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事件はWOWOW Labで起こっている! 最新技術が生み出す新たなコンテンツの可能性

事件はWOWOW Labで起こっている! 最新技術が生み出す新たなコンテンツの可能性

技術企画部 神保直史・石村信太郎・蓮尾美沙希

最新の技術を駆使し、新たなサービスやコンテンツを作り出す“種”を生むべく日々、模索を続けている「WOWOW Lab」。

WOWOWの最先端を往く、この謎に包まれた(?)“研究所”の活動を紹介するべく、今回はWOWOW Labの中心メンバーである技術企画部の神保直史、石村信太郎、蓮尾美沙希のインタビューを敢行!

吉田羊×大泉洋出演のリモートドラマ『2020年 五月の恋』のリモート撮影も行われたという、WOWOW Labの拠点である辰巳放送センターのC館3Fの一角を訪ねてみると、そこには「Lab(=研究所)」という言葉のイメージとはかけ離れた、オープンで洒落たスペースが広がっていた。

What's WOWOW Lab? その誕生の経緯

――まずはみなさんの入社後の経歴といまのお仕事について教えてください。

神保:私は入社して最初はポストプロダクションと呼ばれる収録や編集の現場にいたのですが、その後、「WOWOWメンバーズオンデマンド」の立ち上げに参加するなど配信の仕事をしてきました。

今の部署に異動した後は、新しい技術を見つけてコンテンツやサービスに繋げていく仕事をしています。入社以来、ICT(情報通信技術)を活用して映像制作を効率化、高度化したり、いままでにないコンテンツをお客様に届けるということ、いままでにない体験をしてもらうということをテーマに仕事をしてきました。最近では、放送と通信の連携、クラウドを活用しての映像制作などを担当してました。

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蓮尾:私は今年で入社3年目なのですが、最初は運用技術部で、番組素材の管理システムの構築などに携わっていました。

2年目で異動となって、現在の技術企画部に配属となり、このWOWOW Labチームで主にオーディオ担当として、3Dオーディオの研究やリモート音声制作を行なっています。

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――学生時代から音響を専門にされていたのですか?

蓮尾:そうです。芸術大学の音楽学部の中の音響コースで、マルチチャンネル音響を使った作品制作などにかかわっていました。就職の際も3Dオーディオやインタラクティブの音声に携わる仕事がしたいと考えていて、既にWOWOWがそうした活動を始めていたこともあって入社を決めました。

石村:私は入社6年目ですが、最初に配属されたのは運用技術部で、24時間365日の放送がシステム上、正しく動いていることを監視し、そのシステムを管理する仕事についていました。それに並行してネット同時配信サービスの立ち上げのメンバーにも入っていたりしました。

現在もWOWOW Labで行なっているマルチアングルの映像の配信の仕事も1年目からずっとやっていたのですが、4年目からいまの技術企画部に配属となりました。ここで、もともとやっていたマルチアングルの配信という業務を足掛かりにしながら、リモートプロダクションという遠隔での制作を開始し、いまはリモートでの合奏による音楽配信などをメインで行なっています。

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――ちなみに学生時代の専門は?

石村:芸術と技術の掛け合わせという感じで、基本はデザインを勉強しつつ、プロジェクションマッピングの制作を行っていました。

――そもそもWOWOW Labとは何なのか? どういった経緯で設立され、何を目的に活動しているのか? WOWOWにおける位置づけなど、その概要について説明をお願いします。

神保:そもそもは5年ほど前、「Mission2025」という、2025年にWOWOWはどうなっていたいか? ということを考える全社的なプロジェクトがありました。その中で、「ライフスタイルの変化」や「新技術の実用化」に迅速に対応していくための枠組みが必要だろうということで「Lab構想」がまとまり、それが「WOWOW Lab」となりました。

ポイントは、開発のループを循環させていくということ。Labで新しい技術を実践し続けることで、そこにさらにクリエイターやエンジニア、技術系のスタートアップなどが加わっていき、そうして今までにない技術、サービスを作り上げて、それによって他にはないWOWOWらしいコンテンツやコンテンツコミュニティーを創っていくという流れですね。

このスペースに関しては、2019年に辰巳の放送センターの新館がオープンしたタイミングにできました。直近では先月(9月)より「WOWOW Lab委員会」という、技術部門だけでなく他の部署の人間も集まった委員会が発足し、さらに活動を促進していこうという状況になっています。

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「この技術、番組に取り入れられない?」 そんな要望を実現へとつなげる

――現在のメンバーは神保さん、石村さん、蓮尾さんの3名ということでしょうか?

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神保:「メンバー」という意味では、もっと幅広く考えていまして、我々3人はどちらかというと「事務局」のスタッフといいますか、WOWOW Labを運営していくための広報活動や取りまとめをするためのチームです。

研究活動に関しては技術局の全社員が参加できますし、それ以外にも他部署やグループ会社の方々にも加わっていただいています。今後はもっと多くの外部のクリエーターやスタートアップ企業・メーカーの方々にも加わっていただきたいと思っています

石村:先ほどの説明にもありましたが、基本的には「ループ」を広げていきたいと思っていますので、どう広げていくかを「構想」するのをこの3人でやっているという感じですね。

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――この3名が集められたのは募集や立候補で?

神保:WOWOW Lab自体が技術企画部のミッションとしてあって、我々3人も技術企画部の社員として参加しているという形です。そこに集まってくる人たちは、技術企画部以外にもいろんな方がいて、それこそ自ら手を挙げて参加する方もいれば、「こういうことをやってみたいんだけど」という相談を番組の担当者からされることもあります。

石村:これまでは、あくまでも技術者が、技術そのものの発展のためにあれこれと考えて、開発を行なってきたんですが、WOWOW Labを設立することで、会社全体として「こうした技術が最近トレンドになっているので、それを番組に取り入れられないか?」といったことを考えて、開発を支えていくのが狙いとしてあるのかと思います。

神保:そういう意味で、WOWOW Labはプロトタイピング(=試作)のための活動でして、まだ世の中に出ていない、まだWOWOWの技術として正式に使用するまでに至っていない前段階の技術やサービスをほかの部署の人たちと協力して試行錯誤し、実際に使用できるようにしていくのがミッションですね。

――場合によっては、そういった新たな技術を放送で活用するだけでなく、放送事業以外での新たなサービス展開につなげていくこともありうるわけですね。

神保:その通りです。これからWOWOWは「放送」だけでなく「配信」や「コンテンツを軸としたコミュニティーサービス」も展開していき、大きく変わろうとしている時期だからこそ、このWOWOW Labはユーザーに新しい価値や体験を提供するWOWOWらしいサービスや技術の開発をするためのテストを行なう場になれたらと考えています。

「放送」だけでなく「配信」やそれ以外のサービスにも重きを置くエンターテインメント企業となってきていて、そういう時期だからこそ、このWOWOW Labは新しいサービスの開発のためのテストを行なう場になれたらと考えています。

一般的な大企業のLabって基礎研究を行なっていると思いますが、ここは先ほども言いましたようにプロトタイピング、実践検証をメインで行なっているというイメージですね。 

ウィズコロナの時代に適応! リモートプロダクションの持つ可能性

――ここからさらに、みなさんがWOWOW Labでどのような活動をされているのかを詳しくお聞きしていきたいと思います。石村さんは、リモートプロダクションによる制作に尽力されていると伺いました。リモートプロダクションというのは、辰巳の放送センターを拠点とし、実際の中継・収録の場には最小人数のスタッフと機材を送り込むことで番組制作を成立させる技術ですね?

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石村:ここに配属となる以前、入社1年目からマルチアングルの低遅延配信をやっていました。TBSさんとの共同プロジェクトによる「ライブマルチビューイング」というマルチアングルのアプリがありまして、昨年は大型スポーツイベントでのマルチアングル配信でも活用されており、複数の角度から撮影された映像を同時に見ることができる技術ですね。

マルチアングルの低遅延配信を進める中で、この低遅延配信の技術を他のことでも活用できないか? とプロジェクトチームで考えて、行き着いたのがリモートプロダクションです。

従来は現地に人や機材を全て送りこんで、そこで機材を動かすということが基本だったのですが、もしそれをリモートで、例えば福岡で行なわれているイベントの中継を辰巳の放送センターで行なうとなると、映像が遅れてしまい、制作が成り立たないということがネックとしてあったんですね。

マルチアングルの低遅延配信のアプリを活用することで、その問題の解決につながるんじゃないかと考えて、実際に福岡で開催されたテニスの大会の中継で使用してみたところ、これはいけるんじゃないかとなりました。これをきっかけにテニスをはじめ、ほかにも様々な中継で使用してノウハウを蓄積していき、最近ではリモートでドラマ制作を行なったり(※オリジナルドラマ『2020年 五月の恋』)、イベントなどにも応用しています。

大人数が一か所に集まることができない今だからこそ、この技術は、大きく需要が増えていくのではないかと思います。

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――蓮尾さんは、音声技術面を専門でやられているということですが、具体的にWOWOW Labではどのようなことを?

蓮尾:最近では音声のリモート制作に取り組んでいます。

これまでは、音声もアナログで線を引いて送っていたのですが、リモートでインターネット回線越しにきれいな音声を送るというのは実はすごく難しいんですね。特に、異なるいくつかの場所にいる人たちで合奏をするというのは非常に難しかったのですが、最近では誰でも低遅延で合奏ができるアプリがヤマハから出ていまして、そうした既存の技術やサービスを組み合わせて、離れた場所にいながら高音質で合奏ができるための総合システムを開発しています。

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もうひとつ、昨年、技術企画部に配属されてから進めているのが3Dオーディオの研究開発で、立体的な音響をどう実現するかという「制作」の部分と、そこでできたコンテンツをどう届けるか? という「アウトプット」の2つの軸を中心に進めています。

制作に関しては、3Dオーディオは通常の音響と比べて多くのマイクを立てて収録を行なうのですが、ソフトウェア上で、自分で空間に音源を配置することもできるんです。音源自体が位置情報のデータを持っていて、どんな環境に行っても、できる限り位置情報に近いスピーカーから再生させるということもできるのですが、そうしたプラグインをどう活用していったらいいのか? ということを検証しています。

3Dオーディオは最近の"流行り"ではあるんですが、手法がものすごく乱立している状況で、プラグインもたくさんあって、ブランドも多いので、それをどう取捨選択し、どうしたらクオリティの高い3Dオーディオコンテンツを制作できるのか? ということを検証しています。

そのコンテンツを、たとえば家庭で、このLabと同じスピーカーのシステムがないと聴けないというのではナンセンスなので、それを家庭にどう届けるのか? というアウトプットの部分に関しても検証を進めています。

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ヘッドフォンでも立体的な音を聴くことができるバイノーラル技術というのもあるのですが、それに関してもたくさん種類がある状況でして、それらを「一番クオリティが高いのはどれか?」という目線や「幅広く普及させるという点で一番効率的なのはどれか?」といった視点でいろいろ試しています。

昨年は、VRの映像と組み合わせて、まずスタジオで琴の七重奏をVRの映像として撮影し、音響も3Dオーディオで収録し、琴に囲まれているように音声と映像を体験できるというコンテンツを制作しました。

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家庭のおもちゃがテレビと連動して動き出す!?

――神保さんは、こうしたコンテンツの流通に必要な「仕組みづくり」に携われていると伺いました。

神保:そうですね。私はコンテンツの制作より、コンテンツを人々に届け、体験してもらうという部分を担当しています。

たとえば最近の「テレビ」という機械、実は「パソコン」のようなものでして、テレビ放送を視聴者はブラウザで(インターネットと同じように)見ています。ブラウザなので、インターネットに繋がったテレビでは、インタラクティブなコンテンツも「テレビ画面」に表示することができます。そのあたりの実験やサービスの立ち上げなどに関わってきました。

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テニスの放送で、放送されている試合とは別コートの試合映像をテレビ向けに配信するとか、放送はHDだけど、配信は4Kにしてテレビに表示するといったことですね。

個人的に思い入れがあるのは、テレビ放送と「モノ」を連動させてみたいと考えて行なった実験で、昨年やってみたテレビ放送とおもちゃを連動させるという仕組みですね。おもちゃをどう連動させるかという部分は、子どもが自分でプログラムを組んで動かせるようにしました。

――テレビ放送と連動しておもちゃが動く...? どういうことでしょうか?

神保:WOWOWから「A」という情報が来たら、右に動くようにするといったプログラムを子供たちが組みます。番組の出演者が「右に動け!」と言ったら、WOWOWから「A」という情報が届き、手元にある自分のおもちゃが実際に動き出すという試みです。先ほども言ったようにテレビがインターネットにつながっていて、最近はインターネットにつなげられるおもちゃも出てますので、その間の連携部分をWOWOWが用意し、連動させることが可能なんです。

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実際の番組と連動させるところまでは実践できていませんが、技術的にはやろうと思えば今すぐにでもできます。

もうひとつ、いま現在、最も力を入れて取り組んでいるプロジェクトが、リリース前の新しい技術やサービスを実際にお客様に使っていただいて、フィードバックをもらうというLab活動のためのアプリの開発です。

アプリをダウンロードしていただいて、先ほどから話に出ているマルチアングルや3Dオーディオといった新しい技術を試してもらって、WOWOW Labにフィードバックが届くようにできればいいなと思っています。

――実際にこの場に足を運んでもらって体験してもらうのではなく、スマホを使って体験するという前提なんですね?

神保:そうですね。辰巳に来て触れるのは一部の方になってしまうので、対象者を拡げて実践できる場が必要だと思っています。現在のWOWOWの放送やアプリケーションで新しいことをやろうとすると、どうしても時間がかかってしまうので、このWOWOW Labチームですぐに簡単に試して、お客様にフィードバックしてもらえるような仕組みづくりをやりたいなと思っています。

――「お客様」というのは一般の視聴者ということですか?

神保:すでにWOWOWに加入されている方はもちろんですが、WOWOWが気になっているけど、まだ加入していないという方、あとはクリエイターなどの方々もですね。いままでお話ししたような技術に興味を持っているクリエイターやエンジニアの方が、実際にその技術に触れて「もっとこうしてみましょう」みたいな形で輪が広がっていったら嬉しいですね。

――神保さん、石村さん、蓮尾さんが中心になって進めている活動以外にも「xR」や「映像」をテーマにした活動があると伺いました。

神保:そうですね。「xR」はARやVRの可能性を考える活動です。いままでにないようなVRコンテンツとして、視聴者の視線でストーリーが分岐していくものであったり、"ハプティクス"と呼ばれる触覚と組み合わせたコンテンツを作ったりしています。

「映像」に関しては、映像の高品質化に注力していまして、4K、8KやHDR、またハイフレームレートと呼ばれる、1秒間に120コマの滑らかな映像の制作などをWOWOW Labの活動として行っています。大型のドローンも持っていまして、いままでにない映像を撮るといった試みも行なっています。

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アーティストが気軽に自宅から高品質の演奏を配信できる時代が来る!

――WOWOW Labとして今後、どのようなことをしていくのか? ということも伺えればと思います。

石村:リモートプロダクションに関して、映像と音声が組み合わさることで、やっとひとつの番組になるので、ゴールとするところは、演者さんやアーティストさんが自宅であったり、好きな場所から手軽に配信を行ない、それを辰巳の放送センターを拠点にしてリッチなものに仕上げること。それが最終的なゴールだと思っています。

――実際にいつ頃、それが実現できそうだといった展望はあるんでしょうか?

神保:それはどれくらいのクオリティで出すか? ということにもよりますね。技術的なことで言えば、やろうと思えばできるんですけど。

石村:アーティストさんが実際に自分で組む――つまり、技術者のような知識がなくとも(機材を)組むことができるというところまで落とし込む難しさもあるんですよね。どれくらい手軽にできるのか? 「頑張れば技術的にできる」部分を「どれだけ楽にできるか」まで落とし込む作業が必要になってくると思います。

――いまWOWOWが放送しているコンテンツに合わせて何か作ろうとするなら...。

石村:リモートプロダクションで言うと、やってみたいのはやはり音楽の合奏ですね。いろんな拠点からの合奏をやるというのは技術的にもコンテンツとしても面白いと思いますね。特にいまの時期、会いたくても会えないという状況があるので、例えば海外のアーティストとの合奏などができれば、海外にいる大物アーティストが来日することなくライブやセッションを生配信で楽しめますよね。

――そのライブを先ほどお話に出たマルチアングルで見ることができたらすごいですね。

石村:技術を掛け算のように組み合わせて、そこまでたどり着くことができたらすごいですね。

監督、助監督、撮影監督が辰巳からリモートで指示を出しつつ撮影されたドラマ『2020年 五月の恋』

――続いて今回、インタビューを行なわせていただいている場所でもある、この"WOWOW Labスペース"についてもお聞きしていきたいと思います。先ほどもお話に出ましたが、昨年の新館のオープンに合わせてこのスペースも誕生したということですね?

石村:もともとは、「WOWOW Lab の成果をこの場で見ることができる」、「実験・検証ができる」、「イベントを行なうことができる」という3つを実現できるスペースとして生まれました。

そのために、セミナーなどができるように壁一面のプロジェクターを置いて映像やデータを映し出せるようになっていますし、スピーカーも設置してあります。

――"Lab(=ラボ、研究所)"という言葉からイメージしていたものとは異なり、非常に開放的なスペースとなっていますね?

あまり細かく分けてしまうと使いづらいと考えて、なるべく壁などは設置せずに広い空間を確保するようにしました。

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蓮尾:周りからは、このスペースを「WOWOW Lab」というのか? それともこのチームを「WOWOW Lab」というのか? と聞かれることも多いんですが、私たちの活動全体を「WOWOW Lab」と呼んでいて、それを実現するためのスペースとしてこの場があると考えています。

なので、様々な技術の開発と同時にセミナーやイベントも行なうことで、技術を持っている人たちやクリエイター、プロデューサーの人たちがここで出会うことで、新たな技術の"種"を生み出す場になったらいいなという思いもあって、こういうカフェ的なスペースも作っています。

神保:入口のドアはオープンにしていて、基本的なインフラも整っていますし、常にいろんな人が入ってきて、ランチやミーティングをしたり、ただコーヒーを飲んだりしてもらえるし、コワーキングスペースみたいにできたらいいのかなと。

石村:WOWOWって案外みんな、お互いに顔と名前は知っている人が多いんですよね。なので、こうした場で誰かが何かやっていたら、気軽に「何してるの?」って会話を交わして、そこから何か新しいものが生まれるきっかけになればというのが狙いでもありますね。

蓮尾:いまは新型コロナの影響でなかなか新しいイベントを行なうのは難しいんですが、これまでには音響の研究者たちが一堂に会する「日本音響学会」の研究発表会を開いたりもしています。

神保:一度、ハッカソンを開催したこともありますし、子どもたちを招待しての「キッズアカデミー」もここで開催しています。

石村:50人規模でここに関係者を集めて、大きなスポーツイベントの配信をリモートプロダクションで行なうという試みも一度、やっています。

神保:リモートドラマ(『2020年 五月の恋』)も、ここにベースを組んで撮影しています。

石村:吉田羊さんと大泉洋さんがそれぞれ異なる場所にいる状況で、ここから監督が「はい、アクション!」と指示を出したりしながら撮影しています。監督、助監督、撮影監督も全員ここにいて、演者さんのいる収録現場には最小限のスタッフと機材しかない状況で、撮影監督はリモートの画を見ながら「もうちょっと右側に...」といった指示を出されていました。

――このドラマは制作が決まって2週間で撮影に入ったと伺いました。このスピード感もリモートプロダクションならではなのでしょうか?

石村:それはありますね。もともと、リモートプロダクションで使っているソフトがありまして、それはプログラミング・ツールなんですが、すごく気軽にコンテンツを制作できるというのが大きな特徴としてあります。

それを応用する技術をチームとして共有していたので、「これを応用してやってみよう」とサクッと動き始めることができたと思います。

インターネット、プロジェクションマッピング、3Dオーディオ...プライベートでの「好き」が仕事に!

――ここからさらに、みなさんの業務以外でのプライベートでの活動について、それがどのようにお仕事にもつながっているのかということを伺っていきたいと思います。

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神保:私はいわゆる"インターネット人間"で、遡るとまだGoogleもなかった1995年あたり、Windows3.1でインターネットを始めたんですね。当時中学生だったんですが、何が楽しくてインターネットをやってたかというと、情報発信とコミュニティづくりでした。

今から20年以上前の話ですが、当時好きだったアイドルの私設のオンライン・コミュニティを作って、みんなでグッズを作ったり、情報交換をしたりしていました。その後もずっと、情報発信やサイト作りが好きでやっています。最近では、メディア業界の技術者たちがフランクに繋がってコミュニケーションを取れる場が欲しいな、と思いながらコミュニティ作りを頑張ってます。

あとは、先ほど話に出てきたガジェット連携のようなことはプライベートでも非常に好きで、普段から新しいガジェットを見つけては触っています。私自身、小さな子どもがいて、子どものプログラミング教育を普段から実践しています。そういった自分の好きなことや興味を起点にしてWOWOW Labで試して可能性を模索できるのは有り難いですね。

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石村:僕は先ほども言いましたが、学生時代からプロジェクションマッピングをやっているんですが、それこそ約十年前、ほとんど誰も"プロジェクションマッピング"という言葉さえも知らない頃からやってるんですね。

当時は"プロジェクションマッピング"と検索してもほとんど情報がなかった中で、模索して作ってきたんですけど、ちょうどその後、ブームが来て、世に浸透していき、自分たちの作った作品がうまく時代に乗って進化していくという経験もしました。

新しい技術がきっかけで、それが流行に乗って誰もが知るものになっていくという流れを学生時代に体験することができて、仕事でもそうした新しいことを生み出すことができればと思っていたんですが、まさにいまWOWOW Labでそうした仕事をしていて、自分自身の好きなこと、プライベートの興味が仕事につながっているんだなというのは感じていますね。

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蓮尾:先ほどから同じ話になってしまうんですけど(笑)、私は学生の頃から音響制作をやっていまして、いまもフリーで活動しているアーティストや作曲家の仲間も多いので、彼らとともに、どちらかというとエンタメというよりはアート作品としての音響制作をやっています。

最近ではボイスアーティストの女の子が、ひとりでソプラノ24パート分を歌ったものを多重録音し、それを22個のスピーカーで流すという音楽コンテンツを作ったりしまして、それは文化庁のメディア芸術祭の新人賞、日本プロ音楽録音賞のハイレゾリューション部門で優秀賞、ニュー・プロミネントマスター賞をいただきました。

――蓮尾さんは音響技術の部分でコンテンツ制作に携わっているんですね?

蓮尾:そうです。例えば、24パートのすべてが前から聴こえてくるわけではないので、アーティスト、作曲家のイメージに沿って、立体的な音響空間をデザインし、落とし込むという部分を担当しています。

制作にあたっては自宅のワンルームで作っていたんですけど、このコンテンツを聴いた若い人たちに「できるじゃん!」と思ってもらって、若い世代が自分で買ったパソコンだけを使った新しい作品がどんどん出てくるようになったらいいなと思っています。

自宅にいながらみんなで旅行やグルメを楽しめる? 新たな技術が生み出す夢のエンターテインメント!

――最後に、こうしたプライベートの活動も踏まえつつ、将来的に自身が中心となってこのWOWOW Labで実現してみたい"夢"があれば教えてください。

石村:私は演出面の部分も自分でやってみたいという思いがあって、例えばライブ配信であれば、最新のテクノロジーを組み合わせつつ、アーティストさんと一緒にコンテンツを考えながら作っていくということができたらいいなと思っています。

蓮尾:アーティストや作曲家にまず3Dオーディオに興味を持ってもらって、一から3Dオーディオをありきで曲を制作してもらうということができたら面白いなと思いますね。いま、WOWOWでやっている3Dオーディオ技術は「いかに臨場感を体験してもらえるようにライブを再現するか?」という部分なんですけど、そうではなく、最初から360度の音響を意識したコンテンツを作ってほしいし、それはこうした技術を面白がってくれるアーティストさんがいないと成り立たないことなんですよね。

現状では例えばサカナクションが、こうした音響を意識して曲を作ったりしているんですけど、彼らのようにがっちりと機材を組んで...というやり方ではなくとも、もっと手軽に360度の音響をWOWOW Labとのコラボでできるようになったら楽しいですね。まずは多くのアーティストさんに興味を持っていただけるようにしたいです。

神保:私は「五感伝送」を実現できたらいいなと思っていて、現在は映像(視覚)と音(聴覚)がメインですけど、嗅覚や触覚、味覚もできるようになって、最終的にはその技術を使ってみんなでモノづくりができるようになったらいいなと思っています。

いまの時代、アーティストさんにとどまらず、クリエイティブの裾野が広がっているので、五感を駆使してみんなで何かを作る――それこそロボットを作ったり、映像作品を作ったり、別々の場所にいながらみんながつながって、WOWOW Labで「形」になっていくということができたら面白いなと思っています。

――いまは特に、みんなで気軽にどこかに出かけたりすることが難しい状況ですが、五感の伝送が実現すれば、旅やグルメといったことを現地に行かずとも体験できるようにもなりますね。

神保:しかもひとりで体験するのではなく、実際に隣にはいない誰かと一緒に体験して、話し合ったりできるようになって、そこでまた新しい何かが生まれてくるといいですね。

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撮影/祭貴義道  

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