2024年3月期 決算説明会レポート
2024年5月15日に「2024年3月期 決算説明会」を開催しました。説明会では2023年度の加入・収支状況や2024年度の事業計画などについて説明しました。
出席者:代表取締役 社長執行役員 山本均、取締役 専務執行役員 井原多美、取締役 専務執行役員 尾上純一
代表取締役 社長執行役員 山本均
2023年度 加入状況:正味加入件数は純減ながらも前期比で改善
2023年度の新規加入件数は62万6千件となりました。サッカーのチャンピオンズリーグなどのスポーツ、B'zやKis-My-Ft2などによる音楽ライブ、全3シーズンにおよぶ大型ドラマシリーズ「連続ドラマW フィクサー」などの放送・配信が好評を得て、新規加入件数は、前期と比べ7万5千件増加しました。
一方、解約件数は71万8千件。配信サービスとの競争激化、目的番組の終了などが影響したことで、前期と比べ4万6千件の増加となりました。結果、正味加入件数は9万2千件の純減、累計正味加入件数は246万7千件となっております。
正味加入件数は純減となりましたが、NBAバスケットボールや、「Paramount+」を下期に開始したことなどにより、下期の正味加入件数は前年同期と比べ、5万2千件良化するなど、改善の兆しが見えています。
また、こちらの数値には含まれていませんが、「WOWOWオンデマンドPPV」で販売した「UEFAチャンピオンズリーグ UEFAヨーロッパリーグ - シーズンパス -」などの販売数を加味すると、WOWOWをお楽しみいただいているお客さまの数は、より増加しています。
2023年度 収支状況:収支は減収減益に
累計正味加入件数の減少により会員収入が減少したことなどから、売上高は748億69百万円と前期に比べ22億31百万円の減収。経常利益は、広告宣伝費や番組費が減少したものの、売上高の減少による利益減の影響等により、前期に比べ14億89百万円の減益となりました。
また、株主還元です。1株当たり期末配当金は、当初の予想どおり30円とする予定です。5月17日開催の当社取締役会にて付議予定でございます。
現状分析:資本収益性と市場評価
2024年4月26日に「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」を公表しました。
当社は、2018年度まで、13期連続で会員数が増加し、着実な利益成長と自己資本利益率(ROE)8%以上のリターンを実現するとともに、株価純資産倍率(PBR)についても、2020年度まで1倍を上回る状況が続きました。
しかし、近年、配信サービスとの競争激化などの外部環境の急激な変化により、5期連続で会員数を減らし、2023年度も減収減益となりました。
それに伴い、資本コストを上回るROEを達成しておらず、さらに利益計上による自己資本の積み上がりなども要因となり、PBRは1倍を上回っていません。
なお、資本コストを算定する指標として「株主資本コスト(CAPM:資本資産評価モデル)」を採用し、その数字は6%程度と推計しています。
具体的な取り組み:4つの戦略でROE向上・PBR改善を目指す
このような現状分析を踏まえ、中長期的な成長に向けた収益構造の転換を早期に実現するため、「成長戦略」「財務戦略」「非財務戦略」「IRの強化」の4点に取り組んでいきます。
【成長戦略】
メディア・サービス(放送・配信)における構造改革、新サービスの開発による、新たな収益の創出などに取り組むことで、収益力の強化を図ります。
【財務戦略】
有利子負債の活用を視野に入れ、投資を推進するほか、政策保有株式の縮減を行ない、資本効率の向上を図ります。また、株主還元に関しては、減収減益の状況においても安定的な配当を継続していきます。
【非財務戦略】
持続的な成長を支えるため、人的資本投資の拡充およびSDGs、DEI(ダイバーシティ・エクイティ&インクルージョン:多様性・衝平性・包括性)を意識したサステナビリティ経営を強化します。
【IRの強化】
決算説明会やIRミーティングなど、株主・投資家との対話の機会拡充、開示資料の充実を行ないます。
これら4つの取り組みを実行してROEを向上させ、PBRの改善を目指します。
重点戦略:メディア・サービスの構造改革や新たな収益創出など
2024年度の重点戦略です。厳しい競争環境のもと、収益力の強化を目指すために、「メディア・サービスにおける構造改革」、「新たな収益の創出」などへの着手することが急務と考えております。
まず、「メディア・サービスにおける構造改革」において、個々のコンテンツの収益性や多層的な活用を意識した投下を実行します。
また、外部企業と連携し、WOWOWのコンテンツをまとめた新規パックサービスの拡大にも取り組みます。2024年4月からは、スポーツコンテンツを視聴できる新サービス「WOWSPO」をABEMAで提供開始しました。その効果により、4月単月の正味加入件数は2003年以来、21年ぶりにプラスに転じました。
さらに、過去の顧客行動データをもとに、リピーターマーケティングを強化することで、宣伝費を効率的に投下すると同時に、新規加入にもつなげていきます。
また、「新たな収益の創出」においては、オリジナルコンテンツを軸とした海外事業展開を拡大します。4月からはアメリカのMaxと共同制作した「TOKYO VICE Season 2」を放送・配信しております。7月には、当社とソニー・ピクチャーズ、アメリカのアニメ配信大手クランチロールの3社共同での大型アニメ製作プロジェクト「ばいばい、アース」の放送・配信を予定しています。
さらに、音楽・スポーツコンテンツを中心に、多層サービスを開発・提供することや、新規ビジネス構築に寄与する外部企業との協業をグループ全体で推進していきます。
「DX/投資の推進」については、DXの推進・コスト構造の見直しにより生産性を向上させ、経営基盤の強化を図ります。さらに、会員事業の強化や新規事業創出などを目的とした投資も継続します。
2024年度 加入計画:累計正味加入件数は246万7千件を計画
2024年度の重点戦略をもとにした今年度の加入計画は、正味加入件数プラスマイナスゼロ、累計正味加入件数246万7千件を見込んでいます。
2023年度下期に正味加入件数が大幅に改善した流れを維持するため、今期は映画『ゴールデンカムイ』の続編となる連続ドラマや、「WOWSPO」の開始、さらにリピーターマーケティングの実施、WOWOWオンデマンド専用コンテンツを活用した利用継続を図ることなどにより、マイナストレンドからの脱却を目指します。
なお、App Store経由での契約や、「WOWSPO」をはじめとした、さまざまな外部プラットフォームでのサービス提供が増え、加入・解約の判定時期など、管理形態も多様化している流れを受け、今期より新規・解約件数の計画値の公表は行なわないことといたしました。
2024年度 収支計画:減収減益を計画
2024年度の収支計画は減収減益を見込んでおります。
連結売上高は、2023年8月に買収したフロストインターナショナルコーポレーションが通期で寄与することなどにより、テレマーケティングセグメントが増収となるものの、会員収入が減少することなどから、前期と比べ減収となる見込みです。
経常利益は、広告宣伝費や番組費などを効率的に投下することが利益増の要因となるものの、会員収入の減少やWOWOWオンデマンド関連費用の増加などにより、前期と比べ減益となる見込みです。
2024年度 配当計画:1株当たり30円を計画
配当計画については、前期と同様に1株当たり30円を計画しています。
株主還元の強化については、当社もその重要性を認識しているため、減収減益の状況下においても、継続的に安定的な配当を行なう方針を維持します。
取締役 専務執行役員 井原多美
今後の取り組み:コンテンツを軸に収益を多層化
2024年度の具体的な取り組みについてご説明いたします。
「UEFAチャンピオンズリーグ」は来シーズンも独占放送・配信することが決定しております。来シーズンのチャンピオンズリーグは、出場クラブ数が32から36に増加、さらにこれまでのグループステージ制が廃止され、出場全36クラブが1つのリーグ内で戦うなど、新たなフォーマットで行なわれることが注目されています。
前期はチャンピオンズリーグの放送・配信に加え、シーズンパスや決勝トーナメントパスの販売を実施。さらに英国風パブ「HUB」や「快活CLUB」と提携するなど、法人契約も展開しました。今シーズンも、このような収益拡大につながる取り組みを推進していきます。
7月には当社とソニー・ピクチャーズ、クランチロールの3社共同での大型アニメ製作プロジェクト「ばいばい、アース」を当社で放送・配信し、さらに各配信プラットフォームで配信する予定です。さらに、ソニー・ピクチャーズ、クランチロールと連携し、北米、欧州、アジア全域を中心とした200以上の国や地域への海外展開とともに、ゲーム・グッズ化などの多層展開を目指します。
今後の取り組み:新サービス「WOWSPO」がスタート
スポーツファンとの接触機会をさらに増やすため、UEFAチャンピオンズリーグなど当社が配信するスポーツコンテンツを視聴できる新サービス「WOWSPO」を開始しました。
「WOWSPO」は、厳選した世界最高峰のスポーツを、配信にて月額1,980円(税込)で楽しめます。4月2日にABEMAにてサービスを開始しましたが、4月の新規加入件数は、ABEMAでの「WOWSPO」を含めて8万9千件、前年同期と比べて2倍強の増加につながり、多くの方々からご好評をいただいています。
今後の取り組み:大型オリジナルドラマを展開
4月からは、世界約120カ国で放送・配信され、大ヒットを記録した超大作ドラマ「TOKYO VICE」のSeason 2を展開しています。今後も、海外事業の拡大を視野に入れた国際共同製作によるコンテンツ開発などを推進していきます。
6月には、WOWOWとテレビ東京の初の共同製作となる「ダブルチート 偽りの警官」、さらに秋には、興行収入約30億円、観客動員数200万人の大ヒットとなった、映画『ゴールデンカムイ』の続編を連続ドラマWとして放送・配信します。
最後に山本は「本日は決算説明会にご参加いただき、誠にありがとうございます。4月1日より経営体制の若返りを図りました。2024年度は新たなWOWOWの成長に向けたスタートの年と考えています。スピード感を持ってメディア・サービスにおける構造改革、および新たな収益の創出などに取り組んでまいります」と述べ、説明会を締めくくりました。
2024年3月期決算の詳細については、以下の資料もご参照ください。