2020.06.02

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コンテンツを楽しむための文脈を提供する。コロナ状況下の「空飛ぶ映画の会」が示したWOWOWならではの強み!

マーケティング局デジタル推進部 梅澤朋央

コンテンツを楽しむための文脈を提供する。コロナ状況下の「空飛ぶ映画の会」が示したWOWOWならではの強み!

WOWOWでは新型コロナウイルスの感染拡大予防の中で、映画館に足を運べない状況下でも映画界を盛り上げ、かつ映画ファンの“おうち時間”を支援する取り組みとして「空飛ぶ映画の会 FLYING FILM SOCIETY」を発足!

これまでに4月18日と5月9日の2回にわたって、WOWOWのYouTubeチャンネル上にて、WOWOWと縁の深い映画人が映画への深い愛を共有すべくトークを繰り広げるという内容で、MCを務めるのは芸人であり俳優としても活躍するマキタスポーツ。トークゲストとしてスピードワゴンの小沢一敬に入江悠監督、ハリウッドで活躍する俳優・尾崎英二郎らに加え、俳優・そして近年はクリエイターとしても高い評価を受けている斎藤工、第二回ではアクション女優として活躍し、映画への深い造詣でも知られる武田梨奈も急遽参戦し、YouTubeのチャット機能やTwitterを通じて多くの映画ファンと映画を語る時間を共有した。

この「空飛ぶ映画の会」の仕掛け人、デジタル推進部の梅澤朋央に電話インタビュー行い、話を聞いた。企画から開催まで進めていく中で、今だからこそ強く感じたWOWOWならではの強みとは――?

WOWOWらしい在宅支援とは何か?

――まず梅澤さんが所属するデジタル推進部の普段の仕事内容について教えてください。

基本的にはWOWOWとお客さまのデジタル接点の管理・運営しています。具体的にはWOWOWオンライン、メンバーズオンデマンド、TwitterにFacebookといったSNSやメールの管理、加えてデジタル接点におけるデータを統括管理しているDMPというものを取り扱っています。

umezawa_a-sha.pngデジタル推進部 梅澤朋央

――そのデジタル推進部が中心となって今回の「空飛ぶ映画の会」が企画された経緯は?

新型コロナの影響でWOWOWもさることながら、世の中全体で在宅勤務の人が増え、外出自粛が叫ばれる中で、様々なエンターテイメント企業が「在宅応援」を掲げてデジタルコンテンツの無料公開など、様々なサービスを展開し始めました。WOWOWのメンバーズオンデマンドやオンラインでも無料コンテンツの提供はありましたが、よりWOWOWらしい形で在宅応援ができる企画はないか? とデジタル推進部を中心に検討をし始めていました。その中でもタッチポイントとして多くの人と接することができる場所として、YouTubeが適しているのではという話になりました。動画メディアとして世の中で最も広く使われていますし、僕ら自身、YouTubeのチャンネルの運用をしている中で、YouTubeを活用してお客さまとの接点をより多く作っていこうという考えは以前から持っていました。

YouTubeで何かできないか? という話になり、とはいえ映画そのものをYouTubeで配信するのはなかなか難しい部分があります。ではそこでWOWOWらしさを一番出せるとすれば「在宅中だからこそ、こんな映画の見方をしてみては?」と、エンターテイメントの"楽しみ方の視点"を提案することがWOWOWらしいのではないか? と、今回の「空飛ぶ映画の会」を企画することになりました。

――視聴者との接点をより多く生み出すための施策として、これまでにYouTubeでどのような企画が実施されてきたのでしょうか?

様々なことをやってきましたが、直近では3月のテニスのデビスカップの試合をWOWOW公式YouTubeチャンネルで無料配信しています。その時、YouTube上でのユーザーのコメントが非常に活性化していて、こういう企画が求められているという感触は得ていましたので、その延長線上でもっとWOWOWらしいことを仕掛けられるのではないか? という思いはあり、それが今回の企画にもつながったと思います。

かつてはニコニコ生放送やUstreamでも同様のライブ配信をしていたことがあり、リアルタイムでユーザーとつながるという取り組みはしていました。その経験則は持っていたので、現在は家籠りが続き「人とつながりたい」と思っている人が多い中、我々のほうから声を掛けにいくようなコミュニケーションでやってみることになりました。

――コロナの影響で社内打ち合わせも難しい状況だったかと思います。他部署も関係している上に、著名人の参加者もいる企画ですが、進めていく中で大変だったこと、難しかったことはなんでしょう?

打ち合わせはすべてリモート会議で進めていったのですが、3月中旬くらいになると皆リモート会議にも慣れてきていたので、特に難しいことはありませんでした。ただ、出演者の方々にリモートで参加していただくことは、やったことのある方とない方がいましたし、自宅から配信ということになるとメイクや衣装はどうすべきか? 事務所との調整という部分もあり、通常よりも大変な部分はありました。

とはいえ、こうした状況なので、できる範囲でやれることをやりましょうという合意形成はしやすく、みなさん協力的でスムーズでした。

ただ、実際にやってみて難しかった部分、大変だったこともあり、第1回目の空飛ぶ映画の会では計9名の方にご出演をいただいたのですが、当初はいくつかのコーナーに分けて、時間ごとに出演者を数名ずつに制限しようとしていました。というのは、自分たちでもWEB会議を何度かやっている中で、あまりに大人数になると各人が話しにくくなるという問題があったのです。

そこで、なるべく時間ごとに人数を絞ってやっていこうと話をしていたのですが、とはいえ出演者のみなさんも外出自粛をしている状況なので「時間になったのでサヨナラ」といった流れにはなりにくいんです(笑)。みなさん、前のめりで参加してくださったのですが、その結果、最大9名が出演している状況になって、どうしても最初に予定していたテーマに行きつくまでに時間を費やしてしまったり、やや脱線してしまったり、進行が大変になる部分は若干ありました。それを踏まえて、2回目は人数を前回よりも減らして開催しました。

斎藤工に武田梨奈、小沢一敬(スピードワゴン)ら豪華キャスト集結のワケ


――進行役にマキタスポーツさんを迎え、さらに斎藤工さん、武田梨奈さん、スピードワゴンの小沢さんなど、豪華かつ多彩なメンバーが出演されましたが、キャスティングの経緯について教えてください。

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<空飛ぶ映画の会 vol.1>配信中の様子

この企画自体、番組というよりは、LOFT/PLUS ONEでやるようなトークライブのようなものだなと思っており、開催が決まった時、進行は、「人にしゃべらせてあげる寛容さ、無理やり進行しない優しさ」が必要になってくると思っていました。

映画に関わる人で誰かいないかな? と考えたとき、以前『WOWOWぷらすと』という配信型のトーク番組でMCをやってくださったマキタスポーツさんは、芸人という肩書だけでなく俳優・映画人としても活躍されていて、進行はもちろん、ご自身が今置かれている現状などについてもお話しいただけるのかなと思い、お声がけをしました。

ほかに"WOWOWの映画王"の肩書で評論・解説を続けてくださっている松崎健夫さんにはぜひにとお願いしました。その流れで、この4月から『フィルムガレージ』という、WOWOWの映画大好きなキュレーターの方々が、毎月、今月のおすすめ映画をキュレーションする枠ができたのですが、そこからも誰か参加してもらおうと、小沢一敬さん(スピードワゴン)にもお願いしました。

初回の配信は、新型コロナの影響で映画界がどうなっているのかという話を広くしようと考えていたので、ハリウッド在住の俳優でアカデミー賞のレッドカーペットのレポートなどもやっていただいていた尾崎英二郎さんにハリウッドの現状などをお伺いしたいなと。

同様に映画ライターで、ご自身も大分県の別府ブルーバード劇場というミニシアターの運営にも関わってらっしゃる森田真帆さんにも参加してもらい、ミニシアターの現状について話をしていただくことにしました。

入江悠監督もミニシアター支援をかなり早い段階からやってこられていますし、映画監督の立ち位置で、現状についてお話を伺えればということで参加していただきました。

斎藤工さんも当初から声を掛けたかったのですが、ちょうどキャスティングをしていた時期はまだ各方面の撮影などが回っていた頃でもあって、多忙を極めている方なので、なかなか難しいだろうと思っていました。ですが、配信が決定し、告知をし始めたらご本人から「僕も混ざりたいんですけど」との話をいただきまして、出演していただくことになりました。こういってくださる方がいるのは、WOWOWにとって貴重な財産だなと強く感じます。

第2回に関しては「『監督で観る!』のススメ」というテーマでしたが、武田梨奈さんはアクション女優といった立ち位置でご活躍されているので、女優として現状をどのように捉えているのか? を話していただきつつ、武田さんの視点で今、どんな監督を軸に作品を見ると映画をより楽しめるのか? というお話を聞いてみようということで声を掛けさせていただきました。

トークライブは出演者がどれだけ自分の言葉で話してくれるかがすべて!

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<空飛ぶ映画の会 vol.2>配信中の様子

――出演者同士で以前から知り合いの方もいれば、今回のトークライブが初対面という方々もいらっしゃいますよね?

そうですね。例えば入江監督と尾崎さんは初対面だったかと思います。とはいえ、基本的に映画人として映画愛をお持ちの方々で、WOWOWとのかかわりも深いということもあり、特に問題なく、どちらかと言えば最初から"仲間"の意識を持ってお話しいただけたのかなと思いますね。根底に映画愛があることはすごく強いことなんだなと改めて感じました。

――先ほど、大人数になり過ぎたゆえの大変さということもおっしゃっていましたが、ネット上での生配信ということで、トークの内容に関して不安はなかったのでしょうか?

トークライブとなると、出演者のみなさんがどれだけ自分の言葉で話してくれるかがすべてだと思っていたので、そこに関してはあまりこちらでコントロールしないことにしていました。コンパクトにまとまらない難点はあるんですが(笑)、思いのたけを話していただくことはできたのではないかと思います。

――配信中はSNSはどのように展開されていたのでしょうか?

Twitterでは担当者が配信を見ながら、出演者の発言に関するURLなどを貼り付けるなど、リアルタイムで投稿していました。
YouTubeのチャットには僕自身がオフィシャルで入り、話のまとめをしたり、参加者に質問のお願いを投げかけたりするなど、ちょっとしたファシリテーションを行なっていました。

――企画してからの宣伝・告知という点で難しかったことや、この時期ならではの宣伝方法、力を入れたことがあれば教えてください。

先ほどもお話したように、これまでもYouTubeによる配信はやっていたのですが、放送と連動し、番組にぶら下がる形での宣伝・告知が多かったんですね、ただ、宣伝部としても本来の番組の宣伝もしなくてはいけないミッションがある中で、放送する番組ではないものをプロモーションしていくのは難しい部分があったのですが、今回に関しては、YouTubeそのものの活用をしていこうという話は宣伝部とも早い段階からしていて、宣伝部の協力も得てプロモーションできたと思います。

加えて、SNSを中心とした告知も行なっていきました。自分が担当しているメディアであり、手広くやりやすいのですが、そこから例えば、WEB媒体の映画ナタリーさんから「記事にしたいです」とお声掛けをいただいてニュースとして配信していただいたりしました。今までネットでの配信番組に関してメディアさんから声を掛けていただくことはあまりないパターンでしたが、こういう時期だからこそだと思いますが、広く告知ができたのではないかと思います。

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 <空飛ぶ映画の会 vol.2>ビジュアル

――ここまで2回の配信をされて、視聴者、お客さまの反応、反響はいかがでしたか?

「空飛ぶ映画の会」をハッシュタグにして広めましょうと、配信中にもユーザーの方々にもお願いしているんですが、自発的にどんどん広めていただいて、Twitterでもかなり拡散されています。ミニシアターを巡る現状についても、番組中にお話をして、微力ではありますが、支援の輪を広げることに貢献できたのかなと思います。

ユーザーのみなさんの反応を見ると、"集まって話をする"感覚をみなさん持ってくださったようです。外出自粛の中でも映画好きをオンラインで1か所に集めることができて、ユーザー同士もつながりを感じられるいい機会になったのかなと手応えを感じています。

現状、映画ファンの中には、家の中でずっと映画を見ている方もいると思うんですが、映画を見終わって映画館を出て、誰かとその映画について語るといった、普段ならできていたはずのことができない状況で、それに近い感覚を少しは提供できたのではないかと思います。

こういう時期だからこそ、WOWOWが映画ファンにきちんと寄り添うことが、WOWOWにとってもすごく重要なのではないか、とすごく思っていて、「次に映画を映画館に見に行けるのはいつなんだろう?」と不安に思っている方も多い中で、希望とまではいかなくとも、みなさんの不安を多少なりともやわらげるような、寄り添う時間を作れたのかなと感じています。

――番組に参加したユーザー数はどれくらいになるんでしょうか?

詳しい年齢や性別まではわからないんですが、2回の配信で約1万人の方に参加いただきました。

――そこまでの人が集まるとは事前に予想されていましたか?

正直、そこまで予想外ではありませんでしたね、過去のYouTubeやニコ生での配信でも手応えはありましたので。

"番組"という捉え方で言うと、放送を1万人が見ていたことは決して大きな数字ではないんですが、ただ、この時間に開催されたバーチャルの"集会"に参加しているという見方をすると、2回の集会でのべ1万人を動員したことは、トークライブとしてはかなりの規模だと思います。単に番組を見るのではなく、ライブに参加することは特定の時間にそこで同じ空気を共有することだと思うので、その意味で価値のあることができたのかなと思っています。

集える場所、心の拠り所を提供する大切さ


――社内からの反響はいかがでしたか?

制作局からも様々な反応がありまして「ウチの番組でもこんなことやれないかな?」といった話もいくつかありました。
4月18日に第1回の配信があり、その後、5月2日にWOWOWの無料放送があったのですが、そこで放送される「やっぱりテニスが見たい!記憶に残る名場面 大公開SP」というテニス番組と連動して、同時刻にYouTubeライブで「やっぱりテニスが見たい!を見てる!#おうちテニスSP」を配信し、そのライブ配信に内山靖崇選手と松井俊英選手が出演する企画も実施しました。

同じく5月2日の無料放送の日に生放送したサッカー特番「今夜発表!視聴者が選ぶ ~ラ・リーガ"21世紀"ベストプレーヤー決定総選挙~」は、番組そのままをYouTubeライブでも配信しました。

――これまで2回の「空飛ぶ映画の会」の配信がありましたが、そこでの経験を踏まえつつ、今後の展開や新たな企画など何かありましたら教えてください。

WOWOWのYouTubeチャンネルには、1か月に500万人ほどのユニークユーザーが訪れるんですが、この数字は実はWOWOWオンラインよりも多いんです。しかも、その中にはWOWOWに加入されていない方もかなり含まれています。そういった方々と継続的に接点を持ち続けること。単に動画を提供してそれを見ていただくだけでなく、みなさんとの距離感を縮めていくためにも、すごく有効な場所だとわかってきたので、こうした取り組みは継続的にやっていきたいなと考えています。

――先ほどテニスやサッカーの話も出ましたが、多ジャンルで同様の展開を行なっていくこともできそうですね。

十分にあると思います。やはりチャット形式で参加する点で、YouTubeはかなり気軽に参加できるんですね。アーティストが自分のYouTubeチャンネルで、過去のライブを配信しながらみんなで見ようといった企画などもありますが、実際、少し前にUVERworldのライブのWOWOWでの放送があった際に、アーティストサイドが自分のYouTubeチャンネルで「みんなでWOWOWを見よう」と配信をしてくださったんですね。

そこ(YouTube)には映像は全くないんですけど、それでも数千人のUVERworldのファンが集まって、WOWOWの放送を見ながらチャットをしている状況が生まれたんです。そういったことも含めて今後、こちらからコンテンツホルダーに対して新たな提案をしていけたらいいなと考えています。

――個々のアーティストもそうですし、宝塚や格闘技などジャンルごとに熱烈なファンが存在するので、大きな可能性を秘めていますね。

そうですね。そういったファンの方々は普段からネットを通じて情報を集めようとSNSを活用している状況は見えてきているので、放送ではエンターテインメントを提供しつつ、YouTubeやSNSでは"心の拠り所"を提供することができたらいいのかなと思っています。

特に今、ライブを行うのが難しい状況で"集える場所"が不足していると思うので、その場所をWOWOWが生み出すことに意義があるのではないかと考えています。

「編成」があるがゆえに活きるWOWOWの目利き力!


――最後に、こうした状況下で行なった企画だからこそ発見したこと、気づけたことがあれば教えてください。

新型コロナウイルスの影響で映画館に行けないけれど、いろんなコンテンツがある中で今、どういう映画の見方をしたら楽しいか? といった視点、文脈を提案していくことは、実はWOWOW独自の取り組みといえるのではないかと思うのです。そういうことをすることが他社との差別化にもつながるんじゃないか? と、実際にやってみても感じました。

WOWOWの本質的な価値は、編成をすることによって"目利き"をしている部分なのかなと思うのです。昨今のOTTは「好きなものを好きな時に見られる」状態を作り出し、目利きなどなくとも好きなものを選べるようにしたという部分に価値があると思います。

一方でWOWOWが今後も生き残っていくためには、あえて編成をする価値を大事にしていかなくてはいけないのではないかと。今回の「空飛ぶ映画の会」でも映画監督をテーマにしましたが「映画監督で映画を見る」面白さというのは、昨今のOTTでは個人で発想しない限り、なかなか味わえない面白さだと思います。でもWOWOWは編成していることを逆手にとって、監督であったり、シリーズであったり、俳優で映画を見る面白さを提案することができるのです。

このタイミングだからこそ、その魅力を顕在化させ、際立たせることができるのではないかと強く感じました。


空飛ぶ映画の会 FLYING FILM SOCIETY 第3回配信の模様

空飛ぶ映画の会 FLYING FILM SOCIETY vol.3 ~音楽を感じる映画~
配信:2020年6月7日(日)21:00頃~

出演:オカモトレイジ(OKAMOTO'S)、Licaxxx/BRIAN SHINSEKAI/xiangyu/松崎健夫(映画評論家、WOWOW映画王)

WOWOW Official YouTubeにてライブ配信