2026.02.02

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障がい者雇用による価値の創出――RESQWO(レスクオ)が示す可能性

障がい者雇用による価値の創出――RESQWO(レスクオ)が示す可能性

WOWOWのグループ会社である、WOWOWコミュニケーションズが展開するRESQWO(レスクオ)。それは、電話応対の品質向上に特化した、障がい者雇用を促進する革新的なサービスだ。障がいのある社員が力を発揮する環境とは。企業はどう進化するのか。実際に働く3名の社員と、彼らを支える現場リーダーの声から、障がい者雇用の“今”と可能性を探る。

人権尊重の理念から生まれた「RESQWO(レスクオ)」

WOWOWグループは、DEI人権尊重を経営の重要な柱として据え、WOWOWグループにおける「人権およびDEIに関する方針」として、DEI(Diversity=多様性、Equity=衡平性、Inclusion=包摂性)の理念を公表している。
性別(性自認)、国籍、出身、宗教はもとより、障がいのあるなし、信条、志向や経験の違いなどあらゆる差別や偏見を防ぎ、誰もが安心して働ける環境を構築すること。それが、グループ全体の事業活動の根幹にある。

DEIを、職場環境に当てはめてみよう。
「多様性」は、土台である。ひとりひとりに違いがあることを認め、ともに生き生きと働ける環境であること。
「衡平性」は、その人にとって必要な支援や機会が与えられること。全員に同じ対応ではなく、「不利が生じない調整」がポイントだ。育児・介護中の社員にはフレックスタイム制を導入する、障がいのある社員には業務補助や障がいに対応する環境を整える。これらの工夫によって、誰もが力を発揮することにつながっていく。
「包摂性」は、すべての人の意見が尊重され、発言やスキルアップなどのチャンスが与えられることを意味する。

どれか一つが欠けても、人権尊重の理念は実現しない。こうした考えのもと、2024年にWOWOWコミュニケーションズがサービス化に向けた検証を開始し、2025年に提供開始したのが、RESQWO(レスクオ)だ。同サービスは、顧客対応をベースに応対品質やデータ活用、マーケティング支援などを提供する。RESQWO(レスクオ)は、応対品質業務に特化し、障がいのある人が力を発揮できる職場づくりに挑む、新たな取り組みである。

応対品質業務に特化した障がい者雇用促進サービスRESQWO(レスクオ)
現場リーダー 今井美栄子

2602_features_resquo_sub01_w810.jpgRESQWO(レスクオ)で現場リーダーを務める今井

「RESQWO(レスクオ)はWOWOWコミュニケーションズが長年培ってきた応対品質業務と、さまざまな企業に障がい者雇用支援サービスを提供するスタートライン社のノウハウを掛け合わせたサービスです」

そう語るのは、現場リーダーを務める今井美栄子だ。

RESQWO(レスクオ)立ち上げ当初から主に学習障害(LD)や注意欠陥多動性障害(ADHD)など、発達障がい・精神障がいがある社員の採用を進め、現在、5名が勤務する。

業務内容は、コールセンターにおける応対品質の調査だ。録音された通話音声を聞き、評価項目に基づいて応対の評価・記録に携わる。一見、シンプルな作業だが、集中力や注意力、細部への気付きが求められる仕事である。

「ひとりひとりの得意なこと、困難に感じることはさまざまです。その特性を理解し活かしていくことが最も重要。だから、画一的な研修はありません」

入社時に個別面談を行ない、勤務形態の希望や対応はどのようなものが好ましいかなど、働く上での不安について丁寧に聞き取る。

「あらゆることを教えていただいた上で、その人に合った形で業務に当たってもらうようにしています」

たとえば、デジタルが得意な人には画面で確認できる資料や評価表を、紙の方が安心できる人には、印刷した資料を用意する。

環境面では、職場スペースにひとりだけで休むことができる休憩ブースを設置した。飲食はできないが、誰にも邪魔されず心や体を整えることができる空間だ。

「業務はパーテイションで仕切られたデスクで、自分のペースで進められます。一方で、疑問や不安があるときには、すぐに相談できる。その距離感を大切にしています」

RESQWO(レスクオ)は、スタートライン社との連携事業だ。同社は、応用行動分析学(ABA)や文脈的行動科学(CBS)など科学的根拠に基づいた支援手法を強みとし、採用から就労後の定着まで、一貫してサポートしてきた実績がある。

「業務創出」「環境整備」「定着支援」を両社一体で考える独自のモデルにより、企業と社員のどちらも安心できる障がい者雇用を実現させている。リーダーをはじめとする社内スタッフの日常的なフォローと、外部専門家による定期的な面談。この両輪によって、障がいのある社員が安心して働き続けられる環境が築かれている。

2602_features_resquo_sub02_w810.jpgRESQWO(レスクオ)チーム オフィスの様子

前職の経験を活かして品質向上に貢献
社員Aさん

一般雇用としてコールセンターに長く勤務する中で、ADHDと診断されたことをきっかけに障がい者雇用として転職した。
「前職時代、私はスーパーバイザーなどから評価を受ける立場でした。今度は逆に評価する立場。慣れないうちは、不安もありましたが、徐々に対応の細かい部分にも気を配れるようになってきたと感じています」

Aさんは、口頭による指示や複数のタスクを同時進行させることに困難を感じるという。
「以前の職場では、相談したいことが生じてもすぐに対応してもらえず、問題がその場で解決されない苦しさがありました。現在は、リーダーが迅速に対応してくれます。スタートライン社による定期面談もあり悩みを相談しやすい。そこが、働きやすさにつながっています」

チャットでのやりとりを整理するなど、自分なりのやり方で業務改善に役立てている。
「オペレーターとしての経験が、現在の業務に生きています。一度評価したオペレーターの対応が、次に改善されていると確認できた時には、やはりやりがいを感じますね。時には厳しい評価をしなくてはならないこともありますが、自分が携わったことで応対品質が向上し、危険因子の抑止につながっていることが実感できます」

入社当初は、10分未満の短い録音からスタートし、徐々に長時間の録音の応対品質の評価にも対応できるようになってきたとか。
「音声の細かいところまで聞き取ることで、これまで気付かなかったことに気付けるようになりました。助けてもらうばかりでなく、私自身が手助けを申し出るなど、行動にも変化が表われるようになりました」

仕事は、自分の可能性を広げてくれる。障がいがある人も、どんどん挑戦してほしいと語る。
「将来的には、評価項目が70もあるような他社のコールセンターの応対品質調査や、オペレーター業務のヘルプなどにも挑戦したいです」

初めての就職で得た自信
社員Bさん

Bさんは、幼少期にADHD、ASD(自閉スペクトラム症)と診断されたが、システムエンジニアを目指して大学に進学した。その後、障害者手帳を取得し、就労移行支援事業所に通いながら就職活動する中で、WOWOWコミュニケーションズへの就職を果たす。RESQWO(レスクオ)は、Bさんにとっては初めての就職先で出会ったサービスである。

「顔色や空気を読むなど、言語化されないコミュニケーションに困難を感じることが多く、ひとりで集中して録音された音声を聞くという業務内容は、自分にぴったりだと感じました」

不注意によるミスが多いと自分を分析し、得意なデジタル分野で工夫しながら業務に当たる。
「評価入力ではExcelの条件付き書式などを活用し、失敗を防ぐようにしています。また、必ず10分かけて見直しをしています」

RESQWO(レスクオ)では、社員の働き方に合わせフレックス制を取り入れているが、Bさんはフルタイムで勤務する。
「最初はストレスや不調で夜寝苦しく、翌日出勤しても体調があまりよくなかったこともありました。そんな時にも、会社の人たちは理解してくれて、柔軟に対応してくれたからこそ、努力し続けることができた。安心感が勤務の継続につながっています」

労働して、報酬を得る。自分の生活を自分で作り出していけることに、Bさんは喜びを感じている。
「先に就職している弟と対等になれたと、自信が持てるようになりました。お給料で新しくデスクトップPCを購入し、休日は趣味のゲームに熱中しています」

デジタル分野で能力を発揮するBさんは、そのスキルをさらに活用していきたいと考えている。
「いつかは、社内のヘルプデスクに携わりたい。パソコンの不具合が生じた際に、一次受けとしてサポートできるような業務で役に立てたら、と思っています」

仕事が自身の成長につながることを実感
社員Cさん

小学校低学年の頃、Cさんに学習の遅れが目立つようになった。成人後、改めて発達障害という診断を受けたという。

前職は、カフェでの接客だった。口頭指示が多く、相談する時間的、精神的余裕がない環境で、2度の休職を経験した。

「応対品質調査という初めての業務に不安もありましたが、業務研修がしっかりあり、何より私がどういう状況であれば働きやすいかということを事前から丁寧に聞いてくださったことが、とてもうれしかった」

入社して分かったのは、一緒に働く社員の「傾聴力」の高さ。
「困りごとでつまずいてもすぐに対応して、私が焦らなくて済むように、最後までしっかり聞いて丁寧に説明してくださいます」

Cさんには、学習障害(LD)があり、体調や精神的な不調が生じることも多い。入社当初は、体調に配慮した時短勤務だった。
「周りの人のサポートのおかげで出勤すること自体が、私にとってセルフケアのように変化していったんですね。だから、私からリーダーにお願いして、今はフルタイムで勤務しています」

仕事そのものがセルフケアになり、CさんのQOL(生活・人生の質)は格段に向上したのだとか。
「以前は心のモヤモヤを抱え込んで休日にまったくリフレッシュできませんでした。今は仕事帰りに映画館や洋楽のライブに足を運んだり、休日だけでなく毎日趣味を謳歌できるようになりました」

Cさんは、自分と同じように発達・精神障がいのある人も、就業の機会をどんどん持ってほしいと語る。
「充実した仕事によって自分の成長を実感しています。社会や人とのつながり、やりがい、失敗からの学び、そして達成感。この会社に入社して、私は初めて自分のことを肯定できるようになりました」

障がいのある社員が勤続する背景には、何より安心して働けるサポート体制、環境が土台になっている。RESQWO(レスクオ)が目指すのは、まさにこの土台であり、障がいのある人がともに生き生きと働ける環境を、社員全員でアップデートしていくことなのである。

RESQWO(レスクオ)が実証した成功例を拡張させていく

1976年に障がい者の雇用義務化が始まり、今年7月には、法定雇用率はこれまでの2.5%から2.7%に引き上げられる。厚生労働省が発表する2025年「障害者雇用状況の集計結果」によれば、法定雇用率を達成している企業の割合は、46%。障がい者を雇用することに、不安や困難を感じる企業が少なくないという現実がある。

RESQWO(レスクオ)での業務が始まって1年半。障がいのある社員は、全員1年以上勤続している。

「障がい者雇用が実現できていない多くの企業では、精神障がいのある人は、休みがちなのではないか、集中して勤務できないのではないかといった先入観があるかもしれません」
そう語るのは、現場リーダーの今井だ。

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「障がいのある人を雇用するに当たって、いちばん重視したのは障がいの特性をひとりひとりの"個性"として捉えること。せっかちな人もいれば、のんびりマイペースな人もいる。でも、それは障がいのあるなしに関係なく、そもそも誰もがみんなひとりひとり違うんですよね」

障がいのある社員が困っていたらすぐに対応する一方で、他の社員もどう対応したらいいか分からなければ、率直に当人に話を聞く。

「困っている時に、否定せず話を聞いてくれることがどれほど力になるか。私たち自身も、業務を通じて毎日感じていることですから」

決めつけない、否定しない、抱え込まない。障がいのある人とともに働きやすい職場環境を整える過程で、それ以前には当たり前と考えられていた社員同士のコミュニケーションや業務の進め方にも変化が表われている。
「私たちも日々、教えてもらっています」

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社員Bさんは、特に発達・精神障がいのある人の雇用は、今後ますます需要が拡大するだろうと語る。
「多くの企業では、身体障がいのある人を雇用することをイメージしているかもしれません。しかし、将来的に身体障がいのある人を中心とした雇用だけでは対応しきれなくなる可能性があります。一方で、実際に雇用されている障がい者の中で高い伸び率を示しているのは精神障がいのある人です。だからこそ今後は、精神障がいのある人をどのように受け入れ、ともに働く環境を整えていくかがますます重要になってくると考えています」

今井も実感を込めて、強調する。
「今後、企業にとって優秀な人材の確保は、避けて通れない課題になると思います。障がい者雇用の重要性は、ますます高まるのではないか。実際、私たちにとって、一緒に働く障がいのある社員は、なくてはならない大切な存在となっています」

同業他社などを対象に、業務の創出、環境整備を含めて障がい者が生き生きと働き続けられる支援、サービスを展開していく。RESQWO(レスクオ)で生まれた実践と学びは、今後、より多くの企業や社会へと広がっていく。その確かなロールモデルとして、現在RESQWO(レスクオ)で働く社員の姿があるのだ。


取材・文:宮崎恵理、撮影:中川容邦