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第10回WOWOWシナリオ大賞 受賞作決定

第10回WOWOWシナリオ大賞の受賞作が決定いたしました。応募総数455編の中から、大賞1編、優秀賞2編が選出されました。結果は以下の通りです。

<第10回WOWOWシナリオ大賞 受賞作一覧>
大賞:「食い逃げキラー」舘澤 史岳 氏
優秀賞:「洛中洛外ソロウェディング」新井 まさみ 氏
    「のぼる」高島 麻利央 氏

大賞の舘澤史岳氏には賞金500万円、優秀賞の新井まさみ氏・高島麻利央氏には、それぞれ賞金100万円を贈呈いたします。
また、今回の大賞受賞作「食い逃げキラー」については、2017年度内のドラマ化に向けて制作に入る予定です。

<第10回WOWOWシナリオ大賞 選評>

選考委員長 崔 洋一氏(映画監督)
テレビメディアの大変貌とともに歩んできたシナリオ大賞も、はや10年をむかえ、時代の伴奏者として果たしてきた役割を大きく転換する時期に差しかかっている。ドラマ作りに関わる私たちは常に鋭敏な神経を張り巡らし、新時代とのクロスオーバーを果敢に果たさなければならないのは自明である。
大賞「食い逃げキラー」は、名実ともに"読ませる"シナリオである。独特のテンポとスピード感はアホな青春とニヒルな心持ちの主人公の移ろう激走の物語だ。と同時に極めてアナログな人間関係がクスりとくるユーモアもある作品となっている。
優秀賞「洛中洛外ソロウェディング」の台詞の今時ぶりは、ドラマの核心への助走として相応しい。キャラ設定でのステレオタイプを装いつつ、歪んだ職場での人間関係が産む確執からドラマを絞りこんでくる力量は並々ならぬものがある。
同じく優秀賞「のぼる」のゴーストの母との会話と富士登山は、人の営みの大切さ、すなわち崩れ行く家族、母と娘の葛藤を笑いと涙で描く、一級品のエンターテインメントとなっている。
新人たちの好奇心、探究心、冒険心に溢れる物語が次の時代の先鋭となること確信し、選評とする。

選考委員 大石 哲也氏(脚本家)
最終選考に残った全作品に言えることですが、読み手の予想を大きく裏切る展開というものが見受けられませんでした。予定調和というやつです。「期待は裏切るな、想像は裏切れ」。駆け出しの頃、諸先輩に教わった言葉です。次回作はより高い志を持ち、客の予想を遥かに超えるような物語を紡いでください。大賞作の「食い逃げキラー」は物語に疾走感があり、食い逃げというモチーフをここまで広げられるストーリーテリングが見事でした。解決できない何かを抱えた登場人物たちも魅力的でした。「洛中洛外ソロウェディング」は卓越した技術と確かなセンスで描かれた作品でした。ただ余りにも先が読めてしまう展開が致命的。「のぼる」の設定は常套ではありますが、ファンタジーや漫才といった要素が上手く機能し、最後まで楽しく読めました。ただしプロを目指すなら更なる向上心を。

選考委員 渡辺 千穂氏(脚本家)
大賞の「食い逃げキラー」は男性ならではの面白さがありました。「のぼる」はメッセージがストレートで読後感もよく、主人公を応援したくなりました。
最終に残った中にも、中盤が停滞してしまっていて、思い切ってバッサリ整理してワンエピソード足せば面白くなるのにと感じた本が何本かありました。あらすじは面白いのに残念という本もありました。あらすじはシナリオを凝縮させて面白さを際立たせようと書いていると思います。そんなあらすじを書いた後にシナリオ、そしてまたそのシナリオを見直してあらすじ、と推敲してゆけば、何が無駄でどこが大切なのか自ずと見えてくると思います。それから、応募条件がオリジナルであることにも関わらず、明らかに過去の作品を模倣しているシナリオも見受けられます。どんなに読ませるシナリオだとしても、その一点で落選です。格闘し、手探りで進んだその先にしか、みつけられないものがある。コンクールでは、それを見たいのです。

選考委員 野村 正昭氏(映画評論家)
受賞作「食い逃げキラー」は、モノローグが一寸多すぎ、最初は説明過剰なのではとも思いましたが、やはりこの設定は相当ユニーク。「報われる瞬間がゴールの瞬間とは限らない。ゴールの先にもある」という劇中のセリフが印象的だったが、これは作者の今後にも、あてはまるのではないだろうか。ともあれ、映像化されるのを楽しみにしています。
優秀作「のぼる」は、母子のかけあいが、とてもこなれていて感心させられた。オチのつけ方も秀逸だったが、既視感が否めなかった。惜しい!「洛中洛外ソロウェディング」も、ウェルメイドの愉しさに充ちていた。
というところで、10年間選考に関わった小生たちは、今回でひとまず審査から外れることになったけれど、オリジナル作品を生む難しさを含めて、こちらも大変勉強になりました。関係者各位に感謝しつつ、今後のこの賞のますますの御発展を心から祈ります。

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