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いま必要な企業教育とは? キーワードは「アクティブラーニング」と「コラボレーション」

いま必要な企業教育とは? キーワードは「アクティブラーニング」と「コラボレーション」

株式会社アクティブラーニング 羽根拓也、得能絵理子

WOWOW、松竹、マッキャンミレニアルズ※の3社共同で若手を育成するプログラム「ENTERTAINMENT the HACK」。研修パートを担当した、株式会社アクティブラーニングの羽根拓也、得能絵理子、両氏に話を聞いた。「日本の教育を変えたい」と、20年に渡ってアクティブラーニングに取り組んできたパイオニアが考える、現代の企業教育とは?

オープンイノベーションにおけるアクティブラーニングの手法

──WOWOW、松竹、マッキャンミレニアルズによるオープンイノベーションプロジェクト「ENTERTAINMENT the HACK」ですが、アクティブラーニング社さんが研修パートを担当された経緯を教えていただけますか?

羽根 今回の3社合同プロジェクトの前からWOWOWさんの社内で行なっていたアイデアソンについても、弊社が研修パートを担当していたんです。2回アイデアソンを行ない、それなりの成果は出ました。ただ同じ会社の人たちだけで実施し続けると、体験や記憶といったリソースが同じなので、出てくるアイデアの広がりに限界があります。そこで、複数企業で行うオープンイノベーション型を提案し、松竹さん、マッキャンミレニアルズさんも含めた3社合同のプロジェクトが立ち上がり、研修パートを再び担当させて頂くことになりました。

──研修はどのように進んでいったのでしょう?

得能 アクティブラーニングの手法としては、こうすべきだといった「正解」を押し付ける研修ではなく、方向性は示しますが、正解を作るのは参加者自身です。自分なりの回答を考え、グループで話しあい、それを行動につなげていく。文字通り「能動学習」が主眼になっています。今回も、最初に5人1組のチームに分かれていただき、発想の原理原則や、イノベーティブなアイデアが出やすくなる方法論を学んで頂きます。その後、その方法を使って、実際に課題に対する新しいアイデアを考え、ブラッシュアップして頂き、最終日の発表会に繋げて頂きました。

──「アイデア発想法の原理原則」とは、具体的にどのようなものでしょう?

得能 例えば、「差異×理解=価値」というアクティブラーニングの原則があります。売れる商品、着目されるアイデアには、他に無い「差異」があるということです。ということは、思考の第一段階としては、"他との違い"を作ることを意識して、創案しなければならないというわけです。

──なるほど!では「理解」とは?

得能 「差異」があっても、それが奇をてらったものでは受け入れられません。必要なことは、これまでにはないもので、まさにそれだ!それが欲しかった、と思ってもらえるような「理解」が生まれやすいアイデアを生み出す、ということです。そのためには、世の中の動き、世の中がどちらに進んでいるのかを「理解」しなければなりません。「理解」される方向性を「理解」し、その方向に向かって、「差異」を生み出せ、ということです。

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──それらの原理原則を使って、アイデアの発案を行なっていくんですね。

得能 そうですね。最初は小さな練習問題から始めます。例えば、「新しい水の商品を発売するとしたら?」といった、日常的なもの、考えやすいものから考えて頂きます。そういったことを繰り返していくなかで、「アイデア発想って、こういう風にすると出やすいんだ」といった感覚を掴んでいただきます。それから本来の企業課題や、その研修が提示する本題に入っていく、という流れですね。

──チームで企画を考えていく過程で、「チームコンサル」を行なうということですが、それはどんな内容なのでしょう?

得能 アイデアをブラッシュアップするために一番良い方法は、他者のフィードバックを受けるということです。フィードバックとは、正解を与えることではなく、他の視点を与える。企画を考え、発表して頂くわけですが、途中で我々講師、さらには3社の事務局が揃い、4つの視点でフィードバックをしていきます。

アイデアを一緒にディスカッションした仲間ではない、別の視点を持った我々が、初めて聞くアイデアをどのように感じたのかフィードバックするんですね。そうすることで、みなさんのなかでは"わかりやすいアイデア"と思っていたものが、実はそこまでうまく伝わらなかったり、斬新だと思っていたアイデアも、外から見たらインパクトが足りなかった、といったことが見えてくるわけです。それがただの批判にならないように会話をファシリテーション、つまり良い方向に導くことを行います。ここに弊社の技術があります。そうした対話がうまく進むと、まさに「知の交配」というにふさわしい、アイデアの進化が導き出せるのです。

オープンイノベーションは、より活発な「知的交配」を実現する

──今回の研修プログラムを進めるなかで、とくに意識した点などはありますか?

得能 3社の合同研修ということで、「知的交配」が生まれやすい環境をいかに作るかというのがポイントでした。

──「知的交配」とは?

得能 異なるバックグラウンドを持つ人たちが集まって、新しいものが生み出すことを、我々は「知的交配」と表現しています。みなさんがお持ちの知恵やアイデアを結びつけたり、対峙させたりしながら、新しいものを生み出していくわけです。

知的交配を起こすためには、「思考の展開」を導くことが必要です。Aというアイデアに対し、同意も反論も可能です。大切なことは、その素案が持ち合わせなかった、異なった素材を加え、新しい可能性をもたらしたアイデアに展開させることです。これは言うは易しですが、なかなか簡単には生まれません。例えば、参加者の心の壁を取り除くことも大切です。

──「知的交配」が生まれやすい環境を作るということですね。

得能 異なるDNA同士をポンと放り込むだけでは、新しいものは生まれません。交配しやすい環境をいかに作るかが重要です。ポイントはふたつあり、まずひとつめは「共通言語・共通体験を作ること」。異なった遺伝子は、混じり合いません。混じり合わせるために共通体験をし、パイプラインを作るのです。例えば研修の中で簡単な課題を与えます。その課題を通して、同じ目標に向かって考える、同じゴールに到達するといった体験が発生します。これによって、簡易的な相互理解が発生します。特に気持ちの上での信頼感が生まれることが大切です。

──なるほど!そこが通ってないと知的交配は生まれにくいのですね。

得能 その通りです。そして共通体験をし、お互いのパイプラインが通ってきたら、ふたつ目に「お互いを活用しあうこと」が重要です。お互いのリソース、技術をより深く知り、それらが共通目的のために、活用し合あえるんだという意識をもってもらいます。相手のリソースは通常使えません。でもこの研修では使える。ですから、互いのリソースを把握するために、あえて、相互の会社を訪問しあいながら、話し合いを進めてもらうといったことも行います。さらには会社だけではなく、お互いの個人的なことも知り合うことを推奨しています。こうしたことの積み重ねで、更に深みのある「交配」が可能になっていきます。

──WOWOW、松竹、マッキャンミレニアルズの3社だからこそ、生まれたメリットなどはありますか?

得能 コミュニケーションスタイルが3社3様で面白かったですね。WOWOWさんはアイデアを出すのもお得意でしたが、ファシリテーターとしての役割も担っていらっしゃって。松竹さんは「面白いけれど、それって現実的にできるんでしょうか?」といった、現実論をしっかりと言ってくださるんですね。マッキャンさんはチームのなかで切り札的存在といいましょうか(笑)。普通では考えないようなアイデアをポーンと出してこられるんですね。それにやはり広告代理店ということで、チームのみなさんから出てきた内容をキーワード化していくのもお上手でした。

変化の激しい社会で、企業が取り組むべきは、「アクティブラーニング」と「コラボレーション」

──日本のアクティブラーニングのパイオニアとして、「いま求められる企業教育」とはどんなものだとお考えですか?

羽根 「アクティブラーニング」と「コラボレーション」、このふたつのキーワードに集約されると思います。まず「アクティブラーニング」ですが、これからは、どの業界もどのタイトルの人も学び続けていかなければならないということです。これまでは優れたビジネスモデルがひとつできれば、何年もお金儲けをすることができた。でも、いまは5年ぐらいでビジネスモデルが入れ替わってしまう。世界の最先端で何が起こっているのか、常に、アンテナを貼って能動的に学び続けるしかないんですね。そういう意味で、会社を学べる環境にする事が重要です。社内の先輩が後輩に教えるだけでは、広がりがありません。社外の人、専門外の人、さらには海外の人の話を聞かせる機会を増やさなければ意味がない。さらに、企業内の人材育成についても、これまでのようにただ教え込むのではなく、自分の考えを述べさせる、新しい発想を導くといったものに切り替わっていかなければなりません。こうした「アクティブラーニング」的な教育は今や、世界標準になりつつあります。

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──アクティブラーナーを育てなければいけない?

羽根 そうですね。でも、先ほどからお伝えしているように、自分のリソースを活用するだけでは限界がある。ひとつの会社にいると、ひとつの分野の知識、技術は深まりますが、それ以上でもそれ以下でもない。無いものは生み出せないわけです。だから学び続けるわけですが、一つの専門性を新しく極めるまでにはそれなりに時間がかかります。そこで出て来るのが「コラボレーション」、つまり、自分にはないものを持った人と組むということです。今や、他社と組むということは、当たり前の時代で、一つの会社だけで作った商品に魅力はありません。アップルであれ、グーグルであれ、世界中の会社と組んで、自社ビジネスの進化に努めています。競合だろうが顧客だろうが、組める相手とどんどん手を組んでビジネスを創出していく。それが「オープンイノベーション」という発想なんですね。

──今回3社さんはアクティブラーニング&オープンイノベーションを採用されましたが、まだまだそこに至っていない会社や社員はどうすればいいのでしょう?

羽根 世の中の動きを見ていると、ビジネスや人の流動化はどんどん激しくなっています。そのスピードが増していることには、皆さん、うっすら気付いていると思いますが、そろそろ、「待ったなし」で川に飛び込まないといけない状況にきていると思います。川岸に立ち続けていたら、取り残されることは間違いない。おそらく、飛び込んで流されてしまうことを恐れているのだと思いますが、川に飛び込むと、その速度が自分を前に押し出してくれることに気が付きます。我々のクライアントの大企業も、ここ数年でそういう取り組みをされ、成果をあげていらっしゃいます。まずは経営層が、恐れず、一歩前に足を踏み出すことが大切です。

──社員はどうでしょう?

羽根 「会社がやってくれないから、できない」ではなく、個人の活動としてどんどん外へ出て行かれるといいと思います。いまやもう、都内にはコワーキングスペースもたくさんありますし、ハッカソンを含めたセミナーのようなイベントもたくさん行われている。オープンイノベーションが体験できるところに顔を出す機会はたくさんあるので、積極的に参加して、自分のビジネスにつなげていけばいいと思います。

──アクティブラーニングの手法というのも、今後さらに変わっていくのでしょうか?

羽根 そうですね。この数千年間、教育とは教師に依存するアナログなものでした。例えば、同じメンバーに同じ内容を話す場合でも、僕と得能では表現が違ってきます。それはひとつの"味"にもなりますが、生身の人間には限界というものがやっぱりある。さらに、参加される方々も全員個性が異なる人間です。オープンイノベーションとなると、そこに「異なる会社」という要素も加わるので......みなさんをまとめていくのは、もう "職人芸"の領域になるんですね。

──たしかに、今後さらにオープンイノベーションが広がると、人間が指揮することが限界になってくるような気がします。

羽根 これまでとは異なった手法の研修は、もうすでに行なわれています。アナログではなく、動画やSNSなどのデジタルツールを使った、いい意味で"機械的な"情報提示ですね。でもそれだけではこれまでのe-learningと変わらない。ここに今後、AIなどの技術も入ってくるでしょう。現状では、「こういうバックグラウンドがあるから、こういう人だろうな」と、これまでのノウハウを活かしながら、"人間AI"で頑張っていますが(笑)、そこにはやっぱり限界がある。データベースにあらかじめ蓄積された参加者さんのバックグラウンドを、我々の過去の案件データと照らし合わせて、最も適切な研修プロセスを選択していくといった社会に、ここ数十年で進化していくと予想しています。実際、そういう取り組みに我々も関わっています。人材育成の分野でも既に劇的な変化が始まっているのです。

※広告コミュニケーション関連グループ、マッキャン・ワールドグループのミレニアル世代(1980-2000年前半生まれ)有志メンバーで構成されたイノベーションプロジェクトです。

撮影/ヨシダヤスシ 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

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