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4月6日スタート『アウトドアシップ』プロデューサーが語る、オリジナル番組が生き残る道──番組を中心に据え、放送収入だけではないビジネス起点を創出する

4月6日スタート『アウトドアシップ』プロデューサーが語る、オリジナル番組が生き残る道──番組を中心に据え、放送収入だけではないビジネス起点を創出する

制作部宮田徹プロデューサー

「エンターテインメント企業として、面白い番組を作るだけでいいという時代はもう終わっている」。WOWOW初となる、アウトドアをテーマにしたオリジナル番組『アウトドアシップ ~ソト・タビ・アレコレ~』を手がける宮田徹プロデューサーは語る。「仕事で悩んでいたときに自分を救ってくれた、自然とアウトドアの魅力を映像で伝えたい」という思いから始まった企画は、オリジナル番組として生き残るためのビジネス戦略が張り巡らされている──宮田の挑戦は、WOWOWに新たなビジネス起点を創出する試金石となれるのか。

豊かなアウトドアの時間を、きちんとお伝えしたい

──4月6日から放送開始の『アウトドアシップ ~ソト・タビ・アレコレ~』ですが、企画が立ち上がった理由について教えてください。

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自分は元々アウトドアが好きなので、「アウトドアの番組を作ってみたいな」と思っていたのが1つめの理由です。とはいえ、アウトドアの映像作りってすごく難しいことはわかっていました。キャンプのあの空気感や時間の感じって、写真で切り取るぶんにはすごくキレイに映りますが、映像にすると途端にチープに見えてしまうことが多かったんです。そこを工夫して、なんとか自分の心の中で感じているようなアウトドアの世界を、映像として切り取ってみたいという思いがまずありました。

2つめの理由としては、各局や配信サービスとの今後の競争を考えると、WOWOWとしても"完全にオリジナルのコンテンツ"を作っていかなければならないし、自分もオリジナル番組を作りたいと思っていたので、「自分がすごく好きなアウトドアを題材に、オリジナル番組を作ることができないか」と考えたんですね。2025年の未来のWOWOWへ向けて全社員参加で作りだした行動指針の核となる″偏愛"にもマッチする内容ですから、今、必要な番組な気がしたんです。

ただ、その2つだけだと「足りないな」と思ったんです。エンターテインメント企業として、「面白いものを作るだけでいい」という時代はもう終わっているような気がしていて。だからこそ、コンテンツを基軸にして会社の課題を解決できるような取り組みをしたい。その3つのピースが重なって、今回の企画が浮かびました。

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──いまお話に出てきた「会社の課題」というのは?

「コンテンツを放送するだけで、加入者数が右肩上がりになっていく時代は終わりつつあるんじゃないか」ということですね。ずっと愛されるようなコンテンツを提供しつづけることはもちろん、これからはコンテンツを軸に様々なコミュニケーションを行うことで各ジャンルのファンから「WOWOWっていいよね」と思っていただけるような番組・企画がより必要だと思います。その上で、ファンになっていただいた方たちに継続して加入いただき、さらには楽しんでお金を使っていただけるような仕組みを、コンテンツをベースとして作ることができたらいいなと思ったんです。

──「ずっと愛されるようなコンテンツ」という観点から、今回の企画で一番大事にしたのはどこでしょうか?

「豊かなアウトドアの時間を、きちんとお伝えしたい」というところです。見ていて気持ち良くなれるようなアウトドア番組がいいなと思ったんですね。やっていて楽しいのは当たり前ですが、それを見て「楽しい」と思ってもらえるのって、なかなか難しくて。僕らにとっても大きなチャレンジだなと、実際に作ってみて改めて感じました。

自然をシネマライクに。4Kで撮る、WOWOWならではの映像美

──番組の構成としてこだわった部分はどこでしょうか?

「ストーリーがある旅にしたい」というところです。選んだ場所や、そこでの過ごし方に物語があると、よりその世界観に入っていける気がしているんです。

例えば、初回で紹介する西伊豆の『RENVILLAGE』は1日に1組しか入れない特別なキャンプ場なんですね。そういう場所だったら「海も山も独り占め」という物語が作れるんじゃないかと。プライベートなキャンプを楽しむという設定で、「誰にも邪魔されずに、夕陽が一番キレイな道を歩こう」といったような、自然のなかに目的のある旅をすることができる。そういったことを毎回大事にしていきたいと思っています。

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ほかにも、番組を通して描いていきたいことは色々あって......「自然のなかで学べることって、たくさんあるんですよ」とお伝えしたいですし、料理やギアを紹介するコーナーもそれぞれこだわりの目線を持って作っているので、そういったところが番組の色になっていくんじゃないかと楽しみにしています。

──番組のターゲット層としては、どのあたりを意識していますか?

最初は「アウトドアが好きなのって、やっぱりお父さんだよね」ということで、30代後半から50代半ばぐらいの男性かなと思っていました。でも、自分の家に置き換えて考えてみたときに......うちは妻と娘2人なんですが、女性陣の心が動かないと家族でキャンプに行けないんです(笑)。逆に、女性陣の心が動くと、キャンプに興味がなかったお父さんも動くんです。

ですから、パートナーの女性や奥さんに観ていただいて、「キャンプって良さそう。行ってみたい」と思っていただけるような番組にしていきたいなと思っています。30代から40代ぐらいの女性に観ていただいて......3名の女性を番組の主人公にしているのも、観ている方が「あ、私にもできそう」と思えるようにという意図があります。彼女たちがキャンプを楽しんでいるなかで、こだわりのギアやディテールが目に映ると、キャンプに造詣のあるお父さんも興味を持って観てくれるんじゃないかと(笑)。

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実際に観るのは男性のほうが多いのかもしれませんが、女性に好かれる番組にしたい、男性に嫌われない番組にしたいっていうのが目標ですね。

──WOWOWならではの切り口や見所はどこだと思いますか?

映像ですね。すべてを4Kで撮っているので、いずれは4Kで放送したいと思っています。最初のロケを終えてみて、自然をシネマライクに撮れているなあと改めて実感しているので、ほかでは観られないような映像をご覧いただけると思います。

──番組ナビゲーターとして岸明日香さん、渡辺舞さん、YURIEさんの3名が登場しますが、それぞれの役割を教えてください。

キャンプをやったことがない岸さん、本格的ではないけれどキャンプをやったことがある渡辺さん、キャンプをいつもやっているYURIEさん。このバランスを重視してお三方にお声がけさせて頂きました。全然やったことがない、ちょっと知ってる、すごく詳しい、という組み合わせの3人が、旅をそれぞれどのように受け取るのか。その受け取り方って、観ている側も何かしら自己投影できる部分があるんじゃないかと思うんです。

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左から、YURIE、岸明日香、渡辺舞

番組のタイトルになっている『アウトドアシップ』というのは、アウトドア経験者やアウトドアに興味のある人たちが集まるインターネット上のサークル名という設定で、そこでたまたま出会った3人が一緒に旅をするという物語になっているんです。instagramでは実際にサークルを立ち上げて、「#outdoorship」というハッシュタグをつけて呟くといったことがリアルに始まっています。いづれ視聴者の方たちともコミュニケーションがとれるようになっていけるといいなあと思います。

特別な時間が流れる、キャンプの醍醐味を味わう

──初回は西伊豆のプライベートサイト『RENVILLAGE』でのキャンプの様子が描かれますが、選んだ理由は?

「行ってみたいけれど、なかなか行けないところ」を選びました。なかなかできない自然の体験や、なかなか行けないキャンプ場をみなさんに映像で観ていただいて、疑似体験していただきたいという思いが強いです。

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──キャンプ初心者の岸さんをはじめ、みなさんのロケの感想はいかがでしたか?

かなり過酷なロケでしたが、みなさん頑張ってくださいました。朝すごく元気に起きていらっしゃって、「テントで寝るのがものすごい新鮮でした!」とかって(笑)。キャンプにあまり触れたことのない岸さんと渡辺さんは特に「時間の流れ方が日常とは全然違って、特別な感じがします。凝縮された時間がずっと流れているような感じがして、すごく気持ちがいいです」とおっしゃっていましたね。

それに、「ゴハンを作る、ゴハンを食べる、寝るといった日常生活の一つ一つのことがとても特別なことをしているような気持になって、心が豊かになりますね」ということもおっしゃっていました。

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──番組のコンセプトを伝えるために、ロケの際に意識したことはありますか?

段取りとかをあまり縛るようなことはせず、「お三方は実際に楽しんでください」とお話ししました。「これからこの場所にテントを立てていただきますが、やり方にはルールも決まりもないので、思うようにやってみてください」と。「上手くいってもいかなくてもそれがアウトドアの醍醐味ですから、楽しくやってみてください」ということはずっと言っていました。

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そうすると、やっぱりみなさん色々考えながら、話をしながらやってくださるんですよね。その一つ一つの作業が楽しかったんだろうなあっていうのは、カメラでとらえた彼女たちの笑顔に反映されているような気がします。

──宮田さんご自身もキャンプが好きということですが、キャンプの魅力やハマったきっかけなどについて教えてください。

魅力はやはり「静かに過ごせること」じゃないでしょうか。無になれるというか、すごくオープンな気持ちになれる。自然が相手なので、ときには雨が降ったり、風が強かったりと、過酷なこともありますが、キャンプに行くと、空っぽの状態で素の自分になれる感じがするんです。普段まとっているものをはぎ取って、ポツンと居られる感じがすごく好きですね。

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──好きなシチュエーションはありますか?

僕は川が好きですね。川沿いでキャンプして、川の音を聞きながら寝るのがすごく好きです。実は、5年くらい前に色々と行き詰まっちゃっていた時期があって、そんなときに、たまたま「キャンプが子どもの情操教育にいい」と聞いて「じゃあ、ちょっとやってみるか」と家族で行ったんですけど、上手くいかなくて大変だったんですね。

「仕事もしんどいし、キャンプに来てもなんかしんどいなあ」って思いつつ(笑)、暗いなかで焚火をしながらウイスキーを飲んで川の音を聞いていたら、なんだか色んなことがすごくクリアになって、気が楽になったんです。それで「なんかわからないけど、すごいなこの時間」と思ったのが、キャンプを好きになった瞬間かもしれないです。

だから、なにか辛いことがある人にはぜひキャンプをオススメします(笑)。相当救われますからね。大自然の中で自分は大したこともできないんだけど、でも景色はキレイだし、ゴハンは美味しいし、寝ることって気持ちいいし......一つ一つのことがシンプルに楽しく感じられる瞬間かもしれないですね。「ああ、楽しいなあ」って、心の底から思います。

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──まさに、そういう思いが『アウトドアシップ ~ソト・タビ・アレコレ~』のなかにも込められているんじゃないかと思います。

そうですね。観ている方に、そういったことを感じていただけると嬉しいです。だからこそ、ガチャガチャした番組ではなく、ゆったりとした番組にしたい。番組ってどうしても情報をたくさん詰め込んで、賑やかにして、飽きないように作られるものが多いと思いますが、WOWOWってゆっくり見せるような番組があってもいいチャンネルだと思うので......いい自然をいい音楽に乗せて、ゆっくり、たっぷり見せたい。そういうことができるのが、WOWOWのいいところでもあると思っています。

ずっと続けていきたい番組だから、始まった瞬間に実績がほしい

──番組内で登場するグッズが、番組のECサイトで購入できるというのもWOWOWにとっては新しい試みだと思います。

WOWOWでは放送以外の収入の柱の一つを目指し、近年「ショッピング」関連の様々な取り組みが行われています。今回は企画時点からEC展開を盛り込むために、オリジナルグッズを作ろうと。もちろんそれらは番組のなかにも登場しますし、「いいな」と思ったらECサイトですぐに買えるようになっている。そういうことを実現したいと、WEB、ECチームにも協力してもらいました。

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──最初におっしゃった「ずっと愛されるようなコンテンツを提供したい」という理念に基づきながら、WOWOWのなかでいま求められていることを戦略的に企画に組み込んでいる印象を受けます。

そうですね。というのも、ずっと続けていきたい番組なので、始まった瞬間に実績がほしいと思っていて。その実績とは何かというと、ECの新しい販路を開拓して商品を売っていったり、外部のメディアと連動したりといったことだと思うんです。

──具体的にはどういった取り組みを予定されていますか?

メディア連動という観点では、『BE-PAL』では連動企画を毎月掲載していきます。『CAMP HACK』では番組内のアウトドアファッションに関する記事を、レシピサイト『ソトレシピ』では番組で作った料理のレシピを毎週掲載します。それだけで広告換算すると、すごく大きな金額になりますよね。

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ECについては、タイアップする『A&F』を軸にした営業展開ができるような取り組みを進めています。チラシの配布やインセンティブ営業など、新しい営業ルートの開拓を実店舗を通して実現していきたいと思っています。

ほかにも、プロダクトプレイスメントのようなことが事業の枠のなかでできるのであれば積極的に取り組んで、いままでにない形でのアプローチができればいいなあと思います。

──番組をフックに、放送収入だけではない広がりをたくさん作っていくということですね。

そうですね。一番最初に番組があって、その先には各部署それぞれの目的があって、その目的を満たしていくとさらにどんどん広がっていくような立てつけになっていたらいいなあと思うんです。それこそ『アウトドアシップ』という傘のなかで、それぞれの取り組みが繋がっているような番組にしたいなあと思いますね。

そうすることで、会社の仲間たちが自分のKPIをきちんと達成できるようにもしたい。そうしないと、もう企画なんて通せないですからね。企画を提案するタイミングで「各部署とはすでに準備を進めています」という状態でしたから。というか、そこまで組み上げてからじゃないと、企画を通してはいけない気がするんですよね。

──「長く続く番組にしたい」という思いが強いからこそ、万全な準備をもって立ち上げたと?

そうですね。今回ご一緒させていただいている媒体さんや店舗さんって、業界のトップランナーだと僕は思っているんですが、やっぱりみなさん思いは同じなんです。「キャンプブームはありがたい。でも、ブームはいつか終わるし、ブームの後には何も残らない」と。だからこそ、一過性のものにしないためにも僕らのようなテレビと一緒になって、「キャンプを文化としてきっちり育てていきたい」と快く協力頂けました。miyata3.jpg

──この番組で実現してみたいことは?

四万十川でカヌーを下りたい。釧路湿原の旅をしたい。中低山ぐらいの縦走トレッキングキャンプをしたい。あとは......しまなみの自転車街道を歩きたい、とか(笑)。やりたいことはいっぱいあります。

──この番組を通して、WOWOWに残したいことは何でしょう?

「コンテンツがあって、ビジネスが生まれていく」という座組みのきっかけになるといいなと思ってます。イベントやオリジナルグッズ展開もそうですし、旅行のツアーを番組が企画したりといった展開にも挑戦していきたいです。色んな楽しめるものの真ん中に番組があって、それらすべてを楽しむ=WOWOWを楽しむ、みたいな感じになるといいなと思うんです。オリジナル番組が生き残る道とはそういったところだと思うので、『アウトドアシップ ~ソト・タビ・アレコレ~』が試金石になれるといいですよね。だからこそ実績を残したいという思いが強いです。


取材・文/とみたまい  撮影/祭貴義道  制作/iD inc.

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