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宝の山は社内に眠っている? 量よりも質で勝負! WOWOWが映画のコミュニティサービス「WOWOW ライフ with シネマ」を始めたワケ

宝の山は社内に眠っている? 量よりも質で勝負! WOWOWが映画のコミュニティサービス「WOWOW ライフ with シネマ」を始めたワケ

コミュニティサービス部 菊地 将弘 / コミュニティサービス部 藤岡 寛子

映画のコミュニティサービスとして新サイト「WOWOW ライフ with シネマ」が10月よりスタートした。作品の調達担当や番組プロデューサーなどWOWOW社員のオススメの映画やオンデマンド限定作品の紹介、体験型企画など盛りだくさんの内容となっているが、そもそも“コミュニティ”とはなんなのか? なぜいまこうしたサービスを開始したのか?リアルタイムで熱気を伝えるスポーツやライブ中継、WOWOW独自のドラマ製作プロジェクト「連続ドラマW」などとは異なり、映画はあくまでも既に存在するコンテンツを外部から調達して放送するというもの。しかし、そのセレクト眼にこそWOWOWならではの価値がある。コミュニティサービス部に所属し「WOWOW ライフ with シネマ」の立ち上げに携わった菊地将弘と藤岡寛子はそう熱く語る。WOWOWがコミュニティサービスを始める意味、そしてWOWOWにとっての映画とは? 2人に語ってもらった。

コミュニティサービスとは?機能だけでない、お客さまを意識した双方向を!


──まずはおふたりが所属する「コミュニティサービス部」の業務内容について教えてください。

菊地 WOWOWにはいま、スポーツであればテニス、ボクシング、サッカー、さらにはドラマや音楽などさまざまなジャンルのコンテンツがあり、ジャンルごとにファンがいます。それぞれのコンテンツを中心に置きつつ、価値を理解してくださるファンのツボを押さえ、徹底的な顧客目線でファンが求めるサービスを届けていこうと生まれた部署がコミュニティサービス部です。

WOWOWには現在でも、加入促進を司るプロモーション部門、加入した後のお客さまをケアする部門などが共存しているのですが、そういう意味ではコンテンツそのものを真ん中に置いて、そこからファンとコミュニケーションをどのように取っていくか? という点において新しい取り組みといえると思います。

現時点では部署内で一人二つから三つのジャンルを担当し、社内のプロデューサーや外部のパートナーの協力を仰ぎながら日々、活動しています。

藤岡 いまは、NETFLIXやAmazonプライムビデオ、YouTubeなど動画コンテンツがネットにあふれている状況です。30年前であれば、お金を払えばWOWOWでさまざまなコンテンツを見られるというのがすごく価値を持っていたわけですけど、この数年で市場が大きく変化してしまいました。コンテンツの"量"という点はもちろん、NETFLIX他資金力のある外資プラットフォームがつくる、ものすごくお金をかけたコンテンツの"質"や"パワー"という点でも、日本の一企業が立ち向かえるかと言ったらなかなか大変な状況にあります。

そこであらためて振り返った時、これまで30年間やってきて、そこにお客さまがいる中で、よりコンテンツを楽しんでもらうための素材や仕組みはWOWOWの中に確実にたまってきていると思うんです。その資産を活用することによって、お客さまがただ単に視聴するだけではなく、参加したり、応援したり、より深くコンテンツを楽しんでいただけるサービスを提供することによって、WOWOWのことをもっと好きになってもらえないか。WOWOWに入っていたほうがよりエンターテインメントの楽しさを深められるよね、楽しいよねという部分を促進するための部署なのかなと思っています。

──そもそもコミュニティってなんなんでしょう? ニュースなどを配信するポータルサイトとはまた違う役割を持っているということですよね?

菊地 これは社内からも「どういうこと?」と聞かれることがあって、部内でも議論している根本でありながら大切なテーマです。私としては、テニスやサッカー、映画などジャンルごとにファンが楽しんでいて、そのコンテンツひいてはジャンルが盛り上がっているのを俯瞰して見たときに、状態として「コミュニティが成立している」ということではないかと思っています。

単なるポータルサイトや「会員登録者数が〇人いる」ということではなく、ファン同士がさまざまなコミュニケーションを交わし、クリエイターも含めてそのジャンルが育つことで最終的には"文化"を創り出していく。そんな大きな目標に向かってファンに満足してもらえる環境づくりをWOWOWがサポートする――それを"コミュニティ"と呼ぶことができたらいいなと思います。

cinema_sub_9380.jpgもう一つ、私からお伝えしたいのが、"コミュニティ"という言葉を理解する上で、「双方向」というキーワードが鍵だということです。

双方向には二つの要素があると思っています。分かりやすいところでは、"インタラクティブ"ですね。例えば番組が終わったら、その余韻を感じながらいろいろ語り合ったりする場を提供する。これは、"機能的"な要素ですね。

もう一つ重要だと思っているのは、「顧客をしっかりと意識する」という意味での双方向です。従来の一方向のコミュニケーションでは、どういうお客さまがいるかまで把握せずに番組をお届けしていたケースもあったかと思うんです。

もちろん、定量的な規模感は分かっていますが、例えばテニスを楽しんでくださっているお客さまはどういう方なのか? どういう方がWOWOWの映画の価値を理解した上で楽しんでくださっているのか? そういう定性面を意識した上で、お客さまと対話しながらさまざまなサービスを提供していく必要がある。それは、"思想的"な意味においてですね。

"コミュニティ"という言葉自体が強いので、人によって思い浮かべるイメージも多様です。「もう少し帰属意識があった方がいいのではないか?」という声も出ますし、それは一つの打ち手として有効な場合も当然あると思います。ただ、本質としては、徹底的な顧客目線でコミュニケーションを取り、それが盛り上がって結果としてコミュニティという状態が形成されていけばいいなと思っています。

藤岡 おそらく、「WOWOWに加入しているからWOWOWのコミュニティの会員だ」と感じる人ってあまりいないだろうと思います。観たいものがあれば入るし、なければ入らないし、やめちゃうし......。そんな状況で、どれだけこの場所――私たちの企画やサービスを「好き」と感じていただけるか。「毎回来たいな、参加したいな」と思ってくれる人をどれだけ増やせるか? という部分が大事なんじゃないかなと思います。

そのためには必ずしも会員登録やTwitterフォローが必要というわけでなく、なんだったら「たまにのぞきに来るよ」くらいの感覚でいいと思います。もちろん、最終的に「このサービスに対価を払ってでも参加したい」と思ってもらうまでに育てていくことが目的ですが、そこにたどり着くまでは正直、どんな形でもいいんじゃないかなと思っています。

まず何よりWOWOWのやっているサービスを気に入ってもらう――ビジネスという意味ではすごくバランスが難しいところではあって、現状「会員数」などのわかりやすく指標となる数値があるわけではないので、費用対効果を定量的に可視化しづらいのですが、まずは「お客さまの気持ちがちゃんとこちらに向いている」状態を醸成していくのが一番大事なのかなと思っています。

菊地 20年前とかだったら、企業のほうが立場が上で「この指止まれ!」というふうに「会員制の場所をつくったので、みんな登録してくださいね」と言えば、集まっていただいた時代がありました。いまはお客さまのほうが情報や選択肢を持っていて、企業よりも詳しいこともあるわけで。「みんな、WOWOWがこんなものつくりました」と一方的に伝えるものが果たして魅力あるものなのか。だからこそ、それぞれのジャンルの特性に合わせつつ、企業側もお客さまと同じ目線でそこに赴いて、一緒につくっていくことができたらと思います。

新しい取り組みであるアーバンスポーツはまさにその位置付けなのですが、WOWOWで新たに放送するということは、既存のファンから反感を買わないようにしないといけない。でもWOWOWが関わることで、ジャンルにとってもファンにとっても「こんなメリットがあります」という意義を示すことができるよう、模索しながら進めているところです。

──コミュニティサービス部で最初に立ち上げたコミュニティは「電波少年W~あなたのテレビの記憶を集めた~い!」(https://denpa.wowow.co.jp/)だったそうですね?

cinema_sub_9351.jpg藤岡 はい、私が担当しています。日本の多くの人たちはテレビを見て育っていて「テレビの記憶」というのは、赤ちゃんを除いたほぼすべての日本人が持っている――。そういう意味でテレビのファンはたくさんいるだろうという仮説の下、約70年のテレビの記憶を掘り起こしていくことで、テレビ好きのコアなファンが集まって、コミュニケーションが生まれ、それらの声をもとに番組づくりをしようという企画です。

総合演出に土屋敏男さんが入られているのですが、番組タイトルにも入っている「電波少年」は「今まで誰もやらなかったことをやる」という精神のもとつくられていた、とおっしゃっており、その精神を継いだ番組として「コミュニティから始まる番組」という誰もやったことがない試みにチャレンジしています。数あるテレビ番組の中でも「電波少年」という番組の人気は根強く、いまでも番組ファンの熱量にびっくりすることもあるんですよね。そういうコアなテレビファンと一緒につくっていく番組が「電波少年W~」です。過去のレジェンドなテレビマンの方に来ていただいて、今だから聞ける撮影秘話などを話していただいたり、テレビファンの方にはすごく喜ばれています。

──他にいま、お二人が担当されているコミュニティは?

菊地 私がいまテニスとボクシング、そして今回始まった映画を担当しています。

藤岡 私は「電波少年W~」と映画、それから、J-WAVEさんとコラボレーションする形で10月にリリースされた音楽のコミュニティを担当しています。

"ミドル層"を掘り起こせ! 「セレクトし、オススメする」――そこにWOWOWならではの価値がある!


──
ここから、本日の本題である映画コミュニティ「WOWOW ライフ with シネマ」(https://www.wowow.co.jp/com/cinema/)について詳しくお話を伺ってまいります。そもそもどういう経緯で映画コミュニティがつくられることになったんでしょうか?

菊地 先ほど話に挙がった「電波少年W~」やテニスに関しては、部署の立ち上げの段階で既に決まっていたジャンルだったのですが、映画に関しては当初は予定になかったんですね。

ただ言うまでもなく、WOWOWがお届けしているコンテンツの中で映画が占めている割合は圧倒的に大きいですし、コロナ禍によってスポーツや音楽ライブを見る時間が減っている中で、相対的な事情があるにせよ、映画を視聴する時間は増えているというデータもあります。

それから、個人の想いではあるのですが、新卒で配属された部署が映画部でして、「映画を盛り上げたい」という気持ちを持っていました。そんな経緯で、私と藤岡さんが有志で手を挙げる形で検討が始まりました。

藤岡 もともと、WOWOWは「映画を有料で観られるチャンネル」というイメージが強かったので、長くWOWOWに加入されている会員の中には映画が観たくて継続してくださっている方ってたくさんいらっしゃるんですね。だからそこを大事にしていかなくてはいけないだろうというのは大前提としてありました。

いま、"映画離れ"が進んでいて若い人たちが長時間の映画を観ることができなくなっているとも言われますが、動画の見方は、実は小さい頃から育まれていくものなんだという話を聞いたことがあって。私たちの世代は、小さい頃から割とテレビで1時間半とか2時間の映画を観ることに慣れて育ってきたけど、いまの若い子たちは、YouTubeで10分くらいの動画を見るのが当たり前で、それも出オチで「○○をやってみました! さあ、ご覧ください!」みたいな感じで、映画の"間"を味わったり、我慢して我慢して、後半に面白くなって......みたいな見方ができなくなっているのではないかと思います。なので、「映画の見方、楽しみ方」をちゃんと伝えていかないと、本当に大事な映画の文化も廃れていってしまうという危機感みたいなものも個人的にありました。

それをWOWOWが大切に育んできた映画ジャンルの中で、きちんと発信していくことが必要なのではないか? という想いで映画のコミュニティをやってみようと思いました。少し青臭いですけど、「映画の見方」をちゃんと伝えていくことで映画市場を活性化していくことができたらと考えています。

──「WOWOW ライフ with シネマ」というネーミングはどのように決まったんでしょうか?

菊地 今日、オブザーバーとしてリモートで出席しているコンテンツ戦略部の出川と話し合いながら決めました。WOWOWシネマのチャンネルのキャッチコピーが「映画のある人生を」なんです。それを英語にして「WOWOW ライフ with シネマ」と名付けました。

2011年の10月に3チャンネル開局をしてから、この10月が節目の10周年になるのですが、そこで原点回帰を意識しました。ネーミングには、新しく何かが始まるというよりは、これまでWOWOWが大事にしてきたものをもう一度捉えつつ、「WOWOWで映画を体験したら楽しい」というメッセージを込めています。

──具体的にどういったことを意識して、どんなことを大切にして「WOWOW ライフ with シネマ」を作っていったのか? 制作のプロセスについて教えてください。

菊地 まず既存の「WOWOWオンライン」が、統合フォーマットの構造上、どうしても情報の羅列になってしまうため、無機質で情報を伝えきれていないというのはありました。実際、そういう仮説をベースにグループインタビューを行ないました。

cinema_sub_9408.jpgもともと、WOWOWで映画を楽しんでいる、WOWOWの映画の価値を理解していただいているファンの意見を頂戴すべくお話を伺いました。そうするとWOWOWが持っている価値について「やっぱりな」と思える意見を多く耳にすることができたんですね。

例えば「この監督のこの作品は知っているけど......」というところで、もう1本、別の作品をおススメしてくれる「監督特集」のセレクトで価値を発揮している。つまり量だけではなく質の部分でWOWOWは受け入れられているということ。

また番組と番組の間の今後放送予定のCMに関しても、どれくらい見られているのかをなかなか定量的に測ることは難しいのですが、実際にお話を聞くと熱心にCMをチェックされていることが分かりました。

お話を伺う中で見えてきたのは、「もっと作品の数を増やしてくれ」ということよりも「もともと持っているWOWOWの価値、質の高さをもっと活かせるんじゃないか?」ということだったんですね。

お客さまの声を反映した具体としては、例えば「今月のオススメ作品」として、WOWOW社員のオススメ作品を紹介しています。これはインタビューの中で「社員の方のオススメを知りたい」という声を多数いただいたことがきっかけです。調達担当者に「なぜその作品を選んだのか?」であったり、担当者の想いを聞きたいと。そうやってお客さまの声を拾うところから始めていきました。

──ボクシングやテニスと比べて、映画はファンの層がライトからコアな方まで非常に広いことが大きな特徴ではないかと思います。そこで、どのあたりの層をターゲットにするかというのは難しい部分だったのではないかと思いますが......。

藤岡 おっしゃるとおりです。例えばテニスであれば、好きな人ほど自分でもプレーする人が多かったりと、なんとなくファン層が見えてくるんですが、映画に関してはそれがすごく難しいんですね(苦笑)。

コミュニティを作る上で精査してみると、「映画のコアファン」と「WOWOWでよく映画を観る人」は、ちょっと一致しないところがあるんです。本当に映画が好きなファンは、能動的に情報を拾いにいって映画を観るので、WOWOWの得意とするキュレーションというのはあまり必要としていないのかなと思っています。

先ほど申し上げたリサーチで、WOWOWで映画をよく観てくださる方々のことを便宜上「ミドル層」と呼ばせていただきますが、この方たちは、どんどん自分から情報を探して映画を観るというよりは、映画が好きではあるんだけど情報に対してはやや受動的な方が多いんですね。新しい作品との出会いを求めているという意味では能動的ではあるんですが、自ら情報を取りに行くよりも「誰かにオススメしてほしい」という気持ちが強い。なので、WOWOWのセレクトに対し、大きな価値を感じていただいているのだと思います。

そんなミドル層の方たちに対し、いまWOWOWが持っている価値をあらためてしっかりとお伝えすることで、より楽しんでいただくことを目指しました。

「映画が好き」ではなく「WOWOWの映画が好き」という人々のために!


──お話を伺っていると、単に「どういうコミュニティをつくるべきか?」という次元を超えて「WOWOWがどうあるべきか?」にもつながるような濃いリサーチインタビューだったんだなというのが感じられます。

cinema_sub_9459.jpg藤岡 本当にその通りで、「映画」を入り口にしてWOWOWに加入された方の中には、親が加入して、そのまま見続けて......という20年以上の継続的なファンの方々も多いんです。そういう意味で「WOWOWが好き」と感じていただいている方が多いし、一方で「これだけ期待しているのに、それに見合うものが返ってこない」という気持ちを持たれている方もいっぱいいて、インタビューさせていただく中で"叱咤激励"の言葉をもらうことが多々ありました。グローバルな配信プラットフォームがすごい勢いで伸びている中で、お客さまに寄り添っていくことがいまのWOWOWにとって非常に大切なんだなというのをあらためて感じましたね。

私自身、ややライト寄りの「ミドル層」だなと感じていて、わざわざ自分からは探さないんだけど、「面白いものがあったら教えて」というスタンスなんですよね。実はそういう人って多いと思います。ただサービス設計をするときは、「最初はコアなところから攻めて、その後広げていく」というのが常套手段なんですよね。そういう意味で、常套手段ではないベクトルでどうやったら盛り上げていけるのか? というのは、これから考えていかなくてはいけない部分だと思っています。

菊地 「映画そのものが好き」というコア層ではなくて、「WOWOWの映画が好き」という意味でのコアなファンなんですよね。そこは単純に見ている本数ではなく、「WOWOWが送り届ける映画」としての価値をどれだけ感じていただけるか? という「質」や「深さ」がポイントだと思います。

──今後、加えていく予定のコミュニティ内のコンテンツについても教えてください。

cinema_sub_9453a.jpg菊地 インタラクティブなコミュニケーションという点でいま進めているのが、「マンスリー・シネマセッション」という企画で、対象の作品の監督やプロデューサーらクリエイター同士が制作の様子や秘話を語り合う配信番組内で使用する質問を送れるものです。SNSを活用して、番組認知向上の意味も込めて、11/27(土)に放送される『花束みたいな恋をした』の土井裕泰監督×孫家邦プロデューサーへの質問を募集しました。

もう一つ、インタビューの中で、映画をより楽しむために、副音声のように解説を聴きながらみんなで作品についてワイワイ盛り上がったり、作品の理解を深めたりできたら楽しいんじゃないか? という声を多数いただいたんですね。

そこで映画好きで知られる、こがけんさんと、映画評論家の松崎健夫さんにゲストを加える形で、Twitter上で音声に特化した形で同時上映会を開催できないかと企画を進めています。11/5(金)22:45から『ピラニア(1978)』というB級パニックホラーを対象に実施します。怖さを分かち合いながら、みんなで観るという体験をしてもらえたらと思っています。

藤岡 先ほども言いました "「映画の見方」を育てていく"という企画をやりたいと個人的に考えていまして、例えば作品の歴史的背景であったり、制作秘話みたいなものを事前に知っていたらより楽しめたりすると思うんですね。どういう情報を知っていたら、より「映画って楽しいね」と思ってもらえるのか? 先ほどの話で出たファン層で言うと、ややライトな「映画は勧められたらたまに観る」人たちに、もう少しだけ「定期的に映画を観よう」と思ってもらえるような施策ができたらと思っています。

グローバルな配信プラットフォームは、そこまで人手や手間のかかる施策をすることはあまりないんじゃないかと思うんです。背景に人がいるからこそできる企画・サービスを実現することで「WOWOWらしさ」を出していけるんじゃないかと思っています。

菊地 コミュニティとしてゼロから立ち上げていく企画もあるんですが、WOWOWには既に「映画工房」であったり「W座からの招待状」であったり、歴史があってお客さまからも支持されている番組が存在しています。各所の協力を仰ぎ、ときに連携しながら、いまある"資産"を活かして「WOWOWで映画を観る楽しさ」を最大化できたらと思いますね。

藤岡 テニスやサッカーといったスポーツであれば、リアルタイムでいまやっている試合や大会が一番大事だったりするんですけど、映画ってこれまでの長い歴史があるので、いま話題になっている作品に限らず、既に存在する作品をどう紹介し見せていくか?そんな視点で、"掘り返す"ことが大事になってくるという点が他のジャンルとの大きな違いなのかなと思います。

少し前までは映画についてすごく詳しい人がいても、その発信力が狭い範囲に限られていたのが、デジタルツールの発達によって、いまはいろいろな人に伝えられる環境になっていて、だからこそ、それを「どう伝えていくか?」が非常に大事なんだなと感じています。

実際、WOWOWにいて感じるのは、社内に映画についてものすごく詳しい人が実はたくさんいるんですね。 "ネタ"は既にあるのに、それをオモテに出してないのはもったいないので、そういう既にあるものをコミュニティを通してお客さまにしっかりと伝えていくだけで、いろいろなことが変わっていくんじゃないかと思いますね。

菊地 それを実際にお客さまが求めているということが、グループインタビューを通じてハッキリしました。これだけ世の中に情報があふれて、情報過多になっている中で、もう少し"情緒"に寄ったコミュニケーションが求められているのではないかと思います。なので、そこはぜひ伝えていきたいですね。まだまだ魅力を出し切っていない部分、可能性が社内に埋まっていると思います。

──先ほどから何度か「掘り返す」という言葉が出てきました。例えばアーバンスポーツであれば、コミュニティを通じて、日本の社会にこれまでにない新しいカルチャーを生み出し、広めていくという「0から1」の動きになると思いますが、映画の場合、既に長い歴史を持ち、文化として根付いているものをもう一度盛り上げることになり、それはすごく難しい挑戦だなと思います。

藤岡 そうなんですよね......、私はどうしてもそういうことをやりたくなっちゃうんですよね(苦笑)。でも長い目で見たときに、映画が盛り上がっていないエンターテイメント市場は寂しいですし、個人的にはエンターテイメント市場において映画はとても大事なジャンルだと思うので、そこを維持・活性化させていくことが必要なんじゃないかと。

──「WOWOW ライフ with シネマ」としての目標、今後このコミュニティで実現したいことがあれば教えてください。

菊地 まずは、このコミュニティを立ち上げた目的でもある「WOWOWで映画を体験すると楽しいよね」というのをしっかりと実現していけたらと思っています。繰り返しになりますが、映画はWOWOWのベース、軸となる存在であるし、その価値を理解してくださっているお客さまというのは、WOWOWにとって本当に大切なお客さまだと思うので、そういう方たちが求めているものに応え続けていくことが必要かなと思います。

cinema_sub_9475a.jpg藤岡 重複してしまいますが、とにかく"ネタ"はたくさんあるので、それをどうやって伝えていくかですね。各部署で面白い取り組みはありつつ、せっかくのいいものがちゃんと届けられていないなと思うことも多いので、コミュニティのサービスを通してそれをまずはしっかりと届けていきたいと思います。

ベースにあるのは"コンテンツ愛"!ジョブディスクリプションからはみ出すような仕事を


──
ここからWOWOWという会社、お二人の仕事観などについてもお話を伺ってまいります。菊地さんから見て、WOWOWはどんな会社ですか? その中で今後どのようなお仕事をしていきたいですか?

菊地 いま、コンテンツ・コミュニティ業に会社全体がシフトしようと努力している最中だと、肌で感じています。まさに組織が変わろうとしている状況ではあるんですけど、とはいえ300人ほどの会社なので、周りは知っている人ばかり。"コンテンツ愛"という共通の想いも含めて、変化の中でもそこは心強い部分だなと感じています。

今後のWOWOWを考えた時、いままでは「加入を促進する人」とか「加入者のケアをする人」だったり、カスタマージャーニーのように機能ごとに区切られていたと思うんですけど、それが、それこそ「映画をどうしていくべきか?」みたいな在り方に変わっていくのではないかと思います。

そういう意味で、いわゆるジョブディスクリプション――「あなたはこういう仕事をする人」という枠からはみ出したアクションが必要になると思いますし、そうなった時に、"コンテンツ愛"をベースにして「映画をこうしたいね」「テニスをこうしていこう!」といった流れがより加速していくのかなと期待を感じています。

私自身は、コミュニティサービスを立ち上げる過程でお客さまに直接話を聞かせてもらい、価値を提供することに手応えを感じています。いまの仕事の延長にはなるのですが、この「お客さまの存在を常に感じて、新しいサービスを提供していく」仕事を続けていけたらと思います。

藤岡 お客さま好きだよね?

菊地 そうですね(笑)。お客さまの反応を肌で感じて、じゃあそこに応えるために何ができるのか?と仮説を立てて実行することを一気通貫で行える体験は誰もができることではないので、そこにやりがいは感じています。

──藤岡さんはVRに携わるなど、さまざまな仕事を経験されていますが、コロナ禍を経て、仕事に対する考え方に変化を感じる部分はありましたか?

藤岡 私自身は、新型コロナの影響はそこまで感じていないんですね。もちろん、現実的にさまざまな悲しい出来事が新型コロナによって引き起こされているわけですし、一時的に仕事がしにくくなった時もありましたが、自分が関わっている仕事に関しては、コロナ禍によってVRの可能性があらためてフィーチャーされたり、デジタルコミュニケーションが加速されたりと、いずれはそうなったであろうという、(物事が進む)そのスピードが加速したのかなと思います。

いま携わっているコミュニティに関しても、もちろんリアルでやれることも多いですが、オンラインで進めることで実はコストが下がる企画になったり、地方の方でも参加しやすくなったりと、幅も広がったのかなと感じています。コロナ禍以前であれば、Zoomなんて触らなかったであろう世代の方たちが、いまや当たり前にこうしたツールを使っているという意味でも、新型コロナという逆境の中でも、やりようはいくらでもあるのかなと思っています。


取材・文/黒豆直樹  撮影/祭貴義道

WOWOW ライフ with シネマ:https://www.wowow.co.jp/com/cinema/

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