キャンプインフェス「FUJI & SUN '26」レポート 富士山麓に響く音楽とあふれる笑顔、WOWOWが届ける心地よいクロスオーバーの世界
2026年6月6日(土)〜7日(日)、WOWOW企画制作キャンプインイベント「FUJI & SUN '26」が富士山こどもの国(静岡県富士市)で行なわれた。2019年に始まった本イベントは、コロナ禍を経て今回で7回目の開催。2日間でのべ約1万人を動員し、過去最多の来場者数となった。
音楽×キャンプ×ローカル、必ず笑顔になる理由
音楽ステージは、SUNステージ、MOONステージ、STONE CIRCLEステージの三つ。ロック、ポップス、ヒップホップ、ジャズ......さまざまな音楽が四六時中、紡がれる。緑に囲まれ、遠くで鳥がさえずる大自然の中で聴くジャンルレスな音楽。このアーティストが聴きたい!といったお目当ては当然あるにしても、どのステージ、どのアーティストにたどり着いても心地よいメロディーが奏でられている。身を委ねたくなる安心感と新しい発見があるのだ。このキュレーションの妙は、WOWOWが長年培ってきた音楽プログラム制作の賜物といえるのだろう。
さらに今年は1日目のトリに、「JAZZ NOT ONLY JAZZ」のスピンオフ企画が実現。ドラマー石若駿が渡辺翔太(Key.)とマーティ・ホロベック(Ba.)とともに、大橋トリオと田島貴男(Original Love)をゲストボーカルに迎えるスペシャルセッションだ。一体どんなステージになるのか?一つの目玉でもあった。
そして、「FUJI & SUN」の楽しみは音楽だけではない。
会場の富士山こどもの国は、標高約850〜940mに位置している。年々暑さが増す昨今において初夏の高地は過ごしやすく、キャンプには最適といえる。会場内にそのまま宿泊できるのはキャンプインの醍醐味だ。今年は例年にも増して家族連れの姿が多く見られた。園内の移動は舗装路で常設トイレが随所にあり、子連れのファミリーにとっては過ごしやすい環境でもある。

今回そんなキッズたちがひときわ白熱していたのは、「人力チャレンジ」エリアで行なわれたキッズトレランだった。毎年このエリアを担当しているプロアドベンチャーレーサーの田中陽希氏の発案で初開催されたが、50人以上が参加した。将来のトレイルランナーが誕生するかもしれない盛況ぶりだった。同エリアでは、野外料理や火おこしなどのアウトドアのアクティビティを展開している。野外でしかできない体験とその楽しみへの誘いがある。

フードコーナーでは会場にいながらにして地元静岡県、富士市のグルメも味わえた。米粉麺を使った「富士山ひらら汁」や鶏ガラ×トマトの「富士つけナポリタン」、老舗和菓子店藤太郎の「朝霧高原シュークリーム 」が軒を連ねる。また、各地の人気店が出店するなど、がっつり飯からスイーツまで、2日間の滞在中の胃袋を満たしてくれた。次は何を食べようか?とうれしい悩みがつきまとうほど。うまい飯にはうまい酒、「 Session IPA」の名前を冠したFUJI & SUNオフィシャルビールも販売された。FUJI & SUN運営チームが地元富士市のビールブランドBADASS BEER BASEとコラボしたオリジナルで、FUJI & SUNの空気感を詰め込んだ逸品だ。

音楽、キャンプ、フード&マーケット、アウトドア、抜かりない布陣に笑顔にならないわけがない。楽しみがぎっしりと詰まった2日間の満足度の高さは、来場者の表情が証明していた。


新しい扉が開く圧巻のライブパフォーマンス
メインであるSUNステージの2日間を振り返ってみる。出演した8組のライブの模様は、8月にWOWOWで放送・配信される予定だ。

1日目、最初に登場したのは、柴田聡子。この日はバンドセットでステージに立った。待ち焦がれた観客は、彼女の登場とともに自然に前へと引き付けられていく。しなやかな歌声がステージから降り注ぎ、会場全体に幸福感があふれていた。

ハンバート ハンバートは、のんびりしたトークから始まった。朝ドラ主題歌「笑ったり転んだり」が記憶に新しいが、昨年このステージに立ったときにはすでにレコーディングも終えていたのだとか。「うちのお母さん」はFUJI & SUNバージョンで大盛り上がり。

くるりは、ドラムに石若駿を加えて登場。「富士山、見える?」と、じつは見たことがないと話す岸田繁。富士山は終始、厚い雲に覆われていたが、彼らのステージ中にほんの少しだけ山頂が顔をのぞかせていた。全員で大合唱した「ワンダリング」に誘われたのかもしれない。

初日のトリは、JAZZ NOT ONLY JAZZ in FJSNと銘打ったスペシャルセッション。冒頭は石若(Dr.)、渡辺(Key.)とマーティ(Ba.)3人編成での映画『モダン・タイムス』の名曲「Smile」から。日が暮れ気温が下がった会場は富士山麓特有の濃霧に包まれた。自然が織り成す現象が幻想的な味わいを演奏に添えていた。

そして、田島貴男、大橋トリオが続けてステージに立ち、Hina(スーパー登山部)も飛び入り。ステージで繰り広げられる大きな渦に観客も含めた会場全体が絡め取られ、最後は「接吻」で一円の巨大渦となった。

2日目はCHO CO PA CO CHO CO QUIN QUIN(チョ・コ・パ・コ・チョ・コ・キン・キン)が初オンステージ。何にもとらわれない独創的な音楽に引き込まれ、自然と体が反応し揺れて心地よい。「リンゴ追分」ではノスタルジーも感じさせてくれた。

昨年に引き続き出演のハナレグミは、自ら雨雲を連れてやって来たような登場となった。「追憶のライラック」「家族の風景」などのヒットナンバーに続き、天に届けとばかりに「明日天気になれ」を熱唱。ラストは「サヨナラCOLOR」、観客ひとりひとりに手渡しするかのような歌声に体の芯が温まった。

ceroは、雨足が強くなり始めた夕方に登場。雨をはねのけるようにステージを走り回るボーカルの髙城、それに応えるかのように観客は揺れ熱気も高まっていく。「Summer Soul」で気持ちだけはひと足早く夏に飛ばしてもらった。

そして、大トリは、never young beach。「らりらりらん」で始まると、得も言われぬほのぼのとした空気が会場を包み込んだ。「気持ちいい風が吹いたんです」「Motel」温かみを感じるミドルテンポに合わせてその場にいた全員が思い思いに揺れていた。アンコールに「お別れの歌」を披露し、2日間を締めくくった。
プロデューサー前田裕介インタビュー
世代のクロスオーバー、グッドミュージックが届き始めた手応え
1日目を終えてFUJI & SUNの前田裕介プロデューサーに話を聞いた。

―会場に着いてまず、昨年よりもたくさんのお客さんがいるように感じました!
そうですか、良かったです。地元の商店街の方々の協力のもとにポスターを貼っていただいたり、ボランティアとして協力していただいたり。また、富士市のふるさと納税の返礼としてFUJI & SUN入場券を始めてみたり。WOWOWだからこその動画コンテンツの掲出など、さまざまな試みが実を結んでボディーブローのように効いてきたのかもしれません。
―7回目の開催を迎えて、改めてどんなことを感じていらっしゃいますか?
続けてきた中で大きくスタンスは変えてはいない、と言ったら変なんですけれど、お客さんが「FUJI & SUN」の良さにだんだん気付き始めてくれたのかなと思っています。もちろん毎年お客さんの反応を見たり、新しいアーティストの出演の様子を見たりしながら、少しずつラインナップは変わってはいますけれど。でも、売れているとか動員数の多さといったことにとらわれない、いいミュージシャンを集めたいという想いがあります。ジャンルや世代のクロスオーバーをさせたラインナップにしたいなとか、そんなふうに常に考えています。

―1日目のトリに「JAZZ NOT ONLY JAZZ」のスピンオフステージがありました。ひときわ思い入れがあったのでは?
はい、「JAZZ NOT ONLY JAZZ」のイベントも自分がプロデューサーをしています。実力があるドラマーの石若駿さんたち若手世代と田島貴男さん(Original Love)のようなベテラン世代が一緒にやれる機会があったらいいなという発想から生まれたのが「JAZZ NOT ONLY JAZZ」でした。ジャンルや世代のクロスオーバーという意味ではFUJI & SUNと同じかもしれませんね。
今年の出演者でいえば、眞名子新さんや梅井美咲さん、北村蕗さん、スーパー登山部。いまみんなに聞いてもらえたらいいなという新しい世代のミュージシャンですね。彼らのような新星もいれば、田島さんのような超ベテランもいるというクロスオーバー。そしてジャズやロック、ときにブルーズやカントリー......、幅広いジャンルの音楽を届ける中で、聴いているお客さんには「こんな音楽があったんだ!」という反応を持っていただいて、新しい音楽との出会いにつながっている気がしています。
―まさに、新しい音楽との出会い、扉を開けた感覚を味わっています。
自分自身、音楽が好きでお客さん目線で同じ気持ちで「こういうミュージシャンが来てくれたらうれしいなぁ」というのを具現化して届けてみたら、やっぱり喜んでくれている!という感じです。7回目、8年目にしてリピーターとしてお客さんが来てくれていたり、いいイベントがあるらしいと聞きつけて来てくれたり、伝わっているのかもと思います。
刹那的なものだったら、多分その場その場で上がって下がって、いつか消えてしまうんだと思います。でも本当に普遍的に良いものであれば、中身はもう自信があるので、時間がかかってもいつか届くものと感じています。
文・撮影(ポートレート)/須藤ナオミ