2025年3月期決算説明会レポート

2025年5月15日、2024年度決算説明会を開催しました。説明会では、代表取締役 社長執行役員の山本均および取締役 専務執行役員の尾上純一が、2024年度の決算・収支状況について説明しました。合わせて、代表取締役 社長執行役員の山本均が、資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の進捗状況、中期経営計画、2025年度の計画を説明したほか、取締役 専務執行役員の井原多美が「WOWOW 夢中のトビラボ」設立をはじめとする今後の取り組みについて解説しました。
(出席者)
代表取締役 社長執行役員 山本均、取締役 専務執行役員 尾上純一、取締役 専務執行役員 井原多美
代表取締役 社長執行役員 山本均
2024年度決算 収支状況(連結)
売上高は前期比18億87百万円の増収、経常利益は9億39百万円の増益です。売上高は前期比で会員収入が減少したものの、映画事業や番組販売などその他収入やグループ会社の売上増加により増収となりました。経常利益は、増収に伴う利益の増加に加え、広告宣伝費などの効率的な投下により増益となりました。当期純利益は、経常利益までの増益要因はありましたが、特別損失の計上により減益となりました。
株主還元については、1株当たりの期末配当⾦を当初の予想通り30円とする予定です。5月16日開催の当社取締役会に付議予定です。
取締役 専務執行役員 尾上純一
特別利益および特別損失について
特別利益および特別損失の内訳です。特別利益として、上場有価証券1銘柄売却による投資有価証券売却益を計上、固定資産売却益と合わせて、3億82百万円計上しました。
一方、特別損失として、25億60百万円計上しました。
こちらは、「4K放送の終了」による固定資産等、「コンテンツ情報統合管理システムの開発中止」によるシステム開発費用、フロストインターナショナルコーポレーション社の、のれん及び無形固定資産の減損損失を23億55百万円計上したことや、TNLメディアジーンの株式評価損などを投資有価証券評価損として1億72百万円計上したことなどによるものです。
2024年度決算 加入状況
新規加入件数は70万5千件でした。新サービス「WOWSPO」の開始で若年層が多く加入したことや、「連続ドラマW ゴールデンカムイ ―北海道刺青囚人争奪編―」、UEFAチャンピオンズリーグなどのスポーツコンテンツ、WEST.などの音楽ライブが好評を得たことにより、前期⽐7万9千件の増加となりました。
解約件数は81万2千件でした。配信サービスの競争激化に加え、目的番組終了などによる解約で前期比9万4千件増加しました。結果として正味加入件数は10万7千件の純減、累計正味加入件数は236万件となりました。
代表取締役 社長執行役員 山本均
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の進捗状況(2024年度に実施した取り組み)
資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応の進捗状況についてです。2024年度は四つの戦略に取り組みました。成長戦略では、外部プラットフォームと連携して「WOWSPO」を開始した一方で、4Kチャンネルの放送サービス終了による不採算事業からの撤退により、経営資源の選択と集中を図りました。また、オリジナルライブの劇場公開やスポーツコンテンツのライブビューイングなど多層サービスの展開を進めたほか、WOWOW BRIDGEの設立を通じて海外作品の日本国内での制作プロダクション業務にも参入しました。財務戦略では、グループ全体で3件の投資を実施。政策保有株式の縮減や、減益の状況下においても安定的な配当の継続を計画しました。非財務戦略では、WOWOWグループにおける「人権およびDEIに関する方針」を策定し、サステナビリティ経営の強化に努めました。IRの強化では、決算説明会やIRミーティングを通じて株主・投資家との対話の機会を拡充。2025年4月から義務化された英文での同時開示も、前倒しで実行しました。
資本収益性と市場評価について
2024年度はさまざまな取り組みを実施したものの、会員数の減少や特別損失の計上による利益減少などにより、資本コスト※を上回るROEを達成するには至りませんでした。また、業績の停滞に伴う株価の低迷などにより、PBRも1倍を上回ることはできませんでした。
2025年度は成長戦略として「中期経営計画」における重点戦略の実施に加え、財務・非財務戦略やIRの強化を継続することで、ROEの向上とPBRの改善を図ります。
※当社は株式資本コスト(CAPM:資本資産評価モデル)を採用。2024年度までの実績をもとに算出し、6%程度と推計。
中期経営計画(2025-2029年度)について
2024年4月に代表取締役 社長執行役員として山本均が就任して以降、前中期経営計画(2021-2025年度)に沿った施策とし、大型オリジナルコンテンツの開発や WOWOWオンデマンドの改良とコンテンツの拡充、さらに「WOWSPO」などの新サービスやオリジナルコンテンツの劇場公開および展覧会の開催などさまざまな取り組みを行い、一部において手応えを感じています。
この成長の芽を大きくし、収益構造の転換を早期に実現させるべく、新たな中期経営計画を策定いたしました。
2024年5月に「人生をWOWで満たし、夢中で生きる大人を増やす」というパーパスを策定いたしました。これを踏まえ、新たに策定したビジョンは、「独自のエンターテインメント発想で、あなたの日常に心動く瞬間を」としました。
これは、当社が30年以上にわたり培ったエンターテインメントの領域をさらに拡げ、人々のライフスタイルを彩るサービスを提供し、感動や驚きなど心動く瞬間を、日常のあらゆる場面を通じ提供する、との想いから策定いたしました。
このようなパーパス、ビジョンのもと、本中期経営計画では、「会員の日常に"夢中"を提供する企業」への進化を目指します。
会員の日常に「夢中」を提供すべく、新しい配信サービス、ECなどさまざまなサービスをつなぐ新たなデジタルプラットフォームの構築を推進します。これまでの放送・配信サービスにご加入中である会員の満足度向上を目指すとともに、新たな会員の獲得を通じてパーパスに掲げた「夢中で生きる大人」を増やしてまいります。
本中期経営計画では、主にBtoCを中心とした会員領域、BtoBを中心とした会員領域以外の二つの領域に注力して成長を目指します。 会員領域では、放送・配信サービスを展開するメディア・サービス領域、ECサービスや多層サービスなどを展開するコマースおよびイベント領域にて、サービスを推進してまいります。 会員領域以外では、マーケティング支援、コンテンツ制作、プロダクション業務の拡大を目指します。
会員領域における重点戦略です。
①メディア・サービス領域:放送サービスの効率化推進
放送サービスの効率化推進に取り組み、その原資をコンテンツの強化、および、その他重点戦略の実行に向けて投資してまいります。
②メディア・サービス領域:WOWSPOに続く新たな配信サービスの開始
「WOWOWオンデマンド」や外部プラットフォーム向けサービスとして展開している「WOWSPO」に加え、自社プラットフォームでの新しい配信サービスの開始による事業成長を目指します。
③コマースおよびイベント領域:ECおよび多層サービス推進による収益拡大
ECサービスの商品拡充や新しいECショップのグランドオープン、コンテンツを軸にした多層サービスを推進してまいります。
④コマースおよびイベント領域:ライフスタイルに即した新規事業開発
夢中で生きる大人に向けたライフスタイルを提案する新たな事業の開発を進めてまいります。
会員領域以外における重点戦略です。
①マーケティング支援、コンテンツ制作、プロダクション業務などの事業拡大
当社グループ各社の強みを活かしグループ全体でのシナジーを創出することで事業の拡大を目指します。
なお、経営数値目標は、事業環境に不透明な要素が極めて多いことから、事業年度ごとに精査の上、発表いたします。
取締役 専務執行役員 井原多美
今後の取り組み(1)「WOWOW 夢中のトビラボ」設立
2025年5月15日、「WOWOW 夢中のトビラボ」の設立を発表しました。 WOWOWのパーパスである「人生をWOWで満たし、夢中で生きる大人を増やす」の実現に向けて、エンターテインメント領域にとどまらず広く生活者を理解するために、大人の「夢中」を研究していきます。「夢中で生きる大人が増えると、社会全体が元気になり活性化する」という仮説のもと「夢中」にこそウェルビーイングを実現するヒントがあると考え、テーマとしました。今後は、研究から得られた示唆を事業戦略に反映することはもちろん、同じ関心を持つ企業・研究者の皆さまとの協働も視野に研究を進めていきます。近日中に、第1弾の研究内容の発表を予定しています。
今後の取り組み(2)ECサービスの拡大
会員領域の軸となるECサービスでは、ファンに向けたコンテンツ連動型の商材や、ライフスタイルを提案する商材の拡充に取り組んでいます。コンテンツ連動型の商材では、オリジナル映画情報番組「中島健人 映画の旅人」のオリジナルグッズや、UEFAチャンピオンズリーグ、全仏オープンテニスやLPGA女子ゴルフツアーの出場日本人選手のコラボグッズといったスポーツコンテンツに関連する商品を展開しています。ライフスタイル商材では、料理を楽しむ大人に向けた上質な調理道具や、大切な方や自分へのご褒美としたギフト商品を展開しています。2025年秋に予定している新たなECサイトのグランドオープンに向けて、さらなる新商品の開発や利用者の拡大を進めます。
今後の取り組み(3)多層サービスの推進
多層サービスでは、6月より新番組「WESSION」がスタートします。WOWOWとタッグを組んだオリジナルライブが大反響を呼んだWEST.のレギュラー音楽番組で、10月には彼らの地元・大阪の万博記念公園にて、WEST.初の主催となる野外フェスの開催も決定しています。番組とフェスの連動に加え、WEST.ならではのフェス飯やグッズ展開も予定しており、多層サービスを象徴する取り組みとなっています。
今後の取り組み(4)プロダクション事業の拡大
会員領域以外(BtoB)では、プロダクション事業の拡大を行なっています。WOWOW BRIDGEでは、海外作品のプロダクション業務の受注が進んでいます。アメリカの大手スタジオ・スカイダンスが手がける、Apple TV+で配信予定のドラマ「Neuromancer」に加えて、アメリカではCBSで放送、日本ではWOWOWにてこの夏放送・配信予定のユニバーサル・テレビジョン制作によるドラマシリーズ「FBI:インターナショナル4<最終章>」の最終話の、日本国内での撮影を請け負っています。さらに、本木雅弘主演のNHK戦後80年ドラマ「八月の声を運ぶ男」(2025年8月13日にNHK総合で放送予定)では、WOWOWが企画を担当し、制作プロダクション業務を受注するなど、事業の幅を着実に広げています。
2025年度 収支計画(連結)
2025年度は、中期経営計画の重点戦略に基づき取り組みを進めます。
収支計画では、売上高は、2024年10月に買収したCINRAの通期寄与や、グループ外売上の増加によるテレマーケティングセグメントの増収、事業の多層化による売上増加がある一方で、会員収入の減少により前期比で減収となる見通しです。経常利益は、マーケティングコストの効率化や4K放送に関わる費用の減少を見込むものの、会員収入の減少により、前期比で減益を想定しています。当期純利益については、2024年度に計上された減損損失などの特別損失がないことから増益の見込みです。
2025年度 加入状況
2025年度の正味加入件数は10万件減少、累計正味加入件数は226万件となる見通しです。正味加入件数は、前期から7千件の良化が見込まれるものの、競争環境の激化などからマイナスでの着地を想定しています。今後は事業の多層化による成長を加速させ、加入者数の変動に影響を受けにくい収益構造へと転換を図ります。
安定的な配当を継続
2025年度も1株当たりの配当30円を計画しています。株主還元の重要性を認識していますので、継続的に安定した配当を維持する方針です。
まとめ
説明と質疑応答の後、山本は「本日は決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。新しい中期経営計画を発表させていただきました。WOWOWを取り巻く環境は、大変厳しい状況でございますが、全社一丸となって、われわれの持つ武器であるエンターテインメントをプロデュースする力を信じて、その力で新しい事業をやっていこうという決意だとお考えいただければと思います」と述べ、説明会を終えました。
2024年度決算の詳細については、以下の資料もご参照ください。