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ドラマ経験ゼロのプロデューサーが2.5次元ジャンルを活かした新プロジェクトを立ち上げてみた―鈴木拡樹&清原翔W主演 WOWOWオリジナルドラマ「虫籠の錠前」

ドラマ経験ゼロのプロデューサーが2.5次元ジャンルを活かした新プロジェクトを立ち上げてみた―鈴木拡樹&清原翔W主演 WOWOWオリジナルドラマ「虫籠の錠前」

制作局 制作部 飯干紗妃プロデューサー

WOWOWのドラマと言えばドラマW――。そんな常識を打ち破る、新たなドラマ、いや、一大プロジェクトとして誕生したのが「虫籠の錠前」である。立ち上げたのは、2.5次元ミュージカルというWOWOWにおいて異色のジャンルをテーマにし、話題を呼んでいる「2.5次元男子推しTV」の飯干紗妃プロデューサー。彼女に言わせれば、ドラマ『虫籠の錠前』は、これから大きく展開していく壮大なプロジェクトの始まりに過ぎないという。従来のWOWOWの視聴者層とは明らかに異なる層をターゲットにしたこの異色のプロジェクトはどのように生み出されたのか?

――まず、飯干さんが担当されている「2.5次元男子推しTV」がついにシーズン3を迎えました。視聴者および社内での反響はいかがですか?

シーズン3からゲストを2名に増やして、MCの鈴木拡樹さんも一緒にロケに行ってもらう形にしたんです。どうしても1人でロケに行って、カメラやディレクターに向かってしゃべるスタイルだと、やりづらさもあるのかなと思ってそういう形にしたんですが、本人たち同士で話すことで、もともと番組が目指していた俳優さんの"素"の部分がより伝わる形になったのかなと思います。みんなと一緒にロケに行くというのは視聴者の方にも好評だったと思います。

社内の反響は......「コラボカフェってなんぞや?」みたいな形で、おじさんたちにアニメイトカフェに行ってもらったりして(笑)、そういう文化を知ってもらえたかなと思います。その時の写真を見せてもらったのですが、結構シュールな写真が多くて...、おじさんたちが満面の笑みでコースターを持ってたり(笑)。でもこのジャンルのファンの方がどういう人たちで、どういうものが好きなのか? といったことを少しですが体感してもらえたのかなと。

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――順調に社内における2.5次元というジャンルに対する理解度、浸透度は増してますか(笑)?

そうですね。番組というより2.5次元というジャンルそのものへの理解度だと思うんですが、紅白歌合戦にミュージカル『刀剣乱舞』のキャストが出演されたり、『映画刀剣乱舞』の公開に伴って露出が増えたりしてジャンル全体の世間での認知度が上がったので、社内の人からも「紅白に出てた人って(「2.5次元男子推しTV」の)MCやってる人?」とか聞かれたり...それについては間違っていたんですけど、そういう質問がもらえるようになったってことは、ちょっとずつ広まってきたのかなって思います。

「オリジナルIP(知的財産)を作りたい!」という思いで始まった「虫籠の錠前」

――「2.5次元男子推しTV」でMCを務める鈴木拡樹さんを主演に据えた、今回「虫籠の錠前」というドラマはどういう経緯で始まったんでしょうか?

私がアニメや2.5次元を担当しているので、そういうジャンルに関連して、何か新しい展開ができないか? ということはずっと考えていました。そうしたらちょうど社内で、マンガアプリのcomicoさんと共同で、オリジナル漫画を作るという企画(https://www.wowow.co.jp/wowowcomico/)をやっている担当者が次の展開を考えたいという話をしているのを聞きました。

当然ですが漫画は、2.5次元やアニメとは近しいジャンルなので、漫画を含めて様々な広がりを持って展開できるオリジナルのIP(知的財産)を作ってみるのはどうだろうか? と考えまして。そのcomicoさんとの話を聞いて、すぐに企画書を書きました。

ただ、この企画自体、ドラマが原作ではないんです。ドラマが中心にあるように見えるんですが、まず「オリジナルIPを作りたい」というのがありまして。小説などの映像化の権利を得て作品を作っていくことも多いですが、自分たちがオリジナルでIPを持って、それを展開し利益を得ていくことがベストだと思っているので。

――そこで原作となる物語を「バッカーノ!」「デュラララ!!」といったライトノベルで知られる成田良悟さんにお願いした理由は?

オリジナルIPを作るうえで、最初の展開としてドラマを作ろうということを考えたんですが、かといって通常ドラマを作るのとは違う取組みですし、アニメや2.5次元ジャンルの新しい展開として考えていたので、折角なら普段からドラマを作っている方にお願いするのではなく、まずはひとつの世界観を一緒に構築することが大切だなと考えました。漫画やアニメへの展開も見据えつつ、面白い世界観や二次元っぽさを作り上げるために、脚本家の方ではなくそういうジャンルで活躍されている小説家の方にお願いできないかと考えたんです。

成田先生の作品は、過去にWOWOWで「バッカーノ!」のアニメも放送していましたが、群像劇が魅力的だと思います。ひとつの大きな時系列がありつつも、どこか一部分を切り取っても色々な視点で見ることができたり、主人公はいるけれども、それ以外の人たちも皆が主人公に見える面白さがあるなと思いまして。それが全部つながると「なるほど! そういうことだったのか」とより一層楽しめるんですよね。僭越ながら今回、私がやりたいと思っている世界を作るにはぴったりの方だなと思いました。

成田先生は小説はもちろん、漫画の原作もご担当されていますが、最初から映像にするための作品の原作を手がけるのは初めてということで、先生には楽しんでご執筆いただきました。

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――ナナミとカゴロクという2人組を中心にした、SF的な特殊能力を持ったキャラクターが登場するという物語の大枠に関しては、どのように決まったのでしょうか?

バディものをやりたいということは、まず私からお願いしました。バディもののイメージとして『コードネーム U.N.C.L.E.』や『キングスマン』、群像劇のイメージとしてガイ・リッチー監督の『スナッチ』といった洋画や、ほかにもいくつか海外ドラマなどを例にあげて「こういう感じの作品がいいんですが...」と先生にご相談したら、4つほど候補となる案をいただきまして、そこから決めました。

バディもので周囲のキャラクターも魅力的で、あれこれと巻き込まれて群像劇になっていく、ちょっとコミカルな要素も入った世界観というのがイメージとしてありましたね。ちなみに「虫籠の錠前」の赤い背景のポスターは、『コードネーム U.N.C.L.E.』を意識しています(笑)。

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あえてイメージの逆を狙った鈴木拡樹&清原翔の配役

――当初から鈴木拡樹さんの主演ありきで? また相棒に清原翔さんを起用した経緯は?

「2.5次元男子推しTV」でMCをやっていただいたというのはもちろん大きいですね。番組では"素"がコンセプトですが何よりも役者さんなので、お芝居もいつか番組としてお届けできたらいいなという思いがありまして、番組のトークでも役への真摯な向き合い方も伺っていたので、オファーしました。特に2.5次元的な要素を踏まえてプロジェクトを展開していくなら、やはり鈴木さんとまたご一緒したいし、きっと役にも合うだろうというのはありました。

清原さんに関してはバディものということで、「(鈴木さんの)相方」というコンセプトでキャスティングを考えていたのですが、バディものって一見、全然違うタイプに見える2人が、実は似た者同士だったんだと気づかされるというのが魅力のひとつとしてあると思うんです。
なので、ぱっと見は全然違うタイプの方にしたいなと思っていました。鈴木さんが柔らかい雰囲気なのに対して、清原さんは見た目の印象がクールに見えるということ。キャリアという意味でも舞台で経験を積んできた鈴木さんに対して、清原さんはモデルから俳優になって映像系作品で活躍しているので、その違いも面白いなと思いました。
清原さんはオーディションに来てもらいました。モデル出身なので高身長でクールなカッコよさがあるんですが、話してみると意外とフニャっとした部分があって、そこは鈴木さんとも近いなと思いました。いいバランスでキャスティングできたと思います。

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――ナナミとカゴロクというキャラクターに関しては、演じる鈴木さん、清原さんの素の部分を反映させたり、逆に普段の2人のイメージとは違う方向性を...といった狙いなどはあったのでしょうか?

先に成田先生とストーリーやキャラクターのお話をしていたこともあり、鈴木さん、清原さんに寄せるように成田先生にお願いしたわけではないんです。ただ、配役という点で、最初は逆の方がいいのかなと考えたところはあって...。

――たしかにファンの従来のイメージでは、クールなイメージのナナミが鈴木さん、柔らかいイメージのカゴロクが清原さんの方が想像しやすいと思います。

そこは一瞬、悩んだんですが、でも例えば鈴木さんのナナミってどんな雰囲気だろうって考えたときに、自分の中で想像できちゃったんです。それはそれで間違いなくしっくりくるという確信はあったんですが、だったらあえて逆にした方が予想がつかなくて面白くなるなと思ってナナミを清原さん、カゴロクを鈴木さんにしました。

――主題歌がSurvive Said The Prophet(通称:サバプロ)の「Right and Left」に決まった経緯についても教えてください。

製作委員会にソニー・ミュージックエンタテインメントさんが入って下さっているので、何組か候補をあげていただき、その中で、サバプロさんの楽曲もいくつか候補としていただいたんですが、ドラマ自体が1話30分と短いので、エンディングで主題歌をききながら余韻を感じていただけるようなメロディーがいいなというのがありました。

その中で「Right and Left」の英語の歌詞を読んでいくと、恋人とのやりとり歌っているのかもしれませんが、バディにもあてはまる部分があるなと思って、すごくこの物語にハマるなと感じたんです。それもあって、複数のデモの中から満場一致で決まりました。

――鈴木さんの主演は2.5次元のファンにとっても嬉しい部分ですが、それ以外で、このドラマに見られる2.5次元的な要素、魅力というのはどういった部分だと思いますか?

二次元っぽさを意識して作っているので、普通のドラマよりキャラクターが濃いかもしれません。そういう意味で、アニメを見ているような感覚で見ていただくと、入ってきやすいところがあるかなと思いますね。いろんな超能力が登場しSF的な要素も強いですが、舞台であればそこは演出で表現しつつも、お客さんの想像力で補うところも大きいと思います。もちろんそれが舞台の面白いところでもありますが、今回は、そこは映像表現としてきちんと描いていますので、アニメと舞台の中間のような立ち位置で楽しんでいただけるんじゃないかと思います。

――1話30分という形式にしたのは見やすさを重視したんでしょうか?

そうですね。それこそアニメって30分じゃないですか。アニメを見ているくらいの感覚で、テンポよく物語を楽しんでもらうのがこの作品の場合、ちょうどいいんじゃないかと思いました。

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「若手俳優中心の低予算ドラマ=チープでつまらない」にしないため...

――このプロジェクト全体を進めていく上で、大変だったこと、苦労された部分はどんなところですか?

まず私自身、ドラマの制作に関わったことは一度もなかったので、ドラマについて何ひとつ知らない、「ドラマってどうやって作っているんだろう?」というただの視聴者の状態から始まったんですね(苦笑)。そこは経験者のみなさんに協力いただき、スタッフやキャストのみなさんにも正直に「ドラマやったことないです」と言った上で参加いただきました。さぞかしみなさん、不安だったと思います...(笑)。

まずは「どういうドラマなのか」を理解していただくことから始めました。それこそWOWOWのドラマのオファーと聞いてドラマWを想像される方もいるかもしれないなと思いまして。そうじゃなく、こういう世界観で...という説明をしました。


――クオリティの部分で大切にされたことはありますか?

予算も限られていて若手中心のキャスティングとなると時にはクオリティが心配になることもあるかもしれないのですが、演出面でも演技面でも、そこは期待して見てくださる視聴者を裏切らないようにしたいなと。

画が安っぽく見えないようにしたいということは豊島圭介監督、制作会社の方々ともきちんと話をしました。また、実力派の俳優さん、小劇場の芝居で活躍されているようなバイプレイヤーの俳優さんを周囲に配して、全体の演技力を底上げし、彼らからいい影響を受けて、若手俳優が成長できるようなドラマにしたいなと心がけました。

なかなか予算が厳しくてですね...(苦笑)、最初に成田先生にプロットをいただいたときは「面白い!」と読む手が止まらなかったくらいなのですが、壮大な世界観ですし超能力モノなので「このストーリーをこの予算で実現するとなると、アクションは7割減になりますよ」と言われて、泣く泣く変更したり、削ったりした部分もありました。どういう見せ方をしたらこの予算、30分という尺の中で面白く感じてもらえるかを常にチームで話し合っていました。

きちんと収益を上げる仕組みづくりを!

――普段、ドラマWを作っているプロデューサーの方にお話を聞いたりもしたんでしょうか?

まずオリジナルIPを活用してビジネス展開をしていきたいという意識が強かったので、今回、製作委員会方式ということもあって、かつモデルが近いということもあり事業部で映画を作っている人たちに、制作についても色々教えていただいたりしましたね。

もちろんお客様に喜んで貰える作品ありきというのが大事ですが、しっかり収益を上げていくことで関わって下さった方へも還元できますし、次の展開へ繋がることにもなるので、そこは重視しています。

WOWOWの社員としてはどうかと思うんですが(笑)、私自身は担当番組の加入獲得数や視聴者数ってあまり気にしてないんですよね。もちろん、会社に貢献するためにもそういう数字は大事なんですけど、「こういう事業をしている会社とご一緒させて貰えれば、こういう広がりも見込めるかも」とか、収益化したいなとか、加入数でない部分について考えることが多いです。

――"ドラマプロデューサー"というものを経験されてみていかがでしたか?

普段から私は「こういうのができたら面白そう」と好き勝手な妄想を口にしていただけなんですけど(笑)、それが周りの方たちのお力添えがあって形にして頂けました。プロデューサーって自分ひとりでは何も作れなくて、本当に一緒にやって下さる方がいてこそ。それを今回、改めて強く感じました。

撮影期間だけでなくその前の準備や撮影後の編集を含めて、ドラマ作りに携わった時間はこれまでの会社員人生の中でも一番濃密だったと思います。いままで視聴者として気軽に楽しんでいたものを、これだけの人たちがこんなにも熱量をかけて作っていたのかと。あらためてドラマってすごいなと感じました。

自分ができることは本当に少なかったので、せめてできるだけ現場に行こうと足を運んで、そこでメイクさんや照明さんのオペレーションを手伝わせてもらったり、急遽エキストラで参加することにもなったりしたんですけど(笑)、とにかく全てが勉強になりました。現場のみなさんも楽しんでくださったみたいで「スピンオフが見てみたいね」とか「続編やりたいね」という声が聞こえてきて、予算も時間もなく、初心者のプロデューサーが関わった作品をこれだけプラスに捉えていただいて、こんなに嬉しいことはないですね。

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ジャンルも部署の垣根も超えて「あれもやりたい!これもやりたい!」

――ドラマ以外でのメディア展開に関して、既に決まっているものも含め、今後どのような展開を考えていらっしゃるのでしょうか?

先ほども言いましたが、ドラマが中心ではなく、あくまでも原作が中心にあって、ドラマもそのひとつの要素となっています。加えて、既に発表しているものでは、comicoさんでスピンオフの漫画を展開していきます。やはり成田先生の作品は時間軸や視点を様々な角度からみても楽しめるので、それを活かしていくつかコミカライズなども進めていければと思っています。

あとはまだ全然未定なのですが、アニメや舞台にしてもすごく面白い世界観だと思うので、いずれそういうことまで実現できればという妄想はあります(笑)。30分×8話のドラマでは全てを描き切れてはいないですし、それぞれのキャラクターの過去もあれば、それぞれのエピソードの間にもいろんなことが起きていると思うので、そういうところをドラマ以外の形でも描ければと思います。

将来的にはこの作品がプラットフォームのようになって、2.5次元ジャンルで活動される役者さんなどに新しい活躍の場として使ってもらえたらいいなと思っています。今回、ドラマをやってみて思ったのは、やはり舞台と映像では求められる演技が全く違うということ。また、2.5次元では同世代の役者さんと共演することが圧倒的に多いですが、映像では年齢も性別もキャリアもバラバラの役者さんと一緒に作品を作っていく機会が多いですよね。
別にみんながみんな、映像作品に進出することが"正解"だとは思いませんが、将来的にそちらに進みたいと思っている人にとってはいいとっかかりの場になるんじゃないかなと。

これは鈴木さんが常々仰っていることなのですが、2.5次元以外の場で学んだことを2.5次元の場に持ち帰ってみんなと共有できれば、ジャンル自体の底上げになるんじゃないか、というのがあって、そういう場所になれたらいいじゃないかと思います。

――改めて、「虫籠の錠前」というプロジェクトの魅力、見どころをお願いします。

「ジャンル何?」と聞かれたら難しい作品で(苦笑)、WOWOWの中でも異色の作品だと思います。一方で先日の上映会に来てくださった方々からも「いい意味で想像していたのと違った」という声を多くいただきました。

成田先生らしい、個性豊かなキャラクターがたくさん出てきて、1話ずつでも楽しめるし、全体でシリアスな展開が主軸にありつつ、コメディ要素も含まれているので気軽に見ていただければと思います。ドラマを見る感覚でもあり、アニメを見る感覚でもありという感じで楽しんでいただければ嬉しいです。

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――最後になりますが、WOWOWの中でもなかなかない今回のプロジェクトでプロデューサーを務められて、改めてプロデューサーという仕事の面白さややりがいをどういった部分に感じていますか?

本当にひとりで何かを作れる職種ではなくて、いろんな人に助けていただいて成り立つ仕事で、そこに面白さも感じるしありがたいなぁと思います。自分が好き勝手に妄想していたものを一緒に面白がってくださったり「じゃあ、こうしたら?」と言ってくださる方たちがいて、そうやってみなさんとひとつのものを作っていくって、なかなか体験できることじゃないので、やりがいを感じますね。

私自身、中途入社だからなのかもしれないですが、ジャンルや部署に対しての壁やこだわりがなくて「あれもやったら面白そう」「これもやったらいいじゃん」と思うことが多いです。それを形にできるというのは面白いですね。

取材・文/黒豆直樹  撮影/祭貴義道  制作/iD inc.

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