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「ファンに選んでもらえる」メディアであるために――TOKYO FM×WOWOWコミュニケーションズのデジタル戦略

「ファンに選んでもらえる」メディアであるために――TOKYO FM×WOWOWコミュニケーションズのデジタル戦略

WOWOWコミュニケーションズ  杉本章
エフエム東京 執行役員デジタル戦略局 局長 嶋裕司

デジタルマーケティングを用いた分析力を武器にWOWOWにとどまらず、幅広い業種のマーケティング業務を請け負い、その知見を積み重ねているWOWOWコミュニケーションズ。2019年の8月より現在まで2年にわたって、TOKYO FMをクライアントに迎え「いかにリスナーを増やすか?」という取り組みに従事してきた。

今回のFEATURES!ではWOWOWコミュニケーションズから杉本章、そしてTOKYO FMからはデジタル戦略局の嶋 裕司執行役員局長にご登場いただき、この2年で両社が行なってきた施策や放送業界のデジタルマーケティングについて語ってもらった。

ゼロから始めたTOKYO FMのデジタルマーケティング

――2019年8月からradikoの聴取ログを対象に、WOWOWコミュニケーションズがTOKYO FMのDMP(データ マネジメント プラットフォーム)の構築からデータ分析、KPI設計、継続聴取につながる施策提案などを行なってきたそうですが、そもそもTOKYO FMがWOWOWコミュニケーションズと仕事をすることになったきっかけについて教えてください。

嶋:TOKYO FMのデジタル戦略局が設立されたのが2019年2月、私が局長になったのが7月で、当時は就任したばかりでした。なおかつ、データマーケティング部というデジタルマーケティングを行なう部署の部長にも就いたのですが、それまでラジオ媒体はリスナーデータの分析等ができておらず、2カ月に一度のビデオリサーチによる聴取率しかなかったんですね。

ただ、いまはradikoで数多くのリスナーに聴かれていて、その聴取ログデータをDMPという箱に入れることでいろんなことがわかるのではないだろうか? と考えておりました。そんな薄い知識の中で(苦笑)、「何をしたらよいのだろう?」と感じていたところ、WOWOWコミュニケーションズさんにゼロからご指導いただきながら幼稚園児を育ててもらったという感じでした。

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嶋:まさに弊社のデータマーケティング戦略の最初からいまに至るまでをずっと一緒にやっていただいています。きっかけは、当時我々の部署のメンバーがいろんなセミナーなどに顔を出していた際、あるイベントでWOWOWコミュニケーションズさんがブースを出していらっしゃいました。そこで名刺交換をさせていただき「詳しくお話を伺いたいです」という話をしたところ、すぐにご対応くださって、そのときの話がすごくわかりやすかったのです。

我々は放送局なので、これまできちんとしたマーケティング分析に基づいた戦略ではなく、「なんとなく」の感覚でやっている部分がありました。WOWOWさんも成り立ちは放送局ですが、ビジネスモデルが違います。我々はBtoBでいわゆる"広告モデル"で収益化をしておりますが、WOWOWさんはBtoCで、ユーザーさんからの課金でやっておられて、そのぶん、マーケティングに関して先を行かれているなと感じました。同じフィールドでありつつ、マーケティングに関しては少し先を行かれているという点で、考え方や使われる言語などを含めてすごくわかりやすく、距離感、親近感という点でもとても相性が合う企業様だなということを感じました。

デジタルの前にアナログ! 毎日届くリスナーの生の声は宝の山!

――TOKYO FMさんからのお話を受けて、WOWOWコミュニケーションズとして、どのような取り組みを進めていったのでしょうか?

杉本:WOWOWという会社そのものが、もちろんデータマーケティング、デジタルマーケティングと言われるものをやりつつも、同時にアナログなお客様の"声"を聴いたり、アンケートなどのテキストを収集するということを強くやっているというのが企業として大きな特徴と言えると思います。

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杉本:TOKYO FMさんとのお仕事においても、最初に取り組ませていただいたのが、リスナーからの"声"に向き合うということでした。毎日届く投稿などをまず読ませていただき、番組に対しどんなことを思っているのか? もう少し詳しく言うと「こういうところが魅力で聴き続けている」「こういうところは少し変わってきたなと思っている」というところまで分解し、「この番組はリスナーにこんなふうに思われています」ということをお伝えするところから始めました。

目的は二つあって、まず、そこからいろんな改善点が見つけ出せるかもしれないということ。そしてもう一つが、我々がTVの視聴者とラジオの聴取者の違いを理解し、TOKYO FMというブランドにどのようなリスナーがいるのかを知るということでした。そこから、段階を踏みながら、実際の聴取データを組み合わせていきました。

――そこからどういった課題が見えてきたのか? それに対し、どのようなデータマーケティングを進めていかれたのか教えてください。

杉本:まず、届く投稿、声の熱量を指標化しました。我々の特徴として、一つの指標を決めて、それをずっと続けるのではなく、より良いものがあれば柔軟にどんどん変えていきましょうという方向性があります。いま現在は、具体的にTOKYO FMさんの番組に対して「これが上がったら、これも上がる。これが上がれば最終的にリスナーが増える」という、いわゆる"KPIツリー"というやり方を進めていて、TOKYO FM のオリジナルのKPIツリーを作らせていただきました。

そこに至るまでには、TOKYO FM さんが持っている聴取ログからホームページのページビュー数、公式アカウントから出されているものへの反応など、全てのデータを出していただいて、「これとこれには相関がある」といった分析を進めました。ただ、難しくし過ぎると咀嚼しづらくなってしまうんですね。いかに放送マン、ラジオマンに入っていくように落とし込むか? という点に関しては、腐心しました。我々も放送局でやってきたからこそ、データマーケティングに対する現場の理解、どうしたらそれが伝わりやすくなるか? といった部分を大切にして、入れ込めるようになっているのかなと思います。

嶋:我々にとっては、本当にデータマーケティングというもの自体、初めて触れるものだったので、最初は幻想を抱いてまして、DMPさえあれば何でもできるくらいの無邪気な発想でおりました(苦笑)。それで聴取ログを取れば聴取者が増えて、売り上げも上がるのではないだろうか? って(笑)。もちろん、そんなことはなくて、課題を可視化することさえもままならなかったのです。

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嶋:先ほど杉本さんがおっしゃられた、リスナーからの生の声に関しても、我々にとっては当たり前のように毎日届くもので、その重要性に気付いておらず「いや、それはすごく大事なものじゃないですか?」と教えてもらい、デジタルと言いつつも非常にアナログな部分を重要視されるのだなと感じつつ、いわばDMPによるものだけではない、リアルな意味での"可視化"というものを教えていただいたと思っています。

その上で現在、こうした分析を踏まえて、それをいかにビジネスに繋げていくか? リスナーを増やすにはどうしたらいいか? 売り上げをアップさせていくには何をすべきか? 我々が進めている新規事業に繋げていくにはどうすべきか? といった議論をしています。

正直なところ、まだ、ハッキリとした"正解"は見えておらず、何かが見えたとしても、それでまた次の課題が見つかったり、分析をして何をすべきかが出てきたとしても、それを実行に移すのが大変だったりもするのですが、なんとか"次のステップ"に進めようと帯同していただいております。

コロナ禍で見えてきた? ラジオの持つポテンシャル!

――ここまで2年ほどWOWOWコミュニケーションズとご一緒されてきて、"変化"は感じていますか?

嶋:そうですね。「データマーケティングをやってみましょう」というレベルから始まって、いまは可視化するのは当たり前で、そこから何をすべきか? そのために何を導入し、どういう人材を入れるべきか? ということを考えて進めていくというところまで至っています。"可視化フェーズ"と"戦略実行フェーズ"ということで言うと、昨年の後半あたりから、後者の段階に入ってきているなと思います。

――前回、杉本さんにインタビューをさせていただいた際にも、デジタル分析以前に、聴取者からの"生の声"というものが、実はものすごい宝の山であるというお話を伺いました。

嶋:そうなんですよね。特にコロナ禍の中で、みなさんがステイホームをされるような状況になって、radikoを分析すると、コロナ禍以前と比べて170%の伸びを記録している番組もありました。では、リスナーは何を求めてTOKYO FMを聴いてくださっているのか?

WOWOWコミュニケーションズさんにやっていただいたアンケートなどを見ると「不安な気持ちをラジオで落ち着かせている」といった声がすごく多かったんですね。なんとなく想像はしていましたが、実際に集まった言葉を目にして、改めてラジオメディアに対して、「信頼」を寄せていただき、「安心」を求められていることを実感しました。生の声をきちんとデータと掛け合わせることで非常に大きな価値が生まれるということを感じました。

――杉本さんからもこの2年でのTOKYO FMさんとの具体的な取り組みや施策、その狙いなどについてお話しいただけますか?

杉本:広告モデルというビジネスモデルを考えると、最終的な明確な目標はもちろん「リスナーが増えることによって、広告主が増える」ということでした。なので当然、僕らの狙い・施策も「リスナーをどう増やしていくか?」という点を考えていました。

TOKYO FMさんとWOWOWの構造が同じだと感じたのは、どちらも「選ばれるメディア」であるということです。もちろん、たまたまラジオをつけたらTOKYO FMで...という場合もあるでしょうが、やはり複数のラジオ局がある中でTOKYO FMに合わせて聴くというのは、リスナーが意思を持って選んでいるんですよね。WOWOWも開局から30年間ずっと「選ばれるメディア」でなくてはいけないという想いでやってきており、視聴者、聴取者のみなさんに"ファン"になっていただくという部分に関しては同じなのではないかなと。

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杉本:先ほどの嶋さんの話にもありましたが、コロナ禍における昨年の1回目の緊急事態宣言の中で、リスナーから寄せられた様々なテキストに目を通したのですが、暗いニュースが世の中を覆っている中で、朝の時間にTOKYO FMの番組が選ばれているということが、数字上ではもちろんですが、テキストからも感じられたんですね。

「暗いニュースばかりだけど、朝の時間をなんとか明るい気持ちで過ごしたい」といった声が非常に多かったんです。そこでラジオの持っている可能性を非常に強く感じましたし、それが特にTOKYO FM独特のものであったり、TOKYO FMが選ばれている理由であるのならば、我々が協力できる部分は大きいんじゃないか? と思いました。WOWOWでやってきたことの転用ができるんじゃないか? と。リスナーの声に耳を傾けつつ、データと組み合わせながら「こうすることでリスナーが増えました」という具体的な施策を実行していく――いま現在、そこまで進むことができたのかなと感じています。

――改めての質問になってしまいますが、WOWOWとWOWOWコミュニケーションズの違いについて、またWOWOWコミュニケーションズの強みについてご説明いただけますか?

杉本:WOWOWはあくまでも放送局として番組を作り、放送して戦略を実行していく会社ですが、WOWOWコミュニケーションズは施策の部分を担い、戦術を作ってどうやってお客様にアプローチしていくかを考える、"手を動かしている"会社ですね。わりと網羅的に手を動かしているので、施策を進める中でフェーズが変わっていったとしても、それに対応していくことが可能です。

そうやっていろんなことをやっていく中で当然、"失敗経験"も積んでいるので、TOKYO FMさんとお仕事をさせていただく中で「これは、やってみてもいいと思います」「これはあまり結果に繋がらないかもしれません...」という形で、これまでの"傷を伴った経験"を共有することができたんですよね。そこに関しては強みと言えるかもしれません。

有料TV局・WOWOWとFMラジオ局 TOKYO FMの共通点と大きな違い

――ここまでご一緒されてきて、有料テレビ放送のWOWOWと、ラジオ局であるTOKYO FMの共通点や違いについてどのように感じていますか?

嶋:やはり放送メディアとしてコンテンツを扱い、人々に届けるという点では、ビジネスモデルの違いはあっても企業文化も含めていろんな意味で相通じるものがある、というのがここまでご一緒させていただいての実感ですね。それはご一緒していてやりやすい、連携しやすい部分でもありました。

一方で視聴者様に向き合っている"熱量"に関しては正直WOWOWさんのほうが強いなと感じるときがあります。やはりお金を払ってくださる視聴者にダイレクトに向き合い、コンテンツを作っていくという点は、我々のように広告主とも向き合いつつ...というのとは違いますよね。そうしたところは非常に学ばせていただいています。

そこは今後、弊社はもちろんですがテレビ・ラジオ業界が向き合っていかなくてはいけない部分だと思いますし、一般のメーカーさんなどと比べると放送業界がマーケティングの部分で後れを取っているのは事実だと思います。そのようなことを先んじてやられてきたことについては、大きなリスペクトを感じております。

――デジタルマーケティングの導入などを含め、ラジオ業界全体が変わってきているというのは感じますか?

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嶋:そこに関してはもっと変わっていかなくてはいけないと思います。これだけインターネット広告が数字を伸ばしていて、インターネット広告であればユーザーのターゲティングからその後の結果の追跡もできる中で、2カ月に一度の調査数字しかなく、自分たちの番組のリスナーがどういう人たちかもわからずにいるままでは、ラジオ業界の成長が危ぶまれます。

10年前にradikoができて、そこに月間で約850万人のユーザーが集うようになり、そのデータを分析していくことで、ラジオ業界も大きく変わっていくかもしれないとなったのが2~3年前のことですね。radikoの中にDMPを入れて各局が自社のリスナーの分析を進めらるようになったのも同じ時期です。

――そんな中で、TOKYO FMはデジタルマーケティングへの進出が他局と比べても早かったそうですね?

嶋:そうですね。ラジオ業界の中ではTOKYO FMは進んでいるほうであると自負しています。デジタル戦略局の設立に関しても、他局と比べても早かったかと思います。とはいえ、よその業界と比べるとまだまだ至らない部分が多いので、その差を埋めつつ、リスナーはもちろん、広告主からも信頼されるメディアとなっていかなくてはいけない、と感じております。

――杉本さんからもWOWOWとTOKYO FMの共通点、違いについて、気付いた点があれば教えていただけますか?

杉本:共通点に関しては「ファンに支えられている」ということを強く感じました。あとは放送局にとって、理解するのが非常に難しい部分として、何かの施策をして、視聴者がテレビをつけてWOWOWを選局しました...という流れの中で、その間にあるものってデータでは絶対に取れないんですよね。それはラジオも一緒で、「何かしらの施策をする」「TOKYO FMをつける」という二つの間にある行動ってコントロールできないんです。それでも、「こうしたら視聴者/聴取者が増えるんじゃないか?」と答えを探そうとする姿勢に関して、WOWOWとTOKYO FMさんですごく近い熱を感じましたね。

本来は、そこってあきらめたくなってしまう部分なんですよ。そんなことよりも、マス広告をドーンと打ったほうが、楽だし、結果もわかりやすく出るわけです。でもそうじゃなく「こうじゃないか?」「いや、こうしたほうがいいんじゃないか?」と試行錯誤しながら、いろんな議論を巡らせていく――そうした姿勢は本当に似ているなと思いますね。

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杉本:一方で違いを感じた部分は、TOKYO FMさんのほうが圧倒的に「速い」んですね。僕らから施策を提案させていただくと、翌週に来てみるともう「やってみました」ってなっているんですね。そこから「結果につながりました」「これはあまり結果が出なかったな」といった"答え合わせ"に至るまでも、ものすごくスピーディーなんです。そこはWOWOWとの大きな違いですね。

平日は特に生放送でコンテンツを届けるラジオメディアなので、いろんなことを状況に合わせて変えていくことが柔軟にできるというのは理解していましたが、そこはWOWOWが学ぶべき点だなと感じていますね。やはり施策をすぐにやるか、1か月後にやるかでは全然違ってくるんです。これだけスピード感をもって対応していただけると、こちらもより精度の高い施策を提案しやすいですし、非常によいサイクルで提案と施策が回っていくんですね。

――ここまでWOWOWとTOKYO FMが一緒に仕事をしてきたことで生まれた相乗効果、コラボレーションの成果についてお聞かせください。

嶋:日々、いろいろな気付きや発見をいただけているのを感じています。毎週、お話をさせていただいて、そのちょっとした積み重ねが我々には非常に有益なものになっていると思いますし、もしかしたら両社にとっても、刺激をし合いながら進んでいく関係が築けているのかなと感じています。

ここまでご一緒する中で、当初のレクチャーを受けて教えを請うという段階を抜け出し、新たなフェーズで一緒に施策を考え、実行するということができるようになってきたのかなと思います。今後さらに、我々がWOWOWさんが持ってらっしゃるポテンシャルを引き出せるような、互いを最大化できるような関係になれたらと思っています。そのためにも日々の連携をさらに濃密にしていけたらと考えています。

杉本:今の段階で明確に売り上げにインパクトを与えるような結果は出せていませんし、当初より、時間を必要とする仕事となるなと考えていました。我々が相対しているデータマーケティングの部署の方たちだけでなく、製作現場を背負っている方々、コンテンツを作っている方々に理解をしていただくのがこれからの課題だと思っています。そういう意味でこれからが本番だなと。この先1年くらいで「ここが変わったな」ということを明示できるようになれたらいいなと考えております。

一方で、私たちがTOKYO FMさんと仕事をさせていただく中で、WOWOWではできなかったけれど、TOKYO FMさんだったからできたということもすごく多くありました。「こうやって表現するとわかりやすいんだな」ということも多々あって、そこはエッセンスとして持ち帰らせていただいています。

テレビ局において「それ、どこもやってないだろ?」という施策と「TOKYO FMで既に行なって成功しています」という施策では、反応が全く違うんですね。僕らとしても、単なる想像、絵空事で話をするのではなく「WOWOWグループとしてこういう結果を得ているから、WOWOW本体でも近いことをやってみたら?」という形で提案し、サイクルを回せるようになってきています。
そこでうまくいったことをまたTOKYO FMさんにお返しするという形で、やはり同じ放送局同士だからこそ、相互に出しあえる部分があると思いますし、そうして永続的な関係を築けるようになればいいなと思っています。

ラジオ業界が目指すDX

――今後の展望、取り組みについて教えてください。

嶋:データマーケティングでなんらかのグロースを実現させたいということでWOWOWコミュニケーションズさんとご一緒させていただいていますが、特にいまメインとして「どうやったらリスナーを増やすことができるのか? 特に新しいリスナーをどうしたら流入させることができるか?」という部分に絞って取り組んでおります。

少しずつ「型」と言えるものができてきて、いまはそれを特定の番組で行なっていますが、さらにそれをTOKYO FM全体に広げていき、一つの成功パターンをTOKYO FM全体の成功パターンに繋げていくことができれば、データマーケティングが会社を変えていくということになるのかなと思っています。

――少し話が大きくなってしまいますが、今後、ラジオそのものはどうなっていくのか? ラジオ業界の展望、これからのラジオについて教えていただけますか?

嶋:恐れ多いですが(笑)、私はデジタル戦略を推進している担当でもあるので、なんらかのDXをすることで会社や業界が成長していって欲しいと考えています。

WOWOWコミュニケーションズさんとのリサーチでも、いまなお据え置きのラジオやラジカセでラジオを聴いてくださっている方もたくさんいらっしゃることがわかっているので、そうした方々に引き続き、安心、信頼を届けるメディアである、ということは大前提となります。その一方で、若い人たちにも、いろんなライフスタイルの中でラジオや音声コンテンツを聴いていただいて、面白いと思い、自分の生活に必要であると感じてもらえるメディアでありたいとも思っています。朝からラジオ受信機で直接番組を聴く方もいれば、radikoやSNS、ポッドキャストやYouTubeをきっかけに聴くという方もいると思います。いろんな形でコンテンツに触れてもらえるメディアになっていけばいいなと。

そういう意味で、DXの正しい形とは何なのか? それはまだ誰も描き切れていないし、今後もどんどん変わっていくものだと思います。DXを進めながら、結果として幅広い世代の方に"音声コンテンツ"により多く触れていただくようになるというのが、私が思うラジオ業界の展望です。

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なぜ芸能人は結婚報告をラジオで行なう? 「狭く」「ピンポイントに!」

――インターネットを中心にこれだけ新たなメディアが次々と登場する中で、改めてラジオの効用が注目を集めています。豪雨などの災害時のピンポイントの情報提供もそうですし、著名人が自身のファンに向けた報告をラジオ番組で行なうというのもいまだに多いですね。

嶋:そうですね。ラジオのほうが本音を話しやすいというのもあるようですね。

――SNSのように"広く"拡散するのではなく、メジャーなメディアでありながら、限られた"狭い"範囲にピンポイントで届けられるという強みを感じます。

杉本:コミュニケーション・ツールとして機能しているんですよね。そこは私たちもTOKYO FMさんとご一緒させていただいて、TVとの違いを強く感じました。パーソナリティの方もすごくカジュアルにスタジオに入るし、リスナーもパーソナリティを"手の届かない存在"としてではなく「この番組の時間だけは私たちのほうを向いてくれている存在」として、すごく近くに感じているんですよね。ある意味で、現代社会にフィットしているメディアなのかなと思いますね。

――杉本さんからもTOKYO FMさんとの取り組みについて今後の展望をお願いします。

杉本:僕らの強みは、やはり放送局を母体にしているということにあると思っています。いろいろな分析をした上で、その後、施策をどう実行してコンテンツにどう反映させるのか? その難しさも我々は理解しています。最終的には「リスナーを増やす」というのが目標ではあるんですが、番組やコンテンツに向き合う人たちの知識や経験を積み上げていくことが最重要事項だと思っています。

とはいえ、いま、いろんなメディアが出てきて、視聴者やリスナーがコンテンツを選べなくなり始めている中で、知識や経験で番組を作りつつ、その傍らにあるデータを自分が作ることができればと考えています。コンテンツ制作者たちが迷った時に、そのデータが指針となって「きっとこれで大丈夫。この番組に多くの人が振り向いてくれるはず」と思えたり「このデータをもとに、こういう方向に舵を切ったら新しいリスナーが来てくれるかもしれない」というところまで行けたら、本当の意味でTOKYO FMさんがリスナーを理解している「選ばれるメディア」になれるんじゃないかなと思っています。

そこまでたどり着いたら、今度はそれをWOWOWにも活かすことができると思いますし、いま、まだたどり着いていないデータや、これまでは不要かと思っていたデータが実は視聴者獲得に役立つという場合も出てくるかもしれません。そうやって放送業界全体を押し上げていくことができたらいいなと思っています。

WOWOWコミュニケーションズ 事例紹介:エフエム東京様

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撮影/祭貴義道

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