2021.12.17

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WOWOW 4Kチャンネルを支える「4Kマスター」とは? WOWOWエンタテインメントが果たす大きな役割!

WOWOWエンタテインメント 木村成寿 / 藺幡俊紀

WOWOW 4Kチャンネルを支える「4Kマスター」とは? WOWOWエンタテインメントが果たす大きな役割!

2021年3月1日に開局した、「WOWOW 4K」。懐かしの名作4Kリマスターや4K版初放送の作品を楽しめる「4Kシアター」、4Kクオリティーで連続ドラマWやオリジナルドラマを楽しめる「ドラマチック4K」、厳選した4K番組を楽しめる「4Kセレクション」、そして世界最高峰のネイチャードキュメンタリーを4K版で視聴できる「BBC Earth 4K」など、繊細で色彩豊かな映像表現を堪能することができる。現在、「WOWOW 4Kをみてみよう!-無料体験タイム-」として無料で「Railway Storyスペシャル 東北復興の鉄路を行く」などの番組も放送されている。

今回のFEATURES!では、「4Kマスター」の設備の構築に尽力し、開局後はその運用を担当している、いわばWOWOW 4K放送の“縁の下の力持ち”とも言える、WOWOWエンタテインメントの木村成寿と藺幡俊紀の二人に開局に至るまでの苦労やWOWOW 4Kの楽しみ方について、たっぷりと語ってもらった。

放送を支える最後の砦! マスター業務のお仕事

――まずはWOWOWエンタテインメント入社の経緯をお聞かせください。

木村:私は前職でもCS放送のマスター業務に携わっており、主に運用を担当していました。ただ、そこではマスター設備の改修や新しい設備の導入といった設計の部分に関してはほとんど携わることができなかったので、もう少しそちらの部分を深掘りしたいなと思っていたところ「WOWOWの4Kチャンネル開局」を知り、そこで出合ったのがWOWOWエンタテインメントでした。

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――マスター業務というのは、どういったお仕事なのですか?

木村:日々の放送を技術的な側面でサポート、管理する仕事です。次にどんなCMが来るのか? その次にどんな番組を流すのか? といったことを確認し、それらが予定通りに放送されるように管理していくのがマスターの仕事です。例えば、生放送だと予定よりも10分早く終わってしまう場合もあるので、そういった際に「10分早い場合の番組進行」に切り替えたりするのもマスターの業務となります。

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藺幡:私も前職でBS放送のマスター業務をしておりました。ちょうど業界的に4Kの技術が出てきた頃に、自分自身も新しい技術に興味があったので、そこに携われる仕事はないかと探していたところWOWOWエンタテインメントが見つかり、応募することになりました。

――WOWOWエンタテインメント入社後すぐにお二人ともWOWOWの運用技術部に出向し、4Kの開局に関わっていくことになったかと思いますが、そこでの業務について詳しく教えてください。

木村:2019年の8月に入社してそのままWOWOWに出向になり、その当時、既に進行していた設備構築業務を担当することになりました。設備構築においては、RFP(提案依頼書)や、要件定義など様々な流れがありますが、自分が出向してきた時点で、要件定義などの設計の前段階の作業は既に終わっていて、ベンダーさんにお願いして設計が具体的に始まっていくというタイミングでした。

――ベンダーに依頼し、相談しながらシステムを作っていくという流れですね?

木村:そうですね。事前の取り決め通りに設計を進めてもらうのですが、新規で作る設備同士や既にある既存の放送システムと詳細な部分でどう組み合わせていくか? や動作テストの手法など都度発生する課題をクリアしながらベンダーさんと作っていきました。

藺幡:2019年1月の入社時点でメーカー選定や要件定義の過程は終わっていたこともあり、基本的には木村と同じような業務を行っていました。ほぼ毎日のように4Kの仕様などを決める会議・打ち合わせをベンダーさんと行っていましたね。それと並行し、既存のHD放送(WOWOWプライム、ライブ、シネマ)の放送設備の保守や不具合の改修などにも携わっていました。

木村:システム構築の具体的な作業内容はものすごく地味なのですが(苦笑)
例えば放送素材をマスター設備のサーバーに取り込む場合、相手設備がマスター設備へ素材を送ってくれるのか、それともマスター設備が相手設備まで素材を取りに行くのか、など細かい部分一つ一つについて考え、どうやったらそれが実現できるのか検討していきました。万が一にも放送が止まってしまうようなことが起きないように、信頼感のある放送設備の構築を目指しました。

――4Kの設備構築の仕事に関しては、お二人は一緒にお仕事をされていたのですか?

藺幡:運用技術部の中でもいろんな部門に分かれていて、最初僕らは別々のチームでした。木村は納品センターに関するチームで、僕は送出、いわゆるマスターと言われる部分を構築するためのチームで仕事をしていました。

木村:部の大きな業務として、外部から素材を受け付ける玄関口となり、設備内に取り込んで素材の一括管理を行う「納品センター」の構築と、4K放送を実現する「4Kマスター」構築の二つのプロジェクトが同時に動いていて、自分は当初「納品センター」の構築を担当するチームにいました。
4Kマスターが放送する素材は納品センターから送られてくる、という関係性ですね。
その後、徐々に「4Kマスター」の構築に軸足を移動させていきました。

――WOWOW運用技術部とWOWOWエンタテインメントの仕事の役割の違いについて教えてください。

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木村:ごく簡単に説明すると、4Kマスターの設備そのものを所有しているのはWOWOWで、その設備を維持・管理するのも基本的にはWOWOWの仕事です。そして、その設備を実際に使って運用しているのがWOWOWエンタテインメントとなります。
放送を守るためにどういった運用をしたらいいか。ルールを整備し、実際に運用するのが我々の担当です。

藺幡:WOWOW運用技術部は、最終的な"ジャッジ"を求められる部署になります。
WOWOWとベンダーさんとの間で行われる会議にWOWOWエンタテインメントも出席しますし、運用面から見た意見などを述べることもあります。ですが最終的な判断やそれに伴う契約などの部分を担当するのは運用技術部ですね。
僕らは2020年の10月に出向解除となりWOWOWエンタテインメントに戻ったんですが、それ以降は基本的にWOWOWの4Kマスターの運用に携わっています。

――ここからWOWOWの4Kについて、詳しく伺ってまいります。そもそも「4Kマスター」とはどういうものなのでしょうか?

木村:おそらく「4K」以前に「マスター」について一般の方にはわかりづらいのかなと思うんですが、マスターというのは「マスターコントロールルーム」の略称です。番組自体のオンエアが正しく行われているのかや、番組と番組の間にCMが挟まれて...と何百という放送素材が積み重なって一日分の編成が構成されていますが、それらがきちんと時刻通り、ミリセカンドの単位で正しくオンエアされることを確認し、また維持するのがマスターの仕事になります。
さらに、視聴者目線で言うと災害情報やテロップ、画面の右上に常に表示されるチャンネルロゴなどもそうですが、こうした情報はもともとの素材にはついておらず、マスターでくっつけています。要は放送の形として、お客さんに届ける最終段階の部分を作っているのがマスターですね。

――従来のHD(ハイビジョン)と4Kで、マスターの規模や複雑さなどは異なるのでしょうか?

木村:HDも4Kも、規模や複雑さはそれほど変わらないように思います。ただ、扱うファイルの種類やサイズが HDと4Kでは全く異なります。そうなると既存のシステムでは再生できないので、それを扱えるように構築されたのが「4Kマスター」なんです。

――運用の部分に関しても、 HDマスターと4Kマスターで違ってくる部分はあるのでしょうか?

木村:作業の流れという部分ではそこまで大きな違いはないのですが、HDと4Kでは映像の解像度に加えて、明るさや表現できる色味といった部分が変わってくるので、そういうところに関しては運用で気をつけなくてはいけない部分になりますね。

「HDR(ハイダイナミックレンジ)」で放送すべき素材の設定が「SDR(スタンダードダイナミックレンジ)」になっていたら、本来の明るさや色を表現できずに暗いままで放送されてしまうので、そういった間違いや事故がないようにという部分は細心の注意を払って運用しています。そういう意味で HD 以上に気をつけなくてはいけないポイントは増えたかと思います。

「良いコンテンツを最高の状態でお客様へ!」WOWOWが4K放送をする意義とは?

――WOWOWが4Kに力を入れる意義はどういったところにあると思いますか?

藺幡:基本的には良いコンテンツを最高の状態でお客様に届けるというコンセプトがあって、 HD 放送では単純に画質や明るさで表現しきれない部分があります。そういうところも4KHDRの番組であれば、表現できるんです。

――そのために現行の3チャンネルからさらに「WOWOW 4K」という新たなチャンネルを立ち上げるというのは、かなり大きなプロジェクトであり、作業の苦労という点でもかなりのものだったかと思います。

木村:僕らは途中で入ってきた人間なので、最初の立ち上げに関わったメンバーの気持ちを代弁することは簡単にはできませんが...「WOWOWを4Kで観たい」とおっしゃってくださっている視聴者の方々にそれを届けたいというのがまずありました。加えて、WOWOWの4Kは左旋円偏波方式による放送()なので、既存のアンテナでは受信できないという方も多いんですね。もっと一般的に4K放送が普及していく窓口に微力ながらなれればということもあり、そうした社会的な役割もあるのではないかと思っています。

※放送衛星から送信される電波はらせん状に回転していて、従来のBS放送が"右旋円偏波"であるのに対して、新4K8K放送では既存BS4局の"右旋円偏波"に加えて"左旋円偏波"も加わっています。
詳しくはこちら
新4K8K衛星放送の受信方法と対応チャンネルは?
似ているようで全然違う「4Kテレビ」と「4K対応テレビ」

コロナ禍を受けて4カ月の開局延期...それでもギリギリ!? リモートで進めた水面下の準備と設備構築


――お二人が関わられた時点で2020年12月に開局予定でしたが、延期となってスケジュールの部分はいかがでしたか?

211220_tatsumi4K_10.jpg4Kマスターのモニター設置まで

木村:体感としては結構ギリギリじゃないかな...? という感じで(笑)。

藺幡:僕は「間に合わないんじゃないかな...」と思ってましたね(笑)。正直、コロナ禍で開局が2021年3月にずれた時点でも「できればもうちょっと延ばしてほしいな」って思うくらい、ギリギリでしたね。

――トラブルや困ったことは?

藺幡:構築までにいろいろありましたけど、まず何よりもコロナ禍の影響ですね。それまでほぼ毎日ベンダーさんと顔を突き合わせて会議していたのがほぼリモートになってしまって...仕様の決定には1社だけでなく、4社、5社と関わってくるので、細かい部分を決める際にそれを全てリモートで進めていくというのは、やりづらい部分がありましたね。

木村:2020年3月頃に出社制限が出て、一気にリモートに切り替わったんですが、社内でリモート環境が整備しきれていなかったり、リモートのツールもベンダーさんごとに違っていたりして。会議自体も通信状況に左右されたりと面と向かって話すのとはやはり勝手が違うので、なかなか難しかったですね。そもそもギリギリで進んでいたところに、そういう状況となってしまったので...。

個人的には入社してまだ1年も経っていないタイミングで、"構築"と言われてもまだ右も左もわからない状況の中でした。
現場作業をゼロにはできない、でも出社は最低限の人数、という事で自分が出社担当の日は現場で主体となってベンダーさんとのやりとりにポンっと入っていかなくてはならず、そこは大変でもあったし、鍛えられた部分でもあったと思います。

藺幡:それから、開局目前の12月に、ある重大な仕様の誤りが見つかって、その改修作業がありましたね。当初は年末の1週間ほどで終わる予定の作業だったんですが、それがどうにもうまくいかず、1カ月くらいを要してしまい、開局2カ月前の段階でまだ放送する素材を4Kマスター側に送れないという状況で、「これ、どうするんだ...?」という感じでした。あれはかなりしんどかったですね...(苦笑)。

木村:一つ直ったと思ったら、また次のトラブルが...みたいな玉突き事故のような感じでしたよね(苦笑)。

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――リモートでの打ち合わせが多かったとのことですが、機材に直接触れながら、顔を合わせて話をしなくてはいけないという状況もあったのでは?

木村:最初の頃は、まだベンダーさんと詳細な仕様について話をするという感じだったので、リモートでこちらのリクエストをお伝えして、ベンダーさんに要望通りの設備やプログラムを各自ベンダーさんの工場で作っていただくという感じだったので、ほとんどリモートでも作業が成立していました。

藺幡:ただ一部、ベンダーさんの工場に行って、納品される実機に触れて、確認するという作業はありましたね。

木村:そうですね。その時も、全員ではなく、各チームで人数を最小限に絞って行く形になっていました。それこそ、全員で顔を合わせれば一発で終わるところが、それができずに苦労した部分はありましたね。

藺幡:チームに関しても、みんな掛け持ちで、複数のチームに属して作業を進めていたので、まだ経験が浅い我々としてはより苦労した部分でもありましたね。

木村:打ち合わせを重ねながら課題の消化や調整といった作業を進めていきつつ、ベンダーさんの工場から徐々に辰巳の放送センターへ設備が運び込まれていきました。
2020年の8月くらいにはメインの設備が運び込まれ、結合してシステムが出来上がっていくという流れでしたが、それらに合わせるように現場での確認の必要性が増していきましたので出社人数、来局者人数が増えることになり、この頃は感染対策には特に気を使いました。

開局初日にいきなりトラブル発生!? 4K開局はゴールではなくスタート!


――3月1日の開局の瞬間のお気持ちは?

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木村:「やっと始まったな」という気持ちはありましたが、静観するというよりも「あ、社長も来てる」「撮影してるなぁ」とかそっちの気持ちのほうが強かったかな...?

藺幡:全く同じで、開局の瞬間は見たことないくらいマスターに人が集まってるなと(笑)。ちょうど当日、僕と木村が勤務担当で入っていたんですが、そういったいつもと違う周囲の状況を見渡して「あぁ、開局したんだな」と実感しましたね。

――開局はゴールではなく、その後、問題なく運用していくというのがお二人の仕事になっていくと思いますが、実際に運用が始まってみていかがですか?

木村:まず開局日が大変でしたよね...(苦笑)。

藺幡:そうですね。3月1日の開局日にいきなりトラブルが起こってしまうという...。

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木村:かなり入念に準備を進めてはきたんですけどねぇ...。

藺幡:「これ以上はもう見るべき部分はないね」と思えるくらいに準備をしてきたつもりだったんですが、それが良くなかったのか...。開局当日にトラブルが起きてしまいまして...。

木村:一部字幕が出なくなってしまうというトラブルで、見た目にはそこまですぐにわかるようなものではなかったんですが、「字幕あり」でご覧になっていたお客様にはご迷惑をおかけすることになってしまいました。

社長、役員以下、いろんな方が見守っているという状況でもあったので、普段であれば大きな声を張り上げて対処していくんですが、その時ばかりは静かに、粛々と対応していきましたね(苦笑)。

――開局以降の周囲や視聴者の反応・反響はいかがですか?

藺幡:社内報でお客様から寄せられた声を見ることができるのですが、当初は4K放送に関する声というのはほとんどなかった気がします。それが少しずつ、入ってくるようになって「こういうことを放送してほしい」といった要望などもちょくちょく届くようになって、見てくださっている方がいるというのをそこであらためて感じましたね。

木村:部署としては直接的にお客様の声が届く部署ではないので、正直「本当に見てくださる方がいるのかな?」とか思ったりするんですけど(笑)、社内報などでそういった声を目にすると4K放送がお客様に届いているんだなと実感しましたね。

――WOWOW 4Kに関して、今後の改善点や目標などはありますか?

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木村:改善点はいろいろありますよね。

藺幡:開局間もないということで運用自体、まだ確立されていない部分も多いですし、実際、誰も経験していないところからスタートしているわけで、運用側のスキルアップは必要ですし、設備に関しても運用する中で問題点や改善点が見つかってくると思います。ですので、運用と設備、両面で高いレベルを目指していきたいと思います。

木村:まだまだ設備として若いですから、これから時間をかけて、設備自体を成熟させていく必要があります。運用していく側もそれに慣れつつ、何かが起きたときに即座に対応できる経験値を積んでいくことが必要になってくると思います。

お客様に向けては、やはりこれから4K放送がどんどん広がっていくことになると思いますので、その先にWOWOWのクオリティーの高い番組を楽しんでくださる方が増えていけばいいなと願っています。

4Kに特化して制作されたオリジナルドラマや「BBC Earth」...見ればわかる4K映像のすさまじさ

――WOWOWの4Kチャンネルの強み、魅力はどういった部分にあると思いますか?

藺幡:WOWOWはドラマや映画、音楽中継やスポーツなどに特化した放送局なので、そういったコンテンツを4Kで楽しめるというのは強みだと思いますね。

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「連続ドラマW 宮部みゆき『ソロモンの偽証』」

木村:コンテンツによって「4KHDR」で制作・納品されている番組もあります。「ソロモンの偽証」など、HD放送では HD /SDRに調整された素材が納品されており、そちらを放送しますが、4K放送の場合は4KHDRで調整された素材が放送されます。もちろん HD でも4Kでも番組内容に違いはありませんが、やはり4KHDRだからこその表現力というのはあると思います。そうしたクオリティーの高さを楽しめるのはWOWOWならではだと思います。

藺幡:ライブやスポーツコンテンツの一部も4K制作になっていて、その映像はものすごくキレイですのでぜひご覧になっていただきたいです。

――視聴者の方々に、ぜひ4Kで楽しんでほしいコンテンツについてお聞かせください。

木村:やはりドラマですかね。ドラマWに関しては、何年も前から4K/8Kで撮影されているとは聞いていましたが、実際に放送されているのを見るとキレイですね。迫力、表現力、画の持っている力というのがHD放送とは一味違うなと思います。

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「BBC Earth 2022 動物たちの永遠(とわ)の楽園~中国~ #1 西部:高原の宝地・チベット」
(C)Oxford Scientific Films / EOS
  

藺幡:オススメは「BBC Earth 4K」ですね。4KHDR制作なので、HD放送より映像が鮮明になり、動物や自然が好きな方にとって最も見ていただきたいドキュメンタリー番組の一つです。

「何も起こらないことが当たり前」の業務の中にあるやりがい、燃える瞬間は?

――ここからさらにお二人の仕事観などについてお伺いできればと思います。まず、WOWOWエンタテインメントとはどういう会社だと思いますか?

木村:"飽きない"会社ですかね?僕らはWOWOWエンタテインメントに入社したのに、そこで1日も働くことなく親会社のWOWOWに出向辞令でしたから(笑)。
WOWOWで1年働いて、また戻ってくるという形になりましたが、その間にWOWOWの皆さんから学んだこと、得たものというのは大きかったです。それを持ち帰って、いま、WOWOWエンタテインメントで仕事をしているわけですが、自分の中でも確実に視点の幅が広がったなと思います。WOWOWエンタテインメントにいながら、外側からこの会社を見られるというのは面白い経験であり、そういう体験ができるのはこの会社の強みだなと思いますね。

藺幡:WOWOWと近いということもあって、すごく自由度の高さを感じますね。「この職で入社して、これをやります」というのが絶対的に決まっているのではなく、自分の希望さえあれば、それをかなえていける環境だなと思います。

――お仕事をしている中で、"燃える"瞬間というのはどういう時ですか?

藺幡:マスターでトラブルが発生した際、基本的に即時対応しなければ安全に放送を継続できなくなる可能性が高いので、1秒でも早い対応を心がけています。
なので、時にはトラブル発生時から対応リミットまで数分しかない!と言うこともあり、
それをどうしたら時間内に対応することができるか?また安全に放送を維持することができるか?を考えながら行動し、ベストな対応ができた時は達成感を感じますね。

木村:作品を放送するのがマスターの仕事なので、作品の魅力が100とすると、それをきちんと100のままお届けするのが僕らの仕事なんです。そういう意味では生放送の際は緊張感がありますね。延長になったり、早めに終わったりといったことに対応しないといけなくて、それこそ「このボタン、一つ間違えたら試合が終わってないのに放送が終了する」という場合もあるわけです。マスターって放送をボタン一つで画面を真っ黒にさせてしまう力があるんです。そこを管理するって緊張感が伴うし「仕事してるなぁ」という感覚はありますね。

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――最後に、WOWOWでは"偏愛"をテーマに掲げていますが、お2人が仕事をする上での偏愛――大切にしていることや軸となっている部分について教えてください。

木村:大切にしていることは「納得したふりをしないこと」と「きちんと伝えること」ですね。この会社に入ってまだ2年くらいですが、上から「こうだよ」と言われてそれをそのまま飲み込むということをなるべくしたくないなと思っていて、自分の中での引っ掛かり、「ここはどうなんだろう?」と疑問に思う部分に関しては「ここが疑問です」と相手に伝えて、ちゃんと解決していくということを心がけています。

ちゃんとこちらから尋ねれば、皆さん、疑問に対してきちんと説明をしてくれるので。
実際、そういうことを繰り返していく中で「この機能って本当に必要ですか?」と尋ねて、よくよく考えたら必要じゃなかったということになって、仕様を変えようとなったこともありました。そうやって声を上げていくことで会社全体が作るものがより良いものになると思うので、きちんと疑問を相手に伝えることは大事にしています。

藺幡:僕は、仕事にやりがいを見いだせるか? というのが大事な部分だなと思っています。というのも、マスターの業務って24時間、365日、放送を見守る仕事ではあるんですが、何もない――放送障害やアラームが鳴らない時間というのが大半で、定時にどういう仕事をするのかというのもある程度、ルーティンとして決まっているんですね。その作業だけに焦点を当てて切り取ってしまうとモチベーションの維持が難しくなってしまう部分もあります。

なので、目の前の仕事のことだけを見るのではなく、その先のエンドユーザーであるお客様を意識して「いまやっていることは、きちんとお客様に届いているんだ」と感じることが、自分の中のモチベーションという点ですごく重要なことだったりします。それは日々の仕事の中で意識し、大切にしています。

■番組情報

「連続ドラマW 宮部みゆき『ソロモンの偽証』」
12/24(金)深夜2:00~ [WOWOWプライム]
WOWOWオンデマンドで配信中

「BBC Earth 2022 動物たちの永遠(とわ)の楽園~中国~」
1/9(日)午後3:00~  [WOWOWプライム] [WOWOW 4K]



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