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「ドラマは総合芸術!」フジテレビの90年代ドラマ全盛期を知るプロデューサーが語る、WOWOW、そしてドラマの未来!

「ドラマは総合芸術!」フジテレビの90年代ドラマ全盛期を知るプロデューサーが語る、WOWOW、そしてドラマの未来!

WOWOWと民放各社の間で数年前より行なわれている人事交流によって、2年前からフジテレビより出向中の羽鳥健一プロデューサー。フジテレビ時代は月9ドラマ『バスストップ』や『信長協奏曲』、『ようこそ、わが家へ』を手がけ、WOWOWでも『闇の伴走者~編集長の条件』『食い逃げキラー』などドラマW枠の中でも異色の作品を送り出してきた彼が、新たに生み出したのが30分×6話のホラーミステリー『東京二十三区女』である。トレンディドラマの全盛期を知る男が語る、WOWOWドラマの魅力、可能性とは――?

『東京ラブストーリー』にハマってフジテレビ入社

――まずはフジテレビ時代のお話から伺ってまいります。入社されたのが平成5年(1993年)ですね。同年のフジテレビの連ドラは『あすなろ白書』、『ひとつ屋根の下』、『振り返れば奴がいる』など、まさにドラマ全盛期に入社されたんですね。

大学時代に『東京ラブストーリー』にハマってフジテレビを受けたんです。昔からドラマは好きで、小学生の頃に見た久世光彦さん演出の『ムー一族』(TBS)が原点なんですが、『東京ラブストーリー』を見て、「自分でドラマを作りたい」って思ったんです。

ただ、入社してすぐの現場研修1日目でドラマ制作現場のあまりのキツさに「これはとてもじゃないがやってられない」って思いました(苦笑)。でも、現場で『東京ラブストーリー』の大多亮プロデューサーに「羽鳥、ドラマやってみないか?」と言われたんですね。そこで逡巡している顔を見せたら二度とチャンスがないかもしれないと思って「やります!」と即答したところ、本当にドラマ部に配属されることになりました。制作現場に配属されなかった同期はみんな、楽しく合コンとかしてましたけど、僕は朝から晩までスタジオにこもって土日もない生活を送ることになりました。そんな同期の連中が本当にうらやましかった(笑)。

――そこからドラマ畑でプロデューサーの道を?

最初は会社は僕をディレクターにするつもりでしたし、僕自身もそう思っていたんですが、3~4年経った頃に「プロデューサーになりたい」と思い始めたんです。というのもドラマを作っていくうえで、企画を考えて、脚本を作り、キャスティングして...というドラマの根幹を構築することを生業とするのがプロデューサーの仕事だからです。

そして僕は、悩むのが好きな人間なんです。プロデューサーの仕事は当然タイムリミットはありますが先々のことも含めて悩みに悩むことが出来る。一方でディレクターの仕事はあまり悩んでちゃダメで、ロケ場所だったり、衣装のことだったり、役者さんのお芝居のことだったり、現場に関わる全てのことを時間をかけずに決めなきゃいけない。つまり、必要以上に悩んじゃいけない仕事なんだと現場で実感しました。華やかな仕事ではありますが、それは自分の性分に合ってないなと思ったんです。ある意味、ディレクターは表方の仕事でプロデューサーは裏方の仕事ですけど、礎を作る仕事の方が自分に向いているんじゃないかと思った次第です。

ドラマ畑から営業、編成、CS放送を渡り歩き、再びドラマ制作の現場へ

――そこから、プロデューサーとして歩み始めるも、途中で営業に異動された時期もあったとか?

入社4年目からアシスタント・プロデューサーとして仕事をしていたのですが、入社5年目くらいで深夜のドラマのプロデューサーを任されるようになり『美少女H』や嵐のドラマデビュー作『Vの嵐』などを担当しました。それから入社8年目でついにゴールデンタイム(月9)を任されました。飯島直子さんと内村光良さん主演の『バスストップ』という作品で。それが4月クールの作品だったんですけど、放送中の6月の人事異動で営業に行くことになったんです。

自分でも「え? このタイミングで営業に異動?」と思ったんですが、当時、制作と営業の人間をシャッフルするという人事改革が実施されいて、「営業を知れば、会社のダイナミズム、お金がどう回っているのかを知ることができて、絶対に勉強になるから行ってこい」と言葉巧みに送り出されまして(笑) 。でも実際営業に異動してみたら、意外と自分に合っているなと感じました。大変だったけど仕事も充実していましたし、壮絶な宴会もこなしましたし(笑)、何よりお金の流れを学ぶことができました。結局、6年くらい営業局にいて、今度は編成部に行くことになったんです。

――制作、営業、編成と順番に...。

今度は「お前は制作も営業も知っている。これで編成を経験すれば、会社の全てがわかる。羽鳥、編成で暴れてこい!」と言葉巧みに送り出されまして(笑)。ちなみに編成と制作は「面白い番組を送り届ける」ということに関しては思いは一致していますが、ちょっと違う思考で組織が動いていると思いました――編成は全タイムテーブルでいかに視聴率全体を上げられるのかがメインの仕事です。営業にも直結することです。一方、バラエティや情報・報道・スポーツといった制作サイドは自分たちの番組の視聴率を上げることはもちろんですが、どれだけ話題になるかをメインに考えます。そこはWOWOWも一緒だと思うのですが、まだコンプライアンスの意識が緩かった時代だったので、結構無茶をする番組が多く、「視聴率の向上」を錦の御旗にした編成部員が「これはこうしてほしい」「これはやめてほしい」と制作サイドに言わないといけない。「視聴率あがってるじゃねぇか!」「確かにそうなんですが、さすがにこれはヤバイので...こうしたほうが良いのでは?」「ふざけんな、編成に何がわかるんだ!」といったやり取りが毎日のようにあって、しまいには部長同士や局長同士が喧嘩になったりすることも。今ここで話ができないようなことを乗り切る毎日でしたが、編成部員からだけでなくコワモテ制作プロデューサーからも色々なことを教わりながら、貴重な経験をさせてもらいました。ここで辛さへの耐性度がかなり上がった気がします(笑)。

その次に行ったのが、当時のCS事業部――有料チャンネル「フジテレビONE TWO NEXT」を展開するペイTV推進部でした。

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――WOWOWと同じ有料チャンネルでの番組作りですね。

編成と制作の両方の仕事をしていたのですが、ここでの仕事が非常に面白かったんですね。まず、スポンサーを気にする必要がなかったということ。視聴率のような指標が地上波ほどうるさくなく、視聴率のことで上長から怒鳴られることが無くなったこと(笑)。編成に関しても柔軟性があって、地上波では放送できないマニアックな番組を作ったり、昔の音楽番組や過去の人気ドラマ、そして音楽やスポーツの生中継を急遽編成したり、テレビ局の面白さをあらためて実感することが出来ました。

そんな中、当時の部長が「オリジナルドラマを作ろう!」という機運を高めていたんですね。そして何かの縁なのでしょう、ドラマ制作時代の上長だった大多さんが局長としてやってきて「いいじゃないか!」と。ちょうど『セックス・アンド・ザ・シティ』(HBO)のようなドラマが話題になっていて、「地上波ではできないものを作ろう!」という思いで企画を立て、スカパー!からも制作協力費を出していただいて"世界初の3Dドラマ"と銘打って『TOKYO コントロール』というドラマを作りました。航空管制官が航空機のパイロットと航路に関するやり取りをする(時には注意を喚起したり、危機を回避したりする)東京航空交通管制部(通称:東京コントロール)を舞台にした物語で、管制室のセットを実際に作ってその中だけで描かれる1シチュエーションドラマに仕立て上げました。これはフジテレビNEXTとスカパー!(3Dチャンネル)で放送されました。

その次に手掛けたのが、小説家の湊かなえさんに脚本を書いていただいた長澤まさみさん主演の『高校入試』というドラマです。高校における一番のビッグイベントである高校入試の2日間を描いた作品です。大多さんと「やっと有料チャンネルから地上波をびっくりさせるようなドラマが出来るぞ!」と意気込んでたんですが、これまた何かの縁なのでしょう、大多さんが編成局長に異動することになり、当時の地上波の改編の目玉番組として地上波で是非放送させてほしいということになりまして...(苦笑)。60分×10話で制作したものを地上波では45分×13話に分割して放送しました(※のちにフジテレビNEXTで『高校入試 シナリオコンプリート版』として完全版を放送)。

その後、ドラマ制作センターに戻りまして、そこでは『信長協奏曲』、『鬼平犯科帳』、『大奥』、『ようこそ、わが家へ 』、『カインとアベル』、そして『貴族探偵』など作りました。

「地上波では絶対にできない」 WOWOWドラマの表現に感じたうらやましさ

――『貴族探偵』が2017年で、その後、WOWOWに?

もともと、WOWOWのドラマは大好きでよく見ていたんです。『空飛ぶタイヤ』や『震える牛』は原作も読んでいたのですが「地上波では絶対にできないなぁ」と思いつつ、うらやましいなぁと。人事交流があるのは知っていたので、自分から「行かせてほしい」と手を挙げました。

――やはり制作における自由度の高さへの憧れが大きかったんでしょうか?

地上波だとどうしても、プロデューサーの仕事における"クリエイティブ"な部分の割合って3~4割くらいしかなくて、多くはスポンサー調整だったり、事務所との向き合いだったり、出演キャストの番宣稼働のパズルをどうするのか? といった"交通整理"なんですよね。

WOWOWに来て、その割合が逆転しました。もちろん、スポンサーとの調整やプロモーションも重要な仕事であることは間違いないのですが、仕事におけるクリエイティブ部分の比重が高まったというのはやはりうれしいですね。

――具体的にWOWOWと地上波において、ドラマ作りでどのような違いがあるのでしょうか?

まず大きいのが、企画の決定のタイミングですね。明らかに地上波のほうが遅いです。フジテレビ時代は、企画決定から放送までが短いので、動き出してから最終回の放送まで、ずっと全力疾走している感じでした。

WOWOWは企画決定が速く、1年、2年先の企画を決定し、じっくりと脚本を開発し、全話を作り上げた上で撮影に入っていくことができます。

プロデューサーやディレクターの考えをまずスタッフに伝え、さらにキャスト陣にも共有し、監督の演出の意図や考えを十分理解してもらったうえで撮影を進めていけるんです。もちろん途中で理解の相違があったりします。でもゴールがどこにあるかを明確に分かってもらった上で、非常に高度なところで悩んだり、迷ったりできるというのは素晴らしい環境だと思います。

――逆に地上波のドラマの作り方のどういう部分にメリットがあると思いますか?

やはり番組は"なまもの"なんだということでしょうか。3か月の長丁場の中で、最初は思ってもみなかった3番手、4番手のキャラクターが注目を集めたりすることが多々あります。それに合わせて脚本を変えて、出番を多くしたりして視聴者のリアクションを見た上で物語を変えていけるというのは、地上波の強みだと思います。

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現場目線を大切に「ぶっちゃけ話をできる現場」で生まれる奇跡

――これまでの地上波での経験で、いまWOWOWでの仕事で活きていると感じる部分、WOWOWの他のプロデューサーとは異なる羽鳥さんの"武器"と言えるのはどういう部分だと思いますか?

たくさん作ってきたという経験、そしてその過程で"何から何まで"やったというのは大きいと思います。フジでは編成もドラマを作っているし、ドラマ制作センター(※現・制作センター第一制作室)もドラマを作っているんですが、編成の作り方は、WOWOWと同様に制作会社に発注し、編成の人間が局P(プロデューサー)として就くというやり方。

一方、ドラマ制作センターの作り方は、企画からキャスティング、撮影まで基本的に社内の人間で全てを作るというやり方です。僕はそこで予算管理からスタッフ・キャストのキャスティング、スタッフの管理まで全てをやったので、その経験は僭越ですが強みと言えるかもしれません。強いて言うとの話ですよ(笑)。

ただ実際に、「いま、制作会社はこういうことで悩んでるのかな?」とか「この予算だとちょっと厳しいかな」といったことは体感できます。WOWOWに来てからも、現場は制作会社にお任せしつつ、ロケに行ったら必ずスタッフと話はするし、「ぶっちゃけどうなの?」とあらゆるスタッフに話を振ります。ぶっちゃけ話をできる現場の環境づくりというのは大事にしています。どこに地雷があるのかが分かったりしますし、現場の各キーパーソンとのぶっちゃけ話は制作工程全体の効率化のヒントになったりしますし。

――現場の目線を持ちつつ作品づくりを進めていくプロデューサーということですね?

もちろん、それが本当に正しいプロデューサーの在り方だとは思っていませんが、これからもそうしていきたいと思っています。周りは「うるせぇプロデューサーだな」と思ってるかもしれませんけど(笑)。でも、僕はプロデューサーって決して先陣ではなくど真ん中にいないといけない人間だと思うんです。最終責任者ですからね。だからこそど真ん中にいて、スタッフやキャストが「この人には何を話しても大丈夫だ」と思える環境を作らないといけないと思っています。

――プロモーションにおいて地上波とWOWOWの違いはどのような部分にあるんでしょうか?

やはり、放送期間の違いは大きいと思います。地上波は1クール3か月で長いですから、そのぶん、バラエティや情報番組で番宣稼働をしたり、交通広告を打ったり、予算をかけられますよね。長い時間と予算をかければ、世間での認知度が広まるのはまぎれもない事実です。WOWOWはひとつの作品が5~6話ですから、そこまで時間も予算もかけられないので、効率よくやっていかなくてはいけません。

とはいえ、いまの時代、スポーツ紙に記事が出たからと言って、それが以前ほど影響力が大きいかというと、なかなかそうとは思いません。そういう意味で、地上波もWOWOWも番組宣伝のためにWEBやSNS、特にSNSを効率的に活用していかなくてはいけない時代です。そう考えると、大きな違いはターム(期間)の長さだけなのかもしれません。

少し話がそれますが、期間が長くなることでプロモーションにも予算をより多く掛けることができて、それが認知度の広がりにつながるのであれば、今後の施策としてWOWOWもより話数の多い、できれば複数のシーズンにまたがるような作品を作っていくことが求められるのかなと思いますね。

WOWOW視聴者層の大人が楽しんで見られるホラーミステリー誕生の裏側

――実際に、WOWOWに来たからこそ、自身の作品において実現できたことはありますか?

今回の『東京二十三区女』はホラーミステリーなんですけど、やはり表現の幅は格段に広がっていますね。まず、スポンサーがいないということが圧倒的な違いとしてあります。もちろん、著しくコンプライアンスに引っかかる表現はWOWOWでもできませんが、とはいえ地上波では交通事故死も描けないし、毒殺はほぼトリカブトですから。視聴者からしてみたら「またトリカブトかよ」ですよね(笑)。

ホラーに関してもいま、地上波ではなかなか難しいですよね。今回、亡霊であったり男女の恋愛のもつれなど、殺人を含めたいろんな表現が出てきますが、WOWOWだからできた部分はあると思います。

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『東京二十三区女』

――『東京二十三区女』はフジテレビ時代から一緒に仕事をされてきた長江俊和監督が、自らの小説を映像化した作品ですね。ドラマ化までの経緯を教えてください。

フジテレビ時代に長江さんと一緒に作品をつくろうという話をしていて、ホラーのジャンルでのドラマ企画もあったのですが。その時は、実際に形にはなりませんでした。

長江さんは小説家としても活躍されていますが、その後、幻冬舎から小説の執筆依頼があって「こんな企画がある」とドラマ化できなかった企画を提案したところ、すぐに小説化されることになったんです。WOWOWに来て、長江さんに「何かドラマをやりませんか?」と声をかけたところ、改めて小説となった『東京二十三区女』の話になり、そこから企画が動き出しました。

――単なるホラーではなく、それぞれの土地の歴史や伝承、地政学、民俗学が物語の中に練りこまれていて、若者のみならず、WOWOWの、メイン視聴者層であるやや年配の層にも刺さる企画だと思いました。

そこは意識した部分ですね。WOWOWの視聴者層にも、ホラーが好きな人は多いと思います。映画や特集でも視聴者数は多いと聞いていましたし。かなりWOWOWの視聴者のことは意識して制作しました。

ただ怖い話をやってもうまくいかないと思ったので、先ほども申し上げたように原作にもあるトリビア的な部分を濃縮して描くことにしました。ドキュメンタリー的に過去の映像や画像、文献を紹介して、「実際にあった話なんだ...」と知ってもらったりして、物語の恐怖のプラスアルファにもなっていたりする。そうすることで、知的好奇心をもくすぐる大人向けのホラーミステリーになったと思います。

また、人間ドラマの部分――人間の持つ暗部、悲哀や切なさをきちんと描くこと、女優さんを美しく見せるということは、打ち合わせのたびに言い続けてきましたし、実現できたと思っています。また、監督のこだわりで、可能な限り、物語に登場する伝承がある場所で実際に撮影を行なうということも功を奏したと思います。

板橋区の"縁切榎(えんきりえのき)"が出てくるエピソードがあるんですが、やはり実際にその場で撮影すると、スタッフやキャストからも緊張感や喜びが伝わってくるんです。それは映像にも反映されていると思います。

――全6話ですが、各話の主人公となる女優さん(倉科カナ、安達祐実、桜庭ななみ、壇蜜、中山美穂、島崎遥香)のキャスティングはどのように決まったのでしょうか?

私と長江監督の話し合いで決めましたが、基本的に僕の方から候補を挙げました。監督からは全く異論はありませんでした。素敵な役者さんたちを何とかキャスティングすることができましたが、これまでも様々な作品を手がけてきた長江監督という存在があり、かつWOWOWでホラーを作るという意外性に、それぞれの女優さん、事務所さんに強い興味を持っていただけました。

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『東京二十三区女』第1話 「渋谷区の女」の倉科カナ

企画決定時期の前倒し、映画監督の起用...ドラマをもっと面白くするためにやるべきこと

――この先、人事交流終了後、フジテレビに戻られてから、地上波で実現したいことはありますか?

フジテレビに帰っても...帰るのかな?(笑)フジテレビに帰ってもWOWOW的なドラマ作りをしたいですよね。まず、先ほども話に出ましたが、企画決定のタイミングですね。「なるべく早く企画決定を」と言い続けたいです。

それともうひとつ、WOWOWに来て非常に新鮮だったのが映画監督と一緒に作品を作れるという経験でした。

僕にとって意外だったのが、実は映画監督の方たちもテレビドラマを作りたいと思っているということ。だけど「なかなか機会がない」とおっしゃっていたんですね。映画は約2時間の世界ですが、原作ものの場合、映画だとかなりシェイプしないといけないことが多いんですね。

一方で、地上波の連ドラの場合、10~11話ですが、そうすると原作を大幅にアレンジして、原作にない新しいキャラクターや事件を構築させないといけなくなったりする。WOWOWの全5~6話って原作に忠実に、映像化の面白さを形にできるフォーマットであり、映画監督にとっても、連続ドラマを楽しんで作ることができる長さだと思います。

映画監督と制作会社や局のディレクター、どちらの演出が優れているかという話ではなく、どちらにも良い点はあると思います。WOWOWで素敵な仕事をさせていただいた映画監督とは、地上波でも一緒に面白い作品を作れるように提案していきたいと思いますね。

――逆に残りの人事交流の期間で、WOWOWでやってみたいことはありますか?

先ほども少し話に出ましたが、WOWOWにとっては今後、もう少し長い作品を作ることが求められるようになると思うので、まずは8話くらいの作品をやってみたいですね。それから、WOWOWに来た時に言われたのが、完全オリジナル脚本の作品を作ってほしいということ。それは実現できればいいですね。

「ど真ん中でコミュニケーションをとるのがプロデューサー」

――最後にWOWOWのM-25の旗印である「偏愛」にちなんで、ご自身のドラマ作りにおいて大切にされていること、"偏愛"と言える部分を教えてください。

やはりプロデューサーは作品のど真ん中にいて、ゼロから作り上げることが一義の仕事だと思います。企画を立てて、スタッフを集めて、脚本を作り、キャスティングをする。現場は監督にお任せしますが、僕は必要なことは口を出すし、仕上げや音楽、編集に関しても積極的に関わっていきます。

僕は、ドラマは"総合芸術"だと思ってます。AD時代にカメラや照明の方々が口々に「総合芸術、総合芸術」と声を出し合って作業をしていたんですね。言い得て妙の素晴らしい言葉だと思いました。各担当の仕事があって、それぞれがいろんなことを思いつつ仕事をしている。それぞれが持っているタレント(=才能)を120%発揮してもらうべく、「総合芸術」のど真ん中にいてコミュニケーションをとるのがプロデューサーなんだと思います。でも「ど真ん中」って表現、なんだか偉そうだし、口に出して言うことは決してありません。僕の心の中でのプロデューサー論なので、そのことだけは最後に言わせてください。本当は言おうか言わないか迷ったのですが、それ以外に表現方法がないので言ってしまいました。間違いなく追々突っ込まれますね(笑)


取材・文/黒豆直樹  撮影/祭貴義道  制作/iD inc.

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