に行なわれた、2期生の卒業セレモニーにて旅立つジュニアに向けて贈った言葉だ。

2期生は、1期生の4名から人数を倍に増やし、8名となった。途中コロナ禍もあり、日程の変更を余儀なくされたが、8回のキャンプのうち、2回は5日間の沖縄キャンプがあり、1期生での2日間のキャンプよりもさらにインプットすることが増えた。また、選手間、伊達を含むコーチングスタッフ、トレーナーとの距離もさらに近いものとなった。

230518_junior1.JPGキャンプでトレーニングをする選手と伊達

プロを目指すためにすべきこと


伊達がこのプロジェクトで重視していることは「プロを目指すために何をしていくべきなのか」ということだ。それは、2度の現役生活を経験し、身をもって体験してきたことを惜しみなく伝えること。そして、選手自身が自分で考えられるプレーヤーに育つことだ。

ジュニア選手は、ともすれば身近なコーチや親に言われたとおりの道のりを歩み、自分で考えるということをしなくなることがある。しかし、伊達は現役時代、下部ツアーから抜け出すため、WTAツアーで勝ち上がるために「何が必要なのか」を考え、行動してきた。プロになれば、ひとりで戦い、その結果をひとりで背負うことが仕事となる。すべてが自分次第という中で、正しいと思う道を考え、作っていく作業には、常に「何が足りないのか、何が必要なのか」という自問自答があった。

だから、このジュニアキャンプにおいても、考える時間を設けている。セミナーでは常に「どう思う?」という投げかけがあり、自分の考えを発表させる場もある。

オンコートでは、世界4位まで進んだ道のりにおいて、必要だと思ったことを惜しみなく伝えている。世界の選手に比べて体の小さな日本人の自分が武器にしたライジングショットをはじめ、ドライブボレー、カウンターショットの指導においては、なぜそのショットを取り入れたのかということを伝えた上で、コートに入る。

最終キャンプ総当たり試合でのアウトプット


2年間で多くのインプットをしてきた選手たちは、4月11日〜12日の最終キャンプにおいて「完全なる自立」をテーマに、総当たりの試合という形式で、アウトプットの場が与えられた。

「最後のキャンプでもう一つインプットを増やすことができないわけではなかったけれど、これまでやってきたことを、自分なりにまとめて、試合でどう見せてくれるかということに期待した」という伊達の想いが通じたのか、ジュニアたちはそれに応え、すべてが見応えある試合となった。

230518_junior2.JPG沖縄での最終キャンプ

1日目はひとり2試合行なったが、すべてがフルセットの攻防となり、夜の8時までに及んだ。予定していたディスカッションは翌日へ、その日は夕食後、就寝となった。

翌朝、早めにコートへ集まってきた選手たちは、自らトレーニング用のマットを並べる。前日の熱戦で筋肉痛になった体の痛い箇所や、かわいいウェアについて談笑しながら、ストレッチを始めることが、当然のようになっていた。

残りの1試合は、すべて2セットで終わったが、両試合とも2時間超えだった。伊達はこの結果に「思っていた以上に良い試合ばかり。やってきたことを一つにまとめて形にするという点で、色々なものが凝縮したいい時間になった」と、満足気な笑顔を見せた。

選手たちの2年間の成果


「努力は当たり前」

ジュニアたちの多くが印象に残ったという、伊達の言葉だ。

試合に入る前のルーティン、やってきたすべてをコートで出し切ること、その後のクーリングダウン......、そして足りないものを補う練習をすること。それらはプロになれば当然のこととなる。ジュニアでもその意識を持って日々を過ごせば、必ず道は開けてくる。

2期生では、木下晴結が、15歳でグランドスラムジュニア4大会すべてに出場するという、プロジェクトの目標を果たした最初の選手となった。また、今年の全豪オープンジュニアでは、ダブルスで準優勝という大きな成果も上げている。

230518_junior3_kinoshita.JPG木下晴結選手

そして、添田栞菜は、プロジェクトに選ばれた頃は、関東でも早いラウンドで敗退しており、全国大会の経験もなかったが、この2年で大きく成長し、全豪オープンジュニアの予選に出場するまでに至った。

230518_junior4_soeda.JPG添田栞菜選手

また最年少の13歳、石井心菜は、「(木下)晴結ちゃんみたいな選手がいると、自分もできると思えたし、私は晴結ちゃんより早くそこに行きたい」と、彼女たちの背中を追いかける。

230518_junior5_ishii.JPG石井心菜選手

ほかにも海外ツアーを積極的に回る木河優、古谷ひなた、

20230518_junior2shot_koga_hurutani.jpg(左)木河優選手 (右)古谷ひなた選手

学校テニスを軸にする林妃鞠、網田永遠希、岸本聖奈もそれぞれのステージで実績を残してきた。

20230518_junior3shot.jpg(左)林妃鞠選手(右下)網田永遠希選手(右上)岸本聖奈選手

選手たちに話を聞くと、この2年間で何かを意図的に習慣づけてきた姿勢がうかがえる。
網田は「毎日必ずフィジカルトレーニングするようになった」、古谷は「疲労骨折した後、ストレッチが足りないと思い、時間を増やしてやるようになった」と言う。

自分が決めたことをやり続けるというシンプルな作業は、プロとして必ず必要なこと。伊達の言葉に刺激を受けた選手たちは、この2年間で「当たり前」のことを少しずつ増やしていった。

伊達が日本女子テニス界のために行動していること


「私にとっても学ぶことが多い2年間でした」

2017年の引退から6年、そして、このプロジェクトがスタートしてから4年。伊達は選手としての経験は多くとも、指導者としての経験は少ない。それは彼女自身にも自覚としてあり、だからこそ学び、進化しようとしている。

1期生2年目の6月に、(公財)日本テニス協会(JTA)のサポートが加わり、テニス界を挙げての取り組みに成長した。「もともとひとりでできることではないので、皆さんの力を借りつつ、補ってもらいながら作り上げられたら」と、協力者の必要性を感じている。

沖縄キャンプには錦織圭をゲストに迎えるなど、男子プロはもちろん、かつて指導を受けた小浦猛志氏ともジュニア育成について語り合う。

230518_junior_nishikori.JPG沖縄キャンプで指導する錦織圭選手

育成環境が整っていないと感じたら、ジュニアが国際ランキングポイントを取得できる大会を創設し、昨年は世界トップ50位を経験した選手たちとともに『⼀般社団法⼈「Japan Women's Tennis Top50 Club」(略称JWT50)』を立ち上げ、今年はITF女子ワールドテニスツアーをJWT50主催で6大会開催する。

まさに今、伊達本人が日本女子テニス界のために「何が必要なのか」と考え、行動しているといえるだろう。

2期生の卒業セレモニーで選手たちに手渡された記念のプレートには「夢は夢で終わらせない」という文字が刻まれていた。

「夢は夢で終わらせない」プロジェクト


「夢を語るだけではなく、実際に言葉に伴った自分の行動だったり、やるべきこと、方向性をしっかり持って取り組めるかということが大事だと思います」

選手たちは、3年後の自分、5年後の自分を伊達に伝えて巣立っていった。

このプロジェクトも3期生の募集へ向けて動き始める。

「私たちができるのは、より強くなるために必要なことを気づかせてあげられること。道筋を作ってあげること。ボールをうまく打てば、強く打てば試合に勝てるわけではない。この気づきによってもっと視野が広くなっていくことが大事。3期生も、自らそういうことを求める、しっかりと目的意識を持った選手であってほしい。プロジェクトに入れば強くなるとかそういう単純なことではないので、ちゃんとした熱意を持って来てくれるジュニアたちが増えてくれるのが一番理想かな」

必要なことを考え、熱意を持って取り組み、自分を超える選手を育成する。

それは伊達にとっても「夢は夢で終わらせない」プロジェクトなのかもしれない。

230518_junior_sotsugyo.JPG4月12日 2期生卒業セレモニーにて 伊達とジュニア選手たち

文/保坂明美

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