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WOWOWを宝塚退団後の活動におけるひとつのステップにしてほしい──30年近く紡いできた、宝塚とWOWOWの

WOWOWを宝塚退団後の活動におけるひとつのステップにしてほしい──30年近く紡いできた、宝塚とWOWOWの"幸福な関係"

元宝塚トップスター 早霧せいな 制作局制作部プロデューサー 田中裕也

開局初期から宝塚の番組を作ってきたWOWOWだからこそできる役割とは何か──元宝塚歌劇団雪組トップスター・早霧せいなを迎えての対談。語られた言葉のなかには、ひとつの答えが含まれていた。
“秘密の花園”としてベールに包まれていた宝塚を退団し、その先を進んで行く“女優・早霧せいな”にとって、パーソナルな一面が漏れ出てしまうような『宝塚プルミエール』の退団特集は「ベールを少しずつ脱いでいくきっかけをもらえた番組」となったそうだ。
対する田中裕也プロデューサーの「退団後の指針を示すためのステップとして番組を使っていただければ本望」と語る姿に、30年近く紡いできたからこそ成立する、宝塚とWOWOWの“幸福な関係”が見えてきた。

WOWOWの宝塚番組は「下級生時代の"憧れの番組"だった」

──WOWOWの注目コンテンツのひとつでもある宝塚。開局初期から30年近くに渡り力を入れて番組を作っていますが、その意図や番組を作るうえでのこだわりとは?

田中 「宝塚の番組が観たい」とWOWOWに加入してくださっている方や、もともと舞台全般が好きなお客様に満足していただける番組を作るというのは大前提として、月に2,300円(税別)という料金を払ってWOWOWの番組を観てくださっている方というのは、基本的にエンタメ感度が高い方たちだと思うんです。

エンタメにお金を使うし、色々なジャンルに興味がある方だと思うので、そういったエンタメリテラシーが高い方で、かつ、まだ宝塚に接したことのない方、まだ宝塚に踏み込めていない方たちに対して、宝塚を知ってほしいという思いがあります。パッと休日にWOWOWをつけたら、宝塚の番組がやっていて、「ん? なんか面白そうだな」といった、橋渡しになるような番組を作りたいと思っています。

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──まだ宝塚を知らない方にも親しみやすい番組作りということでしょうか?

田中 そうですね。もちろん、マニアの方にも満足していただきたいですし、初めて観る方にもわかりやすいような番組にしたいと思っているので、そのバランスはかなり意識しています。

──早霧さんから見たWOWOWの印象はいかがでしょう?

早霧 下級生時代は出られない、憧れの番組なんです。二番手やトップになった頃にお声がかかる番組なので、「WOWOWの番組に出られる!」となったときは本当に嬉しかったですし、「やっとその機会をいただけた!」という喜びもありました。

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ほかの宝塚の専門チャンネルや専門雑誌とは違う打ち出し方を求められているということを感じながら......お茶の間で観ていただいても、宝塚が遠い存在にならないような、ライトな感じと言うんでしょうかね? 現役当時から、宝塚のなかでも初めての方も入りやすさをすごく意識されていたような気がします。

ラフティングに興じる早霧せいなに「こんなにアクティブなんだ」と驚いた

──早霧さんは2017年7月に宝塚を退団されたのち、2018年4月から1年間『宝塚プルミエール』のナレーターを務められました。人生初のナレーションでしたが、どのような経験となりましたか?

早霧 私も現役時代に取材される側として出演していた経験があったので、いまの現役のみなさんの気持ちもわかりますし、ナレーションをされていた先輩方と同じ経験も味わえて、一度に二度おいしい(笑)経験をさせていただきました。

現役時代から馴染みのあったWOWOWさんでしたから、アットホームな環境で初めてのナレーションを経験できたこともありがたかったです。視聴者の方々も、もちろん宝塚への興味を持って観てくださっているという安心感もありましたし、本当に、温かい環境のなかでやらせていただいている感覚がありました。

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──当時の収録現場の雰囲気はいかがでしたか?

早霧 優しさに包まれているというか(笑)。私がどれだけNGを出しても、笑顔で「大丈夫ですよ」って対応してくださるので......だからこそ、甘えさせてもらいながらも1年間、楽しんで続けられたんじゃないかなと思います。

──ナレーションをするうえで意識されたことなどはありましたか?

早霧 現役の皆さんのことをよく知っている分、ツッコミの角度を鋭利にできるというか......"清く正しく美しく"のところにズバッと切り込むのが私の役目だろうなと思っていたので、私だからこそ言えることを言おうと意識していました。もちろん、そこには愛がありますよ(笑)。

──早霧さんのナレーションの印象はいかがでしたか?

田中 (収録が)早く終わるんです。とにかく早い。

早霧 早いですか? ほんとうに!?(笑)

田中 本当です(笑)。早いのと、先ほど早霧さんもおっしゃっていましたが、ツッコミの鋭さですね。ディレクターや僕らが「ここでこういうリアクションをしてほしい」とか「ここはこういう感じで言ってほしい」みたいなツボをしっかりと理解してくださっていたので、我々としても非常にありがたかったですね......滅茶苦茶NGを出す回とかもありましたが(笑)。

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早霧 ありましたね(笑)

田中 たしか、ルネサンスのとき......。

早霧 ですね(笑)。

田中 「真風涼帆(まかぜ・すずほ)主演の『異人たちのルネサンス』」って......。

早霧 「ルネサンス」のイントネーションが、私が思っていたのと違ってて(笑)。

田中 「ルネサンス(頭高型アクセント)」か「ルネサンス(平板型アクセント)」なのか、みんなで議論しましたよね(笑)。

早霧さんはNGを出してしまっても、またすぐ元気に「あ~、もう1回! もう1回お願いします!」って向き合ってくださるので、僕らも楽しくお仕事できるんです。つねにハツラツと、明るい早霧さんならではの現場だと思います。失礼な話、そのNG連発の回もスタッフブースでは笑いが起こっていましたから(笑)。

早霧 笑ってもらえてよかったです(笑)。厳しい感じで睨まれたら、青ざめちゃいますからね。

田中 我々スタッフ側も、常に楽しくお仕事させていただいてました。

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──退団後にお仕事をご一緒されて、現役時代に抱いていた早霧さんのイメージと変わったところなどはありますか?

田中 現役時代から早霧さんのインタビュー現場っていつもすごく明るい印象がありましたが、それはナレーションで来ていただいたときや、ロケでご一緒したときも変わらずですね。ただ......「こんなにアクティブな人なんだ」っていうのは、退団してから知ったことかもしれないです(笑)。

早霧 たしかにそうですよね(笑)。

田中 こんなにバシャバシャと水に濡れても大丈夫なんだ、こんなにアクティブなんだって。

早霧 退団して、自由になりました(笑)やっぱり現役時代はアクティビティ的なことは控えていましたし、する時間もなかったですから。それを企画でできるって、なんてラッキーなんだと思いながらやらせていただきました。本当に感謝です。

現役時代に纏っていたベールを、少しずつ脱いでいくきっかけをもらえる番組

──いまおっしゃったように、鳳翔大さん、香綾しずるさんとラフティングなどを楽しんだ『宝塚プルミエール 早霧せいな退団スペシャル』(17.9.30放送)、沙央くらまさんとホバーボードなどを楽しんだ『宝塚プルミエール拡大版 退団スペシャル総集編』(18.9.29放送)と、退団後に2度番組ロケを行なっていますが、まさにアクティビティ三昧といった内容でしたね(笑)。

早霧 打合せの際に「やりたいことを、何でもいいので挙げてください」って言われて、「何でもいいの!?」って(笑)。だったら、自分ひとりだと体験しきれないことをやったほうが楽しいんじゃないかと思ったんです。撮影ロケでは、ずぶ濡れで(笑)。でも本当に楽しかったですし、おかげさまで、いい思い出ができました。

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──早霧さんが率先してバシャバシャとやっていらっしゃって(笑)。

早霧 私が提案した企画でもあったので、「水に濡れてる人たちを観て、何が楽しいんだ?」ってなったら困るから(笑)、「番組として成立させなきゃ!」と必死でした。でも本当に楽しめました。

──退団直後だったラフティングの回では、同時期に退団されたお二人とのやり取りも印象的でした。

早霧 以前みたいに一緒にいることはなくなりましたが、過去に同じ作品を作ったり、同じ組で過ごした絆は、言葉では言い表せないようなものがありますよね。目に見えないところでつながっているので......二人に会って話した瞬間に、その時代に戻ったような気持ちもありましたし、近況を報告し合ったのも楽しかったです。「悩みの質が変わっていて面白いなあ」って......。

──どのように変わったのでしょうか?

早霧 現役時代は「いかに明日の公演を良くするか」とか「男役とは」みたいな話ばかりしていましたが、退団直後だったあのときは「いかに女子になっていくか」というトークが......カメラが回っていないところでは繰り広げられましたね(笑)。「急に女子力が必要になった!」みたいな(笑)。そういった自分たちの変化も、番組ロケを通して楽しむことができました。

──ファンの方たちからの反響はいかがでしたか?

田中 どちらもすごい反響がありました。霧矢大夢さんのパラグライダー回もかなりのものがありましたが(笑)、早霧さんがあんなに......笑顔100点の状態で、ずぶ濡れになって楽しんでいる姿は、みなさん見たことがなかったと思いますので。

早霧 宝塚って、ある意味"秘密の花園"として、ベールに包まれている部分を大切にしている劇団ですから。在籍しているときは、もちろん私たちもその点をすごく意識していますが、退団した後もそのベールに包まれすぎていると......これから進んで行く"女優・早霧せいな"としては、もっと自然な部分をだしてもいいんじゃないかという自覚もあったんです。

そういった意味でも『宝塚プルミエール』は、ベールを少しずつ脱いでいくきっかけをもらえる番組だったと思うんです。「早霧せいなは今後、どう進んで行くんだろう?」とファンの方たちも注目しているなか、一番最初にいただいたお仕事が、WOWOWさんのロケの企画や副音声のお仕事だったので。私にとっても、ファンの方々にとっても、第一歩になるような番組にしていただいてありがたいです。

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──『宝塚プルミエール』の退団企画は、みなさんが次へ進む指針としての役割も担っているのかもしれませんね。

田中 僭越ながらWOWOWはこの2、30年ずっと宝塚さんと一緒にやってきたという自負もあるので......勝手ながら、やっぱり退団後の一番最初のお仕事として、WOWOWの宝塚番組にご出演いただきたいなという思いもあります。

早霧 声をかけられるタイミングが、とても早かったですよね!(笑)

田中 ですね(笑)。最初のお仕事として『宝塚プルミエール』を選んでいただけて、我々としても本当に光栄です。先ほど早霧さんもおっしゃっていましたが、「どんなことをやりたいですか?」とお聞きして、ご本人の意向を尊重させていただくようにしているので、いい意味でWOWOWをひとつのステップとして使っていただければ本望だと思っています。

早霧 企画にその人の人柄が出ますからね。

田中 本当にそうですね。だからこそ、こちらが一方的に企画を決めるのではなく、ご本人と話し合いながら作っていくというスタイルを昔から大事にしているんだと思います。

『宝塚プルミエール』では、美弥るりかのパーソナルな一面も見られる!?

──8月31日放送の『宝塚プルミエール 花組トップスター・明日海りお退団公演「A Fairy Tale -青い薔薇の精-」』では再びナレーターとして番組に戻っていらっしゃいました。久しぶりのナレーションはいかがでしたか?

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花組トップスター・明日海りお退団公演
「A Fairy Tale -青い薔薇の精-」
Photographer 野波 浩
 (C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

早霧 1年間ナレーションを務めていたときも思いましたが......退団公演にかけるお客様の熱量ってすごいものがあるんですよね。私も退団したときにその熱量を感じましたし。なので、退団公演のナレーションを担当させていただく機会をいただけたことはとてもありがたいことでした。

だからこそ、ご覧になっていらっしゃる"みりお"ちゃんファンのみなさまの気持ちも汲みつつ、寂しさや切なさも感じつつ、「みりおちゃんお疲れさま」っていう気持ちもあり......いろんな人たちの気持ちを感じながらナレーションをしました。みなさんが大切にしている退団公演ですから、私も大切にナレーションできればと思い、臨みましたね。

──9月には月組スター・美弥るりかさんについて、『宝塚プルミエール』と『宝塚への招待』でそれぞれ退団スペシャルが放送されます。見どころを教えていただけますでしょうか。

田中 『宝塚プルミエール』は、美弥さんと宇月颯さんがキャットタワーをDIYして、猫カフェさんに寄贈しに行きます。

早霧 すごいですね。美弥ちゃん器用そうだもんね。

田中 そうですね。美弥さんのパーソナルな面が見られるんじゃないかと思います。美弥さんも宇月さんも猫を飼っていらっしゃって、美弥さんは保護猫に関心をお持ちということだったので、保護猫も扱っている猫カフェさんを選んでいます。何かを作るっていうのもいままでにないパターンなので、いつもとはまたちょっと違う感じで観ていただけるんじゃないかと思います。

一方、『宝塚への招待』の副音声解説(美弥るりか×憧花ゆりの×宇月颯による)は演目が『BADDY-悪党は月からやって来る-』なので、もうハチャメチャだと思います(笑)。

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BADDY -悪党は月からやって来る-

(C)宝塚歌劇団 (C)宝塚クリエイティブアーツ

早霧 BADDYね~。

田中 すごかったですよ、BADDY。衝撃でした。

脚注)『BADDY-悪党は月からやって来る-』

上田久美子による演出で、月組トップスター珠城りょうが主人公を演じたストーリー仕立てのショー。舞台は世界統一され、すべての悪が鎮圧されたピースフルプラネット"地球"の首都TAKARAZUKA-CITY。そこに珠城りょう演じる月からやって来た大悪党バッディが、手下たちを率いてつまらない世の中を面白くするためにあらゆる悪事を働くも、地球の人々はいつしかバッディの自由で型破りな面に惹かれ、感化されていく──。

田中 最初から、いきなり宇宙服を脱いでタバコを吸っている珠城さんが出てきて。通しで役があるっていうのも......。

早霧 最近のショーとはまったく違いますよね。ストーリーも......宝塚のトップスターってヒーロー役を担うことが多いなか、ダークヒーローっていうのがまた面白いですよね。

田中 最後の大階段も、羽根を背負いながらサングラスをかけているんです。で、シャンシャンを閉じたらタバコになるっていう(笑)。舞台としてもすごく楽しい内容になっていますし、そこに当時出演されていたみなさんの副音声がつくので。ぜひ楽しんで観ていただきたいと思います。

──早霧さんから見て、美弥さんはどんな宝塚スターだったと思いますか?

早霧 学年としては2期違いなんですが、私から見ると......とても繊細で、周りに気を使うんだろうなあって。例えば、体調が悪かったり、調子があまり良くないときでも、変に強がったり、弱いところを見せたりするわけでもなく、ニュートラルに居ようとする。だからこそ、繊細に見えるというか。

それに、美弥ちゃんも組み替えを経験しているので、自分ともちょっと重なるところがあって「いまは辛抱している時期なんだろうな」とか「頑張ってるんだろうな」とかって......あえて声をかけたりはしないですけど、共感するところがありましたね。

あとはやっぱり、男役愛に溢れた人だなあっていうのは舞台から感じました。本当に宝塚の男役が好きなんだろうなって思います。

宝塚の魅力は「(観る側を)絶対に裏切らない」ところにある

──早霧さんは先日も著書『夢のつかみ方、挑戦し続ける力―元宝塚トップスターが伝える―』(河出書房新社)を出版されたりと、退団されてからいろんなお仕事に取り組んでいらっしゃいますが、お仕事をする際に常に大切にされていることはありますか?

早霧 私が携わる意味や意義を考えて、"現場で自分に求められている役割"を大切にしたいと思っています。最後に「誰でもよかったな」と思わせてしまうような結果にはしたくないという思いが一番です。

一度お仕事をしたら、「次もみんなで一緒にやってみたい」と思っていただけるような現場作りをしたいですし、周りの士気が上がるような存在でありたいというのは、いつも考えて仕事に取り組んでいるかもしれないです。そうするほうが自分も楽しめますし、前向きに捉えることができるので......そういったところはとても大切にしていると思います。

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──現役のときも"絆"を大切にしていらっしゃった印象ですが、いまのお仕事も人と向き合うことを大切にされている?

早霧 そうですね。おそらく私は、みんなで何かをやるほうが好きなんですよね。自分ひとりの力では足りないことでも、みんなで集まって力を合わせたら実現できる。一人ひとりのパワーを持ち寄ることで、何かを実現できる可能性が広がるというのを宝塚時代に沢山経験してきました。人と一緒に仕事をするほうが楽しいですし、自分が想像していた以上の手応えを感じられるというのも実感しています。

だからそうですね......ひとりで何かをやるよりも、誰かと一緒にやったり、人とつながりながらやるほうが、私は喜びや楽しみを感じられるんです。本を出版するのも、自分ひとりで書くものだと思っていたら全然違って、本当に色々な方と携わって出来上がるものなんだなと知ることが出来ました。

そういう意味でも、退団してからのこの2年間で、どの仕事もいろんな人の手が加わっているんだなっていうことを学んだので、今後もいろんな人と携わっていきたいです。

──早霧さんはお仕事をする際に、目標を決めるタイプなのでしょうか?

早霧 現役時代は決めていくタイプだったんです。むしろ、決めないとやれないぐらいの。それがですね、いまは目標を決めていないんです。目標は決めないけれど前に進んでいく自分に、いまはチャレンジしています。それが目標です(笑)。

──あえて作らない?

早霧 そうですね。目標を定めないことを目標にしています(笑)。宝塚にどっぷりハマって、大好きだった世界にいられたっていう充実感が今はあるので、今度は本当に違うこと、これまでできなかったことにチャレンジしたいなと思っています。ただ、後輩たちをガッカリさせてはいけないので、そこだけは踏み外さないように(笑)。「清く正しく美しく」は心の中にキープしながら、進んでいきたいですね。

──田中さんがお仕事をする際に大切にされていることは何でしょうか?

田中 「とにかく楽しむこと」かなと思います。そのためには「好きになること」。僕の場合、親の影響で幼少期から宝塚を観ていたとかっていうわけでもなかったので......いま思えば「なんてもったいない学生時代だったんだ!」って感じですが(笑)、そういう意味では後天性の宝塚ファンなんですね。

早霧 そうだったんですね! でも、そっちのほうがハマりませんか?

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田中 ハマるスピードはすごかったです(笑)。なかには"お仕事はお仕事として、距離を少しとる"っていう人もいると思いますが、僕は担当になってから宝塚を勉強し始めて、どっぷりハマり......気づいたらもう、ものすごい数の舞台を観に行ってるし、スカステ(宝塚歌劇専門チャンネル|タカラヅカ・スカイ・ステージ)にも入ってるし、家には『宝塚GRAPH』が並んでるし、みたいな状態でしたね(笑)。

いまや、公私のどちらなのかよくわからないような状態でこの番組に向き合っているんですが(笑)、好きになっちゃったら勝ちだと思うんです。もしかしたら......僭越ながら、ファンの方たちのニーズやツボもわかるかもしれませんし、自分が楽しんでいないと、楽しいものってやっぱり作れないと思うので。

宝塚だけじゃなく、お仕事全般について、"好きになり、かつ、自分がとことん楽しむ"というのを常に意識しながらやっていると思います。

──ちなみに、なぜそこまで宝塚にハマったのでしょう?

田中 なぜでしょう?(笑)きっかけは......『週刊ダイヤモンド』かもしれません。宝塚の100周年のときに特集を出していて、宝塚のシステムとかが詳しく書いてあったんです。

早霧 覚えてます! 結構赤裸々でしたよね(笑)。

田中 それがすごく面白くて。そういったシステム的なところから入っていって、『宝塚おとめ』を熟読し、付箋を貼って、みなさんの名前を覚えていって......そう考えると、自分がハマった理由は「知識欲を掻き立てられるから」なのかもしれません。

現在を知るだけでもすっごく楽しいんですが、その前に100年以上の歴史があるので、「この人の前はこのトップスターさんで」というふうにどんどん掘っていくのが楽しいし、かつ、絶対に枯渇しない(笑)。掘っても掘っても、新しいことが出てくるんですよね。だから、もっと知りたい、もっと調べちゃう、もっと見ちゃう、みたいな......。

早霧 その角度で宝塚にハマってる人は初めてかもしれないです(笑)。でも、たしかに枯渇しないですよね。

──早霧さんが考える、宝塚の魅力は何でしょうか?

早霧 宝塚は裏切らないですよね。作る側も、演じる側も、宝塚の世界に徹している。その徹する姿勢というのは、歴史として脈々と作られてきたものだと思うんですね。私も諸先輩方がやっていらしたことを真似するところから始まって、そこをどうにかして超えたいと試行錯誤してきたものが、いまの後輩へと受け継がれてつながっていく。

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そうやって受け継がれてきた伝統と並行して、新しい時代の価値観も取り入れられていて......そのバランス感ですよね。変貌していく部分と、伝統を守っていく部分のバランスは絶対に裏切られないという安心感をもって観ることができる。三世代に渡ってファンでいらっしゃる方も多いんですが、その安心感ゆえだと思うんですね。

たまに「なんだこの作品?」みたいな、ちょっぴり変なことも起きるんですよ(笑)。でも、そのツッコミすら宝塚愛というか。「ん?」と思ったこの感覚を、みんなで共有したい! みたいなところがありますね(笑)。

田中 すごくわかります......。

早霧 宝塚ファンの方たちは"全員が広報部長"ぐらいの(笑)感覚で観てくださっているんですよね。その熱量たるや、いつも感心させられています。

でも、田中さんもそうですけど......宝塚の「た」の字も知らなかったり、「この人、絶対に宝塚を観ないよね?」みたいな人がガッツリとハマる姿を、もう何人も見てきているので。「嫌い」とか「観ない」とか「知らない」とか「自分には合わない」と言ってる人ほど恐ろしいんですよ!(笑)

そこのあなた、いつかハマりますよ? いつかハマっちゃいますからね! 逃げれば逃げるほど、宝塚は追いかけますよ? 振り向いたら、宝塚はそこに居ますからね(笑)。

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取材・文/とみたまい 撮影/祭貴義道  制作/iD inc.

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