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選手たちが見せてくれる素晴らしい笑顔に、いつもパワーをもらっている(前編)

選手たちが見せてくれる素晴らしい笑顔に、いつもパワーをもらっている(前編)

WHO I AM フォトグラファー 新田桂一

IPC(国際パラリンピック委員会)とWOWOWが共同で立ち上げた、東京パラリンピック開催の2020年まで5年間にわたるパラリンピック・ドキュメンタリーシリーズ『WHO I AM』。世界最高峰のパラアスリートたちに密着し、彼らの「いま」に迫る。そこにはトップアスリートとして、徹底的に自分と向き合い、勝負の世界においても人生においても自信に満ちあふれる選手たちの姿があった。そんな彼らを独特なスタイルでシャッターにおさめるフォトグラファー・新田桂一。ハッピーでパワフルな撮影現場には、いつも選手たちの笑顔があふれている──。

普段と変わらないテンションで、セーフティ&ハッピーな撮影を

──『WHO I AM』にオフィシャルフォトグラファーとして参加することになったときの感想から教えてください。

「すごい仕事が来ちゃったなあ」と思って、ビックリしましたね。カメラマンって単発の仕事が多いので、5年というロングプロジェクトに、まずビックリしちゃって。それに、WOWOWさんとお仕事するのも初めてだし、IPC(国際パラリンピック委員会)とお仕事するのも初めてだったので、すごく嬉しかったです。

──プロジェクトに参加するにあたって、準備したことはありますか?

パラリンピックについて勉強しましたね。それまであんまり観たことがなかったので、動画でパラリンピックの競技を観たり。昔の写真も見ましたが、グレーや黒を背景色にして撮っていて、結構重い感じなんですよね。選手たちもクールに写っていたので......。

──『WHO I AM』とは真逆ですね。

そうなんですよね。最初のミーティングのときに、「ハッピーで明るい感じの選手たちを撮ってください」ってお願いされたので......「大丈夫かなあ?」と、ちょっと心配でした。

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──いろんな国の選手を撮影するにあたって、普遍的なセット、つまり白い壁とペーパーさえあれば撮ることができる今回のスタイルには、新田さんがピッタリではとアートディレクターの川上智也さんが企画したとプロデューサーの太田(慎也)さんがおっしゃっていました。

僕、白バックで撮影するのがすごい好きなんですよね。ニューヨークで修行していたときの師匠(テリー・リチャードソン)に......ハリウッドのセレブリティや、オバマさんとかも撮影している人なんですが、「撮影に迷ったときは、白バックにモデルさんを連れていって、1対1で表情や中身を引き出す写真を撮れよ」ってことを、ニューヨーク時代の6年間ずっと言われていましたから、白バックでって言われたときは「これはイケる!」って思っちゃいました(笑)。

──最初に撮影された選手はどなたでしたか?

マールー選手(マールー・ファン・ライン/オランダ/陸上)です。かっこよくて、モデルさんみたいな方ですが、金メダルを3枚も獲っている金メダリストですからね。選手とはコミュニケーションをとりながら撮影していきますが、彼女の場合は特にファッションっぽく撮れたかなと思います。彼女のぐっと強い感じが......TOM FORDの広告みたいで。ちょっと攻め過ぎちゃって、使われていない写真も結構ありましたけどね(笑)。

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──「WHO I AM」の写真は、選手たちがいろんなモノを持っているのが印象的です。

選手には競技するときの格好や道具、メダルを用意してもらって。それにプラスして僕が提案したのはお花ですね。その国のお花を用意してもらって。それと......国旗ですね。あとは現場で選手に会ったときの印象で、例えばオーストラリアだったら「コアラのぬいぐるみを持ってもらいたいね」といったアイディアを思いつきます。

──ポージングも、その場で撮りながら決めていく感じでしょうか?

その場で選手と相談しながら、フリースタイルで撮っていきます。事前にいろいろ考えては行くけれど、やっぱり全部飛んじゃうんですよね。撮ろうと思ったらポーン! って(笑)。「あれ? 全部忘れちゃった! どうしよう!」って。でも、アシスタントフォトグラファーの(澁澤)羅貴くんが後ろから「国旗忘れてますよ!」とかって言ってくれるので、「あ、国旗国旗」って撮影が始まったりしますね(笑)。

──普段と変わらず、同じようなテンションで撮影されているのでしょうか?

そうですね、まったく変わらず。ただし、ひとつだけ......必ず頭のなかに「セーフティ・ファースト」ということは入れています。最後、みんなが笑顔で「楽しかったねー、お疲れさまでした!」って、ハッピーに終われるようにということは心がけていますね。誰かが怪我をして、途中で撮影が止まるなんてことがないように。必ずセーフティ・ファーストで、楽しく笑顔で撮影を終えるようにしています。

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本当の競技シーンのように撮りたい──選手と一緒に真剣勝負

──1回の撮影には、どのくらいの時間がかかりますか?

10分のときもあるし、30分、1時間、2時間かけるときもありますが、平均したら1時間ちょっとですかね。競技のシーンを撮る際に、車いすを乗り換えたり、ウェアに着替えて防具をつける選手もいるので、そういった段取りも含めて時間が結構かかるときもあります。

──選手によっては、今回のような写真を撮られるのが初めて、という方もいらっしゃるのではないでしょうか?

アメリカやイタリアなど、国によってはパラリンピック選手が『Rolling Stone』誌の表紙になったり、いろんな雑誌で取り上げられたりしているので、撮影は結構やっているみたいですが、ボスニア・ヘルツェゴビナやイランの選手は多分初めてだったでしょうね。「どんな撮影なんだろう?」って、言葉が通じなくてもワクワクしている感じが伝わってきて、すごく楽しいですね。

──イランのザーラ・ネマティ選手(アーチェリー)の撮影はいかがでしたか? イランの女性はヒジャーブ(スカーフ)を巻かないといけなかったり、男性との接触が制限されているので、どのようにコミュニケーションを取っていったのか気になりました。

そうなんですよね。触ったらダメなので、とにかく笑顔で接しました。TWO THUMBS UPで「イエイ!」みたいな感じでほぐしていって、「大丈夫?」って声をかけていく。僕、すぐ触っちゃうんで(笑)、気をつけるようにしましたね。最後はネマティさんが僕の背中にポンって触れてくれて。「えー、大丈夫なのかな? やばいんじゃないの?」ってビビりましたが、彼女も世界的アスリートですからね。嬉しかったです。

──パワーリフティングのアマリア・ペレス選手(メキシコ)には、100キロを超えるベンチプレスを実際に上げてもらって、撮影したとのことですが。

本当の競技のように撮りたいので......軽いものを上げてもらって撮るのは、なんか違うじゃないですか。選手もそういったコンセプトをわかった上で真剣に取り組んでくれました。

──ベンチプレスを上げているところを真上から撮ったカットもあります......。

あれは結構怖かったんですよね。7段くらいの脚立で、選手を上から撮っているので。カメラを落としたら顔面に直撃するので、ハラハラドキドキでした。

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──よく撮影の許可が出たなあと思います。

ですよね。さっきも言ったように、毎回選手と撮る前に話し合うんですよ。「今回はこういう感じでいきたいんですけど、どうですか?」とか。撮影中も、「なんかポージングが違うなあ? 競技シーンっていう感じがしないんだよなあ」って、その場でみんなでミーティングして、「じゃあこういうカットで撮ろうか!」って決めていきますね。

──たしかに、とてもリアルな競技シーンに感じられます。

アマリア選手は、リオでは130キロ(女子55キロ級)まで上げて金メダルを獲った人なんですが、撮影のときに上げてもらった110キロとか115キロって、銅メダルの記録くらいの重さなんですね。だから彼女も、上げる前には試合と同じような精神集中をするんです。「セイ!」とかって。それを見ちゃうとこっちも失敗できないですよ。毎回一発勝負なので、汗がビッチョビチョですもん。

──それくらい選手も本気で臨んでくださっているんですね。

そうですね。やっぱりみんな、自分にフォーカスされている嬉しさもあるんでしょうね。それに、「日本でパラリンピックが少しずつでも広まっていってほしい」という思いがあるので、選手たちは本当に真剣に撮影に臨んでくれます。最初は恥ずかしかったり、シャイな感情があるかもしれないけれど、少しずつほぐしていきながら撮っています。

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