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「ウーとワー」を通して、キャラクタービジネスを知る。ドワーフ スタジオ 松本紀子プロデューサーインタビュー

「ウーとワー」を通して、キャラクタービジネスを知る。ドワーフ スタジオ 松本紀子プロデューサーインタビュー

株式会社ティー・ワイ・オー ドワーフ 松本紀子

WOWOWとドワーフのコラボレーションによって製作された、オリジナルコンテンツキャラクター「ウーとワー」。キャラクター企画提案から始まり、クリエイターのプロデュース、キャラクターの展開戦略などを手がけるドワーフのプロデューサーに、キャラクタービジネスで押さえておくべきポイントを中心に話を聞いた。

目次

・デザインだけでなく、展開方法も提案する戦略的プレゼン
・クリエイターが一番最初に出してきたものを、大事に受け止める
・キャラクタービジネスで重要なのは「信じて、育て続けていくこと」
・生み出した当事者たちが、いちばん最初に飽きる可能性もある

デザインだけでなく、展開方法も提案する戦略的プレゼン

──WOWOWとドワーフのコラボレーションによって製作された、オリジナルコンテンツキャラクター「ウーとワー」ですが、最初に行なわれたWOWOWによるパートナー選出における、提案のポイントを教えてください。

まずはもちろん、WOWOWさんのターゲットとしている層にリーチするものですよね。それから、いろんな人に好きになってもらえるキャラクターにしたい......ただ、我々は「みんなに愛されるものは、誰からも深く愛されない」と思っている部分もあるので、ドワーフらしい、少しエッジが立っているようなものを提案したいと思いました。

──少し尖っているところが「ドワーフらしさ」である?

そうですね。我々が手掛けている「どーもくん」や「こまねこ」ってソフトなイメージがあるかもしれませんが、大人たちにも受け入れられるような、少し尖った部分がストーリーのなかに入っていたりするんです。ですから、今回もそういった「ドワーフらしさ」を大事にしたいと思って、いろいろとご提案させていただきましたね。

──「尖っている」というのは具体的にはどういったことでしょう?

わかりにくいところがある、つまり「ミステリアスな部分があるキャラクター」ですね。今回ご提案させていただいたすべてのキャラクターに、その要素は入れています。あまり表現しすぎない、説明しすぎない、喋りすぎない、わかりやすすぎない。

──そういったキャラクターについて、プレゼンではどのように説明するのでしょうか?

「なんだかミステリアス」というのは、理屈ではなく本能的な部分に依りますから、なかなか難しいんです。担当者さんに伝わったとしても、その後に社内で理解を得るのが大変です。ですから我々は、キャラクターデザインを手掛けてくださったコンドウアキさんも交えて、「このキャラクターはどういう子で、どうやって展開していくのか」といった戦略を立ててプレゼンに挑みましたね。

20180508_dwarf_sub01.jpg(プレゼン時の資料より抜粋)

──「こういうデザインで、こういうストーリーが背景にあるキャラクターです」といった内容だけでなく、「このキャラクターを使って、こういうことをしていきます」というプレゼンですね。

そうですね。展開の仕方を具体的にデザインに落としていくようなプレゼンですね。「スマホのサイトではこういう表現で、WOWOWのWEBページに登場する場合はこんな感じにしたらどうでしょう? 神出鬼没で、あまり語らない露出の仕方がいいと思います」とか「コンテンツとして、こういう風に育てていくことができると思います」といったようなアイデアをたくさん持っていって。グッズのサンプルも作りましたね。

クリエイターが最初に出してきたものを、大事に受け止める

──コンドウアキさんにデザインをオーダーしたのはなぜでしょう?

コンドウさんって、本当に隙がないんですよね。「リラックマ」のような、ときには「ゆるキャラ」と呼ばれちゃうキャラクターを作られていますが、べつにゆるく作っているつもりはなくて......細部まで本当によく考えられているので、今回もそんなコンドウさんの才能がギュッと詰まったものを見てみたいなあと思ってお願いしました。

──今回、コンドウさんをどのようにプロデュースしていったのでしょうか?

まず「こういったターゲットです」とお伝えして、コンドウさんからたくさんのアイデアが上がってきました。それをもとにディスカッションを重ねていくなかで、我々からオーダーしたのは「1体のキャラクターではなく、複数体でチャレンジしてみたい」ということでした。

──それはなぜでしょう?

キャラクターはシンボルなので、本来は1体のほうがいいんですよね。でも今回は、いろんなものを発信していくWOWOWさんから生まれたキャラクターということで、使い勝手も含めて考えてみたところ......ひとりだと点の表現になってしまいますが、ふたりいると掛け合いのなかで線や面ができてくるんですよね。今回のプロジェクトに関しては、後者のほうが適していると思ったので、途中からコンドウさんには「複数体にしたい」とハッキリお伝えしました。

──クリエイターをプロデュースするうえで大切にしていることなどはありますか?

コンドウさんに限らずですが、クリエイターの方と仕事するときは、「最初に出てきたものを、大事に受け止める」ということです。コンドウさんは我々の意見をすごく聞いてくださる方なのですが、やっぱりコンドウさんが「これだ!」と思って出してくださるものはしっかりと受け止めたい。ほかのクリエイターの方に関しても同じです。

──クライアントにクリエイターの作品を提案する際に、気をつけていることはなんでしょう?

我々が作品を預かって提案するわけですから、例えば今回だったら「コンドウさんが描いちゃったので」っていうのはナシですよね(笑)。プロデュースしている我々が、良いかどうかの判断もせずにクライアントに出すのは無責任ですから、「あまり媚びない方向でいきましょう」とか「個人的にはすごく好きですが、少しニッチな方向に寄っていませんか?」とかって、クリエイターの方とディスカッションして、間違いないと思ったものをクライアントに持っていく。「これは通らないと思うけど、有名作家が推しているから持っていく」というのはナシですね。

──そうしてキャラクターが決まり、彼らの世界を表現していくなかで、特にこだわっているところはどこでしょうか?

まだ生まれたばかりの彼らが「何者なのか」という表現に関しては慎重にやっていきたいですね。「コーポレートロゴとしてのキャラクターを作ってください」という依頼ではなく、一緒に育てていけるような、コンテンツとしてのキャラクター作りを求められていると思うので、ただのマークにならないように意識しています。

──具体的にはどういうことでしょう?

キャラクターについて「育成と消費」という言い方をよくするのですが......例えば、すごく流行ったけれど、あっという間に世の中から消えてしまったキャラクターっているじゃないですか。あれって、消費に成長速度が追いつかなかったのだと思うんです。まだキャラクターが育ちきっていないのに、やたらとコラボをしまくったり、プロモーションだけをし始めたりして......じゃんじゃん「消費」してしまった結果、消えてしまったんですね。そうならないように、いまの段階としては、ウーとワーをしっかりと育てていくことが重要だと思っています。

20180508_dwarf_sub02.jpg

キャラクタービジネスで重要なのは「信じて、育て続けていくこと」

──ここでドワーフさんがどんな事業を行なっているか改めて教えていただけますでしょうか。

ドワーフは、キャラクターやアニメーションといった、モノやコンテンツを作っているスタジオです。なかでも「コマ撮り」と言われている手法が得意で......まあ、世界中でコマ撮りをやっている人があまりいないのでニッチな世界なんですが(笑)、だからこそ我々のところに技術が集まり、世界中で認めていただけるような作品を作ることができているんだと思います。

──キャラクターブームもあり、多くのキャラクターが出てきているなか、昔からキャラクタービジネスに取り組まれている松本さんは、この状況をどう感じていますか?

本当にたくさんのキャラクターが出ていますが、この世の中に存在するキャラクターの9割は知られていないと思うんです。さらに、知られていても稼いでいるキャラクターはおそらく1%ぐらい......これは完全に私の体感ですが(笑)。そんな状況のなか、パートナー企業さんとどのように「ビジネスとしてのキャラクター」を作り上げていくか、しっかり考えていかないといけないと思っています。

──「キャラクターを作りたい」といった相談をたくさん受けられていると思いますが、キャラクタービジネスにおいて最も重要なことは何だとお考えでしょうか?

先ほどの「育成と消費」の話につながるのですが、例えば今回のウーとワーは、WOWOWさんとコンドウさんと我々で権利をシェアしています。「WOWOWさん、あとは宣伝よろしくね」でもないし、「うちが勝手にやっていきますので」でもない関係性なんですね。関係する全員がきちんと関わり続けて、育てていく。パートナーとして、それぞれがしっかり仕事をし続けることが、キャラクタービジネスにとっては重要なことだと思います。

──WOWOWの担当者も、「キャラクタービジネスを作り上げていくのは、すごく時間がかかる」と言っていました。

コンテンツを作っていらっしゃる会社さんなので、「キャラクターを作るのは簡単ではない」ということをご理解いただけているのは心強いですよね。たとえ有名なクリエイターの方にキャラクターを作っていただいたとしても、そこから育てていくことが肝心なので。「誰々さんがデザインしたキャラクターだから、必ずヒットするだろう」なんて思われるような風潮があるかもしれませんが、そんなことはないですから(笑)。時代の流れのなかで突然、「どこでどう火がついたのかわからないけれど、爆発的にヒットする」こともあるので......作ったキャラクターを信じ続けて、育てていくことが我々のすべき仕事ではないでしょうか。

──キャラクタービジネスの面白さはどこにあるとお考えですか?

ドワーフの仕事は「キャラクターを厚くしていくこと」だと思うので、どう厚くしていくかを考えるのがやっぱり面白いですよね。ウーとワーになにをさせたら面白いか、WOWOWさんがウーとワーをどう使っていくのが良いのか、受け手にはなにが刺さるんだろう? といったことを考え実行して、うまくいったりうまくいかなかったりする。それが面白いですね。あとはやっぱり、受け手に「このキャラクターすごい好き!」と言われるようになってくると、本当に嬉しいですね。

キャラクターを生み出した当事者たちが、いちばん最初に飽きる可能性もある

──それではキャラクタービジネスが失敗するパターンというのは、どういうものなのでしょう?

いろいろありますが、いちばんは「動かなくなってしまうこと」ですよね。動かない、露出されない......というのも、受け手の目に映った時間とキャラクターへの愛情って、比例すると思うんです。

──見れば見るほど好きになる?

そうですね。ですから、できるだけ多くの人の目に触れて、接してもらえる機会を作ることが大事なんです。露出がなくなり、好きになってくれる人との関係性が絶たれてしまう......それこそが、キャラクターにとっての「終わり」だと思います。とはいえ、毎日WEBムービーを出し続ければ必ずヒットするというものでもないのですが、どこかに「ヒットするスイッチ」があると思うんです。それを信じて、育て続けることですよね。

──とはいえ、急がず時間をかけてキャラクターを作っていくのはなかなか難しいと思います。企業側としては「結構売れてきてるんじゃないの? このチャンスにもっと出していかないと!」と、急いで売り込んでしまいがちだと思うのですが。

そうですね。パートナー企業さんによくお伝えしているのが、「おそらく、世の中でこのキャラクターをいちばん見ているのは我々です」ということで......いちばん接しているから、いちばん愛情もある。それゆえ、「こんなに有名なのに、なんでもっと売れないの?」と思いがちですが、「我々が見ているほど、世の中はこのキャラクターを見ていない」と、客観的になることが大切なんです。これって、我々も含めて、意外とみなさん実感できないことが多いんですよね。

──キャラクターに限らず、コンテンツを作る際にも起こりがちなことですね。

逆を言えば、いちばん最初に飽きるのも当事者である可能性が高いんです。例えば、「キャラクターにちょっとコスプレさせちゃおうか」みたいなことって、よくありますよね(笑)。でも、そもそも世の中にまだ知れ渡っていないキャラクターがコスプレしても、コスプレしていることに気付かれないんですよ。そういった、当事者たちと一般の人たちのブレって結構大きくて。そこを間違えてしまったら、先ほど言ったような「消費」に向かっていってしまうんですよね。

──たしかに、当事者としては、ちょっとした変化がほしくなるんでしょうね。

ウーとワーだって、私たちが間違えてしまうと、「ピンクと黄色のバージョンを出そう!」なんてことになりかねないですから(笑)。ただ、コスプレという意味ではすでに、クリスマスのサンタクロースとお正月の獅子舞をやっているんです。そのときは、かなり話し合いましたね。「10月にデビューしたばかりのキャラクターに、サンタクロースはまだ早いんじゃないか」とか「さすがにここまでスタンダードなものは、逆にやらないといけないんじゃないか」とか。コンドウさんやWOWOWさんともやり取りしながら、慎重に進めていきました。

──それが例えば、WOWOWの番組に関連したデコレーションをするといった内容だったら、「まだ早い」という判断だったのでしょうね。

そうですね。「全米オープンが始まるから、テニスのコスプレをしよう!」みたいなことではなくて......もちろん、キャラクターとして体力がついてくれば、いつかはできる日が来ると思いますが、体力がないうちにそういうことばかりやってしまうと、それこそウーとワーを「消費」してしまうことになるので、気をつけないといけませんよね。

──ウーとワーの今後の展開についても教えていただけますか?

「彼らは何者なのか?」という謎が、少しずつわかるような、わからないようなストーリー発信をしていきたいと思っています。「なんでここに居るんだろう?  2人はどういう関係なの? いったいどこから来たんだろう?」といったようなことが、わかったり、わからなかったりするから面白いので、そういった物語を、少しずつみなさんと共有していけるといいなあと思っています。

──WEBで配信されているショートムービーや4コマ漫画では、ウーとワーの独特な世界観が展開されています。

いまはそうやって断片として出している段階ですが、観てくださった方々から「この子たち、こんなにシュールなことまでやるの?」といった感想などをいただいたりもしていますので、我々の狙っている世界観が伝わっているのかなあと思います。大人が観ても笑ってしまうようなシュールさを、ギリギリのラインで攻めているといいますか(笑)。そういった断片がだんだん集まってきて、もう少し長いお話ができてくるといいですね。

ドワーフ:www.dw-f.jp

撮影/祭貴義道 取材・文/とみたまい 制作/iD inc.

(c)WOWOW・aki kondo/dwarf

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