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連続ドラマWに新しい風を!脚本家・篠﨑絵里子とプロデューサー・岡野真紀子が初めてタッグを組んで挑んだ『坂の途中の家』

連続ドラマWに新しい風を!脚本家・篠﨑絵里子とプロデューサー・岡野真紀子が初めてタッグを組んで挑んだ『坂の途中の家』

『坂の途中の家』脚本 篠﨑絵里子/制作局ドラマ制作部プロデューサー 岡野真紀子

これまでに数々の連続ドラマWを手掛けてきた脚本家・篠﨑絵里子。そんな篠崎が初めてプロデューサー・岡野真紀子とタッグを組んで臨むのは、幼児虐待死事件の裁判を描く角田光代原作『坂の途中の家』。子育てに苦しむ母親たちの姿は、話数を重ねるにつれ視聴者に重くのしかかってくる。安易な救いに逃げることなく、真正面からこのテーマに挑んだ岡野は「登場人物たちの心情を、連続ドラマとして紡いでいくことができるんじゃないか」と考えたと言う。これまでの連続ドラマWとは違ったアプローチで物語を紡いでいく『坂の途中の家』は、新しい風を吹かせることができるのか──。

WOWOWだったら、安易な救いに逃げることなく"手加減なし"で書ける

──4月27日から放送開始の『坂の途中の家』ですが、制作に至った経緯について教えてください。sakanototyumein190416.jpg

岡野 3年前ぐらいでしょうか? 角田光代さんの『坂の途中の家』をお読みになった篠﨑さんが、「誰に頼まれるわけでもなく、企画書を書いちゃった」と(笑)。それでテレパックの黒沢淳プロデューサーが企画書を提案してくださり、初めて篠﨑さんにお会いしました。

当時、ちょうどWOWOWのドラマは「これまでの日曜枠に加え、新たに立ち上げた土曜枠で女性視聴者に響くテーマを」という企画募集をしていました。日曜日にはWOWOWドラマの王道でもある"社会派サスペンス"を中心に製作し、土曜日には女性ターゲットの企画や時代劇など、新たな層に伝わるようなジャンルに挑戦したい、という話があって。なので、篠﨑さんの企画書を拝読したときに「これは土曜枠に合う企画なのでは」と思って提案しました。しかし、具体的に製作決定までは少し時間を要しました。sakanototyuuokano2190416.jpg

篠﨑 そうですね。放送枠が決まっていたわけじゃないので、「脚本ができたら進めよう」と。「しっかりと作った脚本に対して、時間をかけてキャスティングして、理想の形で作っていこう」と岡野さんがおっしゃってくださったので、3年ぐらいかかったんですね。

岡野 まだ監督も決まっていない状態で、プロデューサー2人と篠﨑さんで、先にシナリオを作って......。

篠﨑 サークル活動で同人誌を作ってる、みたいな感じでしたね(笑)。

岡野 そうですね(笑)。しっかりシナリオを持ってキャスティングに動けたので、とても幸せな段取りで進んでいった企画でした。

──篠﨑さんと岡野さんは今作で初めてご一緒されたのですね。

岡野 そうなんです。

篠﨑 奇跡的な出会いでしたね。私もWOWOWでドラマの脚本をたくさん書かせていただいていますが(『連続ドラマW 震える牛』『連続ドラマW 楽園』ほか)、日常を離れた舞台のものが多かったんですね。でも今回は本当に日常の、しかも「お母さん」という立場のお話だったというのは、とても新鮮で。本当にいい出会いでした。

──篠﨑さんは原作となる『坂の途中の家』のどこに惹かれて企画を書いたのでしょうか?

篠﨑 本作の最終話(6話)にも出てきますが......とあるシーンに辿り着いたときに、涙がワーッと出たんです。子育てにもがいているお母さんたちすべてにとっての救いとなるシーンだったので「これを伝えたい。これを映像化したい」と思って。sakanototyusinozaki1190416.jpg

その時期にたまたま見ていたツイッターで、子育てをされているお母さんが「夜泣きに苦しんでいるお母さんたちが集まれる"夜泣き部屋"みたいなのがあったらいいな」って、漫画を描かれていて......その方もたぶん、子どもの夜泣きに辛い思いをされていたんでしょうね。それを読んで、「お母さんたちって、みんなこんなに孤独なんだ」とわかって、ますます『坂の途中の家』を絶対に映像にして届けたいと思ったんです。

──この企画をWOWOWに提案した理由はどこにありましたか?

篠﨑 民放では難しいだろうとは感じていました。民放だと、1話ごとに何かしらの救いを入れないと観てもらえないですし、テレビをパッとつけたときに、あまりにも悲惨な映像が流れてくるとトラウマになりかねないですから。

その点、WOWOWだと「このドラマを観たい」と思って観てくださる方々に向けて作ることができるので、手加減なしで書けるし、安易な救いを投げかけなくていいという意味でも、WOWOWがいいなとは思っていて。そんなときに運良く岡野さんと出会えて、企画が成立できたのでよかったです。

こういうテーマだからこそ、ある種のエンターテインメントでもありたい

──岡野さんはこれまでWOWOWドラマの王道ともいえる社会派サスペンスを手がけることが多かったと思いますが...。

岡野 そうですね。ここまで日常の話って、私はあんまりやったことがなくて。これまでは"エピソードで物語を紡いでいく"作品が多かったんですが、今回は「登場人物たちの心情を、連続ドラマとして紡いでいくことができるんじゃないか」と思ったんですね。それって私自身、いつかは辿り着きたいと思っていたところでもあるんです。

そんなときに篠﨑さんに出会って、ご一緒させていただいて、企画が成立したときはものすごく嬉しかったですね。「乳児虐待死事件の裁判」ということで、難しさのある企画ではあったので...。sakanototyu2shot190416.jpg

篠﨑 「絶対に無理だろう」と断られた局も実際にはありました。そんななかでWOWOWは「チャレンジしよう」と思ってくださったことが素晴らしいと思いますし、初めの打ち合わせのときに、岡野さんが「こういう作り方をしませんか?」と、ある種の"仕掛け"を提案してくださったんです。それがすごくピッタリきたんですよね。ネタバレになるので詳しくは言えないのですが(笑)、その提案をいただいたときに「これならイケる!」と......バチっと見えた感じがしたので、そこから迷いはなかったですね。

──岡野さんのその観点というのは、いままで経験されてきた"エピソードで物語を紡いでいく"という作り方から引き出されたものとも言えるのでしょうか?

岡野 多分そうだと思います。こういうテーマだからこそ、ある種のエンターテインメントでもありたいと思ったんですね。倉本聰さんから教えていただいた、「核心をつくものほど糖衣錠で(=核心は砂糖で包む)」というのが私のものづくりの原点で......今作の砂糖って、その"仕掛け"部分になるんじゃないかと思って篠﨑さんに提案させていただいたら、どんどんアイデアを下さって。「これは土曜枠として絶対に新しいものになるだろう」という確信がありました。

──昨今では児童虐待が社会問題となっていますが、そんななか、あえて本作に挑むというのはセンシティブな点も多かったと思います。それでも本作を世に出す理由や意図はどこにあるのでしょうか?

岡野 「この作品で多くの方を救いたい!」そんな大それたことは言えないと思っています。しかし、悩みを独りで抱え込んでいる方ににとって、小さいけれど救いの一手になり得る企画だとは思っていて。

先ほどの篠﨑さんのお話にもありましたが、子育てってすごくクローズドなところで行われていて、外からはわからない部分が大きいですよね。それが少しでもオープンになるのはとても意味があることだと思うんです。むしろ、社会問題になっているいまだからこそ見せていくべきだし、これまで社会的なテーマに向き合ってきたWOWOWのドラマW枠で、逃げることなくしっかりやる必要があるんじゃないかと思いました。

篠﨑 いまの虐待って、昔とちょっと性質が変わってきているんですよね。本作で描かれるのは"もがいたうえでの虐待"ですが、いまって心がない状態で虐待している両親が増えてきている気がします。それをどうしたらいいか、解決策は本当にわからないんです。ただ、本人たちが変われないのであれば、周りが気づいてあげるしかないと思うんですね。sakanototyusinozaki2190416.jpg

「あそこの家、なんだか毎日すごく泣いてるけど大丈夫かな? ちょっと行ってみよう」みたいな風潮が、なんとなく広がっていけばいいなと思います。気づいた人がどんどん行く。そのためには知識が必要なので、「こういうことが本当に起こっているんだよ」、「こういう環境の人がいるんだよ」っていうことが、この作品でちょっとでも伝わればいいなと......そういう思いは、作品に関わるみんなが持って作っていましたね。

あらゆる技術を使って撮影監督山田康介が追及した「美しい映像」

──篠﨑さんが脚本を書かれるなかで意識した点はどこでしょう?

篠﨑 一切手加減せず、本当に自分がリアルだと思うことしか書いていません。誇張したつもりもないし、「これを言うと観ている人が辛いだろうからやめよう」っていうのもないし。そこは最初から決めていましたね。

──岡野さんがこだわった点は?

岡野 プロデューサーとして最もこだわったのは、スタッフィングです。まずは監督の森ガキ侑大さんですね。森ガキさんが手がけられたJRAのCMがすごく美しくて、「誰が撮ったんだろう?」と調べて、ツテを辿ってお会いすることができたんですが......すごくひょうきんな方だったんです(笑)。「この人だったら、重いテーマを違った視点で描くことができるんじゃないか」と思って決めました。morigaki190419.JPG

次に、こういうテーマだからこそ、絶対的に美しい映像にしたかったんですね。というのも、この作品は観てもらわなければ意味がないと思うんです。「多くの人に観てもらって、自分ごととして考えていただくにはどういう導入がいいんだろう?」と第一に考えて、撮影を山田康介さんにご相談しました。(「"日本で一番"の映像技術を誇るドラマにしたい── 『コールドケース2』プロデューサー&撮影監督が語る 8K撮影の真実」yama190419.JPG

岡野 山田さんは「作品のテーマに沿った美しい映像をどう撮るか」ということを常に考えていらっしゃる方なので、「『コールドケース』とは違う形の美しさを追求するものをやりたい」と相談させていただきました。そこで今回は、"人間の表情をリアルに美しく捉える"ということを提案してくださいました。sakanosibasaki2190416.jpg

シナリオが芯食ったものだからこそ、映像と演出は少し遊びたくて。ドラマ作品ですからエンターテインメントとしても、きちんと視聴者の方に届けたいという思いからこの座組にしたというのが一番のこだわりですかね。監督はCMの方、カメラマンは映画の方、私はテレビの人間という......CM、テレビ、映画の融合みたいな感じを大事にして作りました。

──今作は6Kカメラで収録したとのことですが?

岡野 「きめ細やかな芝居の表情を美しく撮る方法を探ります」と、山田さんが色々と工夫されて。特殊なレンズを使っていたり、特殊なフィルターを入れていたりするんですね。マットなトーンになるフィルターを入れて、テカリがない映像にしていて。女優のみなさんも映像を観て「すごいキレイ!」っておっしゃっていましたね。sakanototyufukuoka190416.jpg

日本で唯一稼働中のドルビーシネマ スクリーン行われた4KHDR試写会には篠崎さんも参加

篠﨑 水野美紀さんなんて、本当にスッピンで演じられていました。

岡野 法廷シーンでは一切メイクしてないですよね。sakanomizuno190416.jpg

シナリオに惚れ込んで集まってくれたキャスト陣

──本作はキャスト陣も豪華な顔ぶれが揃っています。これだけのキャスティングを実現するのは苦労もあったのでは?

岡野 篠﨑さんのセリフが本当にいいので、キャスティングはとても順調でした。みなさんシナリオを読んでからお引き受けくださっているので、「このセリフが言いたくて引き受けました」って。改めて、「シナリオがすべてなんだな」と実感しましたね。sakanosyuugou190417.jpeg

──主人公の山崎里沙子役を柴咲コウさんにした理由は?

岡野 篠﨑さんが作ってくださった里沙子像って、実は強さをきちんと持っている人で、それを出せる役者さんという意味で、柴咲さんはピッタリなんじゃないかと思いました。

篠﨑 蓋をされていたものを開けていく話にしたかったので、ただ弱い人だとダメなんです。強さと弱さが同居しているというか、凛とした繊細さを持っている人として、柴咲さんはピッタリでした。イメージ通り過ぎて、見ていて胸が痛くなりましたが......最後に長台詞があって、それを言っている柴咲さんが素晴らしくて。本当にピッタリで、ほかに適役は思いつきません。sakanosibasaki0416.jpg

──柴咲さんはWOWOWのドラマ出演は初めてということですが。

岡野 そうなんです。役者仲間から「WOWOWのドラマはいいよ」と聞いたと言ってくださいました。また、完成した全話分のシナリオをお渡ししたら、「もう夢中で読んじゃって、仕事だってことを忘れてしまいました」とおっしゃってくださって、その後お引き受けいただけたんですね。

篠﨑 柴咲さんはとても意識が高い方なので、シナリオを読んで、おそらく自分なりに思うことがたくさんあったんでしょうね。それですごく読み込んでくださって、ああいった演技になっているんだと思います。最終話へ向けての感情のグラデーションが完璧で、本当に理解して演じてくださったんだと感動しました。

──視聴者のみなさんに、特にどんなところを観ていただきたいですか?

篠﨑 「自分は自分として、母として生きていこう」という覚悟をもともと持っていた里沙子が、裁判を機にいろんなものに惑わされ、萎縮していってしまう。それでも最後はやっぱり「自分として生きていく」というところに辿り着くんですね。その過程を観ていただきたいですね。その周りにもいろんな登場人物がいて、それぞれが問題を抱えているので、どこかしらに自分を重ねて観ることができるんじゃないでしょうか。そういう楽しみ方もしていただけると嬉しいです。

──男性の視聴者もたくさんいらっしゃいますが、どういう観方をするといいでしょう?

篠﨑 身に覚えのある方も多いかと思いますが(笑)、恐れずに大切な人と観てほしいです。「俺、こんな感じ?」、「そうだね」みたいな会話が夫婦でできたら本当はいいですよね。男性は真っ二つに分かれると思うんです。「嫁に見せたくない」と思うぐらい身に覚えがある人と、「こんな男いないだろ」と思う人と......自分がどんな夫なのか、測れるかもしませんね(笑)。

岡野 この作品の男性スタッフ陣が共通して言っていたのが、「『坂の途中の家』に携わってから、あなたちょっと優しくなったよねって奥さんから言われた」ということなんです。この作品に描かれているような、無意識に放つ何気ない一言がナイフのように相手の心を傷つけることって、日常のなかでも起こっているんですよね。でも、本当に無意識だから自分では気づくことができない。そういう意味で、この作品が気づくきっかけになるようなものであってほしいなと思います。sakanotanabe190416.jpg

「篠﨑さんにしか書けないセリフのオンパレード」

──今回初めてお仕事をご一緒されて、お互いの印象はいかがでしたか?

篠﨑 実は私、3、40代の女性プロデューサーとガッツリ仕事したことがあんまりなかったんですね。それで今回、岡野さんにお会いするまでは......岡野さんって、WOWOWのなかでも仕事がすごくできる人で、イケイケなイメージがあったので(笑)、「私そういうタイプちょっと苦手なんだけど、大丈夫かな?」と思っていたんです。

でも、実際にご一緒してみたら、本当に仕事がやりやすくて。プロデューサーとしても、ひとりの女性としても、すごく魅力的ですし、根っこにある価値観みたいなものも一緒だったので、そういう意味でも、私はすごく幸せな作品作りができたと思います。

岡野 永久保存のお言葉です! 篠﨑さんは大胆な方なのに、繊細さを絶対的に持っていらっしゃるので、今回のシナリオは本当に篠﨑さんにしか書けないものになったなと思います。なによりもまず、絶対ブレないんです。もちろん、悩んだり葛藤したりしたこともたくさんあったと思いますが、「こう思う」というところが絶対にブレないので、みんながついてきますよね。okano3190416.jpg

現場がなによりも幸せだったのは......みんながみんな「シナリオが面白い」と言うので、私たちプロデューサーはいい意味で、すごく楽だったんです(笑)。シナリオに気になる箇所があると、現場ではいろんな試行錯誤が起きることが多いので。でも今回は単純にシナリオが面白いから集まってきた人たちだったので、みんなが物語に集中できた、幸せな現場でしたね。篠﨑さんだからこその現場だと思います。

普段から篠﨑さんとご一緒している、うちの青木(ドラマ制作部エグゼクティブ・プロデューサー青木泰憲)もこの作品を観て、「これはもう本当に篠﨑さんならではだね。篠﨑さんにしか書けないセリフがオンパレードだった」って言っていましたから、みんながそう感じるんだなと思いました。

篠﨑 でもその「ブレない」って、それを許してくれる現場があってこそなんですよね。やっぱり「こうしたい」という思いはみんなのなかにありますから、自分を変えざるを得ないときもあるんです。だけど今回は岡野さんと根っこの部分が一緒だったというのもあって......意見が違ったとしても強要しないし、岡野さんからアイデアとしていただいたものは「なるほど」と思うから使うし。そういう意味では、私がブレなかったというよりも、そういう場を作ってくださっていたのが本当に大きかったんだと思います。

岡野 本当に、現場のストレスがなかったですよね。

篠﨑 「この日にオンエアするから、ここまでの本が要るよ」っていうことがなかったのも大きいんじゃないかな? 最初に企画ありきで作って、キャスティングの時点ですでにシナリオができていたので、「役者さんが早くって言ってるから、早く書いて」みたいなプレッシャーもなかったですから。こういう幸せな仕事はそうそうないですよね。

岡野 シナリオ作りも含めて、模範的な、クリエイティブな現場でした。

脇を支える役者さんたちがいるからこそ、リアリティが増す

──篠﨑さんのお仕事についてもお聞きしたいのですが、脚本家として常にこだわっているところなどはありますか?

篠﨑 脚本家って、いろんな立場の人のことを書くじゃないですか。自分のなかでは「私はこっち派だな」というのはもちろんありますが、自分と違う人であろうと、「物語のためにウソをつく人は作りたくない」というのはすごくあります。「面白いからこうしちゃえ」みたいなことは絶対にしない。ウソを書きたくないんです。特に、自分が「わからない」と思うことは書きたくないと思っています。

役者さんから「このセリフはどういう意味ですか?」と聞かれたときに答えられないようなセリフは書くまい、ということでしょうか。作品というのはシナリオで完結するわけじゃなく、撮ってもらって、喋ってもらって、動いてもらって初めてできるものなので、役者さんが一番魅力的に見えるようなものを作りたいと思って書いています......できているかどうかは置いておいて(笑)。

岡野 できています! 私、決定稿を入れるときに必ず一人で実尺で音読するんですよ。そうすると、本打ちでは完璧だと思っていたのに、「これは話し言葉じゃなかったな」みたいなことって必ず出てくるんですけど、『坂の途中の家』は一個もなかったです。

篠﨑 それは珍しいかも。いつもは多少ありますね(笑)。

岡野 「ちゃんと話し言葉で紡いでいるな、さすがだな」って思いました。

篠﨑 シナリオを書き始めた最初の頃に「このセリフ、言いたかったんだよ」って言ってくださった役者さんがいて、それがすっごく嬉しくて。「みんながこう思ってくれたら、どんなに幸せだろう。こんなに脚本家冥利に尽きることはないな」と思ったし、そうやってずっと思われ続けていたいなっていう思いだけですね。

──今作もそうですが、篠﨑さんが脚本を手掛ける作品は、メインどころの役だけじゃなくて全員が「生きている」感じを受けます。

篠﨑 脇を支える役者さんって、みなさんものすごくいいお芝居をしてくださるんです。そういった役者さんたちがいるからこそ、リアリティがより増すので、そういう人を大事にしたいと思っています。私が脚本を手掛けたドラマには、そういった方にたくさん出てほしい。そういった方たちが「やりたい」と思ってくれるような役を作っておきたいという思いが強いですね。例えば今回でいうと、弁護士役の山本佳祐さんが私は大好きで......。yamamoto190419.JPG

岡野 そうなんですか!? 嬉しいです。

篠﨑 あんなに芸達者な方はなかなかいないと思っていて。そうしたら、『坂の途中の家』でたまたまキャスティングしてくださっていたので......。

岡野 私も大好きなんですよ。

篠﨑 すごい嬉しくって。こういう役者さんたちにも助けていただいているので、「どの役たりとも」という気持ちはすごくあります。

──『坂の途中の家』はWOWOWドラマの新しい潮流となりそうですね。

岡野 そうなると嬉しいですよね。

篠﨑 WOWOWではこれまで、派閥争いとか、食品偽装とかのテーマが多くてそれはそれでやりがいがあるんですが、初めて今回のような作品をやらせていただいて、お互いに「違う扉、開けちゃった?」みたいなね?(笑)

岡野 開けちゃった、って感じでした! 本当にそうですね(笑)。

篠﨑 『坂の途中の家』に携わることができて、本当に嬉しいなと思います。

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取材・文/とみたまい  撮影/祭貴義道  制作/iD inc.

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