2022.11.18

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北欧配信サービス「Viaplay」との独占契約、若者の新規加入をもたらした「陳情令」など中国ドラマの増加......配信全盛の時代に"世界"を見据えたWOWOWの海外ドラマ戦略とは?

映画部 渡邉数馬・陸正妍・大朏ちなつ

北欧配信サービス「Viaplay」との独占契約、若者の新規加入をもたらした「陳情令」など中国ドラマの増加......配信全盛の時代に

刑事、医療、法廷といった定番からサスペンス、ラブロマンスまで幅広いジャンルを網羅した多彩なラインナップでWOWOWの歴史の一翼を担ってきた海外ドラマ。近年では、ハリウッドのメジャースタジオ作品、韓流ドラマだけでなく、ヨーロッパ、アジアなど世界各国のドラマが続々上陸! 3月には北欧を代表する配信サービス「Viaplay(ヴァイアプレイ)」とのアジア初となる独占的ブランドコンテンツ契約の締結が発表されるなど、国際性という点でも幅の広さを見せている。

今回、FEATURES!に登場するのは、海外ドラマを担当する映画部の渡邉数馬部長、スウェーデンのViaplayとの交渉を担当した大朏ちなつ、そして日本でも熱烈な人気を博した「陳情令」をはじめ、中国ドラマの調達を担当する陸正妍(りくしょうけん)の3名。配信サービスの多様化で競争も激化する中で、WOWOWの海外ドラマの進むべき道について語ってもらった。

──WOWOWではメジャースタジオによる作品や韓流ドラマといった定番の作品のみならず、北欧や中国など世界中のドラマを調達・配信していますが、海外ドラマに関して、WOWOWの具体的な戦略について教えてください。

渡邉 まず、月額制のペイチャンネルとして、やはり話数が多く継続的に提供のできる海外ドラマコンテンツは非常に大きな意味を持っています。新規の加入を促すことはもちろんですが、続きを楽しみに契約を継続していただけるということで、WOWOWにとって海外ドラマは昔から非常に重要なコンテンツです。

ただ、10年くらい前であれば、アメリカのネットワークで放送されているコンテンツをそろえ、「日本初」としてお届けする形をメインに展開できていましたが、メジャースタジオを含めた各社が自社で配信を行なうようになり、競争が激化した結果、アメリカの強いドラマコンテンツを網羅的に調達することが難しくなってきました。
加えてアメリカの視聴者が求めるドラマと日本のマーケットで求められるものがズレてきている部分もあり、アメリカのコンテンツをそろえておけば多くの方にご視聴いただける時代ではなくなったという現状があります。

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渡邉 そういった現状を踏まえ、アメリカ以外に目を向けてみると、お客さまのニーズがまだまだあるんじゃないか? ということで、ここ数年は世界各国のドラマ市場に注目するようになってきています。
特にアジアドラマに関してはもともと韓国ドラマを長く放送してきて、WOWOWのお客さまに土台が根づいていたところに、近年は中国ドラマも非常に伸びており、WOWOWの海外ドラマの中で、アメリカドラマと並ぶ一つの核に育ってきている実感があります。

そしてアメリカ、アジアに加え、もう一つの軸となるのがイギリス、北欧などのヨーロッパのドラマです。これは非常にWOWOW映画部の強みともいえる部分かと思いますが、大朏をはじめとする映画部の調達チームが数十社を超える海外の権利元と直接やりとりをして、"WOWOWプレミア"として日本初放送・配信となる作品を約20年にわたってほぼ毎月継続的にお届けしています。
アメリカの作品に関しては全米のネットワークでヒットしたものを中心にラインナップしていますが、これらヨーロッパの作品は、まったくの手探り状態のところから担当者の"目利き"を活かしながら、調達を行なっています。こうした努力が実ったのか、この4~5年で、「WOWOWプレミア」枠についてはお客さまの認知もさらに広がり、番組の利用自体も増えています。

また近年はWOWOWオンデマンドを活用し、放送だけでなく配信サービスを伸ばしていこうという全社方針の中で、海外ドラマはアニメと並んで配信における非常に強力なコンテンツとして重要視され、映画部では配信での海外ドラマコンテンツ戦略にも鋭意取り組んでいます。

──今年3月には北欧配信サービス「Viaplay」とアジア初の独占的ブランドコンテンツ契約を締結しましたが、どういう経緯で契約を結ぶことになったのでしょうか?

大朏 ちょうど1年ほど前に、WOWOWオンデマンドのローンチに向けた、海外ドラマ強化策を検討していました。チーム内で手分けして、世界各国のライセンサーに当たり、新たなドラマの"鉱脈"探しに奔走していました。

その中で出会ったのが「Viaplay」でした。北欧のサスペンスドラマは以前からWOWOWで放送し、お客さまからも非常に喜んでいただいていました。Viaplayはもともとペイチャンネルとして始まったサービスで、WOWOWと同じようにサッカーやメジャー映画、海外ドラマを総合編成しており、ヨーロッパで非常に伸びているということで、お客さまの嗜好も似ている部分があり、WOWOWとマッチするのではないかというのもありました。
近年、オリジナルドラマ制作にも力を入れておりまして、継続的な制作・配給が見込めるということで、戦略的強化の一環として単体ではなく、中長期的なアライアンスの検討と交渉を始めまして、3月にアジア初の独占的ブランドコンテンツ契約の締結に至りました。

渡邉 配信サービスの強化という点で、WOWOWは他のSVODサービスに対し、提供できるコンテンツ数が足りていないという弱点があります。また現状の配信サービスの競合状態においてWOWOWが提供できる独占性のあるコンテンツスロット展開とは何か? と考えたとき、行き着いた答えの一つがViaplayでした。

海外ドラマの独占コンテンツのスロットが年間100~200本WOWOWオンデマンド上にあるということが、WOWOWの今後の配信サービスを考えたときに非常に大事になっていくのではないかということで、局内でも議論を重ねた上で立ち上げに至りました。

とはいっても、先方にとってアジアはまったくの未開拓のマーケットだった中で、もちろんWOWOWとの交流があるわけではなく、担当の大朏から直接「いかがでしょう?」とまったくの見ず知らずの担当者にノックするところから交渉がスタートしました。大朏の熱意や先方のWOWOWに対する期待もあり、急ピッチで形にすることができました。

──2019年以降、中国ドラマの配信数も増えているとのことですが、視聴者の方々に楽しんでいただくために大切にしていることはどのようなことですか?

 私が調達を任された当初は、中国ドラマは1枠で年に1作品ほどの放送でしたが、現在は3枠ほどに拡大して放送しています。中国ドラマは近年、配信事業の発展に伴い制作本数が増え、クオリティーにも磨きがかかっていると感じております。
日本初放送となる作品を独占で放送しているのですが、放送の枠は限られているので、同じ原作者の作品やテーマの近い作品を配信で視聴していただけるラインナップを組んでいます。放送では最新の作品を楽しんでいただきつつ、関連した作品を配信で......という両軸で考えています。

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陸 中国ドラマの魅力としては、特にコスチュームを着ている時代劇に言えることですが、やはり描かれる物語の世界観、スケールの大きさにあるかと思います。話数が多いということもありますが、かなりのお金と労力、時間をかけて、壮大なスケールで撮影を行なっているので、他のどこにもない奥深さや独自の作風で魅了しています。

渡邉 陸のイチオシのドラマ「陳情令」はファンタジー時代劇でして。

 もともと人気のある小説が原作でしたが、ドラマは主演の男性2人が非常にはまり役で、ファンをとりこにする力を持っているということもあり、日本でも爆発的な人気を博しています。

221111_kaigaidorama_sub05-asia01_w810.jpg「陳情令」(c)2019 Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited

渡邉 WOWOWの視聴者層は40代~60代の方がメインとなっているのですが、「陳情令」に関しては若い世代の方たちに見ていただけました。海外ドラマで新規加入が大きく増えることは普段はあまりないんですけど「陳情令」をきっかけにご加入いただいた新規加入者はかなり多かったですね。

 WOWOWでは「陳情令」の原作小説(「魔道祖師」)をアニメ化した「魔道祖師 前塵(ぜんじん)編」、「魔道祖師 羨雲(せんうん)編」を放送してきましたが、最終章となる「魔道祖師 完結編」も、2022年11月からは字幕版、2023年1月からは日本語吹替版が放送・配信されます。

──あらためて海外ドラマの放送・配信におけるWOWOWならではの魅力、強みはどういった部分にあるとお考えでしょうか?

渡邉 やはり総合的な編成をしているというところでしょうか。他社さんのSVODサービスと比べると作品の絶対数は少ないですが、ジャンルの幅広さは自認しています。

加えて、なんと言ってもWOWOWのお客さまに楽しんでいただけるドラマをわれわれが代表して調達しているという部分ですね。現地の評価や人気はもちろん大切ですが、最後は「WOWOWのお客さまに気に入ってもらえるか?」というフィルターを通して、厳選してお届けしています。

また、WOWOWオンデマンドがブラッシュアップされる中で、海外ドラマをより楽しんでいただける土台ができてきたのかなと思います。厳選された作品を届ける"放送"と、幅広い作品を楽しめる"配信"という両軸を活かしたコンテンツ提供ができることもWOWOWならではの強みと言えると思います。

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──今後放送・配信予定のドラマの中からオススメの作品を教えてください。

大朏 まず2022年12月から放送が開始となる「FBI4:特別捜査班」ですね。12月からは配信でシーズン1から一挙に見られるようになりますので、まだまだ追いついていただけます。

※米大ヒットドラマ「FBI」を見ないなんて、もったいない!WOWOWの海外ドラマ担当者が人気の理由を徹底解説!note記事はこちら

221111_kaigaidorama_sub01-FBI4_w810.jpg「FBI4:特別捜査班」(c) MMXXII CBS Broadcasting Inc. All Rights Reserved.

大朏 Viaplayの作品では2022年11月19日より放送の北欧サスペンス「トロム~フェロー諸島殺人事件~」(全6話)も「007/ノー・タイム・トゥ・ダイ」のロケ地にもなったフェロー諸島で初めて撮影されたオリジナルドラマの骨太のサスペンスで、おススメですし、12月放送の「8人の容疑者~誰がオット・ミュラーを撃ったのか~」(全8話)も、大邸宅でオット・ミュラーが殺された事件の容疑者8人が供述をし、それぞれの証言が少しずつ食い違うという謎解きのようなサスペンスです。

221111_kaigaidorama_sub02b_w810.jpg「トロム~フェロー諸島殺人事件~」(c) Viaplay Group.
「8人の容疑者~誰がオット・ミュラーを撃ったのか~」(c) Viaplay Group.

大朏 もう一つ、2023年1月に放送の北欧サスペンス「捜査官カタリーナ・フス」(全5話)も、女性新人警察官の成長を描いた作品で非常にオススメです。「クリミナル・マインド」の日本語吹替版でホッチナー役を演じていた森田順平さんが初めて演出を務められていて、声優陣も沢城みゆきさん、諏訪部順一さん、小宮和枝さんなど非常に豪華な顔触れとなっています。

221111_kaigaidorama_sub04-huss_w810.jpg「捜査官カタリーナ・フス」(c) ZDF

陸 2023年1月に放送開始の「永楽帝~大明天下の輝き~」は、中国大河ドラマの巨匠ガオ・シーシー監督のもとにオールスターキャストが集結し、明代を舞台に永楽帝の激動の生涯を描いた本格歴史超大作。もう一つ「夢華録(むかろく)」は、本国では歴代記録を塗り替え大ヒットしたロマンス時代劇。ディズニー版『ムーラン』に主演したリウ・イーフェイが演じる、逆境に負けず運命を切り開くヒロインを是非ご注目いただきたいです。どちらも中国で大きな話題となっており、日本でも是非皆さまに楽しんでいただきたい作品です。

221111_kaigaidorama_kumi02_w810.jpg「永楽帝~大明天下の輝き~」(c) H&R CENTURY PICTURES CO.,LTD
「夢華録(むかろく)」(c)Shenzhen Tencent Computer Systems Company Limited

──最後に皆さんのお仕事をされる上での「偏愛」──大切にしていることや哲学を教えてください。

大朏 お客さまあってのWOWOWですので、まず「面白い」と思ってもらえることを大事にしていますが、なおかつ自分も「面白い」と思える作品を調達することを心掛けています。自分が楽しんでいないとそれが伝わってしまうと思うので、楽しみながら仕事をし、それを伝えるのが大事なのかなと思います。

陸 私も大朏さんと同じで、自分が感じた「面白さ」を大事にしています。実は、私は自分が調達の担当になるまで近年の中国ドラマについて知識が少なかったんです(笑)。ただもともと自分が面白いと感じた作品をより多くの人に届けたいというモチベーションがあって入社したので、それを中国ドラマにも活かせるところがあり、作品選定やプロモーションのときには、自分が感じた面白さを大切に、それをいかにお客さまに分かりやすく伝えるか? といったことを日々考えながら取り組んでいます。

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渡邉 2011年にWOWOW3チャンネルが開局する際に、当時の局長が掲げた「見るほどに、新しい出会い。」というキャッチコピーが今でも自分の中に強く残っています。WOWOWを「見る」ことによって「新しい出会い」がある――そういう番組をお届けできるよう、コンテンツと視聴者に真摯に向き合っていきたいと思っています。

海外ドラマに関して常々、部員に言っているのは、多くの視聴者にとっては、海外ドラマもWOWOWを通じて初めてご視聴いただくという意味では、会社が力を入れているオリジナルドラマと変わらない、WOWOWにしかない価値を体現する大切なものなんだということ。だからこそWOWOWのセレクションには非常に大きな意味があるんだと。初めて日本の視聴者に作品を届ける立場として、プライドを持ちつつ、お客さまに楽しんでいただけるように日々部員とともに取り組んできたいと考えています。

取材・文/黒豆直樹 撮影/祭貴義道