2021.09.06

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車いすに乗ってパラアスリートの目線や驚異の身体能力を体感!「やさしくないミュージアム」が期間限定でオープン

車いすに乗ってパラアスリートの目線や驚異の身体能力を体感!「やさしくないミュージアム」が期間限定でオープン

アスリートたちが日々熱い戦いを繰り広げた、東京2020パラリンピックが閉幕。会期中の8月27日(金)から3日間限定で、WOWOWが放送する「パラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ WHO I AM」が、東京・豊洲エリアにある情報発信拠点「WHO I AM HOUSE Powered by TOKYO GAS」にて開催した特別展「やさしくないミュージアム」。パラリンピアンたちの視点や思考、彼らが競技において直面しているシチュエーションを体感できる体験型ミュージアムとして大きな話題を呼んだ。

オープンを前に報道陣向けの取材会が行なわれ、長野とトリノのパラリンピック アルペンスキー日本代表で、一般社団法人ZEN代表理事を務める野島弘氏、そしてシドニーパラリンピックの車いすバスケットボール日本代表キャプテンで、今回のパラリンピックの選手村副村長を務めた根木慎志氏、「WHO I AM」シリーズの太田慎也チーフプロデューサーらが来場。さらに根木さんの"友人"くまモンも会場を訪れ、車いすに乗って展示を体験した。今回のFEATURES!ではこちらの展示の模様をレポート! さらに太田プロデューサー、野島さん、そしてパラリンピックの車いすバスケ中継の解説者としても話題を集めた根木さんにインタビューも敢行した。

大注目の車いすバスケの3ポイントシュートの難しさ、車いすラグビーの激しさを実感

もともと会場の「WHO I AM HOUSE」は、パラリンピックの開催期間中に、世界中のアスリートたちとファンが交流するための"情報発信基地"として竣工された。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、パラリンピックがほぼ無観客で開催されることが決まり、アスリートたちも選手村から外出することができないという事態に......。そんな難しい状況の中でも太田プロデューサーは「あきらめるのは簡単だけど、何かできないか?ということで感染防止対策や入場者数の管理を行なった上で、美術館のような展示をすることを決めた」と「WHO I AM HOUSE」をオープンするに至った経緯を語る。

210903_sub3_OP_6263.jpgそして今回、英語では「The unfriendly Museum」と名付けられた「やさしくないミュージアム」が、「特別展」というかたちで開催が決まった。全ての来場者が車いすで入場することになっており(※通常の車いす、アスリートが使う競技用の車いすを選ぶことができる)、会場はたくさんの木材によって区切られ、順路に沿って車いすで進みながら7つの展示を通してパラリンピックで実施されている7競技のアスリートの目線や思考、彼らのテクニックや身体能力がいかに凄まじいものであるかを体感することができる。また、20年以上にわたってパラスポーツ取材に携わってきた写真家・越智貴雄氏によるアスリートたちが躍動する姿を切り取った写真が展示されており、アスリートたちの強さや美しさ、パラスポーツの"熱量"を実感できる内容となっている。

まっすぐ進めない展示(車いすテニス)

20210903_wheelchair_tennis.jpg入場者が最初に体験するのは「まっすぐ進めない展示」で、ここでは巧みなチェアワークが魅力の「車いすテニス」の世界を体感することができる。車いすテニスで1試合に行なうターンの数は500回を超えることもあり、横移動ができない車いすにおいて、素早くターンを繰り返しながらボールが打ちやすいポジションに入るのは高度な技術が必要とされる。

展示内の順路は急角度のカーブになっており、車いすを巧みに操ることが求められる。日本のエース・国枝慎吾選手や上地結衣選手が、ハイスピードで車いすを操り、コート上を所狭しと動き回る様子をTVで観ながら応援したという人も多いと思われるが、改めてチェアワークの難しさ、さらにその動きの後でボールを打ち返すということの凄さを実感できる。

離れすぎている展示(車いすフェンシング)

210903_wheelchair_Fencing.jpg続く「離れすぎている展示」では車いすフェンシングの世界を体験できる。車いすフェンシングでは、対戦相手同士の腕の長さに合わせて、互いに剣が届く距離に車いすが固定されるが、アスリートたちは鍛え上げられた体幹で上半身を前後させながら、相手の剣をよけつつ、攻撃を繰り出していく。展示を通して、車いすに固定された状態で相手を突くというのが、どれほど難しいことかがわかる。

遠すぎる展示(アーチェリー)

20210903_archery.jpg「遠すぎる展示」ではアーチェリーの奥深さを体験! この展示では、会場の大きさの関係から実際の競技よりも短い、約15メートルほどの距離に的が設置されているが、長ければ70メートル先の直径122センチの的を狙う部門もあり、その際の「10点」の的の大きさはわずかDVD1枚ほど! この競技が"心の格闘技"とも呼ばれる理由が理解できる。

重すぎる扉の先にある展示(車いすラグビー)

20210903_wheelchair_rugby.jpgこちらの「重すぎる扉の先にある展示」で体験できるのは「車いすラグビー」の世界。TVでパラリンピック中継を見て、初めて車いすラグビーに触れて、その激しさに驚いたという人も多いはず。パラリンピック競技の中で、唯一、車いすでのタックルが認められている車いすラグビーだが、重い扉を車いすを操作しながらこじ開けることで、"格闘球技"とも称されるこの競技のハードさを体験できる。

届かない展示(卓球)

20210903_Tennis.jpg「届かない展示」では卓球の選手たちが目にする"景色"を体感することができる。パラリンピックでは、異なる障がいがある選手たちが対戦することもあり、相手を研究し弱点を狙う頭脳戦も見どころ。卓球をプレイしたことがある人は、車いすに座り卓球台の前で構えてみると、その視点の高さの違いや守備範囲の広さなどに驚かされるはず!

高すぎる展示(車いすバスケットボール)

20210903_wheelchair_basketball.jpgパラリンピック屈指の人気競技の車いすバスケットボールだが、ボールやコートの広さ、ゴールの高さは健常者のバスケットボールと同じで、もちろん3ポイントシュートのシュートラインも健常者と同じ! 健常者のバスケットボールでは通常、膝を屈伸させてボールに力を伝えてシュートを放つが、車いすに乗っているということは、膝の屈伸ができず、上半身の力だけでボールを放たなくてはならないということ。これがどれほどすごいことか? この展示では車いすバスケの3ポイントシュートの距離感を体験すると共に、シュート軌道を体感することができる。

速すぎる展示(陸上競技)

20210903_Field.jpgトリを飾るのは、パラリンピック最多の全168種目が実施される陸上競技。車いすレースの男子100メートルの世界記録は13秒63、つまり1秒間に7メートル以上進むという計算になる。展示ではこの7メートルがどれほどの距離かを体感できるほか、車いすマラソンで使用する競技用の車いすの運転も体験できる。マラソン選手たちは平均時速約30キロで車いすで走行するとのことだが、それがどれほどのパワーとスタミナを要するのか? 実際に車いすを動かしてみると、その一端を知ることができる。

7つの展示を体験し終えた出口には「おわりに」というメッセージが掲示されている。

【以下全文】

おわりに

やさしくないミュージアムは、いかがでしたでしょうか。

重い扉が立ちはだかった時、まっすぐ進めない時、遠すぎて届かない時。あなたはどう感じましたか?

困難にぶつかった時、できないと諦めず、やれることをやってみる。やれる方法を考える。考え方や行動次第でポジティブな未来を創っていく。それを実践し、積み重ねているのが、これまで「WHO I AM」シリーズに登場したアスリートたちです。

この WHO I AM HOUSE特別展には「やさしくないミュージアム」というタイトルをつけました。そこには、パラアスリートたちの凄さを"やさしくない"展示として表現し、来場者が一様に困難を強いられる体験を通して、人々の中にある固定化された価値観を壊していきたいという想いがこもっています。

経済的な豊かさの違い、文化の違い、宗教観の違い、障がいの有無、そしてそれによる偏見。もっと言えば、料理ができない、片付けができない、足のサイズが大きすぎる、汗っかき、声が小さい、など。誰しも必ず、あなたにとっての"やさしくない"状況があるはずです。だからといって決してあなたの人生が不幸なワケではありません。

人にはそれぞれ、得意なことと不得意なことがあり、その全てが個性であり、自分です。人生という舞台で、全力を尽くし、情熱を傾け、夢を見る。そして、そのために困難を克服する。それは、どんな個性を持っていようと平等です。

「パラリンピックは世界を変える」とよく言われますが、社会が勝手に変わるのでもなく、アスリートが変えてくれるのでもなく、どこかの誰かが変えてくれるのでもありません。この展示を通して、変わるべきは自分自身なのだと、みなさんそれぞれが気づいていただけたらうれしいです。

人生が輝くかどうかは、すべて「自分(=WHO I AM)」次第なのです。
やさしくないミュージアムで、社会がちょっとでもやさしくなれますように。
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「やさしくない」局面は日常の中で誰にでもあるはず

展示の体験後には、太田プロデューサー、野島さん、根木さんにインタビューを行ない、改めてこの展示に対する想いやパラリンピック後の日本の社会の在り方などについて語ってもらった。

Shinya_ohta_OP_6034.jpg【太田慎也チーフプロデューサーインタビュー】

――どのような想いでこの「やさしくないミュージアム」を企画されたのでしょうか?

太田 「WHO I AM」シリーズ制作を通じてパラアスリートたちと接する中で「障害というのは、アスリート側の問題ではなく、社会の問題であり、社会の側の意識こそが"障害"なんだ」ということに気づきました。

人間にはいろいろな個性があって、中には「料理がうまくない」「運転が上手じゃない」「話が長い」とかあまり良くない個性もあるけど(笑)、そういうのを棚に上げて「目が見えない」人や「足を切断した」人を"障がい者"と呼び、挙句の果てに「応援してあげなきゃいけない」などと思っている人がいるとしたら、そんな社会は変えなくちゃいけないと強く思います。それは障がいがある人たちの問題ではなく、社会側の問題、ひとりひとりの意識の問題です。

この展示を体験した上で、自分はどうなんだ? 社会にとって自分にできることは何か? というのを感じていただきたい、「パラスポーツを知ってください」「応援してください」というところで終わってほしくないと思ってこのミュージアムを作りました。

そこから先――私たちの人生、日々の生活の中でも困難なこと、"やさしくない"局面はきっとあるということに想いを馳せて、考えて、行動を変えたり、伝えたり、想いを共有することこそ、社会を変えていくことだと信じてこのミュージアムをオープンさせていただきました。

――もともと、この「WHO I AM HOUSE」は、パラリンピック開催期間中、アスリートたちとファンの交流の場として設立されたそうですが、その計画を断念し、この「やさしくないミュージアム」の開催に至った経緯について、改めてお聞かせください。

太田 当初は、選手村から選手たちがここにやって来て、日本の観客、海外からやって来たお客さんも豊洲市場に遊びに行った帰りにここに寄って......ということを考えていたんですね。

でもパラリンピックが無観客での開催になり、海外のお客さんも来られないし、選手たちも選手村から外出することもできなくなりそうだな......というのを感じたのは5月くらいですかね。その段階で「連日、人をたくさん集める」ということを断念し、美術館のようなものにしようと考えました。そうすれば、人が集まり過ぎず、大声を出すこともないですしね。

ただ、そんな中でも「WHO I AM」のフィロソフィをしっかりと感じていただけるやり方が何かないか? ということで、アイデアとして出てきたのが、期間限定の体験型のミュージアムでした。

その段階では内容は全く決まっていなかったのですが、クリエイターのみなさんと話し合う中で、単に「パラスポーツを知ろう」「応援しよう」みたいなところで終わってしまうのは嫌だし、これまで「WHO I AM」で描いてきたことを、自分に落とし込むという感覚で、社会に向き合っていただきたいという想いはあったので、それを具現化できるものを......ということで出てきたのがこの「やさしくないミュージアム」です。

いろんなアイデアはあったんですが、時間の都合などもある中で、まずは車いす競技を中心に、代表的なパラスポーツを......ということで、みなさんに車いすを体験していただき、フィロソフィを感じていただこうとなりました。

なので、例えば「なんでブラインドサッカーはないの?」と言われたら、その通りなのですが、今回の反響や反省点、改善点を整理した上で、今後、大事に育てていくイベントになればいいなと思っています。パラリンピックがあるからやっている、それが終わったら意味を失うものだとは考えていないです。
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「パラリンピックが終わったら何もしなくなった」が一番恥ずかしいしカッコ悪い!

――「WHO I AM」を制作してきて、太田さんが感じた、社会が変わっていくために必要なことはどのようなことでしょうか?

太田 約5年で25か国、40選手の取材をして感じたのは、このミュージアムもまさにそうですが大事なのは「(物理的な)段差があるから、それをなくしましょう」ということではなくて、ハード面ではなくソフト面のほうだということ。

欧米やオーストラリアに取材に行くと、僕らが取材で気を遣うようなことで、彼らはつまづいていないし、心のバリアがないのをすごく感じました。

パラスポーツが......ということよりも、社会に暮らす一員として、互いの個性を認め合う、互いの良い面を見るという意味で、日本が学ぶべきことはたくさんあるなと感じました。

より良い社会にしていこうと思ったら、互いの個性を認め合い、想像力を働かせて、コミュニケーションをしっかり取るということが大事ですよね。特に日本で暮らしていると「傾向と対策」に縛られてしまう部分が多くて、やっていいこともやってはいけないこともあらかじめ決まっていて、それによって自分たちの首を絞めているという窮屈さを感じることが多いです。

これは先ほど、野島さんとお話していたことで、極端な例えですけど、想像力や互いへの思いやりが究極的にあれば、信号と横断歩道って必要ないんじゃないかと。法律的な問題もあるので、あくまでも極端な例えですが「お先にどうぞ」「ありがとう。じゃあ先に行かせてもらいます」というコミュニケーションが取れれば、ルールで縛る必要がなくなるんじゃないか?生活の中で、想像力や個性が良い意味で発揮される社会になるのが理想なのかなと感じています。

――パラリンピックの盛り上がりについてどのように感じていらっしゃいますか? おそらく"いま"が人々の注目や意識が最も高い時期だと思いますが、パラリンピック後について、WOWOWはどうあるべきとお考えですか?

太田 いま、こうしてパラリンピックが盛り上がっているのは本当に嬉しいし、いろいろなメディアがいろいろな扱い方をしてくれるのが一番良いことだと思います。あるひとつのものの見方がひとり歩きするのが一番良くないと思っていて、「競技」「スポーツ」として扱われる、あるいは「福祉」の面から扱われたり、時には「開発援助」や「人権問題」として扱われたりする――そうやって接点が増えることが、最大のチャンスだと思っています。

WOWOWにできることは、その多くの中のひとつの要素でしかないけれど、人々がいろいろな形でパラリンピックに触れて、ひとりでも多くの人が考えて、気づきになるのが重要です。

ただ、パラリンピックが終わったとき、ムーブメントが一定量......いや、もしかしたら、かなりトーンダウンしてしまうのは、ある種仕方のないことなのかもしれません。ただ、WOWOWはその流れには加わらないと強く思っています。「パラリンピックが終わったら何もしなくなった」と言われるのが一番カッコ悪く、恥ずかしいことです。

「WHO I AM」のような番組を続けることがベストなのか?このミュージアムのようにユニバーサルな発信ができるイベントをやるのか? いま、僕の立場で具体的に何かを断言することはできませんが「WHO I AM」が培ってきたフィロソフィを伝え続けていくことは絶対にやります!

パラアスリートたちの"創意工夫"を体感してほしい

210903_Hiroshi_Nojima_OP_6074.jpg【野島弘さんインタビュー】

――この「やさしくないミュージアム」を実際に体験していかがですか? 来場者にどんなことを感じてほしいと思いましたか?

野島 よく「パラスポーツの醍醐味や選手のすごさを教えてください」と質問されるんですけど、体験したことのない人にそれを伝えるってなかなか難しいんです(苦笑)。

でも、この「やさしくないミュージアム」は、ちょっと違う視点で7つの競技を知ることができて、私自身、実際に体験してみて「なるほど!こういう伝え方があるか!」と唸らされるような楽しい体験型展示になっているなと感じました。これを体験することで、いま行なわれているパラリンピックがより楽しく見られると思うし、パラスポーツが大好きになってくれると思います。

加えて、パラアスリートたちが創意工夫をして競技に臨んでいることがよくわかると思います。競技によっては、ルールは健常者とそこまで変わらないものもあるんですけど、車いすに乗った状態でどう対応するか? その創意工夫を経験してもらうことで、みなさんの中の"常識"や"普通"というものを変えて、普通の範囲をより広げたり、標準という物差しをもう少し違うものに変えていただければ、我々もより楽しく生きていけると思いますし、考えるきっかけにしていただければと思っています。

この(目の前の)テーブルの高さだって、いつのまにか"標準"が決まっているけど、それが誰にでも「やさしい」のか? もう一度、見直す機会になればと思います。「やさしくないミュージアム」を体験することが、優しい社会に変わっていくきっかけになったら嬉しいです。

大切なのは"心のレガシー"と継続

――ついにパラリンピックが開幕して、連日熱戦が繰り広げられており、パラスポーツに対する注目が集まっています。パラリンピックの見どころ、パラリンピックが開催されることで期待していることを教えてください。

野島 東京でパラリンピックが開催されることは、すごくありがたいことだし、新しい競技場ができたり、インフラも整備されたりしています。ただ、世間はそういうものを「レガシー」と言うけど、形あるものはいずれ劣化していきます。でもこれを機に、人々の心に何か変わるためのきっかけが与えられたら、それこそがレガシーだと思っています。

心の変化は、これから受け継いでいくことによってさらにレベルアップしていくと思います。形あるものではなく、心のレガシーが大切です。より多くの人が、変わるきっかけをつかんでいただければと思います。

注目点ということで言うと、車いす陸上(短距離)に出場する村岡桃佳はパラアルペンスキーもやっていて、彼女がスキーをやることになったきっかけに携わらせてもらっているので、ぜひ頑張ってほしいです。最近はスキーもすごくかっこよく滑るんですよ。今度は陸上で、かっこいい走りを全国のみなさんに見せてほしいです。

――野島さんは「ノーバリアゲームズ」などにも携わられていますが、今後、WOWOWに期待することを教えてください。

野島 第一は「継続」ですよね。1964年に東京でオリンピックと一緒にパラリンピックが行なわれた頃から「これを機に世の中を変えましょう」って4年ごとに言われ続けているけど、いまだに社会はなかなか変わらない。この東京大会を機に、世の中を変えていくきっかけになるよう、発信することですね。僕らはいろんな活動はしていても、発信力に限りがあるので、ぜひWOWOWさんの強い発信力を活かして、世界にパラスポーツの魅力やより良い環境を作るための発信を続けてほしいです。

「やさしくない」ってワクワクする! 困難を「面白い!」と感じてほしい

210903_Shinji_Negi_OP_6108.jpg【根木慎志さんインタビュー】

――「やさしくないミュージアム」について、どのような印象を持たれましたか?

根木 最初にタイトルだけ聞いて「え? 何それ? やさしくないの?」って思いました(笑)。でも「WHO I AM」を作ったWOWOWさんなので、絶対に驚かせてくれるだろうとワクワクしながらここに来ました。

「やさしくないもの」や「困難なこと」って、とかく世間でネガティブに捉えられがちだと思います。でもアスリートはいろいろな難しさの中で工夫や努力をして、できないことをできるようにしているわけです。そういう意味で、パラリンピックは「可能性の祭典」だと僕は思っています。「できないこと」に世間の目は行きがちだけど、この展示を体験してもらうと、「こんな大変なことをしているのか!」と感じつつも、決して嫌な思いはしないと思うんです。困難を「面白い!」と感じてもらえるんじゃないでしょうか?

実は、ここで「やさしくない」という言葉で表現されていることって、実はワクワクすることであって、困難があるからこそ、工夫してやり遂げるところに面白さがあるってことを、感じられると思います。

壁にぶつかっていく「重すぎる扉の先にある展示」なんて、僕もやってみてドキドキしました! あの壁に当たっていく時、ラグビー選手の気持ちになれるんですよね。

車いすバスケットボールを体感できる「高すぎる展示」もそうで、3ポイントシュートの軌道を見てもらうと、ボールがあんな風に飛んでいくんだってことが体感できると思います。「やさしくない」と言いつつ、僕にとってはこんなに「やさしい」企画はないなと感じています。

――パラリンピックの魅力、今後期待する社会の変化について教えてください。

根木 まさしく"壁"ですよね。「パラリンピックが社会を変える」と言われているけど、変えるのはアスリートではなく、みなさん自身だと思います。そのきっかけを作るのが、この大会だったり、選手や競技、そしてこのミュージアムです。

――このパラリンピックで、初めて車いすバスケットボールを見て、引き込まれたという人も多いと思います。

根木 (ちょうどこの取材会の前日に車いすバスケ男子日本代表がコロンビア戦に勝利し)最高ですよね! NHKの中継のスタジオ解説している人も良かったですよねぇ......あ、僕なんですけど(笑)。

鳥海(連志)選手も大活躍して、キテますよね! 僕のところにも「あれ誰?」ってたくさん連絡がありました。鳥海選手、それから第4クォーターに鳥海選手のビハインドパスを受けてシュートを決めた豊島(英)選手......彼らはどこに所属しているんでしょうね? あ、WOWOWですね(笑)。もうひとり、古澤(拓也)選手もWOWOW所属ですが、これからまだまだ活躍して美しい3ポイントシュートを決めてくれると思います。ここからまだまだ期待しています!

210906_yasashikunai_sub.jpg取材・文/黒豆直樹

「やさしくないミュージアム」 コンセプトムービー

WHO I AM 公式サイト         :http://wowow.bs/whoiam
WHO I AM 公式Twitter & Instagram :@WOWOWParalympic #WhoIAm
WHO I AM PROJECTサイト      :https://corporate.wowow.co.jp/whoiam/